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【JMM】カナダから見たイラク戦争
http://www.asyura.com/0304/war31/msg/191.html
投稿者 愚民党 日時 2003 年 4 月 08 日 22:22:13:

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JMM [Japan Mail Media]                 No.213 Tuesday Edition
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                           http://jmm.cogen.co.jp/
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■読者からの投稿

  □「カナダから見たイラク戦争」
    川上直子  :トロント在住

  □「米メディア観察」
    中山智子  :サンフランシスコ州立大学院

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 ■ 読者投稿:川上直子
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「カナダから見たイラク戦争」

冷泉様、毎週毎週、息がつまるような思いをしながら読ませていただいております。
本当にどうもありがとうございます。深く感謝しています。

アメリカのすぐ隣で、しかし、まるで違った対応を取ったために、アメリカの一挙手
一投足を気にしているカナダのことについてお話したくてメールしています。

私はトロントに在住している者です。ご存じかと思いますが、カナダは今回のアメリ
カの行動にノーを言いました。首相の決定後、イラク戦争がはじまってもこの決断に
対して70%の支持があります。つまり、なんのことはない、極めて自由に発言しあっ
た市民がしっかり決めた結果なのです(私は市民ではありません)。

しかし、その後アメリカ大使がやってきてまさに恫喝。こういう人が大使なのかと驚
くほどの堂に入った恫喝ぶりでした(日本にいてこれに気づかないのはそのままの影
像が流れないからでしょう)。その後続々と「恭順の意」を示す人が増え、今では二
人の州知事が単独でアメリカ支持を訴え、彼らこそ私たちを守ってくれるのだ、友人
だと大騒ぎし出し、新聞には正にこれを「恭順」というのだろうという文言の知事が
大使に宛てた手紙が載りました。こうした行動を誘発した大使の発言には何らの議論
も理由もありません。ただ「アメリカはがっかりしているんだ」と言い張り、「こん
なことでは大変なことになる」、オレたちはファミリー、ある時は友人、と経済界を
中心に、そして結果としてはテレビの露出が続いた結果です。

4月4日には「親米」集会という、多分アメリカを除く世界でこことアルバータとい
うカナダのテキサスと呼ばれるところにしかないのではないかという集会までありま
した。戦争を賛美する集会があるというのは、カナダの生活では本当にショッキング
な出来事です。涙しそうなほどに喜ぶ人々を見て、ヒットラーを称えた人々はこんな
であったろうと感慨深いものがありました。

それはともかく、親米派の、私ならカナダ人の兵を出すと言い切ってしまう人々は、
今回の決断が行われたのは、一つには首相がフランス系であること、もう一つは、こ
こが多民族の国家であり、とりわけトロントがそうだからと考えています。わざわざ
「私たちはムスリムのコミュニティを抱えているためにアメリカの友達になれない」
と憤懣やるかたない様子で語る人がテレビに映し出されることもありました。しかし
支持率から考えれば全くそうではありません。そして彼らの考えを支えているのは、
一つには移民、難民を受け入れていることからアメリカが行ったことをライブで知っ
ている人が話す機会が多いことと、もっと大きくは報道の姿勢だろうと思えます。

イギリスのインデペンデントで書いているロバート・フィスクの記事が翌日の新聞に
載ります。戦況もCBCだけではなくBBCとの繋がりを利用して、かなり正確な
(とどこまで正確なのか戦時ではわからないわけですが)、少なくとも日本語の記事
よりも細かいか、先を行った報道をしています。

テレビも、人がどうなったかの視点をよくとっています。従って、悲惨そのものの戦
争の様子が毎日現れます。これで、この問題を「アメリカの友人」かどうかで裁ける
人はそれほどいないでしょう。友人かどうかというのは、日本人からすればあまりピ
ンと来ないわけですが、歴史的に出自を共にしている人もいるわけですし、大きな大
戦では友軍だったのだと考える人もいるわけですからそう簡単に、感情的に割り切れ
るものではないようです。新聞などはこの点をよくフォローしていて、友人だったら
困っていれば助けるだろうが、間違っていたら何か言う、そうじゃないのか、などと
いった、この悲惨さに比較して、ちょっと驚くような呑気さの、しかしながら確かに
人にとってとても大事な視点から、しつこくしつこく人々が投書欄で語ることが日常
的になっています。

