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【JMM】イラク復興事業と日本
http://www.asyura.com/0304/war31/msg/1153.html
投稿者 愚民党 日時 2003 年 4 月 14 日 21:59:22:

                             2003年4月14日発行
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JMM [Japan Mail Media]                 No.214 Monday Edition
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                           http://jmm.cogen.co.jp/
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▼INDEX▼

■ 『村上龍、金融経済の専門家たちに聞く』【メール編:第214回目】

■ 回答者(掲載順):
  □真壁昭夫  :エコノミスト
  □山崎元   :UFJ総合研究所 金融本部主任研究員 兼 企業年金研究所取締役
  □津田栄   :エクゼトラスト投資顧問株式会社 顧問
  □杉岡秋美  :生命保険会社勤務
  □菊地正俊  :メリルリンチ日本証券 シニアストラテジスト
  □三ツ谷誠  :三菱証券 IRコンサルティング室長
  □北野一   :三菱証券 エクィティリサーチ部チーフストラテジスト

■ 『編集長から(寄稿家のみなさんへ)』

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 ■ 先週号の『編集長から(寄稿家のみなさんへ)』
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 Q:404への回答ありがとうございました。今週は、小説執筆と歯痛のため、
 このエッセイを書くことができませんでした。

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■ 『村上龍、金融経済の専門家たちに聞く』【メール編:第214回目】
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====質問:村上龍============================================================

Q:405
 イラクの戦後復興事業は、世界と日本の経済にどのような影響を与えるのでしょう
か。まだ戦争が続いているのに不謹慎な話題ではありますが、復興需要は日本の民間
企業にもあるのでしょうか。

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※JMMで掲載された全ての意見・回答は各氏個人の意見であり、各氏所属の団体・
組織の意見・方針ではありません。
______________________________________

 ■ 真壁昭夫  :エコノミスト

イラク戦争後の復興事業は、今後の戦闘の広がり方にもよるでしょうが、一般的には、
かなり大きな規模になると考えられています。ある試算では、その規模が全体で10
00億ドルに上るという見方があります。1,000億ドルというと、邦貨換算で約
12兆円ですから、そのマグニチュードが分かると思います。イラクの復興事業につ
いては、その規模と同時に、イラク自身が有力な産油国であるという特殊事情もあり、
世界の主要国から注目を集めています。

多額の復興費用については、主要国の援助、フセイン政権の資産、さらには、原油輸
出代金などで賄うことが容易と見られているようです。そのため、復興事業が本格化
すれば、世界経済に対しては大きな需要の創出として、景気刺激要因になることが期
待されています。しかも、イラクの復興事業は、道路や港湾施設の整備などを通じて、
原油輸出に関連するものが多く、それによって原油輸出量が増加することが期待でき
るでしょう。

イラクの原油輸出量が増えることによって、原油価格が安定化することも想定されま
す。これは、原油などのエネルギー消費量の多い米国など、主要国の経済にとっては
大きな福音になります。イラクはもともと、サウジアラビアに次ぐ世界第2位の原油
埋蔵国といわれています。確認されているだけでも、1,125億バーレルの埋蔵量
があり、これは世界全体の埋蔵量の10%程度を占めている勘定です。

これだけの埋蔵量をもっているイラクですが、今まで、湾岸戦争や経済制裁の影響で、
実際の原油生産量はかなり落込んでいます。原油の1日あたりの産出量は250万バー
レルと、サウジアラビアの3分の1程度になっているといわれています。復興事業で
イラクの原油生産量が増加すると、現在、サウジアラビアが主導しているOPEC体
制に、目立った変化が起きるほどの影響力があると見られます。イラクの復興事業の
進展は、原油価格の変動要因としても、今後の世界情勢にとって大きなファクターに
なる可能性があると思います。

そうした復興事業をめぐる主導権争いが、主要国の間で表面化しています。米国のパ
ウエル長官は、議会の公聴会で、実際に戦闘に係わっている米英などが、復興事業の
中心的役割を担うべきだと指摘しています。また、米国の国際開発局は、イラク復興
のために24億ドルの資金を投じる考え方を示しました。そのうち、道路などのイン
フラ整備には、主要契約先を米国企業に限定することを示唆しているようです。

