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1992年末のソマリア作戦は依然悪化の一途をたどっていた。
http://www.asyura.com/0304/bd25/msg/489.html
投稿者 hou 日時 2003 年 4 月 04 日 17:17:11:HWYlsG4gs5FRk

http://www.drc-jpn.org/AR-6J/yasumura-j02.htm

米陸軍のドクトリン

(財)DRC研究委員

安 村 勇 徳

前言

カンサス州フォート・レブンワースにある米陸軍大学が発刊しているミリタリーレビューの3-4月号に、米陸軍のドクトリンに関する興味あるいくつかの記事が掲載された。その記事の冒頭に、“Doctrine is dynamic. It is the engine of change that provides a common language for our profession.”と記されている。

このことは、正に、米陸軍のドクトリンはダイナミックであり、陸軍軍人にとって論議に必要な共通の認識を提供し、陸軍改革の原動力となっていることを表している。米陸軍のドクトリンは、冷戦中も、冷戦後においても、ダイナミックな改革を陸軍にもたらしている。

例えば、1993年制定された陸軍作戦教範FM100-5は、統合部隊の一員として陸軍が作戦する際の作戦レベル、更には戦略レベルの構想を取り込み、陸軍作戦の全ての面で大きな変化をもたらすこととなった。そして、これは冷戦後における米陸軍の編成、装備、教育訓練の改革の準拠となったのである。

一方、この教範では作戦戦略レベルの記述に加え戦争以外の作戦(OOTW)についても多くの紙面を割いたことから、従来の教範に見られた戦術構想や用語など他の陸軍教範の準拠となるべき戦術運用に関わる記述が不十分であるとの指摘があった。これを是正するため1995年に戦術教範FM100-40の草案が起案された。

この作業には3名の特別チームが準備され、6ヶ月をかけて1940年代から現在に至るまでの戦術構想について研究をした。この研究は、フォート・レブンワースの図書館の支援を受け150もの古い教範を調査すると共に、英国、ドイツ、そしてロシアのドクトリンについての文献もチェックした。更に、この草案について、陸軍の主要な司令部、各職種学校など100に上る現役、予備役の部隊・機関のスタッフから意見を取り入れたと言う。

このように、戦術思想や、戦術用語を統一し共通の認識を図る為には膨大な努力が必要である。そして、我々が米陸軍のドクトリンを研究するに当たっても、これを正しく理解するためには相当の努力が必要なことは明らかである。

2001年6月14日、米陸軍は新作戦教範FM3-0を発表した。これは、1993年版の教範FM100-5にとって代わるものであり、陸軍の基本的な作戦ドクトリンを定める一連の野外教範として1905年に制定されたものから14番目に当たる。FM3-0は、この時同時に発表された陸軍教範FM1に示された陸軍のドクトリンを拡充しかつ補完するものである。

陸軍の最上位の教範が同時に発刊されるということは、特別なことであり通常ではあまりないことである。FM1やFM3-0の発刊や改定は、1993年6月にFM100-5が発刊され、1994年6月にFM100-1が発刊されたように、通常はそれぞれ別個に行われる。しかしながら今回は、陸軍のトランスフォーメーションや、統合ドクトリンの見直し、そしてFM100-5の改定の判断などが同時に生起したことがドクトリンの大きな変更をもたらす要因となったのである。

この様に陸軍のドクトリンが大きな変換点を迎えていることから、本稿では陸軍教範FM3-0を中心として、その中で記述されているドクトリンそのものだけでなくドクトリンの主要な変更事項やその理由について述べる。特に、ドクトリンに関する考え方がどのように変化しているかについて考察する。

1. 冷戦時代のドクトリン

米陸軍の基本となるドクトリンの変化を正しく理解する為には、従来の教範と新教範を比較することによって陸軍ドクトリンの主要な変化が明らかになる。1982年に採用されたエア・ランドバトルは、“兵学思想”に新たに焦点を当て、縦深、近接戦闘及び後方地域に区分した作戦構想を新たに導入したことに特色がある。

