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Re: ‘nobility obliges’から‘ability obliges’への転換 −如往さんへの返答
http://www.asyura2.com/0311/dispute15/msg/225.html
投稿者 戦争屋は嫌いだ 日時 2003 年 10 月 25 日 07:58:16:d/vusjnSYDx0.

(回答先: ‘nobility obliges’から‘ability obliges’への転換 −戦争屋は嫌いださんへ− 投稿者 如往 日時 2003 年 10 月 24 日 19:31:55)

如往さん

拙文にレスポンスいただき恐縮です。

モームは好きな作家(といっても「人間の絆」と「アシェンデン」しか読んでいませんが)ですが、残念ながら「剃刀の刃」は読んでおりません。機会があったら読んでみましょう。チベットの高僧が登場するなど面白そうですね。

日本におけるNobles Obligeの歴史的位置づけについてあまり考えたことはありませんでしたが、一つ言えることは日本においては伝統的に天皇家が象徴として都にあって「君臨すれども統治せず」の状態で存在すると同時に、武家が実効的支配体制をしくというdual systemだったわけで、その中で真の貴族階級である天皇家ならびに公家は近親結婚などで、どんどんひよわになっていったと理解しています。この辺は西洋の王室が積極的に国境をまたがって、縁戚関係を作っていくのと対象的です。(英王室でも今のエジンバラ公など、確か元々はギリシャの皇太子だったはずです)日本では伝統的に貴族階級はNobles Obligeを励行するには、すばり言って実力不足だったのではないかと思います。

天皇を見ても同様のことがいえます。昭和天皇を見ても平成天皇を見ても知力も体力も日本に君臨する支配階級というには一寸という印象があります。今の皇太子はその点知性はわかりませんが、非常に誠実な印象は受けます(弟とえらい違いだ)。これは皇后の影響かもしれません。今のように情報の流通が早いと不始末があればすぐ下々に知れ渡ってしまうので、もう王室にせよ皇室にせよ、神秘性に基づく統治を維持するのは難しいと思います。欧州大陸の王室はその点達観して、自転車で買い物にでかけるなどごく普通の市民と同様の生活ぶりです。英国の王室もここ十数年不祥事続きだったことに加え、今回のダイアナの日記関連の不祥事で、もうエリザベス女王が最後でその後は共和制になるのではないか、という人が増えています。

そうした中で明治維新後の日本では実力のある者が支配階級を占める一種の実力主義が導入されたと理解しています。したがってNobles Obligeは拡大解釈されて、先天的に所与の貴族・支配階級でなく、獲得された支配階級をベースとしたNobles Obligeという形になったのでしょうね。(まさにAbility obligesということです。)

ところで英国の階級制度は実はまだ至る所に見られるのですが、この国の階級制度の面白いところは所謂労働者階級が、自分達を必ずしも卑下していないことです。「あいつら(上流階級)にはあいつらの生き方があり、自分たちには自分たちの生き方があって、お互い干渉せずに尊重しあおうじゃないか。」という考え方のようです。階級制度を社会的な機能分化ととらえているのです。これは御説の「庶民の側からの鼓舞」に通ずるかも知れません。

昭和天皇が戦争責任を取らなかったことについては、おっしゃるとおり日本の精神風土において「義」の価値を大きく損ねるものだったと思います。250万の人間が死んでいるわけです。例え天皇が形式的なお飾りであったとしても象徴として利用された責任がありますが、実態は決して単なる象徴ではなかったわけで、あそこで天皇がマッカーサーに懐柔された形となって、日本では「勝者に尻尾を振ってもいいから、結局生き残った奴の勝ちだ。」という浅ましい哲学が横行することになったと思います。自害しなくても退位するだけで一応のけじめはつけられたはずです。明治の人間らしくもない。

ここでちょっと脱線しますが、明治男の気骨とかいいますが、日露戦争から第一次大戦に至るまで日本の軍隊は評価が高かったのです。野木将軍なども軍人としては部下の将兵を機関銃を備えたトーチカに突撃一本槍で攻略させて、数万もの戦死者を出すなど、有能だったとはいえませんが、ロシアのステッセル将軍に対する対応は武士道の鏡といわれ捕虜虐待も絶無でした。松山の捕虜収容所で好待遇を受けたロシア軍捕虜が帰国後、その話を広めたため、第一次大戦中チンタオ(青島)で日本軍に攻撃されたドイツ兵が「マツヤマ!マツヤマ!」と口々に叫びながら投降してきた、というのは有名な話です。

それが第二次大戦ではシンガポール・マラヤ方面で捕虜になった英軍を虐待・栄養失調で2万人近く死亡させ、フィリピンでも「バターン死の行進」で米軍・フィリピン軍の投降兵を万単位で死亡させたのです。南京虐殺も規模は誇張されてはいるが、数千人は間違いなく殺戮しています。これで日本軍の評判は一気に奈落の底まで落ちてしまったわけで、英国では今でも年に数回は必ず日本軍の英軍捕虜虐待に関するドキュメンタリー番組が放映され、新聞でもかなり頻繁(といってもナチスの暴虐の方がもっと頻繁に取り上げられるが)にこの史実を思い出させる記事が特集され寂しい思いをします。

わずか数十年で皇軍のマナーがこれだけ悪化したのは、戦争の規模などの要因が影響しているとは思いますが、何か明治天皇と昭和天皇の器量の違いもあったような気もするのですね。

ユダヤ人に関してはNobles Obligeは彼らの身内にのみ適用される概念ではないかと思います。米国人のNobles Obligeは、前にも言及しましたが個人レベルでは騎士道精神をわきまえた人物も散見されるのですが、国家レベルで見ればこれはもう略奪国家以外の表現は見あたりません。最近イラクで兆単位の金を米国が着服したニュースが報じられましたが、こうなってくると強盗国家と言った方がふさわしいですね。

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