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誰のための少年法か[和田]【冤罪であるという立場の記事ではありません、一般論として解釈してください】
http://www.asyura.com/0306/bd28/msg/120.html
投稿者 乃依 日時 2003 年 7 月 18 日 17:55:28:

(回答先: 病理を深める日本社会 投稿者 愚民党 日時 2003 年 7 月 17 日 18:36:43)

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□和田秀樹公式 HIDEKIWADA.COM マガジン 2003年7月17日号

 現在の読者数:6210名 http://www.hidekiwada.com/
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■今号のメールマガジン

 長崎の12歳の少年が4歳の男子を殺害するというショッキングな事件が
ありました。
 今号のエッセイでは、誰のための少年法かについて、和田が考察いたします。
 また、テレビ・ラジオなども多数出演予定なので、お見逃しなく!

バックナンバーをご希望の方は、次のURLでご参照ください。
URL: http://www.melma.com/mag/76/m00018676/index_bn.html

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■誰のための少年法か

 長崎の12歳の少年が4歳の男子を殺害するというショッキングな事件があり、
私もあちらこちらからコメントを求められることになったり、テレビでコメントを
するはめになったりした。

 しかし、本当のことを言うと14歳未満の触法少年による殺人事件は毎年のように
起こっている。平成13年度にしても既遂が1件、未遂が7件もあった。

 12歳の子どもが殺人なんてと恐ろしい時代になったと思われがちだが、これ
自身は珍しい話ではない。たまたま大人の犯罪と思われていた「大事件」の犯人が
実は中学1年生の少年だったというだけの話で、目立つ形の触法少年の犯罪が珍しい
ということである。

 12、3歳という時期は、男性の場合、テストステロンというホルモンの分泌が
高まる時期で、攻撃性も性欲も急に高まる時期でもあるし、またまだまだ幼稚な
残酷性が残っている上に、身体のほうは人によっては大人のようになる時期で、
こういうことを起こすこと自体はそう不思議ではない。私もこの時期にいじめ
られっ子だったので、相手のことを「殺してやりたい」などと思うこともまま
あった。

 何のためにこんな話をしたかというと、こういう事件があると世の親御さんが
不安になることが多いが、そんな必要はまったくないことが言いたかったのだ。

 ネイティブアメリカンの研究でも、過保護に育てる部族も、逆に虐待に近い形で
育てる部族も、それほど子どもの精神障害が生じていないが、白人が子育ての批判を
して、親が不安になると精神障害の頻度が急に増すというものがある。要するに
事件で親が不安になったり、急に子育てを変えるほうがかえってまずい。子どもに
とってほとんど利益がないのに、害が大きい可能性が高い。

 また、今回の事件が優等生によるものだからということで勉強ばかりさせて
いたらという不安をもたれた親御さんもいるかもしれないが、統計上ではまだまだ
成績が悪い子ども、中卒後、あるいは高校中退後ぶらぶらしている子どもによる
少年の凶悪犯罪が圧倒的に多い。中卒や高校中退者は同学年の1割程度だろうが、
少年院の新入院者の8割を占める。彼らが貧しかった時代ならこれも理解できるが、
今の中卒者や高校中退者は貧困理由の人は本当に少数派になっている。逆に20歳
未満なら大学生でも少年院に入ることになるが、そういう人は年に数えるほどしか
いない。早稲田のレイプサークルや近大生のレイプ犯が話題になっているが、まだ
まだ統計的、確率的には大学生になるまでたどりつけるようにしておくほうが
はるかに安全なのである。

 ただ、攻撃衝動が高まる時期であっても、実際に殺しまでやるのはやはり圧倒的に
少数派であることも確かだ。おそらく同年代の子どもの10人に一人くらいは、私の
ように憎たらしい人間をぶっ殺してやりたいと思ったことがあるだろうし、また動物
殺しや、暴力事件などを起こしやすいことで知られる行為障害という子どもの精神
障害についても、アメリカの統計では男子では子ども全体の6〜16%にも上るという。
しかし、本当に人殺し行為に及ぶのは触法少年の年代では未遂も合わせて年間10件
程度、30〜50万人に一人といったところだろう。

 要するに、それには抑止力が働いているのだ。
 もちろん、道徳という抑止力や相手が可哀相になるという抑止力もある。
 しかし、心が育ちきっていないこの年代であれば、最大の抑止力は罰であろう。
 親が怖い、教師が怖い、警察が怖い。まだまだ子どもの心が残っている分だけ
その心理は強い。

 私だって、相手を殺したらどんなことになるかわかっていた、あるいは自分の
将来がないと思って我慢した。道徳心でいうと、人の尊厳を無視していじめるような
奴は生きている価値がないと思っていたから、法律の咎めがなければ闇討ちにして
殺していたかもしれない。

 私が極端な例外だったかもしれないが、世の中でこんな考えをもつ子どもが一人と
いうことはないだろう。1000人に一人であっても、一学年に1000人以上いることに
なる。100人に一人ならば1万人以上だ。

 だとすれば、そういう人間について、親なり教師なり、地域社会が罰するところを
示さないといけないのかもしれない。

 実際、この12歳の子どもにしても、それまでも何度か子どもへのいたずらなどを
起こしているのに、周囲がおとがめなしできたからエスカレートしていった可能性は
小さくない。酒鬼薔薇少年の事件のときも同じようにエスカレートしていった経緯が
ある。

