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ナチスを嫌った、レオ・シュトラウス。だが、理想を過度に追求するところが皮肉にもナチスそっくりです。
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投稿者 赤い瞳 日時 2003 年 4 月 20 日 10:31:58:GayVI8sFc3nbY

ナチスを嫌った、レオ・シュトラウス。だが、理想を過度に追求するところが皮肉にもナチスそっくりです。


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                 アメリカのソフト・パワー (中)  2002.7

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 2002年6月24日、ブッシュ大統領が自爆テロと報復が続くパレスチナ問題に関して新しい政策を打ち出した。アラファト議長をパレスチナ人が追放し、選挙によって自分たちの新しい長を選ぶなら、アメリカはパレスチナ国家の建国を支持する、と。

その後、26日にカナダのカナナスキスで開催された先進国サミットに出席した小泉首相は、すぐにアメリカの新パレスチナ政策を日本は支持する旨をブッシュ大統領に告げた。「アメリカ機軸」外交を公言している小泉首相だけに、このアメリカ支持の表明は当然のことだったが、しかしそれにしてもすでに半世紀にわたって続いているパレスチナ問題、そんなに簡単にアメリカ支持を打ち出してもいいものだろうか。今回のブッシュ政権が打ち出した新パレスチナ政策、これははたして昨年来の「テロ戦争」の一環なのか。日米同盟があるからとはいえ、両者の関係を明確にしないうちに、早々にアメリカをサポートする態度を表明したが、そこに問題はないのか。私などは、あまりにも早い支持表明に一抹の不安を感じてしまうのだが、ひょっとして小泉政権はアメリカが出す政策にはどんなことでも支援するつもりなのか。私はそうは思わないが、それでも、もし日本に自主外交があるなら、「テロ戦争」と「パレスチナ問題」の関係を政府関係者からはっきりと説明して欲しいものだ。私たちは主権者であり、有権者なのだから、これは当たり前の要求だろう。しかし、ひたすら政府の説明を待つというのも時間の無駄になりそうだから、私たちは自分でアメリカ問題の分析を続けよう。今、ブッシュ政権が置かれている状況はどうなのか、と。

6月の初旬、ブッシュ大統領はニューヨーク州にあるウェスト・ポイント(アメリカ陸軍士官学校)で卒業生を前にして演説を行った。「同時多発テロ」が発生して以来、それまでの外交政策を一変させたことを改めて強調する内容だった。まだ大統領候補だった時期には、共和党の伝統であるアメリカ軍の海外への非介入政策と、自国防衛強化の必要を訴えていたが、あの日以来、アメリカはそれまでとはまったく異なる世界に入った、と大統領は語った。

「私たちは敵を叩かねばならない。敵が現れる前に最悪の脅威に立ち向かい、連中の計画を破壊しなければならない。私たちにとって唯一安全な道は、敵を叩くことだ。そしてこの国はそれができるのだ。・・冷戦では〈封じ込め〉政策が有効だった。だが、テロリスト相手の戦争では、相手の出方を待ち、防衛手段を講じるだけでは脅威が増すだけだ。」(「ワシントン・ポスト」2002.6.3)

 軍事行為の必要を説いた後、大統領はこの「テロ戦争」には単にアメリカを守ること以上の大儀がある、と告げた。それは現代世界における大国同士の間に平和な関係を築くこと、それによって地球上のすべての大陸に、自由で、開かれた社会を広げていくことである、と。(これはまるで、フランシス・フクヤマ氏が『歴史の終わり』で論じた主張そのものだ。あるいは、それ以上だ。何しろ今後の歴史の展開は、ヘーゲル流の弁証法によるよりも、アメリカの意志によって動く、と言うのだから。)

「17世紀に国民国家が出現して以来、今や私たちは、大国同士が戦争に備えるのではなく、平和な国際社会を形成する最大の機会を迎えている。アメリカ合衆国、日本、それから太平洋岸の国々、そしてヨーロッパのすべての国は、今や人間の自由に深く関与しているのだ。」(同右)