一方、ドイツ・フランス・ロシアは、国連主導の復興策を目指すべきだとして、米国
主導の復興策を強くけん制しています。これらの国の首脳陣は、最近、イラク戦争の
行方が少しずつはっきりしてくるのに従って、フセイン政権後の状況を考えた発言が
増えているようです。今後、米国との間で、激しい主導権争いが現実化する可能性が
高いと思います。特に、フセイン政権下で、油田開発の利権を保有していた、国策企
業を持つフランス、ロシア、中国などが、今後も、イラクの復興事業に関連して、自
国の利権を考慮した立場を一段と鮮明化させることでしょう。

こうした激しい競争の中で、日本企業にも、それなりの復興需要が配分されることに
なると思います。ただ、日本に対しては、まず、復興事業の資金負担を求められる可
能性が高いでしょう。日本は大きなエネルギー消費国で、中東地域からの原油輸入が
経済の生命線です。戦争終結によるメリットに対して、応分の費用負担を求められる
ことは想像に難くありません。その後で、イラク復興事業の一部を、日本企業が引き
受けることになるのでしょう。

今回のイラク戦争で、米国とドイツ・フランスなどの諸国との対立は、一部の専門家
から大西洋戦争と評されるほど激化しているようです。今後、米国の指導力が弱体化
することも想定されます。世界のパワーバランスに、変化が出てくる可能性もあると
思います。後の歴史から見て、米国のヘゲモニーに陰りが出始めた事象として、評価
を受けることになるかも知れません。

                           エコノミスト:真壁昭夫

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 ■ 山崎元  :UFJ総合研究所 金融本部主任研究員 兼 企業年金研究所取締役

 イラクの戦後復興事業は、戦争そのものの正当性には関係なく、関係国にとって大
きなビジネスであると同時に需要の追加になる可能性が大きいと思います。財政赤字
の拡大をなるべく抑えたいアメリカのブッシュ政権としては、イラクの石油売却代金
及びこれを担保かつ返済財源とする大規模なファイナンスを相当程度イラクの復興事
業の財源とするものと推測されます。これは、復興事業を受注する国の経済にとって
は、需要の純増を意味します。復興事業の規模がどれくらいのものになるかは分かり
ませんが、相当に大きな商談かつ利権であることは間違いないでしょう。

 日本にとっては、戦費負担として負担する費用の純流出と、復興事業の受注による
受け取りのどちらが大きいかということがマクロのレベルでは問題になります。ただ
し、この場合、戦費は納税者が広く負担し、復興事業の受注は商社やエンジニアリン
グ会社、各種メーカーなどをはじめとする関連業者が集中的に行うことに注意が必要
です。今後、戦後復興を論じる際に、マクロレベルだけで損得を論じてよしとする論
者がいたとすれば、こういう人は重要な見落としをしているか、気づいても敢えて無
視したということでしょうから、何れにしても信用出来ません。

 また、日本に直接の需要がなくても、たとえばアメリカが好景気になれば日本にも
波及するといった二次的な需要もあります。

 ご質問の前半は、こと復興事業に関する限り、世界の景気にプラスの影響を与える
のだろうということです。

 次に、日本の民間企業に復興需要の恩恵はあるかということですが、幾つかの理由
で「幾らかはある」と推測します。

 第一に、日本が戦費を負担するであろうことから、その見返りとして日本も多少は
復興に参加させて貰えることが予想されます。残念ながら戦争がイラクだけで終わり
とは限らないので、アメリカとしても日本に多少のメリットを配分することが合理的
でしょう。

 第二に、日本企業が、イラクに対して相当の額の債権を持っていることです。戦争
で破壊されたり、債務が不履行になるプロジェクトもあるでしょうから、これらをな
にがしか補償する意味合いで日本企業にも復興需要を配分する可能性が大きいと思い
ます。

 第三に、日本が今回アメリカのイラク侵攻に早い段階から賛成したことへのご褒美
的な要素が考慮されるであろうということです。もっとも、これはアメリカ政府の気
分次第です。

 上記の一から三の理由は、何れもアメリカが復興需要の配分について意思決定権を
実質的に握っていると考えた時のものですが、仮に国連がイラク復興を主導すること
になった場合にも、日本は国連への大口資金拠出者なので復興需要にありつくことが
出来ると思われます。

