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「何が起きつつあるのか」:ボロンによるチョムスキー・インタビュー
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投稿者 あっしら 日時 2003 年 6 月 30 日 20:03:59:


2003年6月14日

翻訳:寺島隆吉+岩間龍男(公開2003年6月29日)


 イラク戦争は公式的には終わったとされていますが、現地では連日のように米兵・英兵がゲリラ的抵抗にあって殺されています。この戦争はいったい世界をどこに導こうとしているのでしょうか。チョムスキーは、アルゼンチンからのインタビューで、イラクにおける民主主義の実現可能性、アメリカ国内における民主主義の行方、アメリカによる次の攻撃対象、パレスチナ問題のいわゆる「ロード・マップ」は何をもたらすか、などについて独自の見解を展開しています。米国に追随する日本政府が私たちをどこへ導こうとしているのかを考える上で参考になれば幸いです。


アティリオ・A・ボロン:

 イラクにおける最近の米国の政策を見て、この戦争の真の目的は何だと思われますか。

ノーム・チョムスキー:

 私たちはひとつの点で完全な自信を持つことができます。すなわち米国政府による戦争の理由は絶対に真の理由ではないという点です。それは内部矛盾したものなので、それが本当の理由でないことが分かります。

たとえば或る日、米国政府はブッシュとパウエルが言ったように、「唯一の問題」はイラクが武装解除するかどうかだと主張しました。しかし次の日には、イラクはともかく侵略をするのだから、武装解除するかどうかは問題ではないと言ったものでした。そしてまた次の日には、サダムと彼のグループがイラクから出て行けば問題は解決するだろうということでした。そしてまた次の日には、米国が国連に最後通告をしたアゾレス諸島でのサミットの時には、たとえサダムと彼のグループがイラクを出ても、とにかくイラクへの攻撃=侵略はすると言いました。そして彼らはそのように行動しました。

彼らが口を開くたびに、イラク攻撃への理由は矛盾したものになっていました。彼らの言動は結局、「私たちが言うことを信じるな」ということになります。だから私たちはイラク攻撃への公式的理由は嘘だとして、これを捨て去ることができます。

 しかしイラク攻撃=侵略の現実の理由はそれほど曖昧なものではないと思います。第一に、長年の利害があります。これはこの時点にイラク攻撃が行われた説明にはなりませんが、その利害の説明にはなります。その利害というのは、イラクは世界で第2位の石油埋蔵量を誇っているので、イラクの石油を支配することとイラクに米軍基地を置くことでイラク戦争を終わらせることができれば、現在にも増して世界のエネルギーシステムを支配できる大変に強い地位を米国に与えることになるということです。

そのことから派生する利益はさておき、そのことは世界の支配の強力な「てこ」になります。おそらく米国はイラクの石油を直接利用するつもりはありません。米国はもっと安全な大西洋の海盆(西半球、西アフリカ)の資源を主に使うつもりでいます。しかし石油の支配は第2次世界大戦以来の米国外交政策の主要な原理でした。この点においてイラクは特に重要でした。しかしこれは、この時期になぜイラク戦争かの説明とはなっていません。

 この時期の問題を見たいならば、この戦争の大規模な宣伝が昨年2002年の9月に始まったことが明らかになってくると思います。それ以前はイラクへの非難はありましたが、人々を戦争熱に駆り立てる努力はありませんでした。したがって私たちは他に何が2002年の9月に起きていたのか問うことになります。ふたつの重要な事が起きていました。

ひとつは議会の中間選挙が始まっていました。ブッシュの選挙参謀であるカール・ロウブは、誰にでも明確なことをはっきりと説明していました。それは社会経済問題に焦点を合わせて選挙運動に突入することはできないということでした。

その理由は、一般の人々にきわめて有害な国内政策、すなわち極端に狭い企業部門や腐敗した企業部門にとって都合のよい国内政策を彼らは実行しており、この問題で選挙民と顔を合わせることができなかったからです。彼が指摘していたように、もし我々が第一の問題を社会経済問題でなく国家安全保障にすることができれば、我々は勝利を収めることができだろうというものでした。なぜなら、もし国家の安全について恐怖をもつならば、人々は権力に群がってくるからです。

