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大豆の利用と豆知識
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投稿者 小耳 日時 2003 年 11 月 15 日 12:36:00:1UddCTsVwSrOw

(回答先: 1973年の大豆ショックについて(出所不明) 投稿者 小耳 日時 2003 年 11 月 15 日 12:31:17)


大豆の利用:伝統的大豆食品と新しい展開

新潟薬科大学 客員教授 服部良男
  緒言
 大豆は5〜6 世紀に中国から伝来して以来、日本では豆腐、醤油、味噌、納豆
など様々な食品に加工され、大豆食文化を作り上げてきた。

 本講演では、始めに自給率3%と食料安全保障上問題をはらむ原料大豆の現状、
栄養、理化学特性、加工特性について解説し、次いで日本とアジアの伝統的大豆
利用食品の歴史と文化について触れてみたい。

 又、食糧危機、資源の有効活用、食の多様化、高齢化、健康志向などの社会変
化と共に新たに展開してきた、大豆蛋白工業、健康・生理活性成分の探索と利用
の現状を取り上げる。特に、現在脚光を浴びている健康食品、特定保健用食品の
安全性について考察する。


1.日本の大豆需給の現状

我が国の大豆生産量は、1999 年度は約19 万トンであり、1995 年から増加傾向
にあるものの、水稲の2%にすぎず、ゴボウ、伊予かんとほぼ同じである。新潟
県は約8,000 トンで全国8 位となっている。日本の大豆需要量は487 万トン、輸
入量は475万トンであり、食糧自給率は3%と最低水準にある。

 世界の大豆生産は約1 億6000 万トンで、米国が47%、次いでブラジル、アル
ゼンチンであり、南米諸国の増加が目立っている。我が国の輸入先も米国が79%、
次いでブラジルが12%となっている。

 世界的に食料が戦略資源となっている現在、自給率が3%と、輸入に頼り切っ
ている我が国は、食料の安全保障の面から見て、まさに崖っぷちに立たされてい
るのである。金さえあれば食糧を輸入できる時代がいつまで続く保証はない。ま
た、世界に冠たる大豆利用国として誠に心寂しい限りである。品質的に見て加工
食品に最も適した国産大豆の生産量が増加していくことを期待したい。
               
1.
 
2.大豆食品の栄養価

 大豆は「畑の肉」といわれるほど栄養価の高い食品である。丸大豆は良質のタ
ンパク質と脂肪に富み、繊維質やカルシウム、リン、鉄などのミネラルも豊富で
ある。中でも国産大豆は、米国産や中国産大豆に比べてタンパク質含量が高い。
タンパク質と脂質の比率を示すP/F 値は国産大豆1.86,中国産1.68、米国産1.52
と国産大豆が優れている。

 未熟の大豆食品である枝豆やもやしは、タンパク質、脂肪、糖質のバランスが
優れビタミンも豊富な食品である。新潟県の茶豆は豊かな香りを持った優れた食
品として誇りを持ちたい産物である。

 加工食品も大豆の栄養価を受け継いでおり、古来より日本人の優れた蛋白源と
して寄与してきた。中でも湯葉(乾物)は各栄養分が濃縮され、理想食品に近く、
もっと食卓にのってもよい食品である。納豆を除く発酵食品は食塩含量が高いの
で、中高年の食塩摂取制限者には注意が必要である。

 大豆のタンパク質のアミノ酸組成を見ると、含硫アミノ酸のメチオニン、シス
チンが制限アミノ酸であり、含硫アミノ酸の含有量に高い食品と一緒に摂取する
ことで蛋白価を高めることが望ましい。

3.大豆の理化学特性

 (1)タンパク質

 大豆のタンパク質は90%が水溶性で球状タンパク質のグロブリンが主成分であ
る。等電点はpH 4.5 で、この性質は分離タンパク質、充填豆腐の製造に利用さ
れている。構造はリギットであり、加熱、凍結、酸・アルカリ、圧力によって変
性し、消化性が増す。この変性をうまく利用して、豆腐、凍り豆腐、人工肉など
様々な食品が製造されている。理化学特性の知識が全くない古人がこれらの性質
を利用して経験的に様々な加工食品を生み出した知恵には大変驚かされる。

