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劣化する貨幣:再考⇒無税社会の青写真⇒あっしらのテーゼ
http://www.asyura.com/0306/idletalk2/msg/690.html
投稿者 馬場英治 日時 2003 年 8 月 04 日 17:08:01:dcAX/x0KhXeNE

(回答先: 『定常状態』での価値そして経済のモデル?[あっしらさん、馬場さんへ] 投稿者 マルハナバチ 日時 2003 年 8 月 04 日 12:59:47)

※このテキストは,もっと下の方にある元のスレッドへのレスとして書いたものですが,
マルハナバチさんがもう一つの支枝を用意してくださったので,こちらに載せてみます.
必ずしも,マルハナバチさんの意図に一致するかどうかは分りませんが...
(ごめんなさい.多分逸れてますね.)※


マルハナバチさんへ

せっかくきれいに完結したものに蛇足を加えて台無しにするつもりはありませんが,管
理人さんがゴミ片付けてしてくださったのに感謝しつつ,日輪が完全に水面に没する前
の束の間の薄明かりの中で,急ぎこのレスをしたためます.

前の手紙でお答えしたように,ゲゼルの劣化する貨幣の否認がこのリサーチの出発点
でした.私はいま,この理論を再考する必要が出てきたのではないか?と考えています.
上の方であっしらさんとディスカッションを始めたところですが,そこで驚くべきことが発
見されました.つまり,<政府貨幣を通貨として採用する経済システムでは,租税の徴
収は物価の安定,つまり通貨価値の下落を防止するという目的のため,ただそれだけ
のために実施される>という命題です.これは真に驚くべき発見です.

「くに」ができたときに税の徴収が始まったのか,税の徴収が可能な地理的範囲を「く
に」と呼ぶようになったのか?は分りませんが,税制は古代にまで遡る古い古いシステ
ムです.初めは収穫物を物納したり,労役に就いたりの直接的な形態を取りましたが,
近代国家の発足とともに金納に代わりました.しかし,いずれにせよ国家が領民から
何かしらの有体物を強制的に徴収するという基底的性格は変わりません.(阿修羅に
どなたかが比較的最近投稿された山上憶良の長詩をご記憶のことと思います.)もし
上記の命題が正しいとすれば,これは租税のもつ古代的な性格を180度変容させる
ものになります.もちろん国家の役割も再定義されなくてはならないでしょう.新たな
る国生みというタイトルはここに来てにわかにリアリティを帯び始めました.

我々が最前線に確保したこの橋頭堡から展望すると,ゲゼルの劣化する貨幣理論に
も新たな光が投げかけられます.ゲゼルの劣化する貨幣を評価するとき,私はその理
論が実践された20世紀初頭のヨーロッパという時空で考えていました.貨幣の発行形
態は労働証明書と呼ばれるような紙切れで,そこに市役所が発行する印紙を添付する
といった形式です.しかし,我々の共同的資本主義では当初から完全に電子化された
決済システムが予定されています.システムが完全に電子化されていることは共同的
資本主義の第4の基底要素とも言うべき本質的な要件です.

ゲゼルの理論が却下されたのは,劣化する貨幣は最終的に市民からの信認を得るこ
とができずに忌避されるようになり,やがては衰退してゆくだろうという推定によります.
これは市民が劣化した貨幣以外の代替貨幣を選択可能であることが前提にあります.
否,実際,もしその貨幣が市民にとって不都合なものであるのなら,おそらく自然発生
的にでも代替貨幣が発明されることになるでしょう.しかし,電子的貨幣システムは完
全にクローズドなシステム,ある意味では密室性さえ持つシステムであるがゆえに,
そこから脱退するということは,不可能ではないとしてもほとんど社会からの脱落を意
味します.今日の社会ではクレジットカードを持たなくとも何とかやってゆけますが,
来るべき電子マネタリシステムの時代ではおそらく生存すら不可能です.