それがこういった人々の習性です。こた。

彼らは人々に大いに人気のある計画を破壊したいと宣言をしながら選挙戦にのぞむことは不可能であることを知っています。しかし、金持ちのための大減税を行い、軍(ハイテク産業を含む)への支出を急増させ、企業や金持ちに有利な計画を実行することによって、資金がない状態を確実にした後に、彼らは両手を上げ絶望したふりをして「お金がないのに、我々に何ができるのか。」と言うことはできます。

したがってそれがイラク攻撃への第2の理由であり、国内的な要因です。実際、そのことについては目覚しい宣伝(プロパガンダ)の成果がありました。政府メディアの宣伝キャンペーンが9月に始まってから、イラクは米国の安全にとっての差し迫った脅威であり、イラクは9.11にも責任があるのだと、大多数の米国国民に思い込ませることに素早く成功しました。

この宣伝の中には一片の真実もないと私は思いますが、現在までのところ国民の大多数はこれらのことを信じ、このことが戦争への国民の献身に強くむすびついています。これは理解可能な状況です。なぜなら、もし人々が、自分たちをすでに攻撃をしてきた敵によって国を破壊される脅威があると考えるならば、戦争を始めることはあり得ることですから。

実際、今日の新聞を見ると、「我々は復讐のためにここに来ている。彼らは世界貿易センターを吹き飛ばし、また我々を攻撃してくるだろうから。」といったような兵士たちの発言が載っています。

 しかし世界の誰もこのようなことは信じていません。クウェートとイランでは人々はサダム・フセインを憎んでいますが、彼らは彼のことを恐れてはいません。というのは、イラクはこの地域で最も弱い国であることを彼らは知っているからです。いずれにしても政府メディアの宣伝キャンペーンは見事に作用して、人々は恐怖心を持たされ、大きな反対運動があったにもかかわらず戦争を積極的に支持しました。これがイラク侵攻の第2の要因です。

 さらに重要な第3の要因がありました。9月に政府は国家安全保障戦略を発表しましたが、これは全く先例のないものであり、国の政策の公式化としては全く新しいものでした。そこで述べられていたことは、国際法の全ての制度を粉々に引き裂くものであり、国連憲章を破壊するものであり、「防止戦争」と言われる侵略的な戦争を、米国が好きな時にいつでも行うものであり、力ずくで世界を支配しようというものです。その上、米国による世界支配へのいかなる挑戦も決して許さないことを確言するものでした。なぜなら、米国は圧倒的に強力な軍事力を持っており、そのような戦時的な挑戦は簡単に押しつぶしてしまうからです。

 ご存知のように、このことは国内の外交政策のエリートたちのみならず世界を震え上がらせました。世界はこのことで肝をつぶされました。それはこのようなことを過去において耳にしたことがなかったからではありません。もちろんこのようなことを彼らは聞いたことはあったのですが、公式の国の政策として定式化されたことはそれまではありませんでした。このことと似た事例を見つけるためには、ヒットラーの時代まで遡らなければならないと思います。

さて、国際的行動の新しい基準と新しい政策を提案するならば、それを説明し人々に言わんとすることを理解させねばなりません。したがって、その例となる戦争を起し、それによって私たちが言っていることの本当の意味を示さねばなりません。それがハーバード大学の歴史研究者が「見せしめ戦争」と呼ぶものです。

 その際、私たちは正しい標的を選ばねばなりません。そしてその標的はいくつかの特性を持っていなければなりません。第一にそれは完全に無防備な標的でなければなりません。自衛する事ができる敵を攻撃するものは誰もいないでしょう。それは用心深いことでないからです。イラクはこの特性を完全に備えていました。イラクは中東地域では最も弱い国であり、[10年以上におよぶ]経済制裁で国内は荒廃しきっており、ほとんど完全に武装解除もされており、米国は衛星による監視や領空通過や最近ではU2の飛行によってイラク領内について完全に知り尽くしていました。だからイラクは非常に弱い国であり、第一の条件を満たしたのです。

