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中国・西安日本人留学生寸劇事件と反日デモの背景  [かけはし2003.11.10号]
http://www.asyura2.com/0311/bd31/msg/782.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 11 月 11 日 20:20:26:Mo7ApAlflbQ6s


新自由主義グローバル化と胡錦濤政権の「対日新思考」

「日本製品不買」の要求も

 中国・西安市西北大学の文化祭で日本人留学生と日本人教師が演じた卑猥で恥ずべきパフォーマンス(寸劇)に対して、「中国人を侮辱している」として学生を中心にした大規模な抗議行動が展開された。
 寸劇が行われたのは九月二十九日。寸劇は中国人教師に制止されて途中で終わったが、翌三十日、この寸劇に怒りを感じた学生が学内に抗議の壁新聞を張り出して日本人学生に謝罪を要求、留学生寮を千人を超える学生が取り囲んで謝罪を求め、一部の学生が寮に乱入して日本人学生に暴力を振るうという事態になった。その後、西北大学以外の学生や市民まで巻き込んだ街頭デモが行われ、「日本製品不買」まで掲げられた反日運動の様相さえ呈し始めた。
 この反日学生デモの背景には、胡錦濤体制が押し進めつつある「対日新思考」政策への反発と、民主化の建前のもとで今も厳しく続く言論弾圧への怒りがある。それは、単なる民族主義的反日行動ではなく、共産党一党独裁支配下で新自由主義グローバリゼーションを押し進める中国社会の分裂と対立を反映する民衆の闘いの表現である。

馬立誠の「対日新思考」論文

 新自由主義グローバリゼーションの推進による経済成長を最優先の至上命題とする胡錦濤政権は、日本との経済関係強化の妨げとなりかねない「歴史問題」「靖国問題」を後景化させようとしてきた。昨年十二月、そのような方向性を公然と打ち出す論文がオピニオン誌『戦略と管理』(02年第6期)に発表され、それを契機に新聞や雑誌、インターネット上で論争が展開されてきた。
 「対日関係新思惟=思考」と題するその論文の筆者・馬立誠は人民日報評論員。その論文の大要は、経済成長と近代化のためには安定した国際環境、国際関係を作る必要があり、「日本に対する固定観念を脱して日本との協力を深めるべきだ」というものである。
 そこでは、次のような「大胆」な主張が展開されている。
 「国土が小さく資源の乏しい日本が世界第二位の経済的地位にあるのは、アジアの誇りと言える。日本は民主・法治体制を確立しており『軍部』が専横する状況にはない」
 「日本の民族主義者の言動に、両国民は警戒している。石原慎太郎都知事の主張は、日本に危害を与えるだけだ。だが、日本では友好を促進しようとの声が大勢だ。対日関係では、古い観念を捨て新しい思考を始めることが重要だ」
 「中国は戦勝国であり、大国であるという度量を持たねばならず、日本に厳し過ぎてはならない」
 「日本の謝罪問題は解決しており、形式にこだわる必要はない。日本は低利の借款で誠意を示してきた。われわれは十分紹介してこなかったが、いまは正確に評価すべきだ」
 「日本が政治・軍事大国をめざすこと、例えば平和維持活動のための軍隊派遣にも騒ぎ立てる必要はない。新たな競合の場は経済と市場であり、両国民は狭い観念を克服して一体化に向けて進むべきだ」(朝日新聞03年2月21日に掲載された論文要旨から)。
 まさに、グローバリゼーションのためには、「歴史問題」も「靖国」も日本の軍事大国化も海外派兵もたいしたことではないという主張である。

