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ヨーロッパに向けた戦争 哲学クロニクル
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投稿者 力なき市民 日時 2003 年 7 月 13 日 02:43:40:


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哲学クロニクル 第395号
(2003年7月10日)
ヨーロッパに向けた戦争
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本日はしばらく前の論文ですが、アガンベンのイラク戦争論をご紹介します。
図書館で原文をチェックするのに手間取っていましたが、古びていない文章だと
思います。


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ヨーロッパに向けた戦争
ジョルジョ・アガンベン、フィガロ紙、2003年4月7日

【問】あなたのような哲学者は、この戦争にどのように対応されますか。アメリ
カは法を超越する権利があると僣称しているのでしょうか。
【答】この戦争に直面してわたしは、哲学者として、アーチストとして、フラン
ス人として、イタリア人として、労働者として、ブルジョワとして、この戦争に
対応することはできないと思います。わたしたちの存在のすべての側面において、
全体的に対応するしかないのです。ところでこの戦争は、アメリカが権力をか
さに、法律を汚すものであるのは明らかです。国際法はこの数年間に厳しい試
練をうけていたのですが、アメリカ政府は、まだ国際法のもとに残されていたも
のを意図的に無視し、踏み付けにしています。

わたしは、何が起きたかを理解するためには、この国際法の規則の侵犯は、9月
11日のテロの後のアメリカ合衆国のすべての政策の指針となっているパラダイム、
すなわち例外状態というパラダイムのもとで行われていることを忘れてはならな
いと思います。とくに懸念されることは、この例外的で暫定的な状態というパラ
ダイムが次第に、統治するための正常なモデルとなりつつあることです。


【問】というのは?
【答】極言しますと、永続的な緊急事態を意図的に作り出すことが、民主主義国
家を含む現代の国家の基本的な慣行になっているということです。アメリカ合衆
国のブッシュ政権が、アメリカと地球のすべての諸国に、永続的な例外状態を押
しつけようとしているのは明らかだと思います。国家とテロリズムの間の地球的
な内戦に対する対応として、例外状態が作り出されているのです。ワイマール共
和国からナチスの国家に移行したときのことを考えてみてください。そして現在
のイスラエル国家も同じ状況なのです。

最近の歴史が教えてくれるのは、長期的な例外状態や、永続的な戦争状態のもと
では、いかなる民主主義も、存続しえないということです。ということは、アメリカの
民主主義が現在もまだ存在しているとしても、永続的な緊急状態の圧力のもとで、
永続的な戦争状態のもとで、これが反民主主義的な体制に変わってしまう危険が
あるいるということです。

【問】裏返しのテロリズムについて発言しておられましたが、根拠はあるのでし
ょうか。
【答】例外状態が永続的なものとなり、政治の通常のパラダイムとなると、国家
とテロリズムが最終的には同一のシステムを構成するようになり、どちらがどち
らなのか、もはや識別できなくなります。二つの顔をもつ単一のシステムになり、
片方の顔が、もう一つの顔の行動をたえず正当化する役割を果たすのです。そし
てどちらの顔がどのような役割を果たしているのか、もはや区別できなくなるの
です。

【問】この戦争でヨーロッパに生まれている分裂は、深く、持続的なものとなる
でしょうか。
【答】これがヨーロッパに向けられた戦争だというのは、明らかなことだと思い
ます。ヨーロッパがアメリカの覇権を脅かす経済的なパワーとなった瞬間から、
アメリカは政治的にはヨーロッパというものが存在しないことを証明しようとし
ました。この数か月というもの、アメリカ外交はヨーロッパの政治的な統一を破
壊するために、公然かつ組織的に活動しています。そして残念なことに、それに
成功しました。

【問】アメリカは、ヨーロッパを分裂させるためにこの機会を利用したわけです
ね。
【答】この戦争の隠された理由の一つが、そのことにあったのはたしかだと思い
ます。アメリカが広言しないこの理由は、決して二次的なものではありません。
これはヨーロッパに向けられた戦争なのです。

【問】フランスとシラク大統領についての最近のベルルスコーニの発言はどう思
われますか。
【答】ヨーロッパの諸国のうちで、ヨーロッパの政治について、真のビジョンを
示しているのはフランスとドイツだけです。ベルルスコーニやヨーロッパ大陸の
その他の政治家たちは、アメリカの利益の手先でしかないことを証明しました。
外交政策という視点からは、イタリアは1945年以降というもの、「技術的には」
アメリカの保護領のようなものなのです。自国の領土のいたるところにアメリカ
軍の基地がある国が、独立国ではありえないのは明らかです。

【問】「戦争のイメージ」についてですが、テレビの視聴者には、どのような種
類の真理が届けられるのでしょうか。
【答】第一次湾岸戦争で、わたしたちはこうした情報操作になじみました。出来
事とニュースが混じり合い、事実の代わりに情報が伝えられるのです。しかし今
回の戦争には新しい要素がありました。ヨーロッパのすべての国で、大衆が戦争
に反対するために異例なほどの行動を起こしたのです。情報の極端なまでの混乱
と、「視聴者たち」の極端なほどの明晰さが対照的でした。この大衆の明晰さは、
ほんとうに好ましいことです。

【問】アメリカは国連ではまだどのような役割を果たすことができますか。
【答】アメリカは、ヨーロッパが政治的なパワーではないことを証明したの同じ
ように、国連もまた政治的な現実ではなく、せいぜい人道的な現実にすぎないこ
とを証明したのです。戦争が終結した後に、アメリカは人道的な援助を国連に委
ねるかもしれません。しかしこのように国際法が全面的に侵犯されている状態で
は、この任務はわたしには恥辱のように思えます。

【問】爆撃されているバクダッドをごらんになってどう感じられましたか。
【答】ヨーロッパで、真の意味で文化的な統一が存在していたのは、一二世紀か
ら一三世紀にかけてのことでした。この統一されたヨーロッパ文化には、イスラー
ムとヘブライの文化も統合されていました。わたしたちにギリシア哲学を伝えて
くれたアラビア人がいなければ、アビケンナやアベロエスの作品のラテン語版を
復元して伝えてくれたユダヤ人の翻訳家たちがいなければ、近代哲学は存在しな
かったかもしれません。しかしそれ以来というもの、ヨーロッパには文化的な統
一というものが存在しないのです。文化的に統一というものは、アラブとユダヤ
の文化を統合しない限り、不可能だからかもしれません。

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