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別宮氏の「石原莞爾批判」評価  その1 − 悲しむべき批判内容 −
http://www.asyura2.com/0311/dispute15/msg/275.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 10 月 29 日 20:16:16:Mo7ApAlflbQ6s

(回答先: Re: 「戦争責任」論で言えば石原莞爾はトップレベルの大罪(笑) 投稿者 S.O 日時 2003 年 10 月 29 日 14:19:55)


S.Oさん、関連論文の紹介ありがとうございます。

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別宮氏は、歴史に関する造詣も深く、知識の切り貼りではなくご自身の判断力を駆使されている方だと受け止めている。

石原莞爾に対する批判としては当然出てくる内容が書かれているが、やはり表面的になぞったもので批判のための批判という評価になる。

それが石原莞爾の“限界性”に由来することを認めるのも吝かではないが、それでは、あまりにももったいない裁断となってしまうだろう。


■ 総論的批判に対して


別宮氏:「石原莞爾を批判することは簡単だろう。

西洋=覇道、東洋=王道という分類、これほど単純か。
最終戦争論 戦争で絶対平和(世界の政治的統一)が達成される。なぜ戦争か。
持久戦(長期戦)と決戦戦(短期戦)が交互に発生する。実証的でない。
最終戦が日蓮宗により説明されているがおかしい。

以上のことは1941年の段階で疑問点として照会され石原が自ら回答を書いている。つまり戦争の敗者は普通、戦後の秩序を前提に批判さるが石原の論はすでに太平洋戦争勃発の直前に概ね周辺の人々により疑問視されていた。今日の目からみて当時の疑問はいずれも正当だろう。」


とまとめ、「つまり石原の論はその時代でかつ特定地域しか受け入れられない議論の範疇にも入らないのだ。つまりその時でも陸軍の一部にしか通用しない議論だった。歴史上有名人の行った議論の普遍性欠如の原因はかなり定型的である。一つは人種・民族・特定グループ(職業または階級・性別・信心・収入・疾病など)差別または攻撃を伴うことである。また、自然科学で未解明のことを予言的に議論することである。これは仮説をたてることだから、科学者は普通のことだが基礎的教育のない政治家や軍人・官僚また僧侶が叫ぶと独断に陥る。この二点が、概ね失敗の原因だ」とそのような誤りに陥った背景を述べている。

● 西洋=覇道、東洋=王道という分類

「西洋=覇道、東洋=王道という分類、これほど単純か。」という別宮氏の第一の指摘については、“理念としての東洋”と“現実の西洋”という非対称的区分に立った現実認識の総括的表現として使っているのであり、階級対立論や資本主義 Vs. 共産主義と同じレベルの世界の対立構造についての説明概念だと考えれば、「これほど単純か」と言って切って捨てることはできない。

他国を武力で威嚇し領土を奪ったり経済権益を貪ることを良しとする世界と徳を基礎とした互助的関係性を良しとする世界に区分することは、いわゆる帝国主義時代の世界観としてそれほど的を外したものではない。

石原は、現実の西洋が覇道を歩んでいると認識していても、現実の東洋が王道を歩んでいるとは認識していない。
アジアで覇道を突き進めてきた西洋によって東洋で望まれる統治者規範であった王道が崩れていることを認め、自身が生き関わっている日本を王道復活及びその世界化の基軸にしたいと考えていた。

このような世界区分観が「その時代でかつ特定地域しか受け入れられない議論の範疇にも入らない」というのなら、当時の世界は覇道を進むかそれをいやいや受容する国家や人々で覆われていたということであり、「陸軍の一部にしか通用しない議論」であったのなら、日本も覇道に冒されてしまっていたという話であり、石原莞爾の認識や論がおかしいわけではない。


石原莞爾の論をもって、「人種・民族・特定グループ(職業または階級・性別・信心・収入・疾病など)差別または攻撃を伴うこと」だとか、「自然科学で未解明のことを予言的に議論すること」だと説明しているのは、歴史的事実に照らせば、まったくもって的外れである。

それがさらに、「石原の基調をなす点は北部アジア人種が、ヨーロッパ人種にたいし優越するので現状打破の点から最終戦争に導かれ、最終的に世界は日本の指導下に置かれるとする。これにより大アジア主義が根本として人種差別意識に基づいていることがわかる」という指弾にまで進めば、別宮氏は、王道たるものが何なのかを理解しておらず、石原莞爾氏と覇道主義的勢力とをない交ぜに批判していると言わざるを得ない。

石原莞爾は、現実として覇道をふるっている西洋にも王道を歩んでもらうことをめざしただけであって、「最終的に世界は日本の指導下に置かれる」ことをめざしたわけではない。