 第二にその標的は重要でなければなりません。だから例えばブルンディを侵略する意義はありません。その標的は支配し所有する価値のある国でなければなりません。イラクはその特性も持っていました。イラクは世界で2番目に大きな産油国です。だからイラクはこの模範的な戦争の完璧な例でした。これが「米国が好きな時に行おうとしていることである」と世界に知らせる意図を持っていました。

米国は力を持っています。そして「我々の目標は力ずくでの支配であり、いかなる挑戦も受け入れる事ができない」と宣言しました。米国は [イラク侵攻によって]その意図と次の段階に準備が整っていることを世界に示しました。米国は次の作戦に進むでしょう。 その際、 [上記で述べた]これらの条件は様々に組み合わさっていますから、米国はいくつかの原則をテストしたうえで極めて理にかなった選択として戦争を起こすのです。


アティリオ・A・ボロン:

 あなたの分析をお聞きしていると次の攻撃対象は誰かという疑問が沸いてきます。米国はイラク攻撃だけでは止まらないとあなたは考えておられるわけですから。


ノーム・チョムスキー:

 はい、米国はすでにこのことを鮮明にしています。ひとつには、彼らには次の大統領選挙に何かを必要としているということです。その状況は今後も続くでしょう。彼らが政権についていた最初の12年間を通じて、毎年毎年この政策は続けられました。ですから、彼らが全力を傾けてきた国内政策を制度化し、彼らが望むグローバル・システムを確かなものにするまで、この政策は続けられるでしょう。

そうすると次の選択・標的は何処になるのでしょうか。次の選択も[イラクと]似た条件を満たしていなければなりません。すなわち、攻撃するだけの価値があり、無防備で弱い国でなければなりません。選択肢はいくつかありますが、シリアも可能なその選択肢のひとつです。シリアであれば、イスラエルも喜んでその攻撃に参加するでしょう。

イスラエルは、単独では小さな国ですが、米国の海外の軍事基地となっています。数百の核兵器(そしておそらくある種の生物化学兵器)を持っていることはさておいても、イスラエルは、大きな軍事力を持っています。その空軍や陸軍はNATOのいかなる国の軍隊よりも大きく軍事技術的にも進んでいて、その背後には圧倒的な米国の後ろ盾があります。

 だからシリアが攻撃の標的になる可能性を持っています。イランがその標的になるのはシリアに比べ難しいでしょう。というのは、イランは支配をすることが難しい国だからです。しかし、この1,2年の間にイランに内戦を起こして分割・解体しようとする努力がなされてきたと考えるのは妥当なことです。この米国のイラン解体の努力は、部分的には東部トルコにその本拠地を置き、その東部トルコの米軍基地からイラン国境上に監視飛行機を飛ばせていましたから。

もうひとつの標的の可能性があります。軽くは考えられない第3の可能性で、それはアンデス山脈地域です。アンデス地域には多くの資源がありますが、米国の支配が効かなくなっていますので、この地域を取り囲む米軍基地を置き、すでに米軍がそこにいます。ラテンアメリカの支配はもちろん非常に重要です。ベネズエラ、コロンビア、エクアドル、ブラジル、ボリビアの動きからして、米国の世界支配が挑戦を受けているのは明らかです。米国に大変近くて資源基地として重大な地域においては、特に受け入れがたいものです。したがってアンデス地域が別の標的になる可能性があります。


アティリオ・A・ボロン:

 それは本当に恐ろしいことです。さてもうひとつの質問です。イラク侵略とその後のすべての状況はこの地域の政治的な安定に取り返しのつかない影響を及ぼすとあなたは思われますか。このイラク侵略によって、サウジアラビアのような政治的に脆弱な構造をもった国、さらにはシリア、イラン、クルド民族などに、どのような副作用がもたらされる可能性があるのでしょうか。パレスチナ問題の将来はどうなるのでしょうか。この問題は中東地域で今なお極めて重要な事柄ですが。


