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2020年の中国経済 −なお改革途上であり続ける宿命− [中国経済新論]
http://www.asyura.com/0310/hasan29/msg/161.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 9 月 24 日 19:08:52:Mo7ApAlflbQ6s


中国経済改革研究基金会国民経済研究所所長 樊綱

中国経済の先行きは多くの人々の関心事である。発生確率が1%に過ぎないシナリオまで含めれば、21世紀の半ばに世界の強国になるという最も明るいシナリオから、経済危機、金融危機、社会・政治の危機の発生で経済・社会が崩壊するという最悪のシナリオまで、いろいろなシナリオを描くことができる。発展途上国にとって悪いシナリオが発生する可能性は常に存在する。中国は発展途上国であるばかりか、経済移行期にある国家でもある。また人口も多く国土が広いため、崩壊の可能性はないわけではない。しかし、中国経済の現状からみて、中国は発展を通じて問題を解決し、困難を克服し、歴史の影や現状の困難から脱却する可能性の方が高い。中国の経済学者としてやるべきことは、さまざまな解決策を真剣に研究し、問題解決の可能性を現実に変えることであり、問題が解決できないシナリオを想定することではない。我々にとって、「悪いシナリオ」は、あくまで改革と発展に励まなければ酷い結末になるというような一種の警告である。我々の仕事は、「比較的現実的な良いシナリオ」を実現させることである。このため、ここで我々は一つのシナリオ、すなわち比較的現実的なシナリオだけを分析することにする。


一、経済発展の見通し

2020年時点の中国経済は、これまでに比べて大きな発展を遂げてはいるものの、低所得の発展途上国であることは変わりがない。今後、中国経済が年間7%伸びると仮定すれば、現在の為替レートで計算すると、2020年時点の一人当たりGDPは3000米ドルにとどまる。工業化と都市化の進展を考慮して、年間1500万人の農村労働力が非農業に就職できると仮定すると、約2.5億人の農民が農業から転職できることになる。これによって、農村に残って農業を主要な収入源とする農民数は1.5〜2億人にまで減少する。雇用者数で見た工業化の度合いは75%になる。また、これと同時に都市化も進む。ただし、現在の都市化率が35%未満という状況から見て、今後都市化が加速し、農民の都市部への移転(労働力だけが都市部に移動するのではなく農村人口も徐々に都市部に移動する)が加速しても、2020年までに都市化率が60%を超える可能性は小さい。

このことは、2020年時点の中国経済がまだ持続的な高成長期にあることを意味する。工業化の過程が終わっておらず、1.5〜2億の農民が農村部に残っているため、中国の労働コストはまだ相対的に低く、労働集約型産業はまだ発展の余地を持ち、さまざまな製造業が中国で発展する潜在力をもっているため、ほかの国のように20〜30年の発展の後に産業空洞化の現象が起きることはない。また、産業構造面では、中国の産業は一層裾野が広がる。すなわち、労働集約型産業や一般製造業が比較的強い競争力を持つのに加え、科学技術の進歩と教育の普及、企業の近代化などにより、ハイテク・新技術の分野においても中国の企業が発展し、競争力をもつようになる(ハイテク・新技術産業の一部の工程に競争力をもつのではなくハイテク・新技術自体に競争力を持ち始める)。しかし、技術面を含め全般的な後れは埋め合わせることはできず、ハイテク・新技術の国際競争力はまだ弱い。一方、都市化が終わっていないため、インフラや都市の建設、特に沿海地域における多くの中小都市の建設は依然盛んであり、中国経済の高成長を支えることになる。

地域発展面では、2020年においても、中国の地域格差は依然存在する。中国の東南沿海部により多くの人口が集まり、より多くの中小都市が発展する。内陸から多くの労働力と住民が沿海地域に移動するものの、内陸に残る人口も依然多い。このため、内陸地域と沿海地域の一人当たり所得の格差は依然として大きい。しかし、地域間の一人当たりの所得格差の拡大には歯止めがかかり、格差が縮小する方向に向かう。これは、今後、中央政府が内陸部に対するインフラ投資を増やし、商業的に可能な投資も内陸で展開されることにもよるが、もう一つの重要な点は人口の移動である。内陸地域は人口が減少するため、一人当たりGDPが上昇するのに対し、沿海地域は大量の農民労働者の継続的な流入により一人当たり所得の上昇が抑制される。このため、一人当たり所得でみた地域格差は縮小する。しかし、貧富の格差は依然拡大の段階にある。これは、都市部において、高所得者層と中産階級の所得が高い水準にあるのに対し、都市部に流入したばかりの農民労働者の所得がまだ低いためである。しかし、経済が引き続き成長し、雇用も増えれば、この格差に起因する社会問題は限定的である。


