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「陰極まり陽に転ず、株上昇の機熟しつつ」植草一秀氏
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投稿者 Ddog 日時 2003 年 3 月 21 日 10:59:02:

エコノミスト「陰極まり陽に転ず、株上昇の機熟しつつ」植草一秀氏

低迷を続け、デフレの出口が見出せない日本経済。どこに問題があり、どんな方向に進むのか。今回は、植草一秀・野村総合研究所主席エコノミストです。

「陰極まり陽に転ず、株上昇の機熟しつつ」 植草一秀・野村総合研究所主席エコノミスト

【問】先ず、御自身は20年後に今をどう回顧すると予想するか。

【答】国の命運を左右する要素というのは基本的には国民の力だが、同時に、時のリーダーが非常に大きな影響力を持つ。歴史的文脈の中で言うと、今の日本はリーダー不在で国家運営の舵取りが上手くいかず、日本の国力が生かされていない。まさに日本は混迷の最中にある。しかし、いずれ正しい政策を強力に推し進めるリーダーが登場し、日本は本格浮上する。それは近い将来だろう。20年後に、「あの頃は最悪の時代だった」と今を振り返っていると思う。

【問】現在が最悪期とすれば株価は底値圏。株式市場をどう見るか。

【答】日本の株式市場は、先行き悲観論や不安心理が理論価格以下に株価、地価を押し下げる負のバブルの局面にあるが、逆に、先行きに対する期待の振れの是正、具体的には、政策路線の明確な転換があれば、株価は直ぐに理論価格までは戻る。そういう意味で、株価は転換点に近づいており、上昇に転じる機は熟しつつある。今の株価は歴史的に千載一隅の大きなチャンスかもしれない。地価の上昇は、株価上昇から1年から1年半のタイムラグがあるから来年以降だろう。

【問】改革路線は事実上破綻している。政策転換の可能性は高いか。

【答】小泉首相は「改革なくして景気回復なし」と構造改革を最優先し、景気回復を後回しにしてきた。改革路線の一つの考え方は、財政立て直しと不良債権処理を優先することが景気回復に繋がっていくというものだが、これに私は真っ向から反対意見を唱えてきた。現に、財政赤字は大幅拡大、不良債権問題は一段と深刻化している。行財政システムや財政資金配分などの見直しもほとんど手付かずのままだ。まさに、「改革も無くして成長も無し」だ。

2003年は政策転換の年となるだろう。陰極まれば陽に転ずると言うが、構造改革路線の破綻に加えて、イラク戦争の長期化、北朝鮮問題、欧州の景気後退、銀行破綻の表面化、内閣支持率の低下など内外様々な混乱が液状化現象のように広まって、結局、政策転換に追い込まれていくだろう。政策転換が行われるケースは2つ。小泉政権による政策転換と政権交代による政策転換だ。小泉首相の国会答弁などを聞く限りでは、現政権の政策転換はかなり難しいとの印象だ。新政権によって政策転換が生じる可能性が高いと見ている。

【問】政策をどう転換すれば日本経済は再生するだろうか。

【答】先ず、景気回復優先を宣言し、景気重視型の政策路線への転換を明確にする。2番目に、真水5兆円を内需支援政策として決定し、年2%〜3%の民需主導の経済成長軌道を作り出す。3番目に、財政を長期的に健全化させる具体策を提示し、実行する。4番目に現在の金融緩和政策を維持する。これらを政策のパッケージとして打ち出せば日本経済は確実に再生する。

【問】経済対策は景気を浮揚させる効果がないとの指摘もある。

【答】その認識は誤っている。92年、94年、95年、98年の大型景気対策は、日経平均株価を5,000円から8,000円上昇させるなどいずれも抜群の効果を上げている。例えば、96年は、前年の景気対策の効果で個人所得、住宅投資、民間設備投資主導の持続力、安定感のある景気拡大が始まって、3.4%の経済成長を達成した。景気回復優先に路線転換した小渕政権下では、経済成長率2.8%と日経平均株価2万円を回復し、日本経済は危機を脱出した。

ところが、景気対策の成果が本格軌道に乗る前に、景気重視型から財政再建型の路線に転換して超緊縮財政が行われ、いったん離陸しかけた日本経済は撃墜されてしまった。代表例が橋本政権の財政構造改革路線だ。96年に増税方針を決定した橋本政権は、97年に13兆円のデフレ策(消費税5兆円、所得税2兆円、医療費2兆円、公共投資減4兆円)を実施、景気は失速した。

経済の改善が持続せず、低迷がここまで長期化したのは、拙速に超緊縮政策を繰り返したからだ。景気対策に問題があったとか、ケインズ政策は有効ではないなど虚偽の説が流布されたが、過去10年、15年をきちっと検証してみると、特に、不均衡が拡大している局面ではケインズ政策は依然として有効であるという事実が出てくる。もし、97年以降、経済政策が中立を維持していれば、成長は持続し、日本経済は不況を克服していただろう。