 また、早い話が、今回のアメリカのイラク侵攻は、相手を征服して経済的なメリッ
トを得ようとしている点で、日本の昔でいうなら戦国時代、現代でいえば広域暴力団
(警察よりも遙かに強い暴力団だと思うと分かりやすい)の縄張りの拡大と本質的に
同じです。後者の例でいえば、日本はお金を出すけれども自分では手を出さない「企
業舎弟」のような存在なので、暴力団の縄張りが拡がった後にはその縄張りで有利な
商売をすることが出来るに違いありません。

 以上のように、経済の問題としては、復興需要は世界にそして多分日本にも確かに
「ある」のですが、戦争で失われた多くの人命までは決して復興出来ないことをもっ
と重大に考えるべきだと思います。

     UFJ総合研究所 金融本部主任研究員 兼 企業年金研究所取締役:山崎元

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 ■ 津田栄  :エクゼトラスト投資顧問株式会社 顧問

 イラク戦争は、結局米英軍による圧倒的な戦力により、収束しようとしています。
今回、イラクの大量破壊兵器保有の疑いで始めた戦争ですが、米国は、その本来の目
的をフセイン政権打倒、イラクの民主化という目的に移し、しかも戦後処理を米英主
導で行う意図を明確にして、イラクにおける権益を主張し始めています。これにより、
米国が、正義のための戦争ではなく、何のための戦争であったかを、はじめて垣間見
せた気がします。

 したがって、米国がすでに国連を信用せず、必要としない考えを強めているなかで、
たとえイラクの戦後復興事業を国連主導でといっても、米国は米英の統治政策に国際
社会が口を挟むことを許さず、イラクに居座って、実質的に米英主導の統治政策を認
めさせようとします。これは、「命と血」という犠牲を払った米国、英国の企業が中
心となって復興を請け負うということです。その証拠に、すでに米政府に近い企業5
社の名前が挙がっています(復興事業は、原油生産設備、港湾、道路、橋、発電所、
通信設備のほか、病院、学校などの生産・生活インフラから食料・薬品・医療などの
人道援助と幅が広いといえます。この中で、復興事業の中心はインフラの整備に関わ
るものです)。

もちろん、復興事業による最初の直接的な利益、経済的効果は、米英に生じますが、
その下請けとなる企業が国際的になれば、回りまわって世界に還元されることになり
ます。しかしながら、仏独露の欧州は、イラク戦争を認めるような米英主導のイラク
占領・戦後復興案の承認は避け、国連の主導的なイラク暫定的統治・戦後復興を行い
たいと考えており、米英との対立解消は難しいといえます。

その結果、占領し実効支配する米英が、国連の承認なしでも戦後復興事業を行う可能
性が高く、世界的に米欧対立が残ることで、イラクの戦後復興事業による景気浮揚効
果が米英に集中して、世界に波及しにくくなるかもしれません。これは、世界経済の
ブロック化をさらに強め、米国自らが、今まで推進してきた経済のグローバル化を後
退させることになります。

 一方、1000億ドルとも言われる戦後復興資金では、米英が資産凍結したイラク・
フセイン資産、今後イラクの原油生産による収入(日量200万バレル生産で年約1
50〜180億ドル)も使われますが、米欧中心となれば、復興事業に提供を約束し
た日本を始め、参戦した政府が当初資金を出すことになると思われます。それは、当
初各国政府の財政負担となり、経済的にはマイナスに働きます。

特に、人を出さずに資金提供を早々と表明した日本の額は膨らむといえます。現在日
本の負担割合は2割とも3割とも言われています(気になるのは、国連主導での戦後
復興を前提としている日本政府は、国連承認なしに資金を出せるかですが、これも、
米英による独断的イラク攻撃に賛成した経緯を考えれば、国民に説明なしに行うこと
でしょう)。

その意味で、日本では当初、財政負担が相当かかってくることになり、国債増発、つ
いで湾岸戦争時のような法人税の臨時増税、負担の規模によっては、最終的に国民の
増税負担になります。それは、今でさえデフレによる需要が減退してるなかで、さら
に需要減につながり景気を下押しする可能性が高いといえます。たとえ、日本企業に
復興事業が舞い込んでも、日本全体にとって、この状況下では、景気に厳しいといえ
ましょう。