二、体制移行の過程

2020年の中国に確実に起きることは、市場経済体制の枠組みが徐々に形成され、国有企業の問題は基本的に解決され、体制改革の進展が遅い一部の大型国有企業を除いて中小国有企業の改革は基本的に完成することである。国有企業の従業員のレイオフ問題は「1世代の問題」であるため、時間が過ぎ去るのに伴い問題はおのずと解決する。同時に、民営経済は比較的大きな実力をもつようになるほか、外資の参入により、再編・私有化を含む国有企業の制度改革もほぼ完了する。この時、中国の会社制度はまだ完璧ではないが、国有企業の問題が基本的に解決するため、ある重要な歴史段階の終わりを意味する。国有銀行の問題はまだ残るが、多くの非国有の株式制民営金融機関の発展により、競争的な金融市場が形成される。これは、資金調達面で中小企業の発展にも寄与する。また、国有企業に由来する銀行不良債権問題も基本的に解決する。ただし、これで銀行システムにリスクがなくなるというわけではない。どのような発展過程においても経済バブル、金融バブル、資産バブルにより銀行不良債権や金融リスクが発生する可能性がある。ただし、これはもはや国有企業によるものではない。一方、資本市場は比較的健全になり、国有株の放出、国有株の流通などの問題も解決される。資本市場の主体は民営企業となり、金融市場もより健康的、より競争的になる。

金融開放面では、2020年の中国の資本市場は、開放の条件を備えている。しかし、資本移動に対する規制は引き続き残る。資本移動はまだ完全に自由化できる段階ではない。規制の中身はその時の国際金融市場と中国金融市場の整備の度合いによる。ただし、資本勘定の開放と人民元の自由交換はある程度実現している。しかし、どのような為替制度を採用するか、為替レートの水準はどこまで調整するかは今後の状況や変化次第である。

政府面では、政治体制改革の課題がまだ残る。ただし、政府が市場のためにサービスを提供するという役割、公共財政の基本的な役割は確立される。政府と企業の関係は国有企業問題の解決に伴い相対的に合理的なものになる。さらに、法制度の整備、政治体制改革は一層深化する。法制度が整備され、各種案件の判例も増え、法律によって財産権を決め、自分の利益を守るというメカニズムも基本的に形成される。これを基礎に、政治改革に対してもより大きな推進力が得られる。

中国経済は今後さまざまな問題や挑戦に立ち向かうことになる。その間、多くの局地的な危機と動揺が出現する。しかし、現状の発展の趨勢や、問題に対処する姿勢と方法から見て、局地的な問題点は全国的な危機や動揺にまで広がることはない。

今後、中国の経済発展と体制改革は依然として漸進的な過程をたどる。2020年になっても、中国の改革は漸進的である。無論、この漸進は、分野によって飛躍的な発展を遂げることや、一部の問題が一定の時期まで累積して急進的な解決法を採らざるを得なくなるという可能性を否定するものではない。しかし、全体的に見て、中国の抱える様々な問題は長期的な問題であり、徐々に経験を積み、少しずつ模索し、古い問題を徐々に解決してはじめて改革が可能となり、新しい体制が確立されるのである。これが中国にとって最善のルートである。後れた発展途上国として中国はもはや社会の大きな揺れや、無政府状態、革命的な社会衝突などによる混乱に耐えられない。このため、中国の経済体制改革と経済発展は2020年になっても急進的な方法で展開することはない。したがって、現在中国の直面している多くの問題は2020年になっても残り、一部の問題はまだ初歩的な解決の段階に過ぎないこともありうる。また、発展途上国として抱える様々な基本的な問題も長期にわたって存在する。このため、2020年になっても、中国は「崩壊」する、社会動乱が起きるなど、様々な憶測や予測が出てくる。また、中国経済・社会にある問題点は近い将来社会危機や社会動乱の引き金になると予測する人もあとを絶たない。しかし、中国が2020年にこれまでシナリオをして述べてきたような発展と改革を実現することができれば、2020年以降も引き続き発展しながら、発展の中で問題を解決し、発展の中で体制改革を実現する。これは中国の宿命である。

樊綱 Fan Gang
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中国経済改革研究基金会国民経済研究所所長。1953年北京生まれ。文化大革命中における農村への「下放」生活を経て、78年に河北大学経済学部に入学。82年に中国社会科学院の大学院に進み、88年に経済学博士号を取得。その間、米国の国民経済研究所(NBER)とハーバード大学に留学し、制度分析をはじめ最先端の経済理論を学ぶ。中国社会科学院研究員、同大学院教授を経て、現職。代表作は公共選択の理論を中国の移行期経済の分析に応用した『漸進改革的政治経済学分析』(上海遠東出版社、1996年)。ポスト文革世代をリードする経済学者の一人。

2003年9月22日掲載


http://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/030922kaikaku.htm


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