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共産圏も「パックス・アメリカーナ」の手のひらの上 − 米国的「戦後世界」解釈からの脱却を − [Mr.Xさんへ]
http://www.asyura.com/0304/dispute9/msg/350.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 3 月 25 日 18:22:07:


Mr.Xさんの『Re: 政治力&軍事力によって経済論理を超えることはできず、経済力なくして覇権(政治力&軍事力)を維持することはできない』( http://www.asyura.com/0304/dispute9/msg/343.html )へのレスです。
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Mr.Xさん、レスありがとうございます。


>ソ連を始めとする共産主義諸国が無視し得ないチャレンジャーとして存在したWW II
>後の世界は「パックス・アメリカーナ」ではない。「米ソ勢力均衡による世界秩序維
>持」が正しい認識。

世界革命派共産主義国家でもなく、戦時一国社会主義として経済的によれよれのソ連(圏)を無視し得ないチャレンジャーとして、「米ソ勢力均衡による世界秩序維持」と捉えるのは、米国知的エリートが描き出した戦後世界像をそのままなぞっているだけです。

(マルクス主義やボルシェヴィキ国際派が、世界金融支配層のエージェントであるという「陰謀論」はあえて言いません)

スターリン主義ソ連は、WW2で被った大災厄の再来に恐怖し、東欧諸国を“防波堤”として抱え込むとともに、自国社会を戦時体制のまま固定化しました。
そして、東欧諸国の経済的困難を緩和するために、豊富な資源を安価(バーター取引)で提供し続けました。

東欧諸国は、ソ連にとっては西欧諸国に対する“防波堤”であり、いわゆる自由主義諸国にとっては復興負担をソ連に押し付ける対象だったのです。


ソ連は、自身が戦時体制の重みで民生向上がおろそかにされたくらいですから、理念的な政策で親ソ国家(勢力)を支援することはできても、親ソ国家を戦後日本のように“繁栄”に導く経済力を持っていませんでした。

ソ連は、すがってくる反米欧国家(勢力)になにがしかの支援ができるとしても、自分たちの価値観や政治・経済理論を世界化する力はなかったのです。
軍事的にも、米国から侵攻を受けた経験を持つキューバにミサイルを供与するせめぎ合いであったキューバ危機であえなく膝を屈するというものでした。

一方、米国は、ソ連=共産主義の脅威を煽ることで、WW2を通じて肥大化した軍需産業に国費を投入する善い訳を手に入れ、軍事行動の正当化もはかれるようになりました。

そして、WW2を通じて蓄積した膨大な貨幣的富と産業生産力が経済論理的な重荷になることを防止するために、日本や西欧に資金援助や貸し出しを行ない、そのお金で生産(資本)財などを輸出するという新しい国際循環構造を築きました。

援助や循環構造の対象にソ連や東欧圏そして共産中国までが含まれていれば、一時的には好循環が得られても、その持続性は限られ、一大転換期であった70年と85年がずっと早く訪れていたはずです。
なぜなら、お金を貸したり、生産(資本)財を買ってもらうという関係性を順調なものとして維持するためには、相手が生産した財を輸入してやる必要があるからです。
それを怠れば、相手国を債務不履行に追い込んだり、経済的破綻に突き落とすことになります。

端的に言えば、世界革命派ではなく一国主義であるソ連や中国は、自国の経済発展のために世界経済システムに参入することを一貫として望んでいたのであり、それを妨げるのみならず敵視したのが米国を中心とした“自由主義”陣営なのです。

米国支配層は、世界経済の変化のなかで、まず中国融和策をとり、最後にはソ連との“和解”を果たし、旧共産圏を“継子”としてではなく“仲間”として「パックス・アメリカーナ」に取り込んだのです。

それは、先進諸国が経済的成熟段階に入ったことで、経済取引相手を広げる必要性を思念したからです。

戦後世界は、圧倒的な経済・政治・軍事の力を誇る米国の現実主義(ご都合主義)政策によって秩序が維持されてきた「パックス・アメリカーナ」だったのです。

>ソ連崩壊に反面教師的に観察されるがごとく、世界覇権の維持に経済力が必要なこと
>は論を俟たない。それゆえに自国主導の金融グローバリズムを世界中に網の目のよう
>に張り巡らし、先進分野のテクノロジーと知識を独占するなど、80年代以降、アメリ
>カは既に着々と手を打っている。アメリカ一国のみが凋落し、他国は大丈夫など、幻
>想に過ぎない。必要に迫られ、アメリカがその気になりさえすればアッと驚くルール
>・チェンジも一朝にして実現可能。ニクソン・ショックやプラザ合意は遠い昔の御伽
>噺ではない。