一方、それ以前の“アクティブ・ディフェンス”と呼ばれるドクトリンは、むしろ軍事科学技術中心のものであった。この作戦構想は、陸上兵器システムを研究して考案されたのである。米陸軍は、欧州戦場でソ連軍と戦うことを前提に、最も効率よく戦う距離、最適交戦距離を求めた。その結果、2,000m以上で戦えば米陸軍が有利であるのに対し、1,500m以下ではソ連軍が有利であった。この事から、米陸軍は縦深に防御し、最適交戦距離を維持する為逐次に陣地を変換して戦うこととしたのである。このアクティブ・ディフェンス構想により、ベトナム戦争後のレーガン政権の下で十分な予算を獲得し、強い陸軍の再生を目指し“ハネーム−ン時代”を謳歌したのである。

しかしながら、この構想に対する疑問が生じた。すなわち、およそ戦いに勝利する為には主導権を獲得しこれを維持することが最も重要であるにもかかわらず、敵の攻撃に合わせて逐次陣地を変換する戦法の下で如何にして主導権を取るのか?と言う疑問である。この疑問に答える為、米陸軍は、改めて「孫子」や「クラゼヴィツ」等の兵学書を研究すると共にソ連軍の戦法を分析した。その結果、米陸軍は「ソ連陸軍の戦法は“梯隊戦術”であり、先ず“第一梯隊”が戦闘を開始した後、決定的な時期・場所に“第二梯隊”を戦闘加入させ勝利を得る戦法である」と考えた。この様なことから、“第二梯隊”を敵指揮官が意のままに運用できないようにすることが、戦場で主導権を獲得できる方法と考えた。縦深作戦がエア・ランドバトル構想の最大の特徴であるのはこの故である。

エア・ランドバトルの構想にもとづき、現在の米陸軍の中核をなす兵器システムが開発された。エィブラムズM1戦車、ブラッドレイ装甲歩兵戦闘車、アパッチ攻撃ヘリ、ブラックホーク、ペトリオット及びMLRS等である。これは構想主導の開発システム(Concept Based Require System;CBRS)と呼ばれ、アクティブ・ディフェンスでは兵器システムが中心となって構想が決められたのに対し、エア・ランドバトルでは作戦構想に基づき兵器が開発されたのである。

この様に冷戦時代の米陸軍は戦を備えるべき相手が明確であり、旧ソ連を主対象として戦略・戦法を考察し、陸軍の編成・装備・訓練を開発してきた。量的には世界最大の地上軍を有するソ連には及ばないものの、質的には十分対抗しうる高度に機械化された重戦力を準備し、“エア・ランドバトル”戦法を徹底して訓練したのである。

2. 冷戦後のドクトリン

1993年に採用されたドクトリンは、「フル・ディメンジョン・オペレーション」と呼ばれる。冷戦終焉後の最初の陸軍ドクトリンであり、戦争及び戦争以外の軍事作戦(MOOTW)の区分を取り入れて、従来の封じ込め(Containment)政策から新たに軍事介入(Engagement)構想に転換したものである。陸軍の戦力投入(Force Projection Army)に焦点を当てると共に、統合作戦における陸軍部隊の役割を重視する傾向が増大した。また、作戦・戦闘レベルのリーダーシップの考え方について、戦場指揮の重要性を記述している。

2000年に新たに採用されたドクトリンは、「フルスペクトラム・オペレーション」と呼ばれる。ミリタリーレビューの記事によれば、米陸軍の歴史研究家が1993年の教範は「冷戦後のドクトリン」であると性格付けをしている事を紹介し、次のように述べている。

新しいFM3-0は、冷戦時代のドクトリンでもなければ、まして冷戦後のドクトリンでもない、新しいものである。このドクトリンは、紛争の抑止や軍事的な介入或いは支援任務に適合しつつ、常に即応性を維持し必要とあれば戦い決定的な勝利を得ることの出来る戦略的即応性と多様な事態に対応できる部隊編制への移行を目指すトランスフォーメーションの最中にある米陸軍の為のものである。

この教範は、過去226年間にわたる米陸軍の得難い教訓を新旧様々な手法で再考・検証して得たものを取り入れており、1993年に発表されたFM100-5以降陸軍が行ってきた見直しの結果を反映したものである。