 また、日本は、企業・政府でイラクに対する債権(約60億ドル)を抱えています
が、企業は既に償却しており、これによって積極的に事業を受注する権利を主張でき
るのか疑問であり、一方、欧米諸国のように、政府が企業の持つ対外債権を保護する
ために汗を流すかというと、今の外務省をみると全く期待できません。ましてや、政
府債権については、主張もせず、放棄させられるでしょう。このことを考えると、日
本の企業に復興事業が自然に流れてくるとは思えず、その高い技術から米国企業を通
じた下請事業にとどまると思います。

そして、米国政府高官は、戦争による復興事業は国内企業に限るという方針を打ち出
しており、それに従えば、米国は、同盟国でイラク攻撃を支持したという点だけで日
本企業に事業を安易に指名するとは思えません。その意味で、復興需要が日本企業に
必然的にくると考えるのは危険であり、まして政府が国連主導にこだわっていると、
ほとんど復興事業がこないばかりか、人員と資金の供出だけで終わる可能性もありま
す。それだけに、政府は、国際政治が急速に変化していることをどこまで理解し、国
民の生命と財産を守る義務を感じているのか、危惧を感じます。

                エクゼトラスト投資顧問株式会社 顧問:津田栄

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 ■ 杉岡秋美  :生命保険会社勤務

米兵の血を持って贖った勝利の分け前は、アメリカ企業が分配に預かるのは当然とい
うのがブッシュのアメリカの考え方です。少なくとも分配の決定権を持つのは、アメ
リカであるとの立場を譲ることはまず考えられないと思われます。

グローバル市場主義を引っさげて、市場の効率性のセールスマンに徹していたかのよ
うだった数年前のクリントンのアメリカと比べると、自国のスタンダードを世界中に
押し付けて歩くあつかましさは同様ですが、市場主義の経済効率性の仮面をかなぐり
捨てて、「自由と民主主義のため、圧制からの解放のための戦い」というベトナム戦
争以前の復古的なお題目に、舞い戻ったという印象を与えます。しかし、結局、米兵
の命をかけて贖ったものは自国の企業に優先的に分け与えることを表明して、この復
古的なお題目の底の浅さとご都合主義を隠そうともしていないので、ブッシュのアメ
リカは世界中にその行動の正当性を示す必要性も感じていないのではないかという危
惧を待たざるを得ません。

前にも指摘しましたが、ブッシュのアメリカはその行動の正当性について神学的な確
信があるのだと思います。あるいは、その正当性を証明したいと考えて行動している
のだと思います。証明する相手は、もちろん人間社会に対してではなく、神のみに対
してです。神の与える正当性の証は、結局、この世では勝利あるいは成功でしかあり
えませんから、ブッシュは他国から非難されればされるほど、飽くなき勝利を求めて
いくでしょう。

このようなアメリカに対して、経済効率性の原理や、ヒューマニズム(人間中心主義)
を説いても、何の意味も持ちません。アメリカの勝利にどれだけ貢献したか、そのた
めにどれだけ役に立ったかが、獲物の分け前の分配法則となります。現実にアメリカ
が軍隊を派遣して、イラクの支配を確立しつつある以上、分配を決める原則はアメリ
カの原則に限りなく近いものにならざるを得ないでしょう。他国が獲物の分け前に与
るためのひとつの方法は、できるだけ米国の原則に忠実に、アメリカの勝利に出来る
限り貢献し、役に立ったことを示すことになります。日本は、戦いの早い段階で米国
の軍事行動を支持し、復興支援に資金を出すことを表明していますので、プライドは
傷つくかもしれませんが、この方法である程度の分け前に与れることが期待できます。

もう一つの方法は、アメリカに対して、敵対すると手ごわいと一目置かせることでしょ
う。フランス、ドイツ、ロシアなどの欧州はこの方式で、アメリカから獲物の分配を
勝ち得ることを狙っているように思えます。

日本の選んだ道は、自らの価値判断を停止し、アメリカの衛星国としての身分を納得
できるのなら現実的な選択と言えましょう。これから支出する復興支援の負担金に応
じた見返りが期待できるのではないでしょうか。しかし、復興が石油掘削関連の施設、
港湾、道路などのインフラなどに止まるのならば、活躍できるのはやはり、欧米の石
油開発会社や建設会社で、日本企業には活躍の場は残されていないのではないかとの
懸念があります。