石原批判なら是非とも取り上げて欲しかったことだが、日本が世界を指導下に置くことがないよう、天皇(国柱会的本地垂迹説で仏)を日本から切り離すべきと主張している。
仏である天皇の慈悲慈愛のもとに世界諸国家諸地域が王道を歩むというのが石原が理想とした世界である。

石原の論を批判するのならこの主張をこそ取り上げるべきで、王道論や大アジア主義をもって「人種差別意識」と難ずるのは笑止千万である。


● 戦争で絶対平和(世界の政治的統一)が達成される

第二の指摘である「最終戦争論 戦争で絶対平和(世界の政治的統一)が達成される。なぜ戦争か」は、第一次世界大戦及び第二次世界大戦を通じて世界がどう変容していったかを考えれば、誤りではなく妥当性のある歴史観であることがわかる。

さらに言えば、グローバリズムや世界新秩序の掛け声のなかでこじつけによって開始された「対イスラム戦争」を目の当たりにしている今、「戦争で絶対平和(世界の政治的統一)が達成される」という見方に慧眼の賛辞を送るほうが理に適っている。

ブッシュ政権を先兵としている「対イスラム戦争」は、戦争の世界化をめざしているわけではなく、グローバリズム(金融主義的自由主義)が普遍化した新秩序の世界をめざすものである。
それが達成されれば、国家間の戦争がなくなるという意味で、絶対平和(世界の政治的統一)は実現されることになる。

根源的に対立している価値観や統治規範を打ち壊し、己の統治規範を押し付ける手段は戦争しかないのである。(価値観の押し付けは戦争でも無理である)


● その他

第三の指摘である「持久戦(長期戦)と決戦戦(短期戦)が交互に発生する。実証的でない」は、最終戦争論や戦史大観で展開されている戦争(戦闘)形態ないし戦術の変遷に関するものだが、戦争形態史のある側面に着目したもので先進国間の戦争においては有効性を持っていると受け止めている。

それ以前の戦史は措くとしても、第一次世界大戦と第二次世界大戦が国家総力の持久戦であったことは確かだし、起こり得ないと思っているが、現在の大国間で戦争が勃発すれば、ICBMが飛び交う決戦戦になると推測できる。


最後の「最終戦が日蓮宗により説明されているがおかしい」というのは、日蓮信仰者である石原莞爾が、その世界観から説明したものだから、おかしいというより、説明された内容そのものを批判の対象にすべきである。


■ 都市解体と国民皆農

別宮氏:「そして、以降の統治の基本をなすのは農本主義とする。これは人口を農村に集めすべての人間に耕作を義務つけ、副業として工業をやらせるというポルポト張りの施策だった。これは緑の革命という農業革命が起きたことがわからず、労働生産性の向上、肥料、種子の改善を石原は理解できないことによる。現在でも耕地面積の縮小が収穫の減少ととらえる人は多いが。残念ながら現場にいるよりは大学の農学部に行ったほうが良い。これは社会科学でなく自然科学だ。現在先進国で専業農家の総所帯に占める比率はどこも5%以下だ。」


予測通りの反応で苦笑してしまったが、別宮氏は「新日本の建設」を読んでいないか眺めただけで批判していると言わざるを得ない。

「労働生産性の向上、肥料、種子の改善を石原は理解できないことによる」としたり顔で書いているが、石原氏は食糧増産のために国民皆農や都市解体を唱えたわけではない。
人間の健全性を維持し全体的な能力の涵養をはかることを第一義的目的としている。
都市生活の自然破壊的かつ人間破壊的在り様への批判が出発点である。
(戦時中には、空襲から生産拠点を維持するという目的で同様の主張をしている)

石原は当時鐘淵紡績の部長職にあった人物(名前を失念)の農業技術を高く評価し、その実践的普及をめざす運動を展開していた。

「副業として工業をやらせる」という考えではなく、専業農家以外は“家庭菜園”的な農業をやるだろうと見通している。科学者や技術者そして芸術家もいる社会である。

国民皆農や都市解体の主眼は、巨大な消費の城郭となった歪な都市文明への執着を断ち、国民あげて健全なる肉体と精神をもって豊かな生活をおくることにある。
(このような主張は、時代錯誤と罵られ鼻でせせら笑われるものになってしまっているようだ。しかし、これほど基本的で根源的なことがせせら笑われる精神情況こそが異常なのである。それに気づかないまま進んでいけば、まもなく(今もそうかもしれないが)、巨大な消費の城郭の片隅でそのおこぼれを必死に求める人が徐々に増えていく時代がやってくる)


※ 別宮氏が取り上げている別の問題も評価したいと思っていますが、遅れるか断念するかもしれません。

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