と、アメリカ大使の不安もここにあるものと思います。こんな小さな国の小さな軍隊
に用事のあるはずはないでしょう。こうして人々が繋がりつつあること、すなわち、
後ろの扉が開いていることがとても困るのだろうと思います。同じ英語で、かなりの
ところ似た人々が反対をしているというのは、ネット時代、ケーブル時代の今、昔と
は比べものにならないほど困るのだろうと思います。その証拠に、アメリカ人たちが
時々新聞の投書欄やテレビのアンケートに登場し「カナダが一緒に来ないのは不愉快
だ!」と息巻きます。そして逆に、アメリカ人からの同意を知らせるものがあったり
します。結局、アメリカ人が見ているわけです。とても気になる状況で、自国のメディ
アが窒息していることを知っている。だから他の視点であるカナダを見ている(ベト
ナム戦争当時徴兵拒否者を受け入れているわけですからカナダの行動に対するリアク
ションとしては、メジャーではないにせよ当然といえば当然なのでしょう)。

カナダは、自分たちの決断を大事にしたばかりに、この先とても大変なことになるで
しょう。しかしこの辛抱強い人々は、決して感情的になるまいと、身内の側のアメリ
カに対しての暴言を諫めながら、きっとなんとか頑張るのではないかと思って見てい
ますが、状況は非常に厳しそうではあります。

カナダは小国なのにアメリカに抗したのがいけないのだ、と、先回りをするようです
が日本の人からはそう言われそうな気もします。しかし、そうなのでしょうか。独立
国とはそんなものなのでしょうか。カナダが毎日直面しているのは、実にそれです。
独立国としての方針の範囲内で平和のためにできるだけのこと、例えば、アフガニス
タンへの平和維持部隊を出すこともしていますし、中東に関しても「テロ対策」とし
て派遣していた船舶は今のところそのままです(これはこれで一貫性がないと議会で
つつかれているのですが、これ以上髪の毛の一本まで引き上げるなどという選択肢が
現実的だとはあまり信じられてはいないでしょう)。911以降の国境の警備につい
ても、人種問題に発展しないよう気遣いながら対応しています(二重国籍の中東系カ
ナダ人がアメリカの空港からカナダ政府への連絡もなく強制送還されたケースがあり
ます)。それでも、ある経済会議では、カナダは過度にアメリカに依存しているのだ
から外交上の重要な項目では自主的な判断はできないという発言まであったとトロン
ト・スター紙は伝えています。

もしそうだとしたら、しかしながら、アメリカ以外の国には独立した外交などありま
せん。あっても非常に小さな、多分重要ではない何かでしょう。本当に、これが、私
たちがこれからも暮らす社会なのでしょうか。アメリカの中が動揺し、そして困惑し
ているのもわかります。ですが、アメリカ人にはっきりとした覚醒がない限り、その
周辺では、常に独立を脅かされる存在があるのです。日本も、経済規模などから考え
ればカナダとは比べものにならないぐらいの大国だとしても、そのかわり言語を同じ
くする者たちがやるような粘り強い、しつこい交渉が難しい部分もありますから、脅
かされるものという意味では実際の差は数字が表すよりも縮まると考えることもでき
るかもしれません。

アメリカの人々には、これはアメリカ人が選んだことだということをしっかりと自覚
してもらいたい、ただそれを祈るばかりです。

                       川上直子
                       http://kawakami.netfirms.com/

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 ■ 読者投稿:中山智子
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「米メディア観察」

冷泉氏のレポートを読んでいて、いくつか気になったことがあったのでメールします。

まず、戦争が始まってからのメディアの報道がメチャメチャであるというお話があり
ましたが、それは何も、戦争がある無しに関係したことではありません。常日頃から
メチャメチャです。よく言えば、日本よりも各局やネットワークごとにそのメディア
の色がよく出ていて、比較しながらニュースを分析するには面白い環境だと思ってい
ます。