湾岸戦争以降、戦力投入の問題や地域紛争における通常戦力の脅威への対処等は戦略計画立案の上で重要な考慮事項であった。この当時は、1991年末から1992年初頭にかけてソ連が崩壊したが、その超大国としての軍事力がどの程度であるかは依然不明のままであった。また、1992年末のソマリア作戦は依然悪化の一途をたどっていた。そして、陸軍は冷戦時代の最大勢力から大幅な削減に取り組んでいる最中であった。

1993年版の教範が戦力投入やバトル・コマンドについて強調して記述していることは先見の明があったと言うものの、当時はソマリア、ハイチ、ボスニア、コソボ、そして中央アフリカ等の紛争での出来事を想像することは出来なかった。そして、ドクトリンの起案者の誰もが、情報技術の驚異的な進歩やソ連邦崩壊後の軍事環境の中で米国の通常戦力が果たす役割の重大さを見通すことなどは出来なかったのである。ソ連軍やその代理人と戦うために開発されたドクトリンは、今や完全に時代遅れのものであることは明らかである。

1999年10月12日、米陸軍はアーミービジョンを発表し、今日及び将来わたり国家の要求に陸軍がいかに応えるかを明らかにした。そして、米陸軍を様々な態様の紛争のいずれに対しても戦略的に対応できる体制に改革する為のトランスフォーメーション計画の概要が示された。2001年6月、米陸軍は教範FM1“The Army”を制定した。この中で、陸軍とは何か、そして何を如何にすべきかについて述べると共に、合衆国憲法、連邦議会、及び国防省によって示された陸軍の目的、地位・役割を叙述している。

この時同時に制定された作戦教範FM3-0“Operations”は、多様な作戦遂行に必要な基本となるドクトリンを記述している。そして、戦略、作戦、戦術各レベルの戦時における陸軍の役割、及び統合軍、多国籍軍或いは省庁間協力の一員として如何に寄与すべきかについて説明している。更にまた、軍事技術の進歩が陸軍の作戦や兵士・指揮官に及ぼす影響についても付言している。

陸軍教範FM1と作戦教範FM3-0は、トランスフォーメーションを支える為に陸軍のドクトリンを全面的に見直したものである。この見直しは既に2001年7月に発刊された戦術教範FM3-90に受け継がれ、更に、下部教範である指揮運用教範FM6-0、情報運用教範FM3-13についても近く発刊される予定である。また、市街地作戦教範FM3-06、平和維持・支援作戦教範FM3-07や計画・命令作成手順に関する教範FM5-0、更には陸軍の任務リスト教範FM7-15等についても草案が作成され意見聴取が行われている。

3. 新作戦教範FM3-0オペレーション

新作戦教範FM3-0オペレーションは、この米陸軍の基本となるドクトリンを示す教範であり、他の陸軍教範が定める細部の戦術、戦技或いは指揮手順などの規範となる事項を示している。

これはドクトリンの統合に関わる分野の検討の結果を踏まえて最初に発刊された作戦教範である。そして、陸軍教範FM1に示されている陸軍な主要な責任・権限を作戦レベルで表した、陸軍の主要任務リスト(Mission-Essential Tasks Lists;METL)を定義した最初のものである。さらに、FM3-0では作戦環境の変化に着目し、これに伴って一層多様化する現代戦の様相について分析している。また、陸軍のトランスフォーメーションと同様にFM3-0は、陸軍の部隊は単に展開が迅速に出来るにとどまらず戦略的対応が可能でなければならないとしている。

このドクトリンは、朝鮮戦争以降のほとんど全てのドクトリンより一層攻勢的で、かつ非直線型・同時進行型の作戦を重視している。また広大で分散した作戦地域における作戦を想定して論議されている。陸軍の作戦はフル・スペクトラムであり、主要戦域における決戦をはじめ平時の軍事行動や本土の支援活動までを含んでいる。FM3-0は指揮官に焦点を当てて記述されており、戦場における指揮活動、すなわち、作戦構想の立案、計画、命令、指揮および継続した評価の重要性を強調している。

