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青木雄二さんを悼んで(アサヒ芸能9/25日号)キツネ目事件調書
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投稿者 エンセン 日時 2003 年 9 月 21 日 21:38:08:ieVyGVASbNhvI

 
大ヒット漫画「ナニワ金融道」の著者であり、今や日本を代表するマルクス主義者でもあった青木雄二さんが亡くなった。俺と青木さんは同じ昭和20年生まれで京都出身。しかも世間一般 のヤツらとかなり考え方が違うという点も共通していることから、非常に親しくつきあわせてもらった。今回は、青木さんの追悼の意味も込めて、俺の考える青木雄二像を紹介したい。

 まず、俺が最後に青木さんとあったのは4月初旬。この秋に刊行予定の「続・土壇場の経済学」(南風杜刊)の執筆打ち合わせのためだった。当時は体調もいいようで、ホテルでウイスキーの小瓶"を飲もうとしたら瓶のフタが開かないので、ボーイを呼んで「こんな固いの年寄りは開けられんぞ」と、文句を言っていたものである。自分の都合で若者になったり年寄りにな ったりしますな、と笑い合ったのを覚えている。

 また、漫画の新連戦を始める予定で、そのための準備もしていると言っていた。とにかく数年ぶりに見る精力的な姿だった。ところがゴールデンウイーク明けになって突然の入院。すぐに見舞いに行きたかったのだが、俺自身がカゼを引いてしまったため、彼にうつしてはまずいと思い、遠慮した。カゼが治って電話したときは「ちょっと今は難しい」ということになり、結果 的に入院以降、会えなかったのは残念でならない。

 俺にとって青木さんの魅力のーつは、気取らない性格とだれに対しても自然体であることにあった。最初の出会いは共著「土壇場の経済学」であったが、初対面 でいきなり、「あんた本当はやったんでっしゃろ?」と、グリコ森永事件の講から切り出してきたのには、さすがの俺も驚いた。第一声からこの話題を振ってきたのは彼だけである。青木さんが失礼な男だと言っているわけではない。恐らく会った瞬間から共通 のにおいを感じ取ったというか、この人なら心を許せるというのを感じ取っていたのだろう。

 この件をはじめ、感性でさまざまなものの真実を感じ取る能力に関して、俺は青木さん以上に鋭い人をこれまで見たことがない。大ベストセラーとなった「ナニ金」にせよ、彼がこれを書き始めたのは90年代初頭だった。当時すでに株は天井を打ち地価も下落傾向にあったものの、多くの国民の意識はまだバブルの余韻の中にあった。そこで描かれた街金や闇金は、やや一般 生活からは難れた存在だったのだが、今やそれは多くの国民にとって非常に身近なものであり、闇 金被害は社会問題にまでなっている。鋭い先見性はあらためて感服するばかりだ。

 しかも、青木さんがすごいのは、コメンテータ−などとしてテレビに出てほしいという依頼が相当あったらしいが、そのすべてを断っていることにある。動く青木雄二を見た経験ば、読者も恐らくないだろう。その理由を本人に聞いたところ、「わしはテレビは好かん」と言っていたが、恐らくテレビの虚構性を無意識のうちに見抜いていたのではないかと俺は思う。ヤラセと言ってもいいが、その中ではどんなコメントをしやべつても、番組の企画の中で自分もいいように使われるだけ。そのことを感じていたのである。

 某大阪クラブホステスからこんな話を聞いたことがあ る。彼女が青木さんに、「テレビに出ればいいのに」と言うと、青木さんはまじめな顔でこう言ったという。「パカ言うな。あんなもんに出るのはアホだけ。わしのような天才は出んもんや」と青木さんがまじめに 怒るので、ホステスは驚いたというが、それだけテレビの虚構性に多くの人間が気づかず、真に受けている現実。それこそが青木さんにとっては腹立たしかったのである。

 多くの国民が抱いている勘違いへの怒りは、青木さんの作品や著述のすべてに通 底する。例えば「ナニ金」で彼が描きたかったのも、街金の苦労でもなければ債務から逃れる裏技でもない。貧乏人はどこまでも資本家によって搾取される存在ということだ。つまり、貧乏人のくせに自分が中流と勘違いしていろんなものを買わされているが、その結果 、貧乏人は借金を抱え、金持ちはより豊かに肥え太る。そのことに気づかないいぎり、本当の幸橿はないと いうことなのである。

 彼がこうしたマルクス主義に目覚めたのは、バーテンなどをはじめ、仕事を転々としていたときだという。何をやってもうまくいかない生活の中、ドストエフスキーに出会い、そこからマルクスに傾倒していった。それが彼のその後の人生を決定づけた。

 彼とほぼ同じころ、大阪で似たような生活を送っていた男がもう1人いる。最新刊の「『殺し』のカルテ」でも取り上げた三菱銀行北畠支店をおそった梅川である。年齢は梅川がやや下だが、同じような環境にあった2人がこれほど明暗を分けた人生を送ったことは興味深い。青木さんの愛読書がドストエフスキーなのに対し、梅川は大藪春彦の娯楽小説。読んだ本がその後の人生を決定づけると言い切るには無理があるにせよ、今、思えばこの差異はおもしろいものである。

 いずれにしても、俺や青木さんをはじめとする昭和20年生まれというのは特殊な年代である。人口が異常に少ない。その前の世代は「産めよ育てよ」で大勢いたし、あとは団塊の世代。小学校も俺たちは2クラスだが、すぐ下は10クラスあった連中もいた。浪人すれば大変なことになるということは子供のころから意識していたものである。しかも、戦後教育が本格的に始まった年代でもある。それまでと教育方針が大きく変わったおかげで、教師からの変な押しつけもなかった。多少、レールから外れることもありな時代ではあったと言えよう。同じ世代としてはジャーナリストの大谷明宏、評論家の佐高信らがいる。

 実は青木さんも含めて20年生まれを10人集めてー人30万円出し合い、同年代生まれの会を作ろテという計画もあった。といっても30万円で世の中に役立つことを、という話ではない。最後に生き残った者が総取りというものだ。それを目標にすれば長生きするだろう、と話したばかりだった。これが実現していれば、徹底した唯物論者の青木さんは、まだまだ怪気炎を吐いていただろう。合掌。
 
http://www.zorro-me.com/2003-9/ag030925.html

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