(賢明なる読者諸子にはこれが何を意味するかはもちろん自明でありましょう.いわゆ
る獣の印と呼ばれるものは,他ならぬこの完全に電子化されたマネタリシステムの別
名です.この時代の到来はおそらく避けられません.実際国内ではすでに住民基本台
帳ネットワークと呼ばれるものが稼動しているし,アメリカにはTotal Information
Awarenessという住民監視システムが完成しつつあります.だが,この問題は一先ず
置いて,先に進みましょう.)

もし,国家の徴税理由が物価の安定にのみあるのだとしたら,ゲゼルの劣化する貨幣
はその目的に適っているかもしれません.物価の変動,つまり貨幣価値の時間的変化
は,劣化する貨幣の持つ時間的特性とシンクロします.何よりも重要なのは劣化する
貨幣という概念の持つ抽象性です.政府はもはや国民から米を供出させることも,賦
役に駆り立てる必要もありません.(賦役どころか政府は自由貨幣を駆使して,公衆的
利益の充足と完全雇用の達成を目標とする公共事業を行います.)もはや具体物の
徴収は完全に廃止され,市民から回収されるのは,デジタル化され数字にまで切り詰
められた完全なる抽象としての記号です.

私が共同的資本主義の徴税システムとして提案した取引税も劣化する貨幣と同様の
抽象性と一般性を持っています.取引税はネットワーク上のすべてのトランザクション
に均等・一律に賦課されます.劣化する貨幣を採用したときの税制を時間課税方式と
呼ぶとすれば,取引税はこれに直交する空間課税方式と言えるかもしれません.これ
らにはそれぞれのメリット・デメリットがあると思われますが,その優劣は別途議論さ
れる必要があります.場合によっては,この両者を併用する方式も有り得るでしょう.

我々の発見した事柄の重要性はここに留まりません.前述した命題は次のようなさら
に驚くべき系(corollary)を含意します.<政府貨幣を通貨として採用する経済シ
ステムでは,もし,通貨価値の下落を別の方法で防止することができるならば,租税
の徴収は不用である>.国家を仮に「租税を徴収可能な地理的領域」と定義するとす
れば,「租税を徴収しない国家」とは一体どこに位置するのでしょうか?そのようなこ
とはたとえ当面理論的なものに留まったとしても,果たして実現可能なのでしょうか?

国民経済の内部で徴税を免れるグループには,非課税世帯,脱税者,闇経済など
があります.共同的資本主義の地平のさらに前方に出現したこの「くに」は(もはやそ
れを国家と呼ぶのは相応しくありません)このような暗さの対極にある光に包まれた
ものになるであろうという漠然とした期待はあるにしても.そのような「くに」の具体的な
イメージを,我々の想像力は今ここに赤裸々に描ききることができるでしょうか?

さて,もしあなたがここまでの記述に多少なりとも共鳴するところがあったとしたら,残
念ながら,私はその陶酔に冷水を浴びせるような警告を付け加えなくてはなりません.
私は共同的資本主義という経済モデルを提示しました.さらに,このモデルの論理的
な帰結として「税の無いくに」が眺望可能であることを示しました.しかし,モデルはあ
くまでもモデルでしかありません.それが具体的にどのように運営されるかは,すべ
てその構成メンバーの現実的な選好によって決定されます.

我々は政府貨幣をデジタル化された数字として表象される記号としました.これは一
種の通信コードのようなものです.この通信コードを「命令語」と言い換えてみましょう.
これは単なる言い換えですから,共同的資本主義モデルの概念には本質的な変化
はありません.モデルはコーディングのセマンティックスまでは規定していないからで
す.このシステムでは政府は「任意の命令語」を国民に与え,国民を使役し,成果物
を収奪することが可能です.「命令語」は市場を流通しますが,政府はそれを放置し
て回収することもありません.これは共同的資本主義の堕落した形態です.どこかに
このような「クニ」が実在するという話を聞いたことはありませんか?もしかすると家畜
市場などの名前で知られているのがそれかもしれません.

