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「株主資本」と増減資
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投稿者 たこ 日時 2003 年 5 月 22 日 09:07:17:KZLCEeqX13raw

(回答先: 株主資本/自己資本率4%割れ銀行の株主責任 [たこさんへ] 投稿者 あっしら 日時 2003 年 5 月 20 日 20:33:19)

●株主資本の意義

「株主資本」を「BSの資本の部の金額」とするあっしら氏の用法は通常のものと思います。私もその用法で用いております。

一方、「損益」も資本の部を構成する項目です。損益の発生ごとに株主資本(=資本の部の金額)は増減します。仮に損益計上前の資本の部が5000億円として、それに4500億円の損失を計上すると、株主資本は500億円となります。なお、損益の発生は、利益剰余金(「繰越利益金」または「繰越欠損金」ないし「当期損益」など)の増減として資本の部に計上されます。(余談ですが、証券業界などの用法は、「前期決算のBSにおける資本の部の金額」と思います。これは、多数の会社の株主資本を一覧する便宜のため、損益を認識するタイミングを決算に限定しているだけです。この用法でも損益によって株主資本が増減することには変わりません。)

「損失を補填するために資本を減らすこと(減資)で、初めて500億円になります」は、「減資」を「法定資本金を減少させる手続き」とするなら誤りです。株主資本は、損益(の計上)で増減します。損失補填のための計算上の減資では増減しません(後述)。なお、ここで「法定資本金」とは、商法および企業会計原則の資本金です。「資本の部(資本金、資本準備金、利益準備金、その他の剰余金)」やいわゆる経済学で使われる「資本」と区別するためにこの語句を用います。(あっしら氏が損益の発生を増減資と称しておられるなら一貫性を失いませんが、ちょっと通用性のない用法です。)

●減資後の増資と減資前の増資

前のコメントでは、現行の商法にしたがって、「減資」と「株式の併合」を区別しつつ、簡単のために減資のみで株式併合がない場合で説明いたしました(法定資本金は減少するが株数不変)。今回のあっしら氏のコメントでは、「株式が1億株になり払込済み資本金は500億円になった」として、これらをリンクされておられますから、その例にそって説明します(本質は変わりません)。

もう一度、説例を掲記します。「資本金や準備金が5000億円として4500億円の損失、発行済株式は普通株10億株」を共通の設定とします。前段で申し上げたように、この場合の株主資本は500億円です。

1. (減資後の増資)
「1の場合、損失補填で90%の減資を行ない、株式が1億株になり払込済み資本金は500億円になったあとで9億株・4500億円の増資を行ないます」は、私の理解と一致します。増資の発行価額を明記しておられませんが、「9億株・4500億円」との記述から、減資(株式併合)後の1株あたりの株主資本に相当する500円と思われます。

2.(増資後の減資)
減資(株式併合)前に増資を行う場合、増資時の1株あたりの株主資本は50円ですから、これを発行価額とすると、4500億円の増資で90億株の新株が発行されます。その後、10株を1株に併合すると1と同じ結果になりますが(既存株主1億株、新株主9億株)、仮に減資の割合で株式併合を行うと、9500億円の資本金を5000億円に減少させますから、19株を10株に併合し、既存株主・新株主ともに株式数が約47%減少します(既存株主約5億2600万株、新株主約47億3700万株)。

いずれの場合でも、既存株主が株主資本の10%、新株主がその90%を保有する結果となります。また、各株主が保有する株数に相当する株主資本も同じです(既存株主500億円、新株主4500億円)。

●あっしら氏の「株主責任論」へのコメント(内容は減資の説明)

「減資」は、法定資本金を減少させる手続きです。出資の払い戻しを含まない計算上の減資の場合、形式的には株主の利害に関係ありません。前述の「株主資本」の語で説明すれば、減資によって、法定資本金のプラスと繰越欠損金のマイナスが計算上相殺されるだけで、株主資本(=資本の部の総額)は不変です。当然ながら、株主責任とも無関係です。

同様に、「株式併合」も形式的には株主の利害と無関係です。10株を1株に併合しても、単に株数が減るだけで、株主資本に変化はありません(増減資と同時に行われない限りBS上の資本金も不変)。もちろん、10株を1株に併合すれば株価の理論値は10倍になり、株式数が約47%減少すれば株価の理論値は約1.9倍になります。

「100%の減資はともかく、95%の減資でも株主にとっては度を超えたありがたい話です」とのあっしら氏の論ですが、正確に表現すれば「100%減資でなければ、株主の利害に関係ない」でしょう。さらに申し上げると、債務超過の場合に会社更生などの倒産処理手続きで行われる100%減資ですが、これも最初から株主資本がゼロ(またはマイナス)で株式が無価値とすれば、この場合も形式的には株主の利害に関係ありません(少なくとも関係ないタテマエなので強制的に実施できる)。

免許業種であること、事業の継続には一定の自己資本が求められることも、本質的な問題ではありません。営業不継続の場合でも、債務超過でなければ、株主は清算によって残余財産の分配を受けることができます。

●より本質的な問題

以上の説明では、「1株あたりの株主資本」と「新株の発行価額」(=「市場価格」)を等値する仮定に基づいています。当然ながら、これは極めてナイーブな仮定です。しかし、後半の等式については、これを正面から無視すること(たとえば50円前後の市場価格のときに、500円で政府が新株を引受けること)は、立法論あるいは政策論としてちょっと不可能です。前のコメントで、「立法論としても、行政措置としても、株主の利害に正面からかかわる措置は困難」と申し上げたのはこの意味です。

既存株主の利害は、増減資の順序ではなく新株の発行価額です。そして、その理論的な基準ともなり、市場価格に影響を与えるべき「1株あたりの株主資本」の算出方法(特に資産査定でBSを作り直すか)などが、より本質的な問題と考えております。

●余談と「資本」概念の再説明

「株主資本の取り扱いに齟齬があるようです」は全面的に同意します。以前にもありましたが、経済現象を話題にすると、概念規定を慎重にしなければ、無用の混乱が生じます。(私もムカシ習い覚えた、信じてもいないマル経用語を振り回してご迷惑をおかけいたしました。しかし、他に代用できる概念規定の明確な理論体系は見あたりません。やはり「経済」や「経営」の記述学は社会科学として未成熟なのでしょうか。)

今回のあっしら氏のコメントでは、「資本」を「法定資本金」の意味と「資本の部(=株主資本)」の両義に使っておられるように見受けられます。(株主資本は後者、減資は前者に関係します。)

「法定資本金」は、有限責任である会社(株式会社または有限会社)が債権者保護のために保有することを求められる純資産の数額です。純資産がこの数額を下回るときには、配当による資産の流出は許されません(商法に罰則があるほか、会計上の原則です)。これらの会社の登記事項でもあり、また、その減少は債権者保護に関係しますから、厳重な手続きを要します(それがいわゆる減資です)。一方、「株主資本」は、繰越および当期の損益を含む資本の部の総額に過ぎませんから、損益(の計上)によって不断に変動します。両者は異なります。もちろん、いわゆる経済学上の資本概念とも異なります。

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