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いわゆるシステムズ・エンジニア(SE)の人月契約価格。
http://www.asyura.com/0310/it02/msg/204.html
投稿者 クエスチョン 日時 2003 年 10 月 01 日 06:50:16:WmYnAkBebEg4M

いわゆるシステムズ・エンジニア(SE)の人月契約価格。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/ITPro/OPINION/20030929/1/

 まあ、一般の人間には、関係のない話題かもしれませんが、最先端技術
の契約方式が生産性と結びつかない契約関係であると言う、ちょっと変な、
でも興味を引かれるお話。


[2003/09/30]

顧客企業がインテグレータを使って情報システムを開発する場合,「月額
単価100万円のSE20人を頼む」という契約が今でも一般的だ。こうなると,
インテグレータは必ずしもシステム開発の生産性を上げなくてもよい。む
しろ生産性を上げて開発期間を短くすると,顧客から受け取る金額が減っ
てしまう。


“脱・人月契約”の選択肢
 2年ほど前,ある金融機関が新システムの稼働時期を当初計画より3カ月
も早めたことがあった。開発プロジェクトが佳境の時に,開発期間を3カ
月も縮めるのは大変なことである。たまたまそのプロジェクトを取材して
いた筆者は,開発に参画していたインテグレータに質問した。

 「3カ月も早めるのであれば,割り増し料金をもらえないのですか」
 「いやー。そんなことを当社からは言えません。長年のお客様ですし」

 その金融機関に行って尋ねてみた。

 「3カ月も早めると協力会社は徹夜の連続になるでしょう。開発費を大
目に払う考えはないですか」
 「うーん。それは考えませんでした。前例もないだろうなあ。一部の開
発を先送りして稼働を早めようとしていることもありますし」

 結局,その金融機関とインテグレータは死にものぐるいで仕事を進め,
3カ月もの前倒しに成功した。これを天晴れと言うべきかどうか,筆者は
釈然としなかった。

生産性を上げても得をしない現実

 情報システムを巡る諸問題の中には,大昔からだれもが「困ったことだ」
と認識していながら,何年経っても解決されないものがいくつかある。そ
の最たるものが,いわゆるシステムズ・エンジニア(SE)の人月契約価格
である。

 顧客企業がシステム・インテグレータを使って情報システムを開発する
場合,「月額単価100万円のSE20人を頼む」と,単価と人数を決めて、そ
れで契約をするやり方が今でも一般的だ。額面は請負契約だが,実際は人
月を問うことも多い。こうなると,インテグレータは必ずしもシステム開
発の生産性を上げなくてもよい。生産性を上げて開発期間を短くすると,
インテグレータが顧客から受け取る金額が減ってしまう。また冒頭の事例
のように,生産性を無理やり高めたとしても,対価は特に増えない。

 こうした人月契約の問題を解決するために,「EVM(アーンド・バリュ
ー・マネジメント)」と呼ばれる米国のプロジェクトマネジメント手法を
利用しようという動きがある。

 EVMは,プロジェクトの進捗状況を計画し,かつ測定する手法である。
プロジェクトの計画を立てる時に,必要となる作業の価値を金額で表現し
ておく。プロジェクトが始まった後は,達成した価値と実コストを把握し
ていき,計画値と比較する。こうすることで,コストとスケジュールの効
率を同時に把握できる。どのくらいの価値を達成できたかを見ていくので,
EVMを適用してマネジメントすることを,プロジェクトの「パフォーマン
ス・マネジメント」と呼ぶ。

 経済産業省は2002年3月に,「ITサービス調達ビジョン」をとりまとめ,
官公庁のシステム調達において,EVMによりモニタリングすることを提言
した。さらに今年になって,日本版EVM導入のガイドラインを公表した。
ただし経済産業省は,官公庁のシステム調達をきちんと実施するために,
EVMの導入を推奨しており,人月問題対策に関して明確には言及していな
い。

進捗をしっかり把握できる

 なぜEVMは人月契約問題の解決策となる可能性を持っているのか。EVMを
使うと,顧客とシステム・インテグレータが共通の尺度で進捗を把握でき
るようになり,本来の請負契約を導入しやすくなる。「本来の」とわざわ
ざ言うのは,請負契約を結んでいても,インテグレータがSEを自由にやり
くりできない実態があるからだ。

 100人月かかる開発プロジェクトがあったとする。一人のSEの単価が月
額150万円なら,開発費は1億5000万円になる。このプロジェクトを1億
5000万円で請け負ったインテグレータが生産性を高める努力をして,80人
月で終わらせれば,その分利益が増える。ところが現実には請負契約にも
かかわらず,インテグレータは顧客にSEの体制図を提出したり,顧客のコ
ンピュータセンターにSEを常駐させたりしている。請負というよりも,実
態は準委任あるいは派遣契約と言える。