【問】小泉首相は橋本政権の二の舞を演じようとしている。何故、政策の逆噴射は繰り返されるのか。

【答】目先の財政赤字の縮小を追うか、目先は景気回復に重点を置くか、基本的にこの違いがある。96年から97年の橋本政権は財政赤字削減、98年から2000年の小渕政権は景気回復、2000年春以降の森政権、小泉政権はもう一度目先の収支改善に軸足を移して事態を悪化させてきている。橋本、森、小泉の各政権の裏側で緊縮政策を仕向けたのは財政当局だ。財政当局の発想は、私から言えば近視眼的な赤字削減路線だ。この路線は、赤字を削減するどころか拡大させる原因となっている。それでも、財政当局は日本の政治、行政システムの中で、非常に強い力を持っているので、そこが幅を利かせると同じ事が繰り返されてしまう。そういう構図だと思う。勿論、私自身、財政再建そのものに反対しているわけではない。問題はどう財政再建に取り組むかだが、中長期で財政の健全性を回復させることが重要だ。

【問】具体的には。

【答】私は、財政健全化10年プログラムを5年前から提言している。柱は3つ。

一つ目は、景気回復無くして財政健全化無し。

景気が回復軌道に乗れば税収は増加して財政は改善する。

二つ目は、中長期的に財政悪化の最大要因である社会保障財政の収支均衡。

年金、医療、介護などの保障内容の将来を考えると、給付の切り下げと負担の増加は避けられない。長期的には消費税の引き上げが現実的な策だ。
経済が安定的な成長軌道を確保した段階で、消費税を段階的に10%引き上げて15%にする。その結果、25兆円程国税収入が増える。つまり、景気回復と社会保障制度のプログラムを見直すことで国の収入は今よりも35兆円から40兆円程度改善する計算になる。また、国民が消費税引き上げを受け入れる前提条件として、政府支出の無駄を排除する必要がある。

そこで、三つ目が一般財政支出の削減だ。

3,200の地方公共団体を200程度に統合する。さらに、77の特殊法人、26,000もの公益法人など、いわば経済のグレーゾンでの無駄を排除すれば、膨大な経費削減となる。一番有効なのは、天下り制度の全面廃止だ。天下りがなかったら役所も公益法人を維持しようなどと考えない。以上の3つを実行すれば、10年後に財政は健全化する。

【問】インフレ・ターゲット導入が議論の俎上にある。

【答】前年比マイナス1%ほど下がっている消費者物価指数が1%から3%上がるような状況を目指すインフレ目標設定には賛成だ。ただ、日銀自身「消費者物価上昇率の前年比がプラスに転じるまではゼロ金利政策を維持する」とインフレ目標に近い表現をしている。

問題は、インフレ目標を実現するツールだ。私は、伝統的手法で対処すべきで、それを超えるような非伝統的手法は排除すべきだと思う。例えば、日銀による株や土地の購入、国債引き受けは、ハイパーインフレを招く危険性がある。

ハイパーインフレは、債権者から債務者に所得を移転させる効果がある。債権者の持つ実質債権価値が下がって債務者の借金が棒引きされるから、日本一の借金を背負っている日本政府にはメリットはあるだろうが、所得分配上の不公平や、円の信認低下によるトリプル安、キャピタルフライトなどデメリットの方が多い。

【問】ゼロ金利下で伝統的金融政策の有効性は低下している。マイナスの物価上昇率をプラスに誘導することは可能か。

【答】その場合には、財政政策を活用して、先ず、経済成長率を高める。日本の財政では財政資金が無駄に使われるという問題があるから、特定産業救済型の景気対策から使途自由な購買力付与型の景気対策へ転換する。使途自由な購買力付与型の景気対策は、ルールによって支出が決まってくるようなやり方だから利権に繋がりにくい。

具体的には、減税、失業給付の拡充、出産・育児費用の助成、NPO活動の支援などだ。消費者が自由にその資金を消費に振り向けることを踏まえれば、産業構造調整が推進される。経済成長率が高まり、前向きな資金需要が発生する。

そうした状況となった時に金融緩和を維持していれば、マネーサプライは確実に増大し、やがて物価にも影響が出てくる。若干回り道という面もあるが、デフレの克服は可能だと思う。

【問】つまり、21世紀はデフレの時代と決められないと。

【答】マネーサプライと物価は緩やかな比例的関係を持つから、マネーサプライのコントロールで物価変動のコントロールはある程度可能となる。従って、中国が安価な良品をどんなに作ろうが、インフレの可能性は遮断されない。

私は、中国のような国が存在するから構造的にデフレだとする考え方は正しくないと思う。今の日本経済は、戦後経済の中で最も厳しい不況下にある。その背景には、需給が大きく離れた不均衡の状態という問題があるが、なんと言っても日本経済の低迷がここまで長期化したのは経済政策の誤りによるものだ。

同じ誤りを繰り返さないためにも、的確な現状認識と正しい学問的分析に基づいた適切な問題解決の手順が必要だ。それによって初めて日本経済の再浮上は可能となる。

私は、古典派経済学の分析手法とケインズ経済学の発想を正確に理解して、そこに金融政策についてのマネタリストの見解などを総合して、現在の日本を十分解明し得ると思う。既存の経済学を正しく活用することにより、日本経済の病状に対して処方箋を示すことは可能である。

(聞き手・QUICK情報本部 岡村健一)

クイックより

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