 ただ、大人が毅然としていても、罪にならないなら凶悪犯罪に走る子どももいる
かもしれない。
 今回の事件の最大の後遺症は、こういう人を殺すポテンシャルのある子ども、
札付きの不良(中学1年生でもそんな子どもはいる)などに、12歳、13歳なら罪に
ならない、少年院に入れられないことを教えてしまったことではないだろうか?
 新聞だけでなくて、テレビも含めて連日報道していれば、誰にでもばれてしまう
だろう。

 もちろん、立て続けにまねをするということはないだろうが、歯止めが一つ減った
ことは確かなことだ。
 子どもの身体の発達が昔よりはるかに早くなった今、12、3歳の子どもが人を殺す
ことはそんなに難しくなくなった。
それに対する歯止めとしての少年法を考えないといけないのかもしれない。
それに対して、おおむね二つの反論がなされることが多い。
一つは、更正の可能性であり、加害者の人権である。今回の事件でも、加害者の
名前がインターネット上で流されたことで(偽情報もかなり流れたらしいが)、
加害者の人権問題が取りざたされた。

 更正可能性については否定しない。しかし、それなら大人だって更正可能性が
あるからといって、たとえば宅間守や麻原彰晃だって死刑にするのはおかしいと
いうことになる。絶対に更正できない人間も、絶対に更正できる人間もまずいない。
少年のほうが更生の確率が高いという明確なデータもない。更正可能性で罪を決める
べきか、犯した犯罪で罪を決めるべきかをきちんと論議すべきことだろう。

 加害者の人権はある程度は守られるべきだろうが、では被害者の人権はどうなる
のか?
 北朝鮮の拉致問題の際は、被害者の人権は最大限に重視される。拉致被害者の
心情を考えると、どんなに飢えた子どもがいようと援助すべきでないという考え方に
国民は基本的に同意しているし、政府も食糧支援をやめたようだ(私だって金正日に
食糧支援をしろといっているのではない。個人的には食料査察団つきの支援が好ま
しいと思っているが)。

 被害者の心理を考えたら、乳幼児が飢え死にしていいとまでマスコミも世論も
言っている国が、自分の国に加害者がいる場合はその加害者の人権を守れというのは
差別ではないのか? 朝鮮人なら何もしていなくても飢え死にしてよくて、日本人
なら人殺しを二人しようが、死体にレイプまでしようが生きる権利があるのか?

 私は拉致問題の最大の功績は、日本人も政府も被害者の心情を最大限に理解し、
共感し、被害者の人権が重視されるようになったことだ。しかし、ほかの犯罪被害者
の人権はそのままであれば、拉致被害が政治ショーだとか逆差別だとかいう批判に
反論のしようがないのではないのか?

 拉致被害者や家族の言動は基本的に被害者心理を考えれば妥当なものである。
しかし、今のままほかの被害者がほったらかしにされれば、大衆心理として彼らだけ
特別扱いされていると思われかねない。拉致被害者の方々にこんなことを頼むのは
大変心苦しいが、「我々と同じように犯罪の被害にあっている方々にも政府が配慮
してあげてください」という一言をぜひかけていただきたいと言いたいくらいだ。

 もう一つの反論は、重罪化で犯罪が減るのかということだ。
 私はものすごく減るとは思わないが、少しは減ると考えている。
 その根拠は、子どもの自殺が少ないことだ。
 たとえば2000年を例に取ると、50歳代の自殺は6000人を超えるのに、10代の自殺は
400人に満たない。10歳から14歳に限ると60人もいない。子どもの自殺は珍しいから
目立つのだ。そのくらい子どもたちのほとんどは死ぬのが怖いのだ。死刑のアナ
ウンス効果や抑止効果は、死んでもいいとやけくそになっている大人よりはるかに
大きいはずだ。

 さらにいうと、本当に殺人をやらなくても悪がきが「おれはお前を殺しても罪に
ならないからね」などといってお金でもゆすられたらゆすり放題だろう。殺人が
増えなくても、一部の子どもには学校が地獄になる。不登校の原因の一部は現に、
そのようないじめや悪がきが怖いことにあるらしい。

 アメリカやイギリスが厳罰化路線をとったのも、少年犯罪の抑止だけでなく、
学校の治安を取り戻し、子どもたちが安心して勉強できる学校づくりを目指したと
いうことにある。加害者や加害者予備軍の人権に配慮することで、肝心の一般生徒が
まともに教育を受けられないのなら国家的な損害だからだ。

 実際、リクルートの調査でも高校生の8割は少年法を厳しくしてほしいと望んで
いる。少年犯罪の被害者は大抵は少年である。自分が被害者になる可能性がない
大人が高見の立場から、少年がかわいそうだから死刑はいけないというのは、
もっと当事者の声を聞けと言いたい。

 私は、最近の日本の社会をみて性善説はすでに通用しなくなっていると考えて
いる。どんなことをしてでも、少年による凶悪犯罪を減らしたり、無垢な子ども
たちの命や人権が守られることを切に望んでいる。


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