(2)脂質

 大豆脂質の脂肪酸組成は、パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和酸が15%、
リノール酸、リノレイン酸、オレイン酸などの不飽和酸が85%であり、その他に
リン脂質のレシチンを含んでいる。不飽和脂肪酸が多いため、栄養的には優れた
ものとされるが、一方でリポキシゲナーゼや自動酸化によって酸化されやすく、
風味の劣化や過酸化物の生成が起きやすく注意が必要である。青臭さに関係する
リポゲシナーゼは加熱によって失活する。


4.日本の伝統的大豆利用

 大豆の加工については、我が国は中国と並んで世界で最も進んでいる国である。
  発酵食品(醤油、味噌、納豆など)、豆腐関連食品(豆腐、小売り豆腐、湯
葉など)、 枝豆、もやし、黄粉、煮豆などの伝統的加工食品を始めとして素材
としての大豆油、分離蛋白、大豆オリゴ糖、レシチンなどの機能素材など様々な
形で高度利用がされている。

  本講演では時間の制約上、発酵食品については別の機会に譲るものとしたい。


(1) 大豆、豆腐の歴史

大豆は紀元前126 年、前漢の時代に張騫が西域から持ち帰ったと言われている。
日本には5〜6世紀に朝鮮を経て伝来したらしい。豆腐は後漢時代淮南王劉安は発
明したとされるが定かではない。大豆の利用は醤(ひしお)に始まり、日本にお
いても大宝律令に「醤院」の記載があり広く使用されていた。中国の豆腐は、6
世紀に北方民族から伝来した高価な乳腐(チーズ様食品)の代用品として唐時代
に考案され、庶民に食されるようになった。

日本には平安末期に奈良に伝来し、京都の名物になった。当時の豆腐は運搬、移
動に耐えられる堅いものであり、もっぱら田楽として食用されていた。その後、
仏教寺院の発展と共に、肉食が禁じられている僧侶によって様々な加工品が生ま
れ、江戸時代になって「豆腐百珍」などの料理本が作成されるに至って現在の豆
腐加工品、料理法が完成した。

 中国でも堅い豆腐に始まり、発酵した腐乳が12 世紀に現れ、明時代に多くの
豆腐加工品、料理法が完成した。

  現在の大豆加工品を見ると日本の方がバラエテイに富んで種類も豊富である。
豆腐についても、中国は堅い方向に日本は軟らかい方向に進化してきたが、揚げ
たり炒めたりする素材に使用する中国と、生食を好む日本の国民性によるものと
言えよう。


(2) アジアの大豆食品

中国に始まった大豆、大豆食品は、直接または朝鮮半島を経て日本に渡り独特の
伝統食品として開花した。豆腐はミャンマー、ジャワに渡って、重要な食品とし
て愛用されている。インドには挽き割り大豆のダルに加工され、香辛料、油など
を配合し、インド料理には欠かせないものとなっている。糸引納豆は本家の中国
では発展せず、ジャワのテンペ(カビ)、ネパールのキネマ(発酵菌は不明)、
日本の納豆(バクテリア)と姿を変えてそれらの国の代表的食品となった。

(3) 豆腐と関連食品
(1)木綿豆腐、絹ごし豆腐、充填豆腐
(2)油揚げ
(3)がんもどき(飛竜頭)
(4)凍り豆腐(高野豆腐)
(5)湯葉

5.大豆利用の新しい流れ

(1) 大豆タンパク質の利用

伝統的大豆食品は米食と共に発展してきたと言える。然し、食の多様化、欧風化
が進むにつれ、米離れと共に消費量が鈍化してきた。昭和40 年代にローマ会議
で世界の食糧危機が警唱されたのを機会に、アメリカで油糧残渣の食料化の研究
が盛んになった。

