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Re: 小泉氏は頭が砕けている!! − 「食糧自給率40%」で「一大農産物輸入国」がどうして「農業鎖国」なんだ! −
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投稿者 なるほど 日時 2003 年 11 月 30 日 00:07:05:dfhdU2/i2Qkk2

(回答先: 小泉氏は頭が砕けている!! − 「食糧自給率40%」で「一大農産物輸入国」がどうして「農業鎖国」なんだ! − 投稿者 あっしら 日時 2003 年 10 月 22 日 19:25:26)

誰が日本の農業をダメにしてきたのか
│メディア│ホーム│

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テーマ「日本の農業」
対 談 中村敦夫 × 秋山豊寛さん
■■■■■■■■■■■(日本最初の宇宙飛行士、元TBSワシントン特派員)

中村 私も秋山さんと同じテレビ業界の出身で、俳優だけでなく情報番組で世界中の取材をしたり、爆撃機や潜水艦に乗ったり、ヘリコプターからロープで氷山の上に降りたりと、一般の人ではなかなか体験できないような場面をいくつも経験してきました。
 
 けれども実際に宇宙船に乗って9日間、宇宙を旅されてきた秋山さんの前では素直に「参りました」と言うしかない。百人斬りの剣豪が千人斬りの剣豪にあったみたいな感じですね(笑)。それに秋山さんは環境問題についても私よりもよくわかってらっしゃる。
 
秋山 とんでもない。私は素人ですよ。中村さんの過去の対談を読ませてもらいましたが、環境の話は語り尽くされていて、私が付け加えられることなんて残っていない(笑)。

中村 いやいや、今日はたくさん話してもらわないと(笑)。まず最初に、宇宙から地球を見た瞬間の感想を教えていただけますか。
 
 実は私、アメリカ留学して世界地図を見た時に、「日本が中心にない! 端っこだ」と非常に驚いたことがあるんです。コペルニクス的大転換と呼べるほどの衝撃だった。宇宙から地球を見るという体験は、きっとその何十倍も衝撃的なものではなかったかと想像しているんですよ。
 
秋山 地球はすごくきれいだな、というのが第一印象でした。地球の直径が約1万3000キロなのに対して、スペースシャトルも宇宙ステーションも上空400キロの高さです。だから丸くは見えませんでしたが、視界は広くて700キロ平方が見渡せました。午後4時の夕焼けから夜7時の閣の世界が、宇宙船の上からは同じ時刻に一望できたんです。
 
中村 1961年4月12日にガガーリンが人類で初めて宇宙に行き、「地球は青かった」と言った。それと同じような感じですか。
 
秋山 ええ。海ももちろん青く見えますが、地球のへりの部分、つまり大気の部分がものすごく青いんです。これは太陽光線が大気の中に入って拡散した色なんですが、その青がトルコ石の青が透明になったような感じのコバルトブルーなんです。これが何とも言えないほどきれいだった。
 
中村 上空400キロからですと地球の大地の凹凸はわかるんですか。
 
秋山 凹凸というより、色合いの違いぐらいしかわかりませんでした。中村さんは「ものの見方の大転換」とおっしゃいましたが、私はとにかく地球の存在感に圧倒されたことを今でも鮮明に思い出します。大きな地球を目の前にしただけで厳粛な気持ちになるような、強い存在感を地球そのものに感じました。
 
中村 普段の生活のなかでは、なかなか地球の存在感を感じることはありませんよね。やはり初めての体験に興奮しましたか。
 
秋山 ええ。ロシアの宇宙飛行士は「こんな高いところまで来て地球を見られるなんて、人間の存在はいかに偉大であるかを改めて感じた」と言っていました。でも、僕は逆に「人間ってちっぽけだな。たかが400キロ離れただけで、人間の痕跡はほとんどわからないんだな」と思っていました。
 
中村 地上で暮していると、環境汚染が進んでも、「まだこの広い地球のどこかにはきれいな場所がある。逃げ道がある」と錯覚してしまいがちだと思うんです。宇宙から地球を見て、しかも1周を90分で回ってしまうとなると、「地球は小さい」と感じましたか。
 
秋山 率直に言って「地球の環境がひどくなっている」ということは、見た目ではわかりませんでした。ただ、自分の知識なり意識を働かせた上で一生懸命見てみると、「なるほど、フィリピンはだいぶ赤茶けているな。こんなに伐採しちゃったのか」という痕跡らしきものはわかる。ただ、それよりも「本当にこんなきれいなところに私は生まれたのか」、「こんなきれいなところで私は暮しているんだ」と今、喜びを一番強く感じました。
 