「同時多発テロ」の発生によって大国同士の世界平和が可能になったというのは、なんとも皮肉な現象だが、はたして世界はブッシュ大統領の期待通りに反応するか。まず、「同時多発テロ」を引き起こした当事者であるビン・ラディン氏とアルカイダだが、6月23日にカタールのアルジャジーラ・テレビを通して、世界にメッセージを流した。アフガニスタンではタリバンが崩壊したものの、指導者オマル氏は現在も健在であり、ビン・ラディン氏とともにある。ビン・ラディン氏は健康そのものであり、アメリカの空爆で死んだとされるアルカイダNo.2のザワヒリ氏も健在でいる。そして近く、新たにアメリカをターゲットとした攻撃を計画しているという。これに対し、アフガンに駐留するアメリカ軍は、あの空爆を受けて、まだアルカイダにそのような能力が残っているとは考えられない、と指摘した。

一方、「同時多発テロ」の実行犯19人のうち15人が自国の出身者だったサウジアラビア政府は、アルカイダのメンバーが今も自国の国境付近で活動していることを認めた。サウジ国内で補足されたメンバーの自白によると、テロリストが次に狙っているのは、ジブラルタル海峡にいるNATO(北大西洋条約機構)の戦艦らしい。あるいは、メッカに駐留するアメリカ軍へ攻撃をかけるかも、という。いずれにせよ、サウジ政府の予想では、アルカイダにはアメリカ本土へ攻撃をしかける力は残っていないようだ、という。(「エコノミスト」2002.6.24)

アルジャジーラ・テレビに流れたメッセージによると、近くビン・ラディン氏本人がテレビにビデオ出演するとのことだ。現況がそのようなものとしても、しかしなぜ彼はテロを行うのか。ニューヨークの世界貿易センターを破壊し、ペンタゴンに突入したあと、これから先、まだ何かやるというのか。ビン・ラディン氏とアルカイダのメンバーが生き残っている限り、私たちは「テロ戦争」の結末について楽観することはできない。いかにアメリカが現代における軍事超大国だとしても、冷戦時代を思い起こせば、アメリカはベトナム戦争に負けた。この時、アメリカ政府は共産主義のイデオロギーと、ベトナム人のナショナリズム(愛国心)を読み違えた。闘うための大儀があれば、相手がいかに大国であろうと、人間は闘うということをベトナム人は証明した。ウェスト・ポイントでブッシュ大統領はアメリカの大儀を説いたが、それと同様にビン・ラディン氏も彼なりの大儀を持っているとしたら、どうか。この「テロ戦争」は容易なことでは終わらないだろう。

では、このビン・ラディン、アルカイダ相手の「テロ戦争」と、新パレスチナ外交政策は関係があるのか、ないのか。ブッシュ政権にとっては「テロ戦争」に勝つためには各国からの支援、とりわけアラブ諸国からの支援が不可欠なのだが、そのアラブ諸国がパレスチナ問題でアメリカとの距離を測りかねている。もしアメリカが重心をイスラエル寄りに置けばアラブ諸国は反発するだろうし、パレスチナ寄りにすれば、イスラエルはもちろんのこと、アメリカ国内のユダヤ系市民が反発するだろう。ビン・ラディン氏が生まれる前から始まったパレスチナ問題の中で、今回ブッシュ政権が打ち出した「パレスチナ国家」構想はどちら寄りなのか。

