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国民純貯蓄率がゼロに低下した場合、これは米国経済にとって重大な岐路を意味するであろう。
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投稿者 転載 日時 2003 年 7 月 09 日 21:34:57:

貯蓄不足の状態に陥った米国経済における不均衡の高まりを懸念する向きは少ない。少なくとも私は、最近の投資家、企業関係者、政策担当者との議論からそのような印象を得た。見落とされたこの問題は重要な意味をもち得る。米国は、国民純貯蓄率がプラスからマイナスに変化する不気味な境界線に、急速に接近している。これは、国際金融市場に警鐘を鳴らす一触即発の状況を意味するのであろうか。

国民経済計算における恒等式は、往々にして経済を強く阻害する要因となる。それらは理論的な解釈を必要とせず、単に絶え間なく帳尻が合って然るべきものである。あらゆる国家の貯蓄は、常に投資に等しくなる必要がある。投資は、長期的な経済成長を維持するために必要な要素である。不運にも、米国の貯蓄は急速に枯渇し始めている。2003年第1四半期の時点で、国民総貯蓄の国民総生産に対する比率は14.0%と、前年同期に比べ1.5%ポイント低下し、1960年以降の平均値18.8%を4.8%ポイント下回った。しかしながら、問題は、米国の国民貯蓄の大半が既存資産の減価に直面していることである。2003年第1四半期時点で、減価に直面した資産は総貯蓄の94%相当に達している。これを受けて、国民純貯蓄(国民貯蓄のうち正味の生産能力拡大に充当し得る部分)の国民総生産に対する比率は、今年第1四半期時点で過去最低の0.7%となった。同比率は、1990年代には平均5%、1960年代には11%前後の水準で推移していた。これは重要な変化である。経済のポテンシャルを物語る指標は、国民純貯蓄率をおいて他にほとんど存在しない。

ここに問題が存在する。国内で生じる純貯蓄の欠乏に直面した米国は、経済成長を維持するために海外から余剰貯蓄を取り込む必要がある。上述の恒等式に関して言えば、米国の貯蓄・投資の恒等式は、海外諸国による自発的な資金提供のもとに成り立っている。海外資本を引きつけるため、米国は大規模な経常赤字を計上している。2003年第1四半期の米国の経常赤字は、対GDP比5.1%で過去最高となった。金額にして5,450億ドルである(年率換算)。1営業日ごとに20億ドル以上の資本流入が必要となる計算である。世界がこれほど大規模な対外不均衡をファイナンスする必要性に直面したのは初めてである。

これまでのところ、対価は発生しなかった。成長不足に直面した世界の国々は、代償を要求することなく余剰貯蓄を米国に流入させ、ドル建て資産に大量の資本を注ぎ込んだ。だが米国は、この調整に対する要求を高めている。連邦レベルだけでなく州・地方も含めた政府部門の財政赤字が拡大したことから、米国の国民貯蓄に対する下方圧力は今後数年間にわたり一層高まるものと予想される。大規模な経済対策法案の成立を受けて、米国の財政赤字は、連邦レベルだけを取ってみても2004年末までに4.5%以上のレンジに到達する可能性が高いとみられる。財政赤字が国民所得勘定ベースで2.7%であった2003年前半と比べて急激な拡大である。民間貯蓄が劇的に増加しない限り、米国の国民純貯蓄率が2003年末までに「ゼロの境界線」を割り込む可能性は大いにある。

国民純貯蓄率がゼロに低下した場合、これは米国経済にとって重大な岐路を意味するであろう。国民貯蓄が過去の標準を割り込み、海外諸国の貯蓄にその穴埋めを依存することと、貯蓄責任を放棄してすべての純投資資金を海外貯蓄に依存することは全く別である。また、言うまでもないが、問題はそうした点にとどまらない。「ゼロの境界線」は1つの数値に過ぎない。国民純貯蓄がマイナスの領域に足を踏み入れないとみるべき理由はない。民間部門の貯蓄不足と政府部門の赤字拡大を踏まえると、来年中にそのような事態を迎える可能性はあるとみられる。貯蓄率がマイナスとなった場合、これは支出が所得を超えることを意味し、長期的な投資の必要性よりも目先の消費支出が重視されることを反映したものである。これは、米国が海外投資家に対して生産能力拡大を目的とした投資の援助を要請することを意味するだけでなく、当面の消費支出に必要な資金の肩代わりを要請することも意味している。

国民純貯蓄率がゼロに低下した場合、これは米国経済にとって重大な岐路を意味するであろう。上述の事態を迎えた場合、それは米国経済が避けられない難局に向かっていることを全世界に知らせる警鐘、すなわち一触即発の状況を意味するのであろうか。言うまでもなく、そのような疑問に正確に答えることは不可能である。難局に陥る瞬間を予測することは危機の予測に極めてよく似ており、通常は本質的に「青天の霹靂」である。だがこの問題は、私が世界各地の出張先で反論を受けるたびに幾度も指摘される点である。すなわち、米国主導型の世界経済が米国の不均衡を無制限にファイナンスする過程で、いつ限界点に到達するのか、という疑問の声を繰り返し耳にする。その答えが、米国以外の国々がどのような状況に置かれているか、という点に大きく左右されることは言うまでもない。貿易が経済成長の主要な潤滑油として機能する重商主義の世界では、対外不均衡を無視するインセンティブが強く働く。だが、そうした調整プロセスにおいて為替相場の大規模な調整という難題が発生した場合、状況は一変するだろう。私の眼から見て、これはまさにリスク要因である。米国経済は循環的機能が低下しており、この点を裏付けるように6月の雇用統計は紛れもなく低調であった。その米国の国民純貯蓄率は、ゼロに接近している。これは、経常収支ファイナンスにおける危機発生の典型的な温床であり、ドル相場のさらなる下落を引き起こし得る。日本や欧州諸国が輸出主導型の経済成長を達成する上で、自国通貨に対する過小評価を必要としている以上、ドル相場の下落は不安定な世界にとって著しい脅威となろう。これはまさに、一触即発の状況といえるであろう。

http://www.morganstanley.co.jp/securities/jef/wib/030707/doc01.html

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