中村 地球が愛おしいとか、大切にしたいというような感情ですか。
 
秋山 自分はこんなきれいなものの一部なんだなと思いました。一体感と言うと少しかたい表現だし、属しているというのもちょっと文学的すぎる。とにかく一緒なんだということを強烈に感じました。

■「無限の経済成長」を求める欲が、
  人間や地球をダメにしている。
 
中村 私もいろんなところへ行きましたが、客観的に見て非常に危険な状況で取材をするので、いつも「恐くないですか」という質問をされるんです。私の場合、死ぬかもしれないとは思うけれども、あまり恐いという感情は持たない。秋山さんも本で似たようなことを書かれていて、同じ感覚なのかな、と思いました。
 
秋山 生理的な恐怖はあったかもしれませんが、宇宙に行くこと自体は論理的に考えて安全だと思っていました。
 
 私はTBSのワシントン支局に勤務していた時にチャレンジャー事故をフォローしていたんですが、結局、人間の問題で事故は起きたわけです。今度のコロンビア号の事故も人為的な要素がとても大きい。チェルノブイリの原発事故だって人間的要素から起きたと言ってもいい。
 
 大きなシステムというのは、人間が作ったものが人間によって人間に大きな災害を与えるものに転化していくものだという気がしているんです。だから人為的要素がなければ大丈夫だろうと思っていました。
 
中村 人類の脳の性能そのものは、石器時代から今に至るまであまり変わってないという話を聞いたことがあります。人類の歴史が集積した知恵や文明はあるけれど、その巨大な文明を操作するのは石器時代と同じ性能の脳を持った人間だというんですね。
 
 そして私は、もうすでに文明の力の巨大さはピークまで達していると思うんです。つまり文明を繰作する人間の愚かさによって取り返しのつかない危険が起きた場合、もたらされる結果はものすごく重大なものになると思うんです。
 
秋山 合成化学物質による遺伝子の損傷などを考えると、むしろ昔の人のほうが人間的な情緒、判断力も含めて健全で、生物として完璧な十全性を備えていたかもしれませんね。
 
 私、山の暮しをはじめて気がついたんですが、生理的な感覚、聴覚や視覚や嗅覚が、東京にいる時よりはるかに広がったんですよ。ニオイがわっと広がると、なんかこう、匂いや香りが見えるような感じがするんです。
 
中村 それは本来、人間が生物として持っているすごい能力だと思うんです。ところが複雑な文明社会のあらゆる規則の中で縛りつけられて、減退して、人間そのものの能力が落ちてきた。その結果、人間が本来獲得できる幸せまで放棄させられている気がします。
 
 これは現代社会が人々に「無限の経済成長」という強迫観念を唯一の価値観として押しつけているからじゃないかと思うんです。つまり生活最小限のもの以上に「もっともっと」と求めないと幸せになれないという一種の信仰のようなもの。それが人間や地球をどんどんダメにしていっているんです。
 
秋山 特に日本のダメになり方は急激で、欲望のタガがはずれてしまった。
 
中村 物事の価値を判断する基準が非常に単純化されて、利益が上がらなければ、ノルマが達成されなければ、「人間としてダメ」とみなされる。物事が動くときの規則が、それのみになってしまっているんですよね。
 
秋山 稲をつくって「1反から10俵とれた」というのも穂先の価値、結果の価値でしかないんですよ。稲から見れば茎もあって葉っぱもあって、それが縄になったり、俵になったり、ゴザになったりするのが本当の結果なんです。米が1000万トン収穫できたら、その分のわらがある。ところが今、日本は韓国や中国からわらを輸入しているんです。そんなものまで輸入したほうが合理的だというシステムになっているんですね。
 
中村 数値だけが価値になってしまっている。
 
秋山 だから穂先の結果しかみない仕組みになってしまった。僕らが失ったものと得たものとのバランスを比べると、失ったもののほうが大きすぎる。これは一体何なんだろう。
 
中村 「人間は労働する動物である」という言葉には深い意味がある。それなのに現代は労働を単なる賃金という数字でしか考えられなくなっています。労働すること自体が生きていることであり、喜びでありという、最も重大なものが抜けていく社会なんですね。
 
 だから数字に反映されないものは全部消していくということになる。環境破壊はまさにそこから生まれてきているわけですよ。
 
 ただ、どんなに利益を追求しようが、生命環境が脅かされていく中では「我慢しろ」と言われても、限界がある。背水の陣に立たざるをえない時が必ずくると思う。21世紀がまさにそうだと思っています。
 