 なぜ本来の請負契約がなかなか成立しないのか。それは顧客もインテグ
レータも不安だからである。顧客は,「請負といっても本当に開発できる
のか。どんなSEが仕事をしているのがこの眼で見ないと心配だ」と思う。
インテグレータも完全な請負作業はハイリスク・ハイリターンと認識して
おり,顧客の側で仕事をするほうが安全と考える。

 日本の情報システムの世界ではいまだに契約がいい加減である。プロジ
ェクトが遅れた場合,請負契約であっても,顧客は延長分のSE単価を別名
目でインテグレータに支払ったりする。インテグレータのSEが顧客先に常
駐しており,顧客が事実上,なんらかの指示をしたりしているからだ。

 EVMは,顧客とインテグレータの不安を取り除くツールになりうる。両
者が納得してEVMの仕組みを入れれば,「SEが何人働いている」ではなく,
実際のパフォーマンスを把握できるはずだ。

報奨付き契約とEVMを同時に取り入れる

 EVMは進捗を把握するツールであるから,EVMを導入したからといって,
プロジェクトを成功できるかどうかは分からない。開発の生産性を高める
試みについては別途,顧客とインテグレータが知恵を絞らなければならな
い。また,EVMを導入するには,それなりの管理コストが必要になる。プ
ロジェクトの作業を詳細に分割してそれぞれの価値を決め,実際と比較す
るといった手間がかかるためだ。とはいえ,作業を分割し,「WBS(ワー
ク・ブレイクダウン・ストラクチャ)」というものを作るのは,プロジェ
クトマネジメントでは本来必須のことである。

 米国では,EVMと新しい契約方式が大体併行して導入された。新しい契
約方式とは,報奨付き定額契約やインセンティブ付き定額契約などである。
定額契約は日本の請負にやや似たものと考えてよい。あらかじめ契約額は
決めておくものの,プロジェクトのパフォーマンスが良かった場合,顧客
はインテグレータに報奨金を支払ったり,コスト削減分を分け合ったりす
る。こうした契約によって,インテグレータに生産性を高める努力をさせ
る狙いである。

 報奨付き契約には,開発の納期を短縮するといったことだけでなく,顧
客とインテグレータがプロジェクト本来の目的を達成するために,一丸と
なって取り組めるようにしようという狙いもある。本来の目的とは,物流
のコストダウンとか開発のリードタイム短縮といったビジネス上の目的で
ある。

 逆にEVMによる進捗報告は義務である。インテグレータは,頑張れば報
奨金が得られるので,面倒そうなEVMを取り入れざるをえない。もっとも,
EVMが面倒に見えるのは慣れの問題が大きいそうで,「たった一人のプロ
ジェクトであっても,面倒どころか利点は多々ある」とあるベテランのプ
ロジェクトマネジャは指摘する。

 日本の情報システムの世界では,報奨付き契約はまだほとんどない。冒
頭で紹介したインテグレータは,金融機関と報奨付き契約を結んでおけば,
開発期間を短縮した分,対価を受け取れただろう。もっとも,ただでさえ
あいまいな日本の情報システムの世界に,パフォーマンスに応じて支払い
を変える契約を持ち込むのは簡単ではない。しかし,ここから見直さない
と,請負契約への移行,すなわち人月契約からの脱却は進まない。

米国のEVM教育団体が来日

 「EVMだの報奨付き契約だのプロジェクトマネジメントだの,米国生ま
れの手法を持ち込んで解決するなら楽なものだ」と抵抗感を持つ向きは多
い。確かに米国の手法が商習慣の異なる日本でそのまま使えるわけではな
い。

 しかし一連の手法は,国防総省やNASAといった,超大手ユーザーが長年
にわたって考え,実践してきたものである。EVMは米国において35年の歴
史を持っている。まずは先達の取り組みを理解するところから始めるべき
ではないか。

 米国に「College of Performance Management(CPM) 」というNPO(非営
利団体)がある。カレッジという名称通り,EVMに関する研究と教育を20
年以上にわたって実践してきた。このほどCPMが初めて日本で研修を手掛
けることになった(関連情報)。来日するCPMメンバーは,米国の連邦政
府などでEVMを使ったマネジメントを実践してきたベテランばかりである。

☆     ☆     ☆

 なお今回の記者の眼は,筆者の「借金返済シリーズ」の第一弾である。
先に返済計画を公表したときには,「第5回 SEの契約を考える」と題し,
12月上旬に公開するとしていた。5番目に予定していた記事がいきなり初
回に変更になったが,ご了承いただきたい。

(谷島 宣之=ビズテック局編集委員)


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<“人月課金”関連>
読者の皆様,“借金”返済計画を公表します (2003/09/16)
よいSEにはよい報酬を,“人月いくら”はもうやめよう (2001/11/19)
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