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Q:430への読者からの投稿 JMM [Japan Mail Media]  
http://www.asyura2.com/0311/hasan31/msg/127.html
投稿者 エンセン 日時 2003 年 10 月 14 日 13:26:53:ieVyGVASbNhvI

(回答先: 農業・教育・医療分野の株式会社参入は有効?JMM [Japan Mail Media]   投稿者 エンセン 日時 2003 年 10 月 14 日 13:16:04)

 
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■Q:430への読者からの投稿

  □ 村上博美 :ワシントンDC在住 シンクタンク研究員
  □ M.F. :会社員

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====質問:村上龍============================================================

Q:430
 構造改革特区の申請には、農業・教育・医療などへの「株式会社の参入」が目立ち
ます。株式会社化は、農業や教育や医療などの活性化や再生に有効なのでしょうか?

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 ■ 村上博美 :ワシントンDC在住 シンクタンク研究員

「農業、教育、医療はNPOでも可能 〜 米国の例から」

 何をもって、「活性化」や「再生」を測るのかということがあります。それはサー
ビス提供を受けている人の満足度がアップすることなのか、誇大な国の財政支出の削
減なのか、患者が支払う医療費の削減なのか、倒産する病院の数が減ることなのか。
株式会社の医療参入は、何を最終的な目的とした手段なのか明確ではないようです。
財政支出だけに限っていうのであれば、(米国の90年代の高齢者保険の部分市場化
の例では)民間参入によって財政負担は減らなかった事実があります。米国の例から
の教訓は、一度民間導入がされてしまえば、もう元には戻せないということです。

 「市場の失敗」という概念で説明されるサービス、利潤が少なく商業ベースとして
企業が参入したがらないものや、「利益を追求しないNPOなら信用できる」と消費
者が企業よりもNPOが提供することを望むものがあります。

 米国NPOの中でも大きな位置を占めるのが医療関連分野です。人の命を扱う分野
は、企業がコスト削減をし利益をあげる市場経済モデルが必ずしも社会的価値観と合
致しません。医療の市場化が進んでいる米国でさえ、無償医療や研究といった社会的
目的を掲げるNPO病院が半数を占めます。しかし、医療関連分野では80年代から
営利企業の参入が相次ぎ、商業主義に追随せざるを得ないため、コスト削減分が患者
へしわ寄せされ、NPO病院は経営難に陥り撤退が相次ぐなど社会問題化しています。

 米国では営利団体(株式会社など)と非営利団体(NPO)の存在目的が明確で、
そのガバナンスや経営インセンティブに違いが明らかです。そもそも株式会社などの
営利企業活動は、モノやサービスを社会に提供して、経済的利益を最大化させるため
に考え出された仕組みで、つまり、リスクを分散し、コストを最小にし採算の合わな
い事業には手をださないでしょう。

 一方、NPOは連邦税制によって規定され、すべて税制優遇を受けます。クライア
ントではなく不特定多数をサービスの対象とし、活動で得られた利益を団体の理事へ
配当してはいけない(株式会社のように株主へ利益の配当を行わない)。つまり、寄
付者からの意向による影響はある程度無視できないとしても、外部の人間によって運
営や活動が左右されることをできるだけ制限し、金銭的利益の追求を目的として掲げ
ません。利益に上限はないけれど、利益を内部に再投資することが条件です。また、
金融エクイティ市場での資金調達は行えず、教育、教会、科学、貧困救済など社会全
体の広義の利益となる、連邦税制501(c)(3)項の慈善団体と認められれば、
連邦税の免除及び寄付金の所得税控除(寄付金を拠出した人が寄付金分を所得税額か
ら差し引くこと)が適用できます。また、公的金融市場から借り入れを行う場合、債
券発行が非課税となったり、州レベルでは、固定資産税や購入物品の消費税分が免除
となります。

