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アメリカの戦争について
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投稿者 N.H. 日時 2003 年 3 月 19 日 18:52:01:

アメリカの戦争について           N.H.

あくまで筆者の仮定による独断ではあるが、おそらく「アメリカは、イラクと本格的な戦争をするつもりなど初めからない」。当然、大規模な戦争にはならない。イラクも全面的なバクダッド攻防戦を行うことはないだろう。両者ともに何の利益にもならないことである。

アメリカの広範でかつ多面的な中東戦略、全地球的な戦略から導き出された意図のもとに、すべての行動計画が定められているはずである。本となる戦略の全面的な変貌があったわけではなく、時を追ってテロ報復戦争から予防戦争へ、そしてイラク攻撃へと石油戦略上の戦術の発展があったと考える。

情勢の変化の分析という立場に終始すると、その時々に見方を変えねばならなくなる。その時々の両者の反応に憶測をなし、分析に奔命するばかりでは定まることがない。また行動の一つ一つにそれらしい理由付けと過度な深読みが必要となる。多くの場合一つ一つの行動の理由を知ることなど、外部からは不可能であり憶測の範囲にとどまる。姑息な個々の詮索を控えもっと大所から全貌を捉えることが必要と考える。当事者として考え、その真の意図を探ってみると、現在のアメリカの行動は冷静に機を捉えて策定された戦略に由来するものと思う。

アメリカの戦略は、アメリカ国家の国益のために策定される。では最終的に世界の輿論を敵とせず、国益を最大限に引き出すべきアメリカの戦略とは何か。もとより望むべき果実を手に入れるという目的を貫徹するための戦略方針を策定するには、数多くの要素を考慮しなければならない。

目的とは、アメリカの言う対テロ先制抑止、また世に言う隠された意図、アメリカの石油戦略等々、おそらくすべて含まれている。単一の理由などということはありえない。国家安全保障、石油戦略、大統領選勝利、国家の基幹産業たる軍需産業の梃入れ、国防予算の拡大、滞留武器の消化、テロ未然制圧、ドル体制の堅持復権、資金流入、国内景気対策、対ユーロ防衛、朝鮮半島対策、中東中央アジア制圧、パレスチナ紛争対策等々。地球を覆うアメリカ一強政策の貫徹のための、これらの課題を一挙に達成すべき戦略が構築されていると考える。

これは目的として歴史を変える戦略である。時とともに淀んだ状況を脱却するには、課題の逐次改善、個別対処は総体が大きくなればなるほど効果は薄く浅いものである。ただ時勢の流れに乗ってその善なるもののみを残す大改革か、もしくは時の勢いを得て善悪もろともに一挙に断ち切る大鉄槌によってのみ可能となる。

歴史上、各世紀また各地域においてはその覇権勢力の欲求を賄う限界点が存する。覇権攻防の様相のみならず、近代においては、すでに産業社会は地球規模の限界点に近づきつつある。いまだ無事の時にして、すでに臨界点を見せつつあるというのが現今の状況である。

それを最も体現しているのがアメリカであり、したがってその打開を最も必要としているのがアメリカであるといえる。まず危機感から発し、身を守ることから攻勢攻撃へと転ずるアメリカの伝統である。産業国家としての衰退、ドル体制の終焉、国内に内包する自壊の兆しに直面するアメリカの、今にいたって現実となった世界一強国家としての意思の発動である。

それが世界戦略全体の一環としての、アメリカ主体の「イラク無血制圧戦略」の策定であると考える。無血制圧であることが必須の条件である。また即戦せずに世界中を巻き込むこと、多少のあるいは多大な戦闘実験を伴うこと、さらに事前の反戦の声だけではなく、事後の世界中の賛同の声を伴うことも必要である。すべての手立てがこの実現に向かって施されているものと考える。大規模な戦争となれば、アメリカの戦略の躓きである。

歴史の常として、外部圧力による御破算、さもなくば戦争戦略の実行こそが、諸々の雑音を消し、すべての局面を変えることが出来る。問題の各個対処はなんら解決に繋がらない。各個撃破ではなく一挙粉砕でなければならない。現在の世情からは理解不能なことだが、良し悪しは別として戦争戦略がこれを可能にすることは、残念ながら歴史の事実である。

