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11月４日（ブルームバーグ）：わたしは失業率の話に飽き飽きしている。米国では失業者が労働人口全体の6.1％を占めるという例の話だ。
失業者が関心の対象にならないということではない。失業者の痛みを完全に理解するのは困難なことだろう。リストラの対象になり、解雇通告を受け、食費を稼ぐためだけに単調で低賃金な職に就くことを強いられ、これまでの教育や職業訓練が生かせない仕事を要求されるのは辛いことだ。
しかし、米経済全体を見渡せば、6.1％を占める失業者だけに注意を向けることは、残りの94％を占める就業者や就業者を取り巻く環境の良さを無視することにつながる。米国の生産性の伸び率は高く、インフレ率は低い。減税を支えに実質賃金も増えている。
1990年初めの「雇用なき回復パートＩ」――当時良く聞かれたのは、賃金の高い製造業の仕事がメキシコに流れているという不満だった。米国内に残された仕事は、ハンバーガーショップの店員のような低賃金の仕事だけになったというわけだ。
それが事実なら、ハンバーガーショップは大繁盛だったに違いない。米国の失業率は1992年６月に7.8％のピークに達した後、2000年４月には3.8％まで低下した。その過程でどうにか国内労働者の賃金待遇も改善され、不満は解消されていった。
そして今、再び始まったのが製造業の仕事の流出。今回は中国がやり玉に挙げられている。
有権者の目を失業問題に向けさせたい政治的動機は明白だ。有権者は景気認識を基にして現職の大統領を評価し、４年に１度の大統領選挙に臨む。ブッシュ大統領の再選阻止を目指す民主党にとって、景気が好調に推移していることはそのまま、重要な争点である経済問題で不利な立場に立たされることを意味する。
たとえ7.2％の伸びだった７−９月期のような高成長が続かなくても、経済の着実な成長が維持されれば、不満の対象は雇用情勢の低迷ぶりだけに絞られる。ブッシュ政権誕生以降、米国では計260万人分の職が失われた。
完全雇用
米金融当局者は、どの程度の失業率を完全雇用の状態と考えるのかを明確に示していないが、エコノミストの多くは５％付近が完全雇用の状態ではないかと考えている。
原則として雇用市場には、いわゆる「摩擦的な」失業が存在する。新しい職を探したり、転職や引っ越しをする人の一時的な失業だ。この摩擦的失業を考慮して失業率を算出すると、米経済は完全雇用の状態とさほどかけ離れていないことが分かる。
失業率を１ポイント低下させて５％にするには必要なのは何か？労働人口が１％のペースで増加していると仮定すると、労働人口の増加に対応して失業率を安定推移させるためには、１カ月当たり15万人分の雇用増加が必要となる。
需給ギャップ
このため、大手英銀バークレイズ・キャピタル・グループの米国担当チーフエコノミスト、ヘンリー・ウィルモア氏によると、失業率を６％から５％に低下させるには、雇用増加率をさらに１％上乗せすることが必要になる。
それを１年間で実現するには、１カ月当たり25万−30万人の雇用増加が必要だ。９月の非農業部門の雇用者が前月比５万7000人増だったことを考えると、 25−30万人の増加はかなり困難なように思える。しかし企業が、拡大する需要と低迷する生産の間にある需給ギャップを埋めるため、生産を拡大し、新規雇用を始めなければならないのもまた事実だ。
投資顧問会社アライアンス・キャピタル・マネジメントのグローバル経済調査担当主任ジョー・カーソン氏は「最終需要と在庫のギャップは過去最高の水準に達している」と指摘。「これは、米経済が長期的で力強い景気サイクルに入ったばかりであることを示している」と語る。
きょうは失業率に集まっている世間の注目が、あすには就業率に移る可能性もある。（キャロリン・ボーム）
（ボーム氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です）
Last Updated: November 6, 2003 01:52 EST
http://quote.bloomberg.com/apps/news?pid=80000003&sid=aL2UPGb4dKTY&refer=top_kaigai
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。