秋山 「環境が壊れていっている」と私たちが実感しなければ、もっと早く破局に向かって突き進む可能性はあると思います。自動車業界も、空気を浄化する費用を負担しないでもうけている。消費者である僕らが気がついて規制するという意識にならない限り、事業主は自分たちの利益だけ考えて、どんどん環境破壊を進めてしまう。
 
 僕らが「もはやこれ以上は許せない」と感じること自体が抑止力になる時代になってきた。これは1992年の国連環境開発会議以降高まった世界的な意識ですが、当時、日本の宮沢総理は行かなかった。あれは日本にとって象徴的な出来事でした。
 
中村 日本だけが意識不明だった(笑)。
 
秋山 中村さんがおっしゃっている「今がピーク」というのは、我慢の限界だという人たちがマジョリティーになりはじめている、そういう時代なんだろうなと思います。
 
中村 従来の経済の感覚から言うと、環境問題に目を向けないで進んだほうが効率がいい。それに歯どめをかけるのは政治しかない。私が無理やり議員で踏ん張っているのは、それが重要だと考えているからなんです。
 
秋山 それはすごくよくわかります。私も草葉の陰からじゃないですけど(笑)、陰ながら応援しています。
 
中村 陰からじゃなくて一緒にやってもらいたいな(笑)。カミングアウトしてほしい。
 
■環境保全型農業を教える場が
 日本にはないという現実。
 
中村 戦後、日本は工業国家として経済大国になりましたが、その路線はもう限界に来ています。産業の空洞化、金融機能の麻痺、財政赤字の拡大という三重苦から脱する方法を探すのは出口のないパズルです。日本はこれからどんどん疲弊していくでしょう。
 
 今後は世界的規模の食料危機、あるいは日本の自給率といった食糧問題が非常に大きなテーマになると私は考えているんです。
 
 政治的な必然性として、食糧の自給と、失業者の雇用対策としての農業、漁業分野をもう1回見直されなければいけない。そういう意味で、秋山さんの個人的な思いや「農のある暮し」の実験が多くの人々のサンプルになっていくと思うんです。
 
秋山 自給率という点については、例えば、1反の田んぼから素人の私でも6俵のコメが収穫できるわけです。僕のところは標高620mだからプロだって平均7俵ぐらいです。
 
中村 そうすると1俵1万5000円ぐらいですか。
 
秋山 僕らのところは「ひとめぼれ」が1俵1万3000円ぐらいですね。
 
中村 じゃあ1反で10万円にもならない。
 
秋山 そうです。だから「黒米」という1俵6万円のコメを作ったりしています。要するに水田作物を主食として考えていないんです。
 
 1961年の農業基本法がおかしなものだったけど、このあいだ新しい農業基本法が作られた。その方向性はいいと思いますが、まだ欠陥のある基本法だと思っているんです。
 
 実は中山間地の人々が農産物の生産で生きていた時代はなくて、山の人たちの暮しは森をどうするかによって成り立っていたんです。「山の上まで米を作れ」なんて、無理な話なんです。中山間地なら中山間地向けの食べ物なり農業のやり方があるんですね。
 
中村 先人の知恵があるのに、杓子定規の下で活かされていない、とお感じですか。
 
秋山 ええ。私がもう一つもったいないと思っているのは、農業高校の志望者が少ないためにどんどん廃校になっていることです。せっかく新しい農業基本法で「環境保全型農業の推進」をうたっているのに、実は環境保全型農業を具体的に教える場がない。それでは根付くはずがない。結局、相変わらず農薬を使うのが当たり前という慣行栽培しか教えていません。
 
 それは慣行栽培が最良の方法だからではなく、システムとして栽培には農薬が要るんだという論理を守りたいがためだけにやっているように思えてならないんです。
 
中村 秋山さんは農業高校の活用法のアイデアがあるそうですね。
 
秋山 今の農業高校は少なくとも3つの役割を担えると思っているんです。
 
 一つは、環境保全型農業をどう具体的に実現していくのか、その担い手を公共の資金を使ってきちんと育てていくこと。
 
 二つめは、ご先祖から受け継いだ田畑を活用するためにも、定年退職が近い人が通信教育でオーガニックも含めた農業を学ぶための「定年帰農」事務局としての役割。
 
 三つめは、新規参入のための教育機関としての役割。いろんな新規参入の形はあると思いますが、それを補助していく意味での開かれた学校にしていくべきだと考えています。
 
 他にも不登校児に何かを知ることの喜びを、自分なりのリズムで獲得する場としての農作業場のような使い方もある。トータルとして今の時代をどう受けとめていくかを考えれば活用方法は幾らでもあるはずです。そういう点では「中村さん、頑張って」としか言いようがない(笑)。
 