実際考えてみれば分かるとおり、ちょっとやそっとのことでは世界全体を動かすことなど出来ない。もし差し迫った事情があり、行き詰まった現状を打開しようとすれば、戦争戦略以外にはない。極度の緊張を引き起こさなければ、一気に局面を転回することなど出来ないはずである。又異常事態を外圧として利用できれば、またとない機会となるであろう。

「戦争戦略」なかんづく「不戦攻撃」「無血制圧」戦略は、一挙して地響きを立てて標的のみならず大地を揺り動かし、他の諸々の懸案を薬篭中に収斂させることができる。目的は世界戦略、標的はイラクで、危険のない理に適った機略である。したがって制圧の後に掌握する政権の継承者も、どのような者でも利用するだけであり問題とはならない。イラクのことも単なる始まりに過ぎないのだから。大規模実戦では、蜂の巣をつつくような騒乱と効果の分散を招き、天に唾する因果を招来する。

もしそのとおりであれば、アメリカの政権首脳の長期にわたる性懲りもない飽くなき挑戦姿勢の持続、日本人には信じられないほどの戦争に対する固執も、計画に従ったシナリオどうりの振る舞いであり、さほど違和感なく眺めることができる。強固な所信表明の多様性、千変万化な行動も、さほど驚異ということもない。

もし政権内部の深刻な対立などがあれば、当然このような姿勢を長期に取り続けることが出来るはずもない。事実は、すでに定説となっている政権内の深刻な対立などではなく、手法の違い程度のものであり、一枚岩の態勢でそれぞれが割り当てられた役目に応じた分担を振舞っているのであろう。また個人の力などで大勢を動かせるものではなく、それを期待することは間違っている。

またアメリカの強行姿勢の陰にキリスト教原理主義、あるいは黙示録的な陰謀の意思を感じ、その線からの憶測を付する向きもあるが、そのためには一糸乱れぬ統制が必要になる。小数の上層部の合意だけで十分とも見えるが、それほど一致団結しての邪悪な仮面に根ざして糾合し続けることには無理がある。

さらには闇に覆われた秘められた意思の下に広汎な政権が奔走するには、明確な不抜のメッセージと集団的な狂信が必要であって、これにも無理がある。国内諸勢力の角逐、宗教諸派の政権乗っ取り等、看過できぬ要素も存在するが、もしこれに一辺倒になれば、一貫した広壮な戦略をとることを想定することはできない。

宗教国家アメリカの国内事情およびその発する声明に神の加護への言及が多いことからもこれらの憶測を生んでいるが、己の正当性の主張の根拠は常に神意もしくは正義の我にあることから発せられるから、これをもって直ちに異とすべきものではない。

アメリカによる自作自演などという風説は、戦略の名に値しないみすぼらしい妄想の所産である。魑魅魍魎の跋扈する情勢であるが、これ以後はかえって陰謀論など影をひそめざるを得なくなるほどの展開となるであろう。

もとより単一の理由などということはありえない。あらゆる利害得失を考慮して、できるだけ多方面の効果を同時に融合して取得する戦略を決定するはずである。これほど広汎な国際世論を喚起し、世界中を巻き込む戦争準備体制を発動するからには、そうしなければならない抜き差しならない理由があるはずである。それゆえにこそ、戦術においては多岐にわたり、時々に変更を加えて実行するが、その本戦略は起死回生の一挙でなければならない。

政権発足以前からの動き、戦略発動の大いなるきっかけと動機とがあったことは事実である。単に今に始まったアメリカの国家安全保障、対テロ作戦、石油戦略のためと規定してはならぬものと思う。もっと総括的で広範なアメリカの国益のための明確な戦略による戦争準備体制だろうと思う。アメリカの安全、繁栄を前提としたさらなる闘いに継ぐ闘いによって切り開く、新たなパックスアメリカーナ敷衍戦略である。すなわち次々と新しい敵が必要な闘いの連続である。作り出される勝利すべき敵としてのアラブイスラムから、中国ロシア、さらに欧州へと転移し席巻する,戦火なきあるいは戦闘のより少ない継続する20年戦争戦略である。もとより一代の指導者により遂行されるものではありえない。

まさに太平洋戦争における国力総動員のように、戦略を立案し実行することと思う。むやみに戦争を仕掛けたいが、国際的な合意を得られぬまま遅延し躊躇しているわけではあるまい。おそらくそれが世界誘導戦略そのものだろうかと思う。

