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刺身メソッド??と戸部 良一
http://www.asyura.com/0304/bd26/msg/277.html
投稿者 hou 日時 2003 年 5 月 24 日 08:38:13:HWYlsG4gs5FRk

http://www.mckinsey.co.jp/articles/2003/02/20030200.html

ノモンハン事件、ミッドウェー作戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦と第二次対戦前後の日本の主要な失敗策を通じて日本軍の失敗の原因を追究しようとするものである。
個々の戦略の詳細な記述は本書に記されているが、要約すると(日米の対比になるが)
・作戦目的があいまいで多義性を持っていたこと
 つまり、大本営の考え方と末端の組織の考え方の統一性がなく、また作戦の目的に2つの考えが混在していたりした。
・戦略志向は短期決戦型で、戦略策定の方法論は科学的合理主義というよりも独特の主観的インクリメンタリズムであったこと
 作戦の多くは「夜蔭に乗じて的を撃つ」とか「先制攻撃」というような短時間の決戦しか考えていなかった。また、作戦会議でも合理的な作戦よりも人情を大切にし、心粋を重要視した。また声の大きいものの意見が重要視され、その会議の雰囲気で作戦が決まってしまうことも多々あった。
・戦略オプションは狭くかつ統合性に欠けていた
 雰囲気で決定した作戦には柔軟性はなく、その場の状況で敵の出方等による修正が見られなかった。特に作戦の失敗に対しては退却などの基本的なことも考慮されず玉砕を待つばかりであった。また複数の師団により作戦も統合性がなく、特に陸軍、海軍の総合的な作戦は、作戦立案時から統合を考慮していなかった。
・資源としての技術体系は一点豪華主義で全体としてのバランスに欠けていた
 代表的な例としては、すでに列強では航空機による攻撃を中心としていたのに反し日本では戦艦での艦隊決戦を攻撃の中心に据えていた。戦艦大和、武蔵はその代表で米国の戦艦のほぼ倍の排水量があった。それらに積まれていた46cm砲はついに威力を発揮しないまま撃沈されてしまった。
・本来合理的であるはずの官僚主義のなかに人的ネットワークを基盤とする集団主義を混在させていた
 徹底的に無駄を省かなければ本来戦争に勝つことはできない。日本軍は人情を基本とした独自の官僚主義を昇華させてしまった。
・システムによる統合よりも属人的統合が支配的であった
 組織としての成功・不成功よりもたまたまその作戦の責任者たる人間の才能により成功・不成功が決まってしまった。
・学習が既存の枠組みになかでの強化であり、かつ固定的であったこと、そして業績評価は結果よりもプロセスや動機が重視されたこと
海軍の戦略は古くは日露戦争の東郷長官による艦隊決戦が基になっており、陸軍にあっては野木将軍の白兵銃剣による突撃が基本戦略であり、それを基本とした戦略の学習を徹底的に行っていた。また作戦の善し悪しはいかに男を上げるかに掛かっており、常に突進するような作戦しかとれなかった。例え作戦に失敗しても潔い作戦ならば多めに見てもらえた。また、作戦の失敗なり成功なりについての組織的な分析がほとんど行われることがなかった。まさに個人的なノウハウとして蓄積されるだけで、組織的な学習は行われなかった。

以上のように列強との違いは明白である。これらがなぜ日本軍に根付いたかは、今までこの方法で勝ち続けていたからに他ならない。第一次大戦を経験せずに近代戦に臨んだためこのような結果になってしまった。日本軍は結局このような組織の失敗を気づかないまま終戦を迎えてしまった。いや下級兵のなかには気づいていた人間もたくさんいたと思われる。しかし、このような硬直した組織では、例えば山本長官のように最高責任者でこのように才覚のある人がほとんどいなかったことが敗戦の大きな原因であったに違いない。
ところで印象的な一文があった。
「なお日本軍を圧倒したソ連第一集団軍司令官ジューコフはスターリンの問いに対して、日本軍の下士官兵は頑強で勇敢であり、青年将校は狂信的な頑強さで戦うが、高級将校は無能である、と評価していた。」(ノモンハン事件)

この本を読んで一つ気になることがあった。
戦後日本はこのような悲惨な戦争を起こさないようにと憲法で戦争を放棄した。しかし、この放棄は戦争そのものをすっかり忘れてしまおう、という意志の基で行われているように感じられる。つまり反省していないのである。しかし歴史の教科書では反対に、一連の戦争は日本の侵略が目的だと記載されているが、逆に本質からわざと反らしているような気がする。
海軍の艦隊決戦にしろ、陸軍の白兵銃剣主義にしろ帝国日本軍の作戦の根底にあったものは「人間はいくらでも換えがいる」ということであった。自国の人間の人権がこのように低く見積もられているのに他国の侵略された国や敵国の人権はどれほど低く見られていたのか?そしてそのような重要なこと、更に基本的な戦争の経緯すら教育されていない。
憲法9条の基ですべてを闇に葬り去ってしまったのか?

また、大いにいえることは会社組織のなかでも長く閉鎖されると(外部の役員が入らなかったり、中途採用がなかったり)、帝国日本軍的な考え方に陥ってしまうことである。目的があいまいな企業や、心粋だけが評価されてしまうような組織は往々にしてある。閉鎖が長引けば長引くほど組織的な反省は取られず、最終的には倒産してしまう。

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 中公文庫
戸部 良一 (著)


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