(1) 陸軍主要任務リスト

陸軍の主要任務リスト(Mission-Essential Tasks Lists; METL)は、FM1に記述されている陸軍の主要な能力・権限を作戦レベルで表現したものである。この陸軍のMETLには安全保障環境の醸成、危機事態への迅速な対応、陸軍の動員、戦力投入基盤確立の作戦(Forcible Entry Operations)、地上作戦及び民間機関への支援などが含まれる。国家安全保障に寄与する陸軍の基本的役割を主要任務リストとして明確にすることにより、陸軍の作戦と部隊の対応、及び訓練との関係をFM3-0で関連付けることが出来たのである。上級指揮官の指示以外で部隊が重視すべき戦闘任務に関する訓練について作戦教範に記述されたのはこれが最初である。

陸軍のMETLの論議から生じ話題になったテーマの一つは、陸軍の部隊は敵に近接しこれを撃破しなければならないと言うことである。FM3-0では、火力と機動の連携を強調し、相互の関係について繰り返し述べるとともに、戦闘力の構成要素について興味ある記述をしている。「全ての戦術行動においてこれを完結する為に、或いは最終段階として、地域の占領・確保は必須の行動である。もし敵が意志堅固で巧妙に戦うなら近接戦闘は必要である。火力のみでは敵を陣地から追い出したり、敵に戦いの目的を放棄しなければならない事を悟らせたりすることは出来ないからである。最終的に各種の戦闘や、主要な作戦・会戦の結果は、敵に接近し撃破する陸軍の能力如何による。攻勢作戦や防勢作戦における敵の撃破は、敵に屈服したことを悟らせることによって確実なものとなる。また、平和維持作戦における近接戦闘能力の優越は、敵の行動に影響を与える為に陸軍の利用できる基本的な手段である。いずれの場合においても、陸軍の近接戦闘能力とこれを実行する意思は、敵を撃破し或いは状況を支配する決定的な要素である。」

(2) フルスペクトラム・オペレーション

新しい作戦教範は単一の脅威を想定しているものではない。むしろ、様々な幅広い脅威についてその特性や運用の手口について述べている。したがって、FM3-0では、非対称戦、市街地戦、大量破壊兵器の脅威そして技術の流出について記述している。この様な考え方に基づき、訓練や演習における仮想敵を提供することとしている。FM3-0はさらに、戦争及び戦争以外の軍事行動を超えて、今日の作戦環境の中での多様な対応について記述している。平時、紛争時、そして戦時に陸軍が為すべき事を構想化する柔軟な手法としてフルスペクトラム・オペレーションを導入した。全ての作戦は、攻勢作戦、防勢作戦、平和維持作戦及び支援作戦の4タイプの軍事作戦を組み合わせたものであるとしている。

攻勢作戦は、敵を撃破・撃滅する決定的作戦である。この目的とするところは、我が意志を敵に強要し、決定的な勝利を得ることにある。防勢作戦においては、敵の攻撃を破砕し、時間の余裕を獲得し、兵力を節用するか、或いは攻勢作戦の為の有利な条件を作為する。平和維持作戦には、平和維持活動、非戦闘員の救出、国外の治安維持などが含まれる。また、陸軍の果たす緊要な役割として、平和維持作戦には国際関係の向上を図り紛争生起の要因を低減する為の平時の軍事的な関与が取り上げられている。支援作戦においては災害救援や民間機関を支援する為に国内の要請に如何に対応するかについて説明している。

個々に検討すれば、これらの作戦は新しいものではない。何が新しいかといえば、これらの作戦が相互に関係し地上作戦を形成すると言う認識が増大したことにある。多芸で適応性のある陸軍の部隊は、会戦、主要な作戦及びその他の任務において、これらの作戦を合わせ行うことになる。

攻勢作戦、防勢作戦、平和維持作戦及び支援作戦は、作戦レベルにおいて戦争や戦争以外の軍事行動にとって代わるものではない。むしろ、FM3-0では、統合作戦を支援する為に陸軍の部隊が実施する数次の作戦を定義付けしたのである。今日の地上作戦では戦争と戦争以外の軍事行動の間に明確な分界がないことから、この様な作戦区分が必要とされたのである。