もう少し付け足したいこと,特に電子的決済システムのコードを市民的に監理する手
続きについて考えてみたいのですが,長くなりましたので一旦閉じることに致します.

英治

ps:通貨を表示する数字は当然のように整数値が使われていますが,電子化された
マネタリシステムではある精度を持った実数値として表示することもできます.ここに
ゲゼルの劣化する貨幣理論を応用すると,経済システム全体の通貨保有量を全体と
してつねに一定に調整すること(たとえば1000000000000000000000.0とする)ことが可
能です.物理的に無限精度というわけにはいかないので,数値がゼロに丸められてし
まったり,減価機構が効かなくなったりなどの技術的問題もありますが,それを合理
的に解決するのはさほど難しくはありません.

つまり,このマネタリシステムでは定時に(例えば一日一回)すべてのエントリ(個人
所有の通貨量)をチェックしてトータルが1000000000000000000000.0となるように再調
整します.確かにこれはもはや租税ではありません.単なるデノミネーション?です.
10円に値付けされた(低額)商品は今日も明日も同じ値段で購入することができます.
ただ,財布の中身がほとんど目に見えないくらい微妙に減っていることを除いては.

通貨発行総量=N,当日の新規通貨発行量=M, ある個人の保有通貨量をPとすると,
翌日のこの人の保有通貨量はP'=P×N÷(N+M)となり,その差P-P'はS=1+M/N
としてP/Sとなる.M/Nは限りなく?ゼロに近いので,Sはほとんど1とみなしてよい.

我々はあまりにもあっけなく無税社会の青写真を手に入れてしまいました.政府は
理論的にはまったく無制限の量の自由通貨を発行して,思いのままの政策を実行
することができます.しかも,国民はその政府を運営するための費用として1円も
拠出する必要はないというのです.一体全体こんなことが可能なのでしょうか?

私が思い当たるのはエジプトの古代王国です.私はかねがねピラミッドのような巨
大建造物の構築を可能とするような経済とはどのようなシステムであったのだろう
という疑問を抱いてきたのですが,今日はじめてその謎が解けました.彼らは確か
にこの政府貨幣システムの秘密に通じていたものと思われます.私が前の手紙で
指摘した,貨幣の神権的性格と呼んでいたものはこれであると思われます.

マルハナバチさん,あなたが劣化する貨幣にこだわっておられなかったら,ここま
で来るのに何年を無駄に費やしたか,分りません.深謝します.

最初に掲げた命題を「政府貨幣の徴税目的に関する提唱」と呼びます.<貨幣価
値を維持する>という言明には,「インフレーションもデフレーションも認めない」と
いうかなり強い価値判断が含まれています.従って,<徴税は貨幣価値を維持す
るためにのみ行なわれる>というのは証明可能な命題というより,むしろ提唱とで
も言っておくべきものであると思われるからです.「政府貨幣の徴税目的に関する
提唱」の第一提唱者(発見者)はあっしら氏であることをここに確認し,この「提唱」
を今後,「あっしらのテーゼ」(Asyura These)と呼ぶことを提案します.

(このテーゼは共同的資本主義論とはまったく独立の経済学的発見です.)

Age Baba, 2003


ps:ps:あっしらさん:ノーベル賞をもらったら私にも少し分けてください.(*^_^*)

ps:ps:ps:上記ではM/Nはゼロに限りなく近いとしましたが,やや不審に思わ
れた方もあるかもしれません.そんなに小さくはないだろう?確かに見えないほ
ど小さいはずはありません.国家財政の規模はGDPの2割〜5割程度に及ぶと
思われます.そんなんじゃ生活が成り立たないよ,貧乏人はあっという間に乞食
になってしまう.確かにその可能性はありますが,そこは社会政策でカバーす
ればよいのではないでしょうか?たとえば,一定水準以下の家計では残高が減
少しないような,累進的減価計算法を選択することもできます.

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