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中前国際経済研究所:戦後イラクの占領統治論争 ―イラク新国家建設は傲慢な行為か― [英FT2・28記事]
http://www.asyura.com/0304/war29/msg/797.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 3 月 31 日 22:01:42:


http://www.nier.co.jp/kijikanri/choryu/choryu-00494.shtml

 イラクでの戦争はまだ始まっていない。にもかかわらず、サダム・フセイン体制の終焉が近づいているとの観測がワシントンで高まっているため、イラク論争はすでに戦後のイラク国家建設に向けて動き出している。だが、新国家建設に関するアメリカの歴史的経験は楽観論を提供しそうにはない。

 カーネギー財団によると、アメリカの新国家建設の成功率は30%以下である。過去100年、アメリカは軍事力で18の体制を転覆させたが、民主主義的統治が浸透したのは、ドイツ、日本、イタリア、パナマ、グレナダの5カ国である。成功例5カ国のうち4カ国(パナマは例外)は米国一国ではなく、多国間の強調により成し遂げられた。18カ国目のアフガニスタンについては、審判はまだ下されていない。

 戦後のイラクの新国家建設がもっと難しいものになるであろうという点では、専門家の意見が一致している。20余年に渡る抑圧政治の後、サダム・フセイン体制の終焉は恨みの晴らし合いという悪循環になり得るとの不吉な予測もある。イラクは崩壊した国家でも、内戦を経験しているわけでもない。だが、戦後の国家再建に対する性急なアプローチは国家の崩壊と内戦の両方を生み出す恐れがある。

 イラクの過渡期についての報告書を出版した、大西洋協議会のネルソンによると、イラクの平和を樹立するには三つの事柄が解決されなければならない。国内における権力分配、石油、そして近隣諸国との関係である。これら三つは互いに絡み合い、イラク国内の至るところに複雑な問題を引き起こしている。それが収斂した場所が、キルクークである。

 キルクークはイラク北部の豊かな油田地帯の中心で、キルクーク市とその周辺地域はクルド人、トルコマン人、アッシリア人が居住し、アラブ化されている。北部イラクの2つの主要なクルド人義勇軍、クルド民主共和党(KDP)とクルディスタン愛国同盟(PUK)にとってキルクークの石油は偉大な贈り物である。

 だが、イラク北方の隣人、トルコにとって、クルド人のキルクークの支配は受け入れられそうにない。キルクークの石油収入がトルコ域内にまたがるクルディスタン(トルコ、イラン、イラクに渡る高原地帯)のゲリラ資金を賄うとの恐怖心があるのだ。仮にクルド人がキルクーク乗っ取りの兆候を示せば、イラク国境に集結しているトルコ軍が進撃してくると、イラク北部のイラク人は予想している。

 エクセテール大学のスタンスフィールド氏は、キルクークをトルコやイランといった外部からの介入を招きかねない、また少数異民族間あるいはKDP、PUK間の内戦すら起こし得る“罠”と呼んでいる。現実には2つのクルド人グループは両者間の確執を止め、公的には独立クルド人国家という野心も抑え込んで、現在の国境内部での連邦イラクを支持する、と主張している。

 バクダッドでの体制転換はクルド人にとっては明暗両様の祝事であろう。91年以来、米英の空軍力に守られて、彼らはバクダッドから自治を享受しているし、97年以来、イラクの石油収入の17%を受け取る国連の石油・食料交換計画の導入で、経済状態は改善している。「我々は享受している自由の幾分かをこれから失うかもしれない。しかし、状況は持続不可能である」とKDPのジバリ氏は語っている。

 予想されるサダム・フセイン打倒の戦後、イラク国民が自らの国の情勢に発言権を持つのが一体いつなのか、はまだ見当もつかない。米国政府高官がイラク侵攻後の国家再建計画を語り始めたことで、問題は一層不透明になった。

 この計画によれば、人道的作戦、文民政権、戦後イラクの再建などは、まだ匿名のアメリカの民間人に任せられる見込みだという。退役将軍のジェイ・ガーナーが、平和維持活動や大量破壊兵器の発見といった安全保障の任務に当たることになる軍と、このアメリカ民間人の暫定統治者との仲介役を務めることになるだろう。

 国際援助機関は、対イラクの援助努力が軍事作戦と密接に結びつきすぎているとして、米国の戦後イラクの青写真に怒りを募らせている。米国の対イラク援助計画の主な柱は、62人のDartチーム(戦後の長期計画が動き出す以前の初期段階で、米軍と人道的援助機関との主要な仲介役として活動する短期の戦後再建計画を練るチーム)となる見込みだ。

 「我々は国連の介入をより期待したい」と国際救済委員会の担当官は言う。「米軍の役割は人道的救済活動で主役を演じることではない。米国市民チーム、市民救済機関がイラクでの人道的使命を果たせるよう初期的な安保体制を構築し、人道的支援の場を確保し、さらに彼らに情報を提供することだ」と語るのはNSC近東北アフリカ局長である。

 ペンタゴン高官は、イラクのインフラ施設や一般市民への深刻な被害を回避するために、軍事作戦の計画者たちが潜在的紛争地点を結合する作業に何週間も費やしていることを強調する。米軍の努力は、戦闘部隊の立ち入り禁止区域を何箇所も設定する “人道的マップ”を開発したほど仔細であると安全確保作戦の司令長官は言う。

 政権内部で熾烈なイラクの戦後再建計画論争があったことは、米国政府高官も認めている。「サダム以前をどう処理するのかと同じように、サダム以降をどう処理するかについても多くの異なる意見があった」とワシントン在住のあるイラク亡命者が漏らしている。最終的にブッシュ政権は、亡命者のなかのイラク野党は、ポスト・サダムの文民政権を作る力を持たないと判断したようだ。そのかわり、野党にアドバイザー的役割を果たすようにと求めている。

 しかし、イラクへの長期軍事駐留という考え方は、米政府高官の目には魅力がないようだ。陸軍参謀総長シンセキ将軍が、イラクを占領するには数十万人の連合軍が必要だと示唆した。これに対して、国防副長官ウォルフィッツは「我々は、91年秋には北イラクから完全に米軍を引き揚げた。それ以来12年間、地上軍を駐留させていない。しかも、イラク北部の三分の一は依然安定している」と語っている。

 ワシントンは依然、イラクが数年間、大規模な軍隊を再編成しないと期待しているようだ。ホワイトハウスのポスト・サダム問題の担当官バリザッド氏はイラク新政権の将来の役割についてパチャッチ元外相と折衝している。しかし、他の人々は、そのような楽観主義は根拠がないのではと恐れている。平和研究協会のジェニングス氏は「国家を解放するために、国家を占領して新国家を建設するようなことは、本質的に傲慢な行為である」と語っている。

(英フィナンシャル・タイムズ2月28日)

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