陸軍ドクトリンは、多様な紛争をフルスペクトラム・オペレーションとして表現している。部隊の大小を問わず全ての陸軍指揮官は、戦争及び戦争以外の軍事行動において与えられた任務を達成する為に、異なったタイプの作戦を同時に或いは逐次に実施する。統合部隊指揮官と陸軍指揮官は、任務に応じ、作戦間如何に陸軍部隊を重点的に運用するかについて決心する。攻勢作戦と防勢作戦は、通常、戦争及び小規模な紛争における軍事作戦を決定付ける。平和維持作戦と支援作戦は、平時の軍事介入や特定の小規模紛争を含む戦争以外の軍事行動において有利な結果をもたらす。

(3) 作戦の概念・構想

今日の複雑な陸上作戦の特性は、冷戦時代の近接、縦深、後方作戦のような作戦の組み立てよりも更に柔軟な戦場の組織化が要求される。FM3-0は作戦目的をベースとして、決戦、態勢の確立及び維持の区分を、作戦の概念として導入した。これによって、従来以上に広大で分散した作戦地域において実施する非直線的かつ同時進行型の作戦に適応する作戦の概念を確立したのである。この様な考え方は、陸軍の部隊が関与する小規模紛争の枠組みにおいても下級部隊にまで適用される。

作戦目的をベースとしたフレームワークを適用するに当たって、FM3-0は旧来の縦深、近接、後方の区分を、地域的な意味で端的に作戦空間として扱っている。縦深、近接、後方の地域区分は、指揮官が何処で態勢を確立し、決戦し、或いは態勢を維持する作戦を行うかを説明する上で役立つものである。特に、作戦が直線的で且つ相互に隣接した地域で行われる場合に有効である。

(4) 戦略的即応性

戦略的即応性はFM3-0の主要なテーマである。戦略的即応性とは単に展開が迅速であることにとどまらない。それは、部隊を編成し、訓練し、迅速に展開させ、統合部隊指揮官が欲する時期と場所に適切な部隊が同時並行的に運用されることを含んでいるのである。この様な戦略的対応によって敵を作戦上の窮地に陥れる一方で、統合部隊指揮官に決定的な陸上作戦を遂行する手段を提供することになる。そしてこの戦略的即応性の考え方は、陸軍自身及び陸軍以外にそれぞれ意味のあることである。陸軍にとっては、トランスフォーメーションを行う為に必要な陸軍の意識改革にドクトリン的な根拠を与えるものであり、また、統合部隊指揮官にとっては、戦略的対応によって自ら実施する陸・海・空作戦の様相を有利にすることが出来るのである。

(5) 情報の優越

情報技術の進歩は、社会生活の様々な面に変化をもたらしているように、陸軍部隊の運用にも大きな変化をもたらしている。FM3-0は、陸軍のドクトリンを以下の2点で変化させている。第一は、情報を指揮統率、火力、機動力、防護力と同じく、戦闘力の一要素として加えたことである。情報は決定的行動をとる為の条件を作為するうえの道具であり、且つ有力な手段である。従って、情報の優越は作戦における緊要な目標の一つとなっている。第二は、情報技術を活用する指揮活動要領の開発である。

(6) 戦場における指揮活動

米陸軍は地上戦を厳しい人間的なものとして捉え、FM3-0はその全体を通じて用兵術( Art of Operations)を強調している。指揮官は、作戦の計画、準備、実行、そして評価の原動力である。地上軍を的確に指揮する能力は、如何に用兵の術を理解し戦争の科学を適用するかに掛かっているのである。この様な事から、戦場における指揮活動(Battle Command)の考え方は大きな関心を集めている。FM3-0は戦場における指揮に関する新しいモデルを提供しリーダーシップを強調している。このモデルは、指揮官が作戦を想定して部下に構想を示し作戦を指導する一連の手法である。指揮官は常に状況判断をして兵を指揮する。新しいモデルは、従来にも増して分散した戦場で同時進行する作戦環境の中で、指揮官は常に企図を確立し、これを具現する為の構想を明らかにすることの必要性を述べている。