現在、世界にはアメリカに対抗できる国はないので、国連や国際輿論も顧慮せずに自国の力を行使できる。そのために世界の人々の己を見る視線に気づかなくなっているのではないかという懸念が蔓延している。しかし通常の我意のごり押しの時ならばいざしらず、今はあまりの非常事態である。アメリカが至るところにひしめく反感危惧の気配に気づかぬはずはない。気づかないとすれば狂っており、いかんともしがたい悲惨さではあるが。

アメリカ政権内部から、世界の反戦運動の高まりに対して非難、恫喝が発せられ、この運動に対して己の正当性を喚き返したという話は聞かない。ただ一貫して、広く内外全般に対して己の正当性を疑問の余地のないものとして声明を発するという態度に終始しているのみである。

これは気づいていて無視している、あるいはこれを利用し、煽っているものと考える。世界中で大いに騒いでもらわなければ、大事にはならず,即時開戦しなければならず、成功時に大きな賞賛が得られないからである。開戦のトーンが高ければ高いほど、開戦の遅延が長ければ長いほど、反対が多ければ多いほど、不戦時の安堵と賛辞は大きいのである。

成功裡の収穫は大きくなり、影響は雪崩をうって遠く波及し、事後の施策はスムーズとなる。したがって戦争の可能性があるうちは開戦はせず、戦争の可能性がなくなって始めて開戦することとなるであろう。事後の布石こそがその狙いの要であり、また世界が開戦の遅延に飽きあきし、反戦に倦んで急速に関心を失うことがこの戦略の急所である。

本当に戦争がしたいのなら、とっくの昔に実行しているはずである。なにしろ現在はアメリカのやりたい放題の世界情勢なわけだから。これはすでに戦争とはいえない。戦争にいたる過程の効果こそが重要事なはずである。戦いは拙速を尊び、長引きそうなばあいは作戦中止撤退が原則だから、遅延は致命的であり、アメリカがこれを過去から学んでいないとは考えにくい。そんな悠長さで、真に敵を撃滅すべき戦争など出来るはずもない。

実戦となれば、威嚇してから急襲する電撃戦が定法と今では知られている。戦争の遅延は、すなわち遅延戦略であろう。密かに準備し自己に最も有利な機を捕らえて行うべき戦争を、最も困難な態勢になるまで待つというのは暗愚な指導者による敗戦必至の体制作りというべきである。計画、組織作り、戦略実行を優先する国家のすることではない。戦争を避け、相手を承伏させる有効な手段は、威嚇、恫喝し続けることである。つまり現在の状態である。「アメリカは戦争するつもりは初めからない」のである。

湾岸戦争はベトナム戦争などとは異なっており、本当の戦争ではなかった。一種の威嚇戦争にとどまっている。今回はさらにそれ以前で、戦争というより戦略の実行という方が妥当である。成功すればアメリカはそれ以上の成果を得るであろう。意思の存するところ法はこれに従い、戦争への声価と果実は実行に伴って追ってくるものである。

今回は戦費調達も心配しておらず、かえって莫大なお釣がくるものと確信しているはずである。これによりアメリカは世界を敵に廻すことなく果実を手に入れ、台頭するユーロ圏、大陸諸国を抑え、山積する内憂を一掃することをもくろみ、決意しているはずである。

またこれは日本経済にとっても追い風となる。ただし何も知らぬままアメリカの属国に甘んじている限りにおいてではあるが。真に独立の気概、戦いの覚悟のない間は、人の言うなりになるしかないはずである。意思の存せざるところ法はこれに従わず、声価と果実もまた空き巣狙いのみとなる。知らせる必要のない味方には、政権内であれ同盟国であれ知らせる必要はないのである。必要があれば、敵側であっても知らせるのである。

ただ北朝鮮に対する対応には、戦略的には変化はないものの、相手の巧緻な外交のゆえに態度を変えざるを得なかった。なぜなら、現在のところアメリカには朝鮮半島で打つ手はないからである。このことは戦略家たちならば、ほとんど自明のこととして有する認識である。大国が、負けるにきまった戦などするわけにはいかないのだから。北朝鮮も、アメリカの朝鮮半島戦略の心底を見抜いているのだろうと思う。決して破れかぶれの半狂乱どころではなく、冷徹にそれから最も遠い位置にいると考える。