中村 これからの経済は原則として環境を考えざるを得ませんよね。それは貿易を活発にしてグローバリズムを進めるというのとは全く逆の方向です。地域の経済が自立して、その小さい範囲の中で循環していくやり方でないと環境経済は成り立ちません。
 
秋山 農業でも地元で生産して地元で消費する「地産地消」を本当に根付かせなければなりませんね。もう一つ言うと、人間にとって基本である「食」について考える「食育」に関わる教育を現場で浸透させるためには、給食制度に手をつけないとダメなんですよ。
 
中村 そうです。まさにその話をしようと思っていたんです。
 
秋山 給食制度の広域化にメスを入れて、本当に地域でつくったもの、しかも、地域の有機農家が作ったものを使うべきですよ。
 
中村 全くその通り。環境政策は霞ヶ関で数値的に計算して命令したってできるわけがないんです。その土地の事情に応じた創意工夫や、先人たちの知恵を生かすやり方でやらなければいけない。これからは地方の人々にも自立能力が必要になってくる。
 
秋山 地域の問題としての環境の話をすると、今、日本の地下水で硝酸塩に汚染されてない地下水は殆んどなくなっている。かつて福島では阿武隈川周辺は川の硝酸塩の濃度、窒素濃度は、最上川より少なかったんです。
 
 ところが洪水が起こったために、川岸にパイルをパーツと打ち込んでしまった。結果として川と地下水の交流が断たれたんです。
 
 先日調べてみてわかったんですが、春から夏にかけて地下水の窒素濃度がものすごくふえているんです。これは明らかに畑に使う窒素分、化学肥料が多すぎるからだと考えられますが、犯人を特定することができないのでどうすることもできない。 
 
 最近、除草剤の影響で永久歯が生えない子どもがものすごい勢いで増えていますよね。ヨーロッパの場合はいわゆる予防原則で、科学的に因果関係が説明できなくても、蓋然性が高ければそれに対する措置をとるという発想です。しかし日本の場合、予防原則が農林水産省と厚生労働省の役人、それに御用学者といういわゆる農業界の常識の中で阻まれているんです。
 
中村 実は私、けっこう楽観しているんです。それは「もう日本はどん詰まりに来た」と意識している人はまだ少数だとしても、確実に近い将来、多数者の意識に変わり得る状況になっているからなんです。どう考えても、もう脱出せざるを得ない時が来る。
 
 少数者としてはそれまで頑張り続けて、その時にどの山に登るべきかをはっきり示せるようにしておかなければならない。今はその過渡期だと思って、我慢しているんです。
 
秋山 それはなかなかつらそうですね(笑)。
 
中村 私は本来、60歳になったら出家しようと思っていたのにね。今は地獄と結婚したような状況です。
 
秋山 地獄に入っているんですから、出家したようなもんですよ(笑)。
 
中村 まさに苦行僧の心境ですね(笑)。
 
■食糧の安全性や健康への視点が
 抜けてはいないか。
 
中村 今の日本社会は無理やり新しいものを作り出して浪費を繰り返さないと、経済が成り立たない状況に陥ってしまっています。そうした流れをどう思われますか。
 
秋山 浪費を繰り返していくのが経済発展だという神話の中で、僕らは泳ぎ抜かなきゃいけなかった。ところがその結果、泳ぐのに邪魔なものばかりがぷかぷかしている海を作り出してしまっていた。神話の崩壊です。
 
中村 だけど浪費も嫌になっている人たちもどんどん増えていて、本能的に「原初的なものに戻りたい」という欲望が高まっていると思うんです。
 
 そこで秋山さんの体験からくる「自給自足を目指すならこうやればいい」という具体的な話を開くと非常にパワーをもらえる。とにかく土地を3反耕して我慢すれば、飢え死にはしないよ、と。
 
秋山 畑2反は大変です。コメを1反と畑が5畝あれば苦労はしませんよ。
 
中村 次々と新しく出る商品を買いまくることはできないにしても、本質的には困らない生活ができるということですね。
 
秋山 労働のプロセスそのものが気持ちいいんです。人間は部屋の中だけで暮している生物じゃないということを実感できます。それから、周りの生物たちとの関係がすごく具体的に見えてくる。さらにオーガニック (無農薬) でやっている場合には、自分たちが少なくとも地球を傷めてはいない、自分が正しい側にいるんだという安心感みたいなものも得られる。
 