 搾油後の脱脂大豆から蛋白含量を濃縮した濃縮蛋白(Concentrate),分離蛋白
(Isolate)を製造し、高蛋白飼料、、食品素材、工業製品として多角的に利用
する装置工業生産が確立した。特に、分離蛋白は食品加工特性が研究され、乳化
性、結着性などから蒲鉾、ハム、ソーセージなどに広く利用されるようになった。

 又、エクストルーダーで高圧押し出ししたり、アルカリ溶解後湿式紡糸した人
工肉も開発され上市されたが、いまでは殆ど姿を消してしまった。

 この大豆蛋白工業は食品における高付加価値探索の走りといえよう。

(2) 健康・機能性成分の探索と利用

  現在は高齢化、環境の悪化、生活習慣病の増加などから健康志向、安全、セ
ルフケアーの時代といえる。これらの社会ニーズから、大豆においても、伝統食
品の健康イメージ化、大豆中の微量機能成分の探索、廃棄物から有効成分の回収
が盛んとなった。これまでに、大豆ペプチド、イソフラボン、オリゴ糖などの生
理活性効果が研究され、伝統食品の高付加価値化、健康食品、特定保健用食品に
利用されている。

6.ヘルスクレームと安全

(1)日本の食品の分類

・一般食品
・健康志向食品
・健康食品
・特別用途食品(特定保健用食品が入る)

(2) 認可と安全性試験

 健康食品は効果、効能、安全性を認めた場合、日本栄養・健康食品協会が認定
し、JHFA マークが与えられる。現在47 品目の健康食品群について認定がされて
いるが、医学的な安全試験が完全に行われているわけではない。又、食品である
ため効果、効能を唱うことは禁じられている。47 品目群以外に多数の健康食品
が市場に出回っているが、中にはいかがわしいものもあり注意を要する。「健康
によいとされている成分を含む食品」と理解しておく必要がある。

 特定保健用食品は特別用途食品の一つで、1991 年法制化し、厚生省の所管と
なっている。制度化の目的は氾濫する健康食品との差別化と医療費削減を意図し
たものである。特定保健用食品の主管は厚生省新開発食品保健対策室であり、認
定されると特保マークを付け、表示にヘルスクレームが唱える。(医薬と異なる
のでヘルスクレームの表現は制約される)

 限りなく医薬に近い食品と言うことで、厳しい医薬並な安全性試験をクリアー
しなければならない。

(3)大豆・大豆利用食品と安全

★ライフラインに関する安全

 自給率3%という低水準は、食糧が戦略資源化している現在、大きな問題であ
る。異常気象、戦争により輸入がストップすれば、日本の食卓から大豆食品が姿
を消すこともオーバーではない。減反対策として、大豆の生産が増加することを
期待したい。

輸入大豆より価格が高くなるが、品質に優れ安全性の高い国産大豆を使用した食
品は価格が高くても消費者が選択する時代になってきている。

★遺伝子組み替え、ポストハーベスト

 総理府の調査によると、食品で国産品を好む消費者は82%と圧倒的に高い。ま
た、半数の国民が輸入品の安全性に不安を持っている。この原因の一つに遺伝子
組み替え食品とポストハーベストが挙げられる。1999年には米国の大豆の47%が
除草剤耐性の組み替え大豆に転換されたと言われる。日本政府は組み替え作物に
ついて安全であるとの見解を示している。確かに安全性試験では問題は生じてい
ないが、将来に亘って絶対に安全である保証はない。今年の9 月にクラフト社が
タコスのリコールを行った。

使用トウモロコシに組み替え飼料用トウモロコシが混入したためといわれる。ヨ
ーロッパの反組み替え団体が検出したので、バイオテロか組み替え植物の花粉が
正常な作物に受粉したのかは、今後の調査にゆだねるとしても、組み替え作物の
将来に影響がでる可能性もある。ポストハーベストについても消費者が見えない
ところであり、潜在的な不安も多い。