アメリカの朝鮮半島からの撤退などは、韓国は望むかもしれないが、北朝鮮が望むことは決してないであろう。それこそが力の空白を避け、崩壊もしくは戦争を避けた自国主導政権への唯一の道だからである。北朝鮮に対して、イラクの次はお前の番だとも言われているが、緊張が高まりつつあれば、自己崩壊ということはありえない。世界中が平和になれば、自壊の到来である。放っておいても崩壊するといわれているが、いかにひどい体制であっても、それだけで容易に自然崩壊するということはありえない。

国家と国内体制は別である。国家を揺るがす変動は、対外的な要素とあいまって起こりうる。国家はいかに衰退しようとも、内部の限界を超えて存続しうるし、また一時的に外部の圧力によって内部が団結することもありうる。一気に自己崩壊することも各国の望むところではないだろう。また少なくとも指導層のみならず国民においても共有する民族の正統性の自負、価値観があればなおさらのこと内部崩壊ということはありえない。この正統性の認識は、イスラム社会の伝統にも匹敵する価値観としての力を有するのである。

次とはすなわち北朝鮮主導による半島の統一であり、米軍駐留の不変、アメリカの東アジア戦略の始まりである。これこそが北朝鮮の思惑にも合致するものである。米軍の存在が朝鮮半島の緊張の源泉だが、東アジア全体からみればそれが戦乱抑止の楔でもあったわけである。次の攻撃の対象は北朝鮮だなどとは悪い冗談だ。アメリカにとって何の得にもならない。一発の銃声も起こることはないはずである。北朝鮮のこともまた足がかりに過ぎないのであるから。また当事者能力のない日本を攻撃するなど、最もいわれのない笑うべき心配事である。もし北朝鮮が核をすでに保有していたとしても、そうなれば喜んで廃棄することであろう。

ただ今のところ、当事者にとっては生き延びなければならないというのっぴきならない現状と将来である以上、戦・非戦いずれにしろ知力を尽くして延引策を講じているはずだが。否定的な意味で瀬戸際戦略と言われているが、五十年前から追い詰められているわけだから、今に始まったことではなく、ずっと当然のこととして瀬戸際外交であったはずである。

世界の最強国家を相手に廻し、蟷螂の斧を振りかざして対抗し、優勝劣敗の現実の只中に生き延びてゆくには、それ以外に道はない。どこに無闇やたらと正面切ってアメリカに反抗し罵倒する馬鹿がいようか。常に相手の顔色をうかがって駆け引きをするしかない。

アメリカはどうかしてしまったのではないかという声は誤りだろうと思う。しかし冷徹な戦略の下のシナリオどおりに行われるからといって、それが正しいというものではないし、自分勝手ではないともいえない。アメリカの国益のための戦略に違いないからである。自らの利を得るために他者を制圧し踏みにじって省みないという姿勢が邪でないと言えるはずがない。強国の傲慢などではなく、強国の必死の姿である。しかしそれが古来からの各国国益の闘争場裡の常態である。戦略と変革の決意に基づく国家アメリカの真骨頂である。

アメリカはイラクを放置することを、第二次世界大戦のナチスに対する宥和政策の誤りに例え、その轍を踏むことなきための未然の先制攻撃と主張するが、実際はこれとは相違する。これはすり替えとごまかしの理由付けに過ぎない。なぜなら当時、ヨーロッパではナチスの爆発を恐れて宥和したのだが、今は未然に制圧すべきイラクの横暴を世界が恐れる理由はない。イラクをナチスに見立てているわけだが、逆に世界の多数の人々が恐れるのは、正義の執行者たるはずのアメリカの暴走の方だから。

アメリカにこの矛盾と世界の人々の声が聞こえていないはずがない。それこそ日夜世界中の声を聞き取っているエシュロンの元締めなのだから。アメリカのやりたい放題の世界情勢だが、しかし現今、あからさまな侵略、占領、世界輿論、国内世論を無視しての横暴が許されないことは、当然アメリカ政権内でもわからぬ者などいよう筈もない。

何がアメリカを戦争に駆り立てているのかという疑問の声も、知らぬはずはない。近代の戦争は侵略戦争といえども、常に輿論の後押しを受けて行われているのが実際である。逆にこれを予期し、戦争実行の延引に利用しているのだろうと思う。目的に適い、またそのほうが効果はいっそう大きいだろうからである。