ノーム・チョムスキー:

 アラブ世界で何が起きるのかを予測することは難しいことです。アラブ世界は非常に独裁的で残酷な政権によって支配された混乱し混沌とした世界です。敵意のある態度がどんなものかを私たちは知っています。米国はこの地域の敵意のある態度に強い関心を持ち、そのことに関して米国の中東専門家の学者によって相当な研究がされてきました。そしてその研究結果はかなり劇的なものでした。

最近の研究のひとつで、モロッコからレバノンまでの湾岸全体をカバーしたメリーランド大学の研究では、アラブ人の大部分が宗教指導者に政府部内でもっと大きな役割を果たすことを望んでいることが示されています。およそ95%の人々が、この地域に対する米国の唯一の関心はその石油であり、イスラエルを強化してアラブ人に屈辱を与えることであると考えていることも、この研究は示していました。その数はほぼ全員であることを意味しています。

もしこの地域で世論が力を持ち、なんらかの民主主義の方向へ進むならば、それは10年前のアルジェリアのような事態となるでしょう。それは必ずしも急進的なイスラム主義ではないが、イスラムの強い潮流を持った政府となるでしょう。これは米国がもっとも望まないことであり、いかなる民主主義の始まりへのチャンスも米国によって即座に反対されることになるでしょう。

 宗教と関係のない民主主義の声も反対されるでしょう。もし彼らが例えば国連決議の違反について自由に遠慮なく意見を述べるならば、彼らはイスラエルの事例を持ち出すでしょう。その点についてはイラクよりはるかにひどい[民主主義蹂躙の]記録をイスラエルは持っていますが、米国によって守られているからです。そして彼らは米国の好まない民主主義への関心を持つでしょう。

だから米国は過去においてと同じように、そしてラテンアメリカにおいて長年にわたりそうであったように、[アラブの]抑圧的非民主的な政権を支持し続けるでしょう。彼ら[宗教と関係のない民主主義を求める民衆]がワシントンの優先事項に忠実に従うという保障がない限りは、

 他方これらの混沌とした大衆運動は予測することは難しく、その参加者でさえもが自分たちが望んでいることが分からないのです。私たちに分かっていることは、おそらくかつてないほどの[米国への]恐るべき憎悪と敵対心と恐怖心があることです。

もちろんアラブ世界の核心的問題であるイスラエル・パレスチナ問題については、ブッシュ政権はいかなる立場を取る時も、平和解決への見込みを掘り崩す行動(例えばイスラエルのさらなる入植計画への資金援助)を取る時もたいへん注意深いものでした。

 彼らブッシュ政権は何も意味のあることを言いません。彼らがよく言うことは、「我々には“ビジョン”とかなんとかがある」ということですが、それは無に等しい内容です。その一方で[イスラエルの]行動がなされ、米国はイスラエル内のさらに過激な立場を支持し続けていました。

だから新聞がジョージ・ブッシュの最も意義のある声明として記述していたのは、[イスラエルの]占領地における入植は米国が平和の条件が確立されたと決めるまで続けることができるというものでした。コリン・パウエルも後にその声明を繰り返していました。だから、米国政府はこの神話的な「ロード・マップ」の上を進むことができるのです。

 この「意義のあるもの」ともてはやされている声明は、実際は、さらに過激な形への政策転換にたどり着いただけです。もちろん現在までのところ、公式の立場は、もうこれ以上入植はされるべきでないというものですが、これは米国の偽善です。なぜならば、公式の立場はその入植に反対をしながら、一方で米国はさらなる入植への軍事的経済的外交的支援をしているからです。現在も公式の立場では入植はされるべきではないことを支持していますが、「米国が“和平プロセス”が十分に進んだと一方的に決めてから」という条件がついています。それは基本的に無期限に入植が可能であることを意味しています。