アラブとイスラエルが武力で衝突するパレスチナ問題と、これを仲介するアメリカの外交政策だが、1948年にイスラエル国家が建国される前から始まった。パレスチナを管理するイギリスの統治能力が低下したことを見て取ったイスラエル建国の父ベングリオンはF・ルーズベルト大統領に支援を要請した。ナチス・ドイツの政権下でユダヤ人の迫害を目にした大統領はシオニズムを支持し、これをトルーマン大統領が継承した。戦後アメリカの主導で設立された国連は、1947年11月29日にイスラエル国家の設立を認める議案を可決した(国連決議第181号)。翌日、バスがアラブ人に襲撃され、ユダヤ人乗客7人が死亡した。12月7日、アラブ諸国の有志たちが結成したアラブ連盟が世界に向かって「ジハード」(聖戦)を宣言した。国連までもがイスラエルの側に立つというのなら、アラブに残された手段は武力闘争(テロ)しかないのだ、と世界に訴えた。ブッシュ政権の新外交は、この宣言の上に築かれたその後の半世紀にわたるパレスチナ問題の中に登場したわけだが、これがどのような事態を生み出すか、今は予断を許さない。

2002年6月24日、アメリカがパレスチナ国家の樹立を認める代わりに、アラファトを追放せよ、とブッシュ大統領はパレスチナ人に迫ったが、これは22、23日の両日にエルサレムで起きたテロ(ユダヤ人26人が死亡)犯たちに、資金を提供したのはアラファトだったとするCIAの情報を受けての大統領の決断だった。アラファトと言えば1959年、カイロ大学在学中に「ファタハ」を組織し、以来、一貫してテロこそが問題の解決になる、と考えてきた指導者だ。現在でこそパレスチナ暫定自治政府の議長だが、アメリカは彼の過去を忘れていない。これはイスラエル大統領シャロンにとっても同じだ。2001年2月6日に大統領に就任して以来、彼はアラファトの追放を主張している。だから、パレスチナでは今回のブッシュ政権の提案は、イスラエル寄りすぎるとの反発が早くも噴き出した。さらに、パレスチナ国家の樹立ということは、同時にイスラエル国家をパレスチナ人が認知するということでもあり、これはそもそもイスラエル国家の建設そのものが不正だと考えるアラブ・テロリストたちには容認できない。要するに、パレスチナ人から見れば、ブッシュ提案は完全にイスラエル寄りなのだ。

一方、シャロン大統領にとってもブッシュ提案は受け容れがたい。というのも、初代大統領のベングリオンを尊敬する彼は、国境線をあえてあいまいにする、というベングリオン戦略を今も踏襲しているからだ。自爆テロを受けた後、アラブ人地域に報復攻撃をかけ、そのままイスラエルの領土にしてしまえ、というのが彼の基本の政策にある。ひたすらユダヤ人のための領土拡張戦略だ。イスラエル国家建国以来続くこのようなパレスチナ問題に、戦後アメリカのどの歴代政権とも同じくブッシュ政権も巻き込まれ、新提案を行ったわけだが、おそらくイスラエル、アラブのどちらもブッシュ提案に乗らないだろう。(乗った振りを示すだろうが、最終的には同意しないだろう)。すると、当然パレスチナ問題におけるアメリカの影響力の低下ということになるが、これが「テロ戦争」にどのような作用をするか。小泉首相は即座にブッシュ政権のパレスチナ新外交の支持を表明したが、私たちはここで少し立ち止まって、パレスチナ問題と「テロ戦争」の関係をよく考える必要があるだろう。これは、アメリカがそう決めたから、日本も、「はい、そうします」とばかりに態度を決めることができるような、そんな安易な問題ではない。アメリカにはアメリカの歴史上の行きがかりがあるが、日本にはないのだ。

「テロ戦争」そのものは、アメリカ本土が攻撃を受けた以上、アメリカの自衛権を尊重して世界がアメリカの戦争行為を容認するとしても、大儀の問題はどうか。「テロ戦争」を振り返ってみれば、あの世界を震撼させた自爆攻撃があったあと、ビン・ラディン氏がテレビにビデオ出演し、テロ側の大儀を語った。これはアメリカに対する「ジハード」である、と。冷戦が終わった後、イスラムの聖地メッカにアメリカ軍が駐留するのは許せないし、そもそも1920年代にパレスチナ問題が発生したのはイギリスのせいだ、と。その時彼は、日本人の耳をそばだてることも語った、アメリカのせいで日本は長崎、広島を経験したではないか、と。