 日本で病院の株式会社経営をと唱える人が目立ちますが、NPOと営利病院が混在
する米国の例を見る限り、競争の激化は必ずしも患者全体にとって好ましい結果となっ
ていません。営利目的で営業・経営を行う病院は、花形医師をスター選手のように高
額給与で引き抜き、先端医療の提供、裕福層の顧客の囲い込みを行う。その結果、裕
福層の顧客がついた医師のいる病院は利益をあげますが、裕福層のパイは限られてい
るので皆が皆成功するとは限りません。例えば、サウジ王室御用達で、病院の屋上の
ヘリポートへ直接病人が運ばれてくるような病院はそういくつもありません。

 営利目的の病院は当然ながら、利幅の少ないメディケード(低所得者公的保険)・
メディケア(高齢者公的保険)の患者を受け付けない等、利潤を追求した経営を行い
ます。一方、NPO病院の場合、所得・固定資産税免除、及び無税債券の発行により
資金調達のコストが低く抑えられます。得られた利益を低所得者への医療行為や医療
研究に投資したり、営利病院よりも多くの割合の利益を職員の給料に割り当てるNP
O病院は、経済利益以外のインセンティブがあるために営利へくら替えする比率が低
いと言われています。

 しかし、経営難からNPOの営利病院へのくら替えが起こると、一般に医療の質が
下がるという統計が出ています。また、NPOと営利病院の競争が激しい地域では、
撤退により地域の病院の数が減り、結果的に患者の待ち時間は増えることになります。

 勤労世帯への国民皆保険制度が整備されていない米国では、企業の七割が民間医療
管理機関(HMO)に加入しています。診療時間や医師や薬の種類などを制限する管
理医療です。そのHMO市場でも営利会社とNPOが共存しますが、競争が患者にとっ
てバラ色の結果をもたらすわけではありません。HMOが生き残るためには、契約す
る企業へいかに低料金のサービスを提供できるかの競争となります。

 その結果、NPOでも営利企業と同じ商業主義になる傾向があります。営利HMO
は高いリスクが集中している地域や利益率の低いグループへはサービス提供を行わな
いなど、徹底して金銭的利益の最大化を追求します。そういった営利HMOと競争す
るために、非営利HMOも営利HMOが積極的に行っている“チェリー・ピッキング
(加入者選別)”を行い、その結果選別した加入者のガンや心臓病などにかかる割合
は、選別しなかった場合に比べ15〜20%減るといわれています。その他、HMO
は医者や診療内容を制限するため、貧しい人たちばかり診るなどコスト高の医師を保
険がカバーするリストからはずすといった影響力を行使するため、患者が継続して同
じ医師にかかることができなくなるケースもあり、医師からも適切な治療ができない
との批判が多いことも事実です。

 最近の例では、NPOの医療保険組織ブルークロス・ブルーシールド(320万人
加入)が、カリフォルニアの営利HMOに身売りをしようとして、子供の医療費をカ
バーしないと突然宣言したが、社会的に問題になり撤回しました。

 NPOのガバナンスについては利害衝突や内部の投資判断、資金集めについて問題
が残されていますが、NPOの定義が連邦税制により厳密にしかも一義的に行われ、
利潤の分配や営利活動に従事すれば税制優遇特権が剥奪されるという懲罰もあり、N
POと営利団体の境界線は比較的明確です。一方、日本では、包括的に非営利団体を
法人化する法律はなく、180を超える個別特別法がその公益と営利のすき間を埋め
ています。非営利だけの法人法がないために、営利ではないけれども積極的に公益も
目的としない、いわば公益と営利の中間に位置する団体(自称NPO)が市民を混乱
させています。不況時においてもNPOセクターは着実な経済成長をもたらすと同時
に雇用の受け皿にもなるため、今後医療に限らず教育や他の公共性の高い分野で政府
の仕事をアウトソーシングするなどNPOセクターの拡大を進める必要があるのでは
ないでしょうか。そのためにも株式会社の参入といった部分的なことが議論されるこ
とより、公益活動全般の根本的な改革(NPO法の整備)や、全体像からの改革の視
点が望まれます。

※朝日新聞社「論座」2003年7月号「米国:NPOと会社の境界線」参考。

                        シンクタンク研究員:村上博美

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 ■読者投稿:M.F.