私はアメリカ人ではありませんから、好んで、旗振り屋であるFOXのニュースは見
ませんが、それ以外の局とFOXの比較などすると、昔の日本の新聞にあったような、
はっきりとした各会社のビュウポイントの違いを見ることができます。時に、この違
いは、メディアのオーナーシップとの関係からも指摘されるわけですが、しかしこれ
は、多メディアを有する環境の視聴者にしかできない恵まれた行為です。そして、私
達のように、海外の第3国のニュースをも入手できるのはさらに恵まれています。

一方で、メディアの報道の足並みが揃っていて、どの局でも確からしい均等な情報が
流れていたならば、そのニュースの信憑性は薄れます。まず最初に政府や軍のセンサー
シップを疑うでしょう。

二つめに私が指摘したいのは、視聴者側も、メディアとはビジネスである、メディア
は、視聴者を広告会社に流す(売る)媒体であるということを忘れてはならないとい
うことです。ニュース番組は近年、各局の稼ぎ頭になっているという現実があります。
以前よりも社会や世界に目を向けるようになったアメリカ国民はニュース番組の格好
のターゲットです。各局は、視聴率の高いトークショーや最近ブレーク中のリアリティ
番組をニュース番組の直前に配置し、それらの番組終了後、間髪いれずに直ちにニュー
ス番組をスタートさせます。高視聴率番組の視聴者のFLOW(流れ)を利用した戦
略です。

それに加え、ニュース番組の製作コストはSITCOM(situation comedy)やトー
クショーなどの一般的なエンターテインメント系番組のそれの約半分ですから、各局
がニュース番組に力を注ぐ背景は十分理解できます。

第三に、ピーター・アーネットの話が出ていましたが、彼はNBCから解雇されて間
もなく、ロンドンのミラー紙とギリシャのメディアとも契約を結んだと聞きました。
彼を擁護するつもりはありませんが、少し考えれば、イラクの政府から国外に追放さ
れていない、とても貴重なアメリカ人ジャーナリストの存在を、イラク寄りの報道を
したという理由だけで即刻解雇したNBCはとてももったいないことをしたのではな
いかと思うのです。イラクから、イラク政府の監視下でリポートしていることを考慮
の上で、彼のような「イラク政府に認められた」ジャーナリストの存在は独自のビュー
ポイントが薄いNBCにとっては貴重だったのではないでしょうか。

最後に、最近顕著に見られる現象として、戦争報道のマンネリ化があります。戦争報
道はだんだんとスポーツニュースのようなノリで流されるようになって来ました。軍
がどこまで侵攻して、どこでどんな風にイラク軍と競り合って、どっちがどんな風に
相手を負かしたか……といった具合で、およそゲームです。

今日、たまたまNBCチャンネル11の朝のニュース番組のプロデューサーと話をす
る機会がありましたが、彼も、「ニュースのネタがない……。いや、あるにはあるが、
今はとても流せない」という様なことを言っていました。戦争が進んでいる一方で、
アメリカではいつもと変わらない生活が続いているわけですから、もちろん、ニュー
スになるような出来事も起こっています。しかし、戦争下という特殊な状況のため、
なるべく多くの時間を戦争関連ニュースでまとめたいのだそうです。

彼のいう、「ニュースのネタがない……」は、戦争に関連していて、センセーショナ
ルで、それでいて、視聴者が personalizeできるようなネタがない、ということなの
です。このことが、最近の、アメリカ人兵士の家族らを中心として起こっている「ア
メリカ人兵士を支援する活動」や、「リンチ上等兵の救出」の過剰な報道に繋がって
いるのだと思います。子供を持つ人ならば誰でも、子供が戦争に駆り出されている親
の気持ちや、ましてや子供がイラクに捕虜として捕まり、そして救出された話などは、
容易にpersonalizeできる話題なのです。

                 サンフランシスコ州立大学院
                 Broadcast & Electronic Communication Arts
                 Radio & Television
                 中山 智子

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JMM [Japan Mail Media]                 No.213 Tuesday Edition
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