これらのビン・ラディン氏の言葉、彼の大儀を私たちはどう考えるべきか。彼の中では「同時多発テロ」とパレスチナ問題は結びついている。ともに「ジハード」なのだ。さらに、ことによると、太平洋戦争での日本の敗北も結びついているのかもしれない。これらの共通点を探せば、すべてアメリカが係わっている、ということになるからだ。では、アメリカの何が「ジハード」の対象になるのか。

私たちは、ここでまさにアメリカの大儀そのものに注目してみよう。ブッシュ大統領は将来アメリカ軍の中核を担うことになるウェスト・ポイント卒業生たちに向かって、アメリカの大儀を説いた。アメリカは自由と開かれた社会を世界に広めねばならない、と。ブッシュ大統領のこの確信はどこから出てくるのか。そして世界はブッシュ大統領の確信、すなわちアメリカの大儀を受け容れるのか。

戦前、ドイツ系ユダヤ人だったレオ・シュトラウス氏はドイツ国内でナチスが台頭するのを恐れて、アメリカに避難した。アメリカが自分を受け容れてくれたことに感謝し、彼はアメリカ社会の特徴を賛美した。1953年にシカゴ大学で行われた「マキャべリ講義」の中で、アメリカ人がアメリカを「特別な国」と自認するのはなぜなのか、その理由を明確に説いてみせたのだ。マキャべリによると、歴史上、大国になった国の起源を辿ると、必ず近親者殺しがあった、ということは、つまり国家の起源は罪にある、となっているが、アメリカはこの原理にあてはまらない唯一の国である、と。

「アメリカの独立は、政府という原理と、その実践による革命によって達成されました。すなわちアメリカの建国は、自由と正義(ジャスティス)に基づいて行われたのです。・・自由はアメリカだけに妥当するというのではなく、アメリカはまさに全世界の自由の砦となったのです。・・マキャべリ主義とは反対にあるもの、それがアメリカ主義なのです。」

(レオ・シュトラウス『マキャべリの思想』シカゴ大学プレス1978p.13)

西洋の政治哲学史を振り返ると、ホッブス、ロックの社会契約説が出現したあとになって政府の起源を考察した18世紀のイギリス人デビッド・ヒュームでさえ、マキャベリに共感して、すべての政府の起源は暴力にあると説いたのに、レオ・シュトラウス氏のアメリカ賛美を見ると、そこには隔世の感がある。だが、このアメリカ賛美がそのまま現在、全世界に通用するか、と言えば、どうか。

プーチン大統領とブッシュ大統領がはじめて会ったときの面白いエピソードがある。まだ「同時多発テロ」が起きる以前のスロベニアでのこと。冷戦が終わったとは言え、戦後、世界の2大超大国として長く対立した両国の指導者である両人、緊張したまま顔を合わせ、言葉を交わした。以前KGB(ロシア秘密諜報部)の一員だったプーチンがブッシュに尋ねる、「あなたの父上は、確かCIAで仕事をされていたんですよね?」。ブッシュはこの質問の意味をしばし考えあぐねてから、返事をした「そうです。でも、アメリカの制度では、中央情報局の長官といえども、大統領の任命で決まります。決してスパイなんかではありませんよ。」今度はプーチンがしばしポカンとする番だったという。

このプーチン大統領が「テロ」直前まで傾倒していたのがアレキサンダー・ドュ−ギン氏の唱える「ユーラシア主義」だった。アメリカの大儀に真っ向から挑戦するものであり、ロシアのアイデンティティーはことごとくアメリカに逆行することで成り立つ、という、地政学上のとんでもない理論だった。そしてそれはロシアの歴史に由来した。 (続く)

http://www5d.biglobe.ne.jp/~uedam/ame0207.htm

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