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Re: 利払いはエントロピーの低減?
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投稿者 あっしら 日時 2003 年 8 月 02 日 21:28:36:

(回答先: 利払いはエントロピーの低減? 投稿者 まさちゃん 日時 2003 年 7 月 30 日 13:53:45)


まさちゃん、こんにちわ。

エントロピー理論を比喩的に使った利子取得の根拠付けですが、永井氏の言わんとすることはわかりますが、利子の本質を説明しているとは言えないですね。

永井氏の説明は、まず、エントロピーを不確定性や無秩序の度合いと捉え、リスク=エントロピーという考えを基礎にしているようです。

リスク代償説として、「貸出先が倒産する貸し倒れリスク、固定金利のときのインフレリスク、もっと有利な運用先があるかもしれないという機会費用リスク、必要な時に貨幣として消費できない流動性リスクなどである」といくつかの事例を示していますが、まさちゃんも書かれているように、それは利子取得の本質を説明するものではありません。

「貸し倒れリスク」というのなら担保を取ったときや元本を完済したときには利子を取得しないのか、「インフレリスク」というのならインフレ率=利子率という制限を加えてもいいのか、「機会費用リスク」というのなら貸し出しを担保に同額以内の貨幣がいつでも無利子で借り入れできる制度があるのならどうなのかといったことなどが指摘できます。

利子を取ることにより借り手が返済困難に陥るリスク(=エントロピー:貸し手が完済を受けられないリスク)を増加させるという根源的な問題があります。

現在でも銀行は、リスクプレミアムと称して利益率の低い中小企業への貸し出しで割増の利子率を適用しようとしていますが、それは貸し倒れリスクを増加させるものです。

永井氏の説明は、利子を取っても当然だという言い訳にはなっても、利子の本質ではありません。

永井氏の他の利子学説に対する批判は、ほぼ同等の重みで自分の説にも適用されるものです。

永井氏が紹介されている利子学説は、貸し出しを行なう個々の経済主体(個人)に関わる考察で、他者関係的行為であるという把握が欠落しています。

利子付き貸し出しが制度的に存続するためには、「余剰貨幣所有者の偏在と利子を支払っても利潤が手に入る経済活動機会」が不可欠です。
利子付きで借りても利子を超える利益が得られるという経済条件がなければ、利子付き貸し出しは縮小したり存続できなくなります。


>利子学説1.「利子とは、貨幣を消費に使うことを抑制したことへの対価である」(禁欲説)

永井氏の説明が論理的な反証ですが、借り入れした経済主体が消費に使うことも多いわけですから成り立ちません。(貸し手にとっては禁欲ですが、経済社会的には禁欲ではない)

また、銀行のように、借りた貨幣を股貸しすることでも利子は得られますから、禁欲説は普遍的な妥当性がありません。


>利子学説2.「利子とは、資本家が労働者から搾取した利潤の一部である」(利潤説)
利潤が労働者からの搾取であるという見方はしていませんが、利潤説は、資本制経済における利子取得制度を支える主要な説明にはなります。

経済活動の成果として利潤(営業利益)>利子の見通しがあるから、利子付きで貨幣を借り入れする判断を行ない、貸し手もその見通しにある程度同意するから貸し出しを行ないます。

経済主体が総じて利潤(営業利益)>利子を下回る成果しか上げられなくなれば、経済社会の普遍的制度として利子は存続できなくなります。

>利子学説3.「利子とは、お金を貸すことによって奪われる可能的利潤である」(機
>会費用説)


「利子とは、お金を貸すことによって“得られる”可能的利潤である」なら理解できますが、可能的利潤が奪われると判断するのなら貸し出しをせず自らが経済活動を行なえばいいのですから、利子取得の言い訳にはなっても、利子の本質を説明するものにはなりません。

貨幣の利子付き貸し借りは、貨幣の偏在により、貨幣が不足で利潤獲得の機会を持つ人(経済主体)と余剰貨幣を持つ人(経済主体)が存在し、相互利益になるという了解で行なわれるものです。

永井氏は、「機会費用説は、平均的な機会費用がマイナスになっているデフレ経済でも、なぜ利子率がマイナスにならないのかを説明することができない」と書いていますが、デフレ経済では貸し出しが減少することやデフレ経済でも利潤>利子の経済活動を行なう経済主体が存在することを考えれば、あながち的を外した説明だとは言えません。

“なぜ利子率がマイナスにならないのか”は、ことさら持ち出すべきものではなく、利子の本質論議に先立って説明されるべきテーマです。

資本制経済は貨幣的富の増殖を目的として動いているのですから、明示的に名目貨幣的富が減少する取引は行なわれないというのは、利子の問題以前にクリアされていなければなりません。
それを行なえば確実に貨幣的富が減少するなら、それをしないという選択が真という経済社会です。


>利子学説4.「利子とは、お金の借りるために支払うリース料金である」(賃借説)


永井氏の説明で十分でしょう。
利子率=インフレ率(実質利子率0)であれば、この説が成り立つ芽があります。


>利子学説5.「利子とは、流動性を放棄することに対する代償である」(流動性プレミアム説)

貸し出しは、利子取得をめざして自ら望んで流動性を放棄したのであって、放棄させられたわけではありません。

「貸し出しとは、利子取得をめざして、一時的に流動性を他者に移譲することである」という説明ならわかりますが、結果としての流動性放棄を利子取得の原因と考えるのは転倒です。

ある人が流動性を放棄したからといって、利子が取得できる経済論理的な説明をしなければ、それが利子の獲得につながるとは言えません。

また、流動性の放棄ということを利子取得の根拠とするのなら、設備投資という流動性の固定化でも、利子の取得ができなければおかしいということになります。

>利子学説6.「利子とは、貨幣の現在での価値と将来における価値との差額である」(時差説)

これも、インフレ率=利子率であれば妥当性があります。

永井氏の「だが、時間だけで利子が説明できるだろうか。実際には、利子率は時間の長さ以外の変数でも変動するし、長短の利子率が逆転することもある。さらに、この学説も、貨幣の価値が現在よりも将来の方が大きくなるデフレ経済のもとでもなぜ利子率はマイナスにならないのかを説明することができない」という説明は、質と量の混同があるように見受けられます。

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