4. 統合ドクトリンとの関係

FM3-0はドクトリンの統合に関わる分野の検討の結果を踏まえて最初に発刊された作戦教範である。エア・ランドバトルや従来の陸軍ドクトリンは、統合ドクトリンとの関連は薄くどちらかと言えば別個のものであった。現在はそれと大きく異なり、陸軍教範(FM 1)や作戦教範(FM 3-0)は統合教範と密接な関係を有する。陸軍教範の番号を変更したことはこのことを端的に表している。

作戦教範の第1章で、陸軍ドクトリンの役割について以下のように述べている。「ドクトリンは主要な会戦、作戦、戦闘などにおいて統合軍の一員としていかに貢献するかについて簡潔に述べたものである。このドクトリンは統合ドクトリンを受け継ぐと同時に、陸上における多様な作戦において陸軍が如何に対応し且つ寄与するかについて述べている。陸軍のドクトリンは、オーソライズされた権威あるものであるが、命令や規範のように墨守するものではない。また、統合ドクトリンとの間に競合が生じた場合は、統合ドクトリンが優先される。」としている。

統合ドクトリンは、軍事力を如何に運用するかについて述べたジョイント・ビジョンに基づき作成されたものである。統合ドクトリンは、長期的展望のもと年月を経て進化してきた。ジョイント・ビジョン2020は、米国軍が如何に戦うかについて述べた現在の長期構想である。この構想は、統合ドクトリンを受けて各軍種が作成するそれぞれのドクトリンの準拠・指針となるべきものである。

統合ドクトリンが陸軍に及ぼした影響の最たるものは、ユニファイド・アクション構想である。これは、陸軍が単独で地上作戦に任ずるのではなく統合部隊の一員として作戦することを意味している。エア・ランドバトルでは、この様な考え方はほとんどなく、空軍、海軍及び海兵隊について触れてはいるものの陸軍がこれらの軍種と如何に協同するかについての詳述はない。1993年の教範でこのことは改定されたが十分ではなかった。最新版では、陸軍は単独ではなく、統合軍の一部として作戦するか、又は、統合部隊を支援し、或いは統合部隊の支援を受けて作戦することとしている。

結言

米陸軍のドクトリンについて、冷戦時代からその後の変遷について考察したが、正にダイナミックであり、劇的な変化をしてきたのが判る。しかしその中で、一貫して変わらないものもある。それは、陸上作戦における陸戦力の基本的な役割である。作戦様相が多様化し、陸軍の任務が平時から戦時にわたる“フル・スペクトラム”任務になろうとも、戦いの本質が不変である限りその役割もまたその重要性も変わらないのである。

FM3-0の起案者でもあるドクトリンに関する論文の筆者は、ミリタリーレビューの記事の結びに次のように述べている。このことは、ドクトリンそれ自身の重要性のみならず、ドクトリンが時代の要請に基づき常に見直され変化する事を我々に教えている。

「FM3-0はトランスフォーメーションの為のドクトリンである。従来のそれとは大きく変わっているが、革命的とラベルを貼るのは誤りである。喩えていうならFM3-0は、耐用年数を延長する為オーバーホールに工場へ戻された、大砲や艦艇或いは爆撃機のようなものである。全ての部品が分解され、新品と交換され、或いは、旧式のシステムが新しい世代のものに置き換えられるのである。工場から現れるのは、本来の形や基本的な機能は維持しながらも、託された作戦条件の中でより効果的に任務を遂行できる、最新のプラットフォームである。FM3-0はそのような種類のドクトリンである。それは、古くて馴染みのあるものに加え、実に多くの新しいものを含んでいる。そして、今日の作戦環境について述べると共に、将来期待されることも予期しており、将来編成される新たな部隊(Objective Force)を運用するドクトリンへの踏み石であり、また、今日の多様な作戦に従事する陸軍部隊に確固たる基盤を提供するドクトリンである。」

参考文献

1.米陸軍作戦教範FM3-0(2001年6月14日)

2.米陸軍作戦教範FM100-5(1993年6月14日)

3.米陸軍教範FM1(2001年6月14日)

4.ミリタリーレビュー(2002年3〜4月)

5.陸戦研究(2001年11月〜2002年4月)

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