                         生命保険会社勤務:杉岡秋美

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 ■ 菊地正俊  :メリルリンチ日本証券 シニアストラテジスト

一時は長期化見通しもあったイラク戦争は予想以上の速さで終焉を迎え、市場の注目
は戦後復興や戦後の世界経済に移っています。戦争終焉とともにリバウンドが期待さ
れた世界の株式市場は、景気や企業業績回復の鈍さや株式需給への懸念などから軟調
な展開になっています。イラク復興問題を考えるうえでは、週末に開催されるG7が
注目されます。

日本は湾岸戦争時には140億ドル(当時の為替で1.9兆円)の財政支援を行い、
法人増税でファイナンスしました。4月10日に政府は,戦後イラクの人道支援に自
衛隊を早急に派遣できるようにするための「イラク復興支援法案」(仮称)を5月に
も国会に提出し、早期成立を目指す方針を固めたといいます。また、川口外相は人道
支援として1億ドルを上限に国際機関に資金供与すると発表しました。この程度の支
援であれば、政府は2003年度予算で3,500億円の予備費が計上されているの
で、補正予算は必要ありません。

しかし、イラク復興には総額1,000億ドルの資金が必要との試算もあり、日本の
負担が国連分担金と同じ20%を求められれば、単純計算で2.4兆円の負担金にな
ります。政界・財界からはイラク復興に使う資金があるならば、国内景気対策に使う
べきとの意見も強いため、今後イラク復興支援問題に絡んで、景気対策が大きな議論
になる可能性があります。

民間ビジネス機会では、復興需要関連で油田の復旧、道路・水道施設・発電所・IT
などのインフラ整備が焦点になります。イラクの電話設置台数は人口100人当り2
台と世界平均の同12台を大きく下回っており、潜在的なインフラ需要は大きいと期
待されています。日本の恩恵を受ける可能性がある業界としては総合商社、ゼネコン、
エンジニアリングなどが挙げられますが、イラク復興需要の恩恵は戦争に「命と血」
をかけた米英企業が中心になるということですので、日本企業の恩恵は限定的でしょ
う。

日本貿易会会長の宮原賢次住友商事会長は「イラクではこれまで化学プラントや橋、
道路の建設などに多くの商社が参加しており、日本企業としては復興計画を手掛けや
すい面はある。人道支援の次のステップとなるインフラ整備には商社をはじめとする
日本企業が再び参加できればよいと思う。しかし、占領政策を米国が主導するのは当
然と思う」と述べています。

米石油サービス大手のハリバートンの子会社KBRは既に油田火災の消化事業の契約
を米軍から受注したと明らかにしました。復興需要の恩恵は既に米国企業に現われて
きています。ただ、米国経済は雇用情勢の悪化、消費者マインドの悪化、IT投資回
復の遅れ、財政赤字と経常赤字の双子の赤字などの懸念があるので、イラク復興需要
より、米国の内需動向の方が米国企業にも大きな影響を与えそうです。来週始まる米
国主要企業の決算発表が注目されます。

            メリルリンチ日本証券 シニアストラテジスト:菊地正俊

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 ■ 三ツ谷誠  :三菱証券 IRコンサルティング室長

戦後復興支援について考えるには、それがODAの変形なのだと考えてみる事が一つ
の方法だと思います。厳密にそうだと言い切るには位置付けの微妙さがありますが、
少なくとも類似した性格を持つものとして思考の補助線を引いてみることは可能だと
思います。

我が国が世界に冠たるODA大国であることは有名です。その事実に関する政府宣伝
も行き渡っているため、貴重な公的資金を国内ではなく国外で用いることに対する皮
相的な反発が、よく酒場のそこここで聞かれますが(「外国にやる金があるなら俺に
くれよ、頼むよ、小泉さん」といった)、実は我が国のODAは(乗数的には支援国
経済を活性化させるとしても)、「ひも付き」率が極めて高く、最初の受け皿として
は例えば日本工営などの本邦企業が資金の通過点になる構造を持っていて、公的資金
を日本企業に還元するシステムとしても機能しています。そのため、かつては日本の
輸出振興の手段としても(或いは日本企業の世界進出の手段としても)ODAは用い
られていた訳で、そのような視点で戦後復興支援を考えることも必要だと思います。