また昨年12月の国連総会でブッシュ政権は重要な問題について米国の政策を決定的に変更しましたが、これにあまり注目がされていません。昨年12月までは、米国はいつも公式には1968年の安保理決議を支持してきました。この決議はエルサレムのイスラエルによる併合に反対をし、東エルサレムを占領しエルサレムを拡大する動きをやめるようイスラエルに命じたものでした。現在その占領地は大きな地域を占めてしまっていますが。

 米国は、偽善的にではありますが、公式にはそのようなイスラエルの動きにいつも反対してきました。しかし昨年12月にはブッシュ政権はそのイスラエルの動きを支持するようになりました。これはかなり大きな政策変更で、米国内で報告されていないこともまた意味のあることです。しかしその政策変更は行われたのです。これが唯一の米国の具体的な行動であり、このように物事は進みます。

米国は過去において、この地域に国際監視団を送り込もうとするヨーロッパの努力を拒否しました。これは政治的な激しい衝突を減らすひとつの方法であったにもかかわらずです。米国は 2001年の定を実行するためのジュネーブでの会議をないがしろにして、当事者すべてが出てきたにもかかわらず米国は拒絶し、実質的にそれを妨害しました。その時ブッシュはシャロンを「平和の男」と宣言し、過去の事例からも明白なようにその抑圧的な行動を支援しました。

したがって、それが示していることは、米国がパレスチナ人にせいぜいあまり意味のない或る種の「国家」としての正式の地位を認めてやりながら、その地域におけるたいへんに厳しい政策を行うでしょう。もちろんこれは民主主義と平和と自由などの衣が着せられるでしょう。米国は巨大な広報活動の作戦を持っており、そのように米国の動きは提示されることになるでしょう。しかし現実はあまり将来的な見込みがあるようには見えません。

アティリオ・A・ボロン:

 私には後ふたつ疑問があります。ひとつは国連制度の将来についてです。最近アルジェンチンで再現されたヘンリー・キッシンジャーによる記事は、多国間協調主義は終わり世界は米軍の絶対的優位性を受け入れなければならない、そして古い制度は死んだのでそれに賛成したほうがよいと主張していた。その国際的な舞台についてあなたはどう思われますか。


ノーム・チョムスキー:

 それは少し財政的産業的戦略のようなものですね。それはいつも実行されてきた恥知らずな政策の公式化です。国連に関しての単独行動主義は、ヘンリー・キッシンジャーも熟知していたように、古くからあるものです。40年前の南ベトナムへの侵略について国連の許可はあったでしょうか。実際のところ、その問題は国連で話題にされることさえあり得ませんでした。国連とすべての国々はベトナムにおける米国の作戦に圧倒的に反対していました。しかしその問題は文字通り決して[国連に]浮上してきませんでしたし議論もされませんでした。なぜならもしその問題が国連で議論されれば、国。なぜならもしその問題が国連で議論されれば、国連が事実上解体してしまうことを誰もが知っていたからです。

 国際司法裁判所が米国のニカラグア攻撃を非難した時、今と同じ人々が構成メンバーだったレーガン政権の公式の反応は次のようなものでした。すなわちレーガン政権は国際司法裁判所の司法権を拒否し、「他の国々は我々に同意しないので、我々は何が米国の司法権に属することなのかを決定する権利を自分のものとして留保する」というものでした。これは[私の解釈した言葉でなく]引用している文言です。

この場合、その権利というのはニカラグアを攻撃する権利でした。これほど極端な単独主義行動主義はほとんどありません。そしてこれは米国のエリートから受け入れられ、拍手喝さいを受け、実際すぐ忘れ去られました。あなたが今度米国に旅行した時に、あなたが訪れる政治学の学部で世論調査をしてごらんなさい。ニカラグアのことなど聞いたことない人々を発見できると思います。それはこのように[記憶から]消し去られてしまっています。国際司法裁判所の決定を支持してすべての国に国際法を守るよう要求する安保理決議に米国は拒否権を発動しなければなりませんでしたが、その事実も同じように消し去られています。お分かりのようにそれが極端な単独行動主義であり、それはさらに以前にまで遡ります。