「対日新思考」と胡錦濤政権

 この馬論文を機に、「対日新思考」を打ち出す論文が次々に現われた。「歴史問題」を棚上げし日本の国連安保理常任理事国入り支持など五項目の対日政策を「外交革命」として提案した時殷弘(中国人民大学国際関係学院)が『戦略と管理』(03年第2期)に掲載した一連の論文。日本の軍事力の拡大を一つの国家として是認すべきだとする論文。アジアの軍事大国である中国と日本が韓国と共同して安全保障機構を作るべきだとする論文。日本のODAが中国の近代化を促進したことを評価し、往復一千億ドルを超えた中日貿易や三千億ドルを超えた対中投資(契約ベース)を軸に相互の経済的利益増大をはかるべきで、「情緒的反日論」を克服すべきだという論文。このような「対日新思考」を提起するさまざまな論者の論文が、多くの雑誌や新聞に登場した(辻康吾「中国の『対日接近』論争」『世界』03年11月号)。
 当然にもこのような「対日新思考」には、「歴史認識こそ『避けて通れぬ鉄の壁』という林治波の論文など、厳しい批判が続出している。しかし特徴的なことは林治波が時殷弘と同じ人民日報評論員という位置にあるにもかかわらず、彼の論文は『戦略と管理』のような権威ある雑誌にではなく、インターネット上でだけ展開されているということである。激しい対日批判も多いが、すべてインターネット上で展開され、一般メディアには掲載されていない(辻前掲論文)。
 時殷弘は『東邦時報』(03年4月17日)とのインタビューで、胡錦濤の「対日関係には新思考が必要」という発言を紹介している。共産党中央宣伝部は「対日新思考」論者も招いた座談会を開き、今年七月にはそれをまとめたパンフレットを地方幹部に配布した。胡錦濤政権の意図はそこにある。

言論弾圧と「反日」封殺に怒り

 五月十八日、香港の中国人権民主運動情報センターは、四川省で報道の自由や天安門事件の再評価を求めるウエブサイト「天網」を主宰していた黄 氏が、同省成都市で国家政権転覆罪で懲役五年の判決を受けたと発表した。
 十月の党中央委第三回全体会議(三中全会)を前にして、八月には政府情報当局が、政治改革、憲法改定、天安門事件の再評価に関して、独自の意見を発表しないよう指示を出していたが、九月に入って主に大学や研究所、メディアに対して、共産党独裁など十の原則を示して政治改革論議にタガをはめるとともに、政治研究者らが政治改革に関する論文や意見を勝手に国内外で発表することを禁ずる文書を出した(朝日新聞03年9月25日)。
 アジア・ウォール・ストリート・ジャーナル紙(03年9月24日)は、北京の情報当局が政治改革などについての記事を掲載した四つのインターネットサイトを閉鎖したと報じている。
 八月四日、黒龍江省チチハル市で旧日本軍の毒ガスがもれ出して四十人以上が死傷する事件が発生し、日本に賠償を求めるネット署名運動が展開され、百万人以上の署名が集まった。この署名簿を日本大使館に渡そうとするデモが計画されたが、北京市当局はこれを禁止し、中国のメディアはこの署名運動やデモ禁止問題について、一切報道しなかった。(辻前掲論文)。
 警察当局は、日本人学生の謝罪を求めて留学生寮を包囲していた学生たちを、十月三十一日午前一時半という真夜中に治安部隊を導入して排除した。そして留学生たちを市内のホテルに移し、学生たちに居場所を知られないように警察車両で移動させるなどの措置をとった。
 さらに当局は、学生の動きを抑えるために外部との出入りを制限し、事実上大学を封鎖し、デモに参加させないようにした。「なぜ中国人を侮辱した日本人を守り、われわれを弾圧するのか」。このような怒りが燃え広がった。
 十一月一日に西北大学正門前で行われた学生のデモには、「民主への支持を解禁、理解しよう」「封鎖を解除せよ」というスローガンが掲げられていた(朝日新聞11月3日)。
 そこには、胡錦濤政権と中国共産党官僚支配体制が、新生中国、革命中国の出発点であった「反帝国主義」を投げ捨て、日本帝国主義の侵略戦争についての「歴史認識」も封殺して新自由主義グローバリゼーションに突き進もうとしていることへの怒りと、言論弾圧への怒り、民主化への熱望が表現されている。「反日」の封殺を許さず、人権弾圧と言論弾圧を許さず、民主化を求める闘いに連帯しなければならない。
(11月3日  高島義一)


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