その意味では、復興需要は日本企業にもあるでしょうし、それらの企業が潤うことで、
その雫は僅かながらでも日本経済の回復に寄与するでしょう。また、こうまで言うと
言い過ぎかも知れませんが、公的資金を批判なく企業に還流させる回路として復興支
援は格好の機能を持つものかも知れません。

                三菱証券 IRコンサルティング室長:三ツ谷誠

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 ■ 北野一  :三菱証券 エクィティリサーチ部チーフストラテジスト

イラクの戦後「復興」において、どのような「需要」があるのか、ということですが、
破壊された庁舎や空港といった「物財(ハード)」に関して言えば、世界や日本経済
に影響を与えるほど、大きな金額にはならないように思います。

映像で垣間見る限り、「物財」の破壊状況は、都市を襲った大地震ほどでもないでしょ
うし、喩えに使いたくはありませんが、あの阪神大震災の復興事業ですら、日本や世
界経済に、「金融市場的に記憶に残るような」影響を与えることはありませんでした。

一方、約20日間に及ぶ破壊活動によって毀損された物財の復興よりも、より需要が
大きいと思われるのが、24年間にわたるフセイン政権の間、顧みられることがなかっ
たであろうガバナンス(統治能力)というソフト面の「復興」需要でしょう。

統治能力の場合、憲法に始まる法体系の整備、行政の枠組みと行政官の育成、民主的
な議会の制定と、民主主義の土台を築く教育の普及、そして独裁者の財布ではない中
央銀行以下の金融システムの構築、と気の遠くなるような「需要」が待っているよう
に思います。

こうした復興需要の金銭的価値がいくらになるのか分りませんが、統治機構の構築に
ついて専門能力を持つ日本の民間企業や民間人が「盾」ではなく、「智恵」を供給す
ることは期待されているでしょう。もっとも、こうした能力に対する需要は、イラク
もさることながら、統治能力が喪失されつつある日本においても大きいように思われ
ます。

いずれにせよ、イラクの場合、米英軍によって破壊されたもの(物財)と、今回の戦
争によって顕在化することになるであろう、フセイン大統領によって破壊されていた
もの(ガバナンス)の違いによって、それぞれの復興需要の内容は、かなり異なって
くると思います。

両者の金銭的な価値の比較は出来ませんが、「復興」の意味が、「再び盛んになるこ
と」であるなら、前者もさることながら、後者の需要にいかに応えていくかが重要で
あると思います。

         三菱証券 エクィティリサーチ部チーフストラテジスト:北野一

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■■編集長から(寄稿家のみなさんへ)■■

 Q:405への回答ありがとうございました。治まらない歯痛のせいもあって、フ
セイン政権の崩壊、米英軍によるほぼイラク全土の占領という事態に対して、無力感
にとらわれたまま、言葉が浮かんできません。現地からの情報が限られているのと、
フセイン政権が突然消えたというイラク戦争の不可解な結末、アメリカ兵士のほとん
どが貧困層や移民一世だったこと、その他いろいろなことが影響しているのだと思い
ます。

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Q:406
 アメリカのイラク攻撃の動機の1つとして、石油利権を狙ったものだという指摘が
ずっとありました。現に、イラク兵によって放火されたという油井の鎮火作業にすで
にアメリカ企業が当たっているという報道もあります。しかしイラクの石油資源は基
本的にイラク人のもので、そこからアメリカがどうやって利益を得るのか、わかるよ
うで、はっきりしません。アメリカ、あるいはアメリカ企業(フランスでもロシアで
もやり方は同じなのでしょうが)は、イラクの石油資源から具体的にどうやって利益
を得るのでしょうか。

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                                   村上龍

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JMM [Japan Mail Media]                  No.214 Monday Edition
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                   独自配信: 81,786部
                   まぐまぐ: 19,446部
                   melma! : 14,826部
                   発行部数:116,058部(4月14日現在)

【WEB】    http://jmm.cogen.co.jp/
【MAIL】 jmm-info@cogen.co.jp
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【発行】 有限会社 村上龍事務所
【編集】 村上龍
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