 世界を実際に最終核戦争に導く大きな危機すなわちミサイル危機の直後に、ケネディー政権はキューバに対するテロ活動と危機の背景となっていた経済戦争を再開しました。このとき、尊敬されていた政治家であり政治的色分けでは最も自由主義的なケネディー政権の顧問であったディーン・アチソンは、米国国際法学会で演説をしました。その中で彼は本質的に2002年のブッシュ・ドクトリンと同じ事を述べました。彼が述べたことは、米国の「権力、地位そして威信」に対する挑戦に[武力で]対応したとしても何の「法的問題」も起きないというものでした。これより極端な論理は他にはありません。2002年9月のとの違いは、それが作戦上の政策から公式の政策になったことです。それが違いです。

 国連が機能することを米国が拒否している限りは、国連は何も関係がありません。植民地からの脱却と第2次世界大戦の破壊から世界の他の国々が回復しために、1960年代中頃には国連は幾分独立した存在になっいましたが、その1965年以来、米国は多くの問題において安保理決議で拒否権を行使した点において、断然首位の地位を占めてきました。この点では英国が第2位ですが、他の国々をはるかに引き離しています。そのことは国連の存在を効果がないものとしています。つまり「我々の言うとおりにお前たちはするのだ、さもなければ我々はお前たちをひどい目にあわせるぞ」ということです。現在それはさらに厚かましくなっています。

 キッシンジャーが述べた唯一の正しいことは、現在は自分たちが実行している政策を隠していないということです。

アティリオ・A・ボロン:

 最後の質問です。イラク戦争は米国人の自由にどのような影響を与えてきたのでしょうか。私たちはぞっとするような話を聞いています。それは図書館員が貸し出した本をチェックすることによって疑わしい人物や破壊分子とみられる人物の名前を言うよう強制されたという話です。米国の国内政策への戦争の本当の影響は何だったのでしょうか。

ノーム・チョムスキー:

 そのようなことは起きていますが、それはイラク戦争と明確につながっていないと思います。繰り返し言わせて頂きますが、ブッシュ政権は保守派ではなく国家統制反動主義者です。彼らはたいへんに強力な国家、実際に巨大な国家、暴力的な国家、人々に服従を強制する国家を望んでいます。その背景にはある種の準ファシスト精神があります。

彼らは多くの点で公民権を根元から削り取ろうとしてきました。それが彼らの長期の目的のひとつでした。そして彼らはそれを素早く行わねばなりません。なぜなら米国には公民権の強力な保護の伝統があるからです。あなたが話していたような図書館などでのある種の監視は、それへのステップです。彼らはまた、米国市民でさえも令状なしに弁護士や家族との接触も許さず、人を拘束し無期限に拘留する権利を主張してきました。実際そのことは裁判所からも支持を受けてきましたが、それはかなりショッキングなことです。

しかし彼らは司法省内部の80ページの文書である「愛国者パート2」とでも呼ばれるようなものを新しく提案しました。誰かがそれを外に漏らし、それは新聞社の手に渡りました。そのことについて法学の教授のいくつかの憤慨した記事がありました。これは今までのところまだ計画にすぎませんが、かれらは出来るだけ密かにこれを実行したがっています。これらの計画は、司法長官にいかなる個人であろうとも米国の利益にある程度まで有害な行動を取っていると司法長官が判断した者から市民権剥奪を可能にするものです。つまり、これは民主主義社会において考えられる状態を越えてしまいつつあります。

ニューヨーク大学のある法学の教授は、現政権は明らかに市民から出来る限り公民権を取り上げてしまおうとしていていると書いていました。それは基本的に正しいと思います。それは彼らの反動的な国家統制の政策と辻褄が合うからです。それは経済や社会生活ばかりでなく政治生活の国内の様相を示しています。

アティリオ・A・ボロン:

 チョムスキー教授、アルゼンチンの聴衆にあなたのお考えを述べていただけて、本当に私どもは喜んでいます。

ます。このインタビューを受けて下さり本当る


http://terasima.gooside.com/interview030614argentine.htm

※ 途中の不明部分や末尾はそのまま転載した結果のものです。


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