近代国家的枠組で覇権を見るという立場ではありませんが、それを脇に置けば、書かれたことに全面的に同意します。

しかし、先のレスでタイトルとした「政治力&軍事力によって経済論理を超えることはできず、経済力なくして覇権(政治力&軍事力)を維持することはできない」の“政治力&軍事力によって経済論理を超えることはできず”の部分をきちんと考える必要があります。

「自国主導の金融グローバリズムを世界中に網の目のように張り巡らし、先進分野のテクノロジーと知識を独占」したとしても、それ自体が果実(利潤)をもたらしたり富を産み出すわけではありません。
そのようなシステムを基礎とした財的生産活動が順調に維持されない限り、金融に果実(貨幣的富)がもたらされることはないのです。

「アメリカ一国のみが凋落し、他国は大丈夫など、幻想に過ぎない」から、世界支配層(現在は米国にその実効力を依存)は、米国やその他のどこかの国が覇権を握るという構造ではなく、「世界帝国」の確立を急いでいるのです。

>中ロは今後アメリカの力を必要とすることはあっても、反目して得する事は何もな
>い。EUは半人前国家の寄せ集めに過ぎない。突っ張り続けると決して得しないことな
>ど狡猾なフランスなどは計算済み。核の傘と文化的劣等感で首根っこを押さえられて
>いる日本は放っておいてもアメリカに付いてくる。

中露が米国と反目するという見方はとっていません。

「世界帝国」では、米国・中国・EU・ロシア(・英国)が地域大国として重要な政治的位置を占めると考えています。
(日本は、現在の米国から中国の“管理下”に移行することになると予測しています)


>以上のように今後の枠組は、大きく言えば17世紀以降のウエストファリア体制の崩壊
>であり、アメリカを帝国とし他国を従属国とする中世的世界の再現と見るのが正し
>い。この潮流を見誤り、反動的なリアクションを起こす国は全て没落する。

米国は1985年を境に自立的な覇権国家(帝国盟主)として存続できない経済条件に陥ったのです。この認識がなければ、これまでの戦後世界そして今後の世界を見誤ることになります。
(だからこそ、日本でバブルの形成と崩壊が起き、その余波として90年代後半の「米国の繁栄」があったとも説明できます)


>「国家単位で覇権や世界秩序を考える世界観に囚われ」るな、との視点は、軍事的に
>突出したアメリカがさらに集権化してゆく今後数十年のトレンドを見誤らせる恐れがある。

あれだけの軍事力であり民主国家であるからこそ、経済的に弱体化した米国は、世界展開力としての軍事力を維持させることができないのです。

米国のさらなる覇権強化を主張されるのなら、米国の経済力強化といわないまでもあれだけの経常収支赤字と財政赤字のファイナンスが維持できるという説明が必要です。

>さらに重要な点は、アメリカの大義名分が失われていない点(例えば、テロに対する
>文明や民主主義といった構図)。今のイラク戦争の構図が全く逆で、アメリカが
>テロ・独裁国家、イラクが民主国家なら、イラク側に立って参戦する国すらあるだろう。

そのような理念主義を旗印に軍事力を世界中に展開してきた国家は、戦後米国だけです。(ソ連はせいぜいが武器と資金の援助どまりです。隣国に本格介入したアフガニスタンで見事ではまりソ連崩壊に至りました)

イラク侵略戦争が逆の構図であっても、テロ・独裁国家と想定された米国の経済規模・政治力・軍事力がそのまま存在するのなら、イラク側に立って参戦する国があるというのは現実を知らない者の妄言です。

国際政治とりわけ戦争という究極的活動手段にどう関わるかというのは、理念ではなく現実を重視して判断されるものです。

だからこそ、イラク攻撃に反対した仏・露・中・独なども「即時攻撃停止」を呼びかけるだけで、対抗力をもってやめさせようとはしないのです。

ほとんどの国家統治者は、独裁か民主かという政体よりも、国家主権の独立性や国家間を律する規範のほうを尊重しています。
それが米英という少数派の力によって破られたにも関わらず、基本的には手を拱いたままのです。
このような現実を見て、「イラクが民主国家なら、イラク側に立って参戦する国すらあるだろう」と思念するのは重大な錯誤です。

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