 今年、来年と改正JAS 法が施行され、組み替え、原産国などの表示義務が実施
される。消費者が、どのような食品を選ぶのも自由である。消費者が安心して食
品を選択できるように、正しい情報公開を期待して止まない。

★ヘルスクレーム

  大なり小なりヘルスクレームを唱っている食品が氾濫している。健康食品に
しても特定保健用食品にしても、本来、健康者が対象であり、病者用の医薬では
ない。用法、摂取量、常用する医薬との相互作用に十分留意する必要がある。特
に病者は医師との相談の上摂取すべきであろう。セルフケアーのためには消費者
が正しい知識を持つことが必要であり、問題が生じても責任の一端は自己責任で
あることを認識しておかなければならない。(メモ)
                                    
  
 6

我が国の農作物収穫量(1998年産)(単位 1,000ton)
水稲 2 9,159.0 柿 4 260.1
米陸稲16.0 果栗26.2
・小麦583.1 実キウイフルーツ36.9
麦大麦185.3 パインアップル12.8
裸麦20.0 きゅうり746.3
豆大豆 8 187.2 かぼちゃ257.8
・小豆80.6 すいか 5 603.2
雑インゲン豆21.4 なす458.8
穀落花生26.4 トマト763.6
・そば17.9 いちご181.0
いかんしょ1,008.0 キャベツ1,407.0
もばれいしょ3,073.0 白菜989.9
工菜種0.8 ほうれん草322.3
芸葉たばこ64.0 野ねぎ508.5
農茶88.5 菜玉葱1,355.0
作さとうきび1,666.0 大根1,902.0
物甜菜3,787.0 かぶ190.7
こんにゃくいも57.4 ニンジン648.1
いぐさ41.6 ごぼう188.4
ミカン1,194.0 里芋 7 258.4
夏みかん102.6 れんこん 7 71.9
ネーブルオレンジ20.7 山芋176.9
はっさく68.1 サヤエンドウ36.2
伊予かん211.4 トウモロコシ285.5
果りんご879.1 枝豆78.6
実ぶどう232.9 さやいんげん66.3
日本なし382.4 メロン(露地) 299.2
西洋なし 6 27.3 メロン(温室) 37.1
もも 7 109.7 ピーマン160.0
すもも29.5 レタス506.3
さくらんぼ19.5 セロリ36.9
うめ95.6 カリフラワー28.5
びわ9.3 ブロッコリー73.5
               農林水産省統計速報による
2
世界の大豆生産量(単位 1000ton)
1990 1997 1998 %
アメリカ52,944 73,183 75,028 47.4
ブラジル19,626 26,431 31,357 19.8
アルゼンチン9,358 11,000 18,718 11.8
中国10,323 14,738 13,758 8.7
インド2,300 5,350 6,100 3.9
パラグアイ1,604 2,670 2,856 1.8
カナダ1,314 2,738 2,737 1.7
インドネシア1,453 1,357 1,306 0.8
世界計106,332 143,404 158,327 100.0
    FAO生産年鑑(1998)
我が国の大豆輸入先(1999年 単位 1000ton)
アメリカ3,867
ブラジル585
カナダ163
中国144
パラグアイ81
合計4,884
   日本関税協会「日本貿易月報」
3
日本の大豆生産量(単位 1,000ton)
年度1980 1990 1995 1997 1998 1999
生産量173.9 220.4 119.0 144.6 158.0 187.2
農林水産省「作物統計」から
日本の大豆需給量(単位 1,000ton)
1934〜38 1980 1990 1995 1997 1998
生産324 174 220 119 145 158
輸入732 4,401 4,681 4,813 5,057 4,751
輸出5 30 0 0 0 0
供給量* 1,051 4,386 4,821 4,919 5,040 4,868
「食糧需給表」から* 在庫増減を含む
製油用:78%  食用:20%
自給率: 3%   消費量:6.6?/年/人
日本の主産地(1999年度, 単位 ton)
北海道秋田栃木佐賀宮城福岡富山 新潟
40,100 10,300 9,390 9,360 8,670 8,670 8,080 7,990
「農林水産統計速報」から
1

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