中村 働かないで本当に自由になる時間は、どのぐらいの割合であるんですか。
 
秋山 季節で全然違いますね。冬場は出稼ぎと称して、方々で話をしている時間が長いんです。たとえば「田舎のヒロインネットワーク」という農業をやっている女性のグループがあるんですが、ここが方々で自主講座をやっているので、私も転々と遊び歩いています。
 
 やっぱりオーガニックをやろうというのは、地域でどうしても孤立するから、こういうグループは必要になってくるんですね。
 
中村 孤立するのはなぜなんでしょう。
 
秋山 現在の日本の農業システムと違うことをやるからです。まず現状のシステムでは、圃場整備は集落単位で行われています。そして上からあふれてきた水を下で使うので、誰かが一人でオーガニックでやろうと思っても、実際上、JAS規定に従った認証は取りにくい。もしオーガニックをやるとしたら地域全体で取り組まなければいけないんです。

中村 日本の農業の方向性自体が問題なんですね。これまでは農水省、農協、薬品会社の三位一体によって農地の大型化、工業化、あるいは農薬をどんどん使うことによって成り立たせてきた。そこが実際にオーガニックをやるうえで大きなハードルになってしまう。
 
秋山 問題はそれだけではありません。今のシステムでは、一定以上の圃場を持っている人は法律で強制的に農業共済という保険に入ることが義務づけられているんです。ところが共済への加入は一定の防除をすることが前提になってしまうんですね。航空防除をやっていくと、1反当たり3600円も払うわけですよ。その上、散布する農薬の量も3倍以上で全く必要ない場合も実施することがある。ヘリコプター会社と薬品会社がもうかるだけなんですよ。
 
 つまり法律で自然環境や循環型農業をうたっていても、具体的な現場になってくると、「環境保全型農業」はあいかわらず「変りモノ」扱い。法律は単なる理念になるわけです。
 
中村 これは大きな矛盾点ですね。
 
秋山 共済という農業者を保護するような法律も、現実には慣行栽培を前提とした法律なんです。そのため薬を撒かないでやっているオーガニックの人たちは、掛け金は払っているけれど、被害が出ても保証は受けられないんです。そういう矛盾もある。
 
 だから、やるなら地域ぐるみ、農協単位でやるしかない。農協自体がオーガニックを目指している場合はいいのですが、まだ多くはありません。ご存じのように農業の現場の中核は60歳〜70歳の人で、その世代に問題意識の高い人たちがいたから変わってきた地域もあります。ところが、その人たちはもうすぐ現場から消えてしまう。そうなると農薬・化学肥料使用は当たり前という教育しかうけていない30代、40代、50代がそのまま現行のシステムの中に組み込まれてしまう。次の世代を大きなシステムの弊害から守る対策がいまだにできていないのが現状なんです。
 
中村 有機農業のような生産性の低いものは、今の合理的な価値観からすると邪魔になってくる。しかし携帯電話をつくるのと野菜をつくるのとを同じように考えていると、食糧の安全性や健康に対する効果についての視点がすっぽり抜けてしまう。これが一番大きな問題です。
 
秋山 しっかり教育をしていけば、長い目でみれば生態系を豊かにしていくことが人間にとってもいい。実は「生産性が高い」。だから薬は使わないほうがいいんだという自覚が農家の中に生まれてくると思うんですよね。
 
中村 お話を開いていると、秋山さん、とっても幸せで楽しそうですね。
 
秋山 ええ。ただ、あまり大きい声では言わないようにしています。なぜかというと歴史上、一番大きなカは「嫉妬」「怨念」「羨望」だと思っているからです。「オレは幸せだ」と言った瞬間に、そういうどろどろした嫌な気持ちがいっせいに…。
 
中村 集中攻撃で向かって来る(笑)。いやな社会ですね。
 
秋山 これは農家の暮しで得た知恵なんです。厳しい時には「大変で死にそうだ」と明日にも首つりしなきゃいけないようなことをいう人はいるけど、うまくいったときには「まあまあです。中村さん、結構つらいところもありますけどね」というんですよ(笑)。
 
中村 それは演技カがいりますね(笑)。
 
秋山 いや、人の恨みを買わないように「幸せ」の反省をいつもしているだけなんです。

(2003年「通販生活」秋号)

http://www.monjiro.org/media/031120/index.html

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