 「問い」が求めている「有効か、否か」という点に関しては、私には力不足で結論
など出せませんが、「透明化される」=「実態が把握できる」ということが、より良
い方向に導くための出発点であり、そのための株式会社化には、大きな意義があると
思います。ここでは、1)株式会社の目的、2)値決めの難しさ、3)社会全体にわ
たるコストの3点を考えてみました。

1)株式会社の目的
 何人かの回答者も株式会社の目的は「利潤の追求」と発言されておりますが、私に
は、一口に「利潤の追求」とはいっても、追及の仕方にはいろんな道筋があってよい
と思われます。修飾子の付かない「利潤の追求」とは「短期的な利潤の追求」のこと
を指すものだと考えます。今日、今月の利益を最大にする、と、利益を計る期間は一
般に「限られた期間」であることが多いのではないでしょうか。これに対して、「長
期的な利潤の追求」という考え方も成立するのではないでしょうか。毎月、毎年の利
益の額を追求するのではなく、長期的に利益が確保できることを会社の目的とする。
100年、200年と会社を維持していくために、会社のエゴではなく、会社も含め
た社会全体に価値を提供し続けていくこと。目に見えない(すぐには生かされない)
ものへも投資して、しっかり社会へ根を張り、景気やその他の社会変化に影響されな
い経営していく。エコロジーに敏感な投資家は、こういった企業への投資を通じて、
社会参加、自己実現を果たそうとすることも大いに考えられます。

 「長期的な利潤の追及」を行う会社が成立することを前提に農業、教育、医療など
の各分野を考えてみると、株式会社化=悪とはあまり想像できません。短期的な利潤
を追求するがゆえに、提供するサービスや商品の質を落としてでも、という発想にな
りますが、末永いお付き合いを前提に考えると、まずは提供するサービスや商品の本
質的な品質を向上させることを考えるでしょう。

2)値決めの難しさ
 実は、もうひとつ違った観点で、農業、教育、医療における難しさがあると思われ
るのは、特に教育や医療において、提供されるサービスの質や量を計測することが難
しいということが挙げられます。医療については、「病気が治る」ことが達成目標だ
として、医師が提供する治療の難易度や量は測りにくい。「治った」かどうか、あい
まいな場合も多いであろうし、「治らなかった」なら医師の報酬がないというわけに
も行かない。要は値決めの難しさです。脱線しますが、医療が完全に自由化されたら、
「治らなかった」ならタダ!といった病院がでてくるかもしれませんね。病気は「治
る」という一方向に向かうものですが、教育はそれぞれ向かっていく方向が違う。更
に達成度も客観的に計り難い。よく、「一生を左右するような大切な先生に出会うこ
とは、お金には代えられない、といいます(だからといって、その先生に大金を払う
人はいませんね)。このような値決めの難しさこそが、会社化の難しさではないでしょ
うか。

3)社会全体にわたるコスト
 農業の場合は、生産物として測定しやすいですが、国民の日々の生活の源泉である
がゆえに、安全保障上の問題(いわゆる自給率)以上に、人間、文化(食文化)、風
土、としての日本のアイデンティティを喪失してしまうかもしれない不安があると思
われます。文化や風土の維持を含めたコストを勘案することになるのでしょうが、こ
れは定量化しがたいですし、他国も含めて第三者を説得するのは難しそうです。第二
次大戦からの復興の掛け声とともに工業化、乱開発などで、国土がすさんでしまった
ことは私も間近に感じてきたことです。UNDP(国連開発計画)でも自然資本の重
要さを積極的にアピールしています。農業の株式会社化は、それ自体ではなく、その
結果生じるかもしれないマイナス面を如何にフォローするかを考える必要がありそう
ですが、これは別途考えることとして、(株式会社化の)議論を進めていくことがよ
いように思います。

                              会社員:M.F.

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