確かにこのようにすべての情勢の展開を戦略によるものとみなすことには無理もある。戦略執行者達を世界秩序を確立してくれる善意の人々と見立てて、ユートピア的な夢を託しているわけではない。世界中の諸々の勢力が、独自の思惑に基づいて蠢動し情勢を変化させていることは事実だからである。またすべてを合目的な意図と雄渾な意思のもとにあると断ずるのは楽観に過ぎる懸念もある。それ以後の長期にわたる情勢がどう変化してゆくかは予断を許さぬことも間違いないことだから。

この時にあたって、これほどの事態を自ら惹起するには、もとより猶予を許されぬ、のっぴきならぬ差し迫った事情が存している。しかしその隠された背景というものはあるはずだが、戦略国家たるアメリカが、みすみす誰から見ても、世界のみならず自国にとっても壊滅的ともなる方途を選ぶものであろうか。

政権を取り巻く多くの人々は、馬鹿でも気違いでもない。逆に最も利にさとい抜け目のない怜悧な人々である。最も利にさとい人々が、一人としてこのことを知らぬはずはないであろう。勝利とは戦闘のことばかりではない。輿論の賞賛を得なければ、また勝利の果実が得られなければ真の勝利とはなりえない。繰り返すが、近代の戦争は侵略戦争といえども、常に輿論の熱狂的な後押しを受けて行われているのである。

イギリスの不可解で忠実なアメリカ追随、ドイツの豹のような突然の反抗姿勢、フランスの及び腰の強気、ロシア中国の柄にもないスマートな日和見など、各国の国益の主張も、暗黙のメッセージ交換あるいは由無し言のように、世にも妙なものである。まさに状況は変わっても、20世紀各国列強の角逐そのものである。

またまさに恐惶に陥る以外なすすべもない状態にしか見えないのに、悠然というか悠長というか、断絶することもなく延々と外交、攻勢を試みているイラクと北朝鮮の態度は想像の外である。さらに奇妙にも敵対国に長年にわたって援助したり、今にも戦争をしようかという敵国同士が戦力物資を売買する、あるいは攻撃されそうな火事場で油権をあさる国がある。日本の短絡思考から見れば虚々実々、世界情勢は複雑怪奇な様相である。

第二次世界大戦当時は、動乱の狭間にあるときであった。いまはもろもろの潜在的な脅威が積み重なっているとはいえ、世界全体としてはまだ、いわば無事のときに見える。また資本主義の論理の帰結、軍産複合体体制の必然的な帰趨というには、いまだ機は熟しているとは思えない。

しかし行き詰まった現状という認識がアメリカにある。地球が狭くなり、瞬時に情報が行き渡り、利害が相互依存的となってくるに従い、世界の統合化、平和が近づくというわけのものではない。逆に行き詰まりと閉塞感が世界を覆うのである。今の時にあたってアメリカを突き動かしているのは、目先のエネルギー事情などではなく、現状の打開であろう。

それが個々の地域に対するものではなく、アメリカによるアメリカのための世界の近代化の挙であり、日々の暮らしに埋没しつつ知らぬ間に異常な世界に住する、いまだ眠れる世界を覚醒する戦略である。欧米の常道である、宣伝〔宣教〕に次ぐ進軍、これに続く商人達という構図があることはもちろんのことである。

いやも応もない世界のアメリカ化である。アメリカによる福音の宣布である。単に各国の角逐、覇権の問題ではなく、文明の問題である。更なる産業社会化の推進という文明観の問題である。破壊の後の建設という資本主義の常道から、より少ない破壊によるより速く広い産業社会化の推進を目指すものである。国内産業の空洞化はさほど問題とはしていないはずである。

それが人類にとって良いことかどうかは疑問であるが。最も好ましい各国各民族の棲み分けという在り方は、世界人口の増加によってすでに不可能となっている。またそのようなことはアメリカの志向、創造図の中にはありえない。盈れば欠け、塞がれば破れる歴史に、いまだ人類の未来図はない。今、アメリカの青写真をその上に敷こうとしている。

したがってこれから起こることはほんの序の口に過ぎず、以後の長期にわたる戦いの始まりに過ぎない。福音の伝道という地をならして驀進する意思の前途は遼遠であり、国連や世界の輿論などが押しとどめられるものではない。今は大規模な国家対決の戦争の時代ではない。世界が巻き込まれざるを得ない大規模な騒乱には、今しばらくの時間と、各国国益の死活的な情勢の緊迫化が必要かと考える。

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