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足利銀行と北朝鮮の関係とは 東京新聞
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投稿者 小耳 日時 2003 年 12 月 03 日 11:05:34:1UddCTsVwSrOw

足利銀行と北朝鮮の関係とは
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20031203/mng_____tokuho__000.shtml

 公的資金が投入され、一時国有化が決まった足利銀行は、北朝鮮への送金金融機関としても知られた。送金資金が核開発費に充てられているとか、地元パチンコ業界からの資金が流れているなどと疑惑を呼んだ。そもそも地方銀行がそんな送金業務をなぜ始めたのか。足利銀行と北朝鮮との関係とは−。

 「足利銀行と北朝鮮との関係が浮上したのは一九九四年春」。こう話すのは、北朝鮮社会経済論を専門とする関西大学の李英和助教授だ。

 「米国が『日本から年間六百億円が送金され核開発に使用されている疑いがある』と主張し、両国に決済口座を持つ唯一の金融機関としてクローズアップされたからだ」

 当時は、北朝鮮の国際原子力機関(IAEA)脱退表明に伴い、国連を中心とした制裁措置の一環として同国への送金停止が問題化、同時に同行の送金ルートにも注目が集まった。

 朝銀信組大阪の経営破たんが政治問題化していた九七年に自民党外交調査会で公表された大蔵省(現財務省)の九六年度の資料では、同行を通じた送金は、北朝鮮の親族への送金など約四千件、五億六千万円ほど。北朝鮮との貿易の決済が約二十三億円だったことが分かった。

 同行は、コルレス契約(為替取引)を北朝鮮の銀行と結び送金業務を正規に行っていた。同様の契約は他の邦銀十数行も結んでいたが、足利銀行は直接送金できる決済口座を持つ銀行として知られていたため、他行からの送金を請け負っていたといわれる。

■海産物の輸入決済などメーン

 李助教授は「在日朝鮮人の主要金融機関であった朝銀信組は、外為業務ができないため、すべて足利銀行を経由して本国に送金していた。庶民レベルでも利用されていた」と解説する。

 「コリア・レポート」の辺真一編集長も足利銀行から北朝鮮への送金について「主に海産物の輸入に対しての決済などビジネスがメーン。財務省の監督下にありガラス張りの状態だから、中国の地下銀行と異なりヤミ送金などできるべくもない」と説明する。

 「足銀の送金に限って言えば、もともとたいした額ではない」と話すのは朝鮮半島の経済に詳しい日韓経済研究センターの間部洋一所長だ。

「北朝鮮政府にとっては、なにも送金のすべてを足銀を通じて平壌に送る必要はない。工作費やミサイル購入の決済資金が必要なら在外公館がある国に、日本国内で自ら振り出した小切手を本の間に挟み、航空機で現地に行ってその国のマーケットで現金化すればいい。すでに一般的に行われていること。送金については足銀の役割はどんどん減っていたのが実態だ」

 送金額も年々減少しており、足利銀行は昨年四月に送金業務そのものを中止した。

 足利銀行は、地元在日朝鮮人社会への融資も実績がある。

 間部所長は「パチンコ店を新規に一店つくると五億から十億円必要。以前ならこの額は大きすぎて信組からは借りられない。かといって都銀は在日への融資は敬遠していた。そこを貸してくれたのが足銀だった」という。

 在日朝鮮人の個人や商工業者ら法人合わせて約二万八千会員がいる在日本朝鮮人商工連合会の関係者も「他の銀行は、内規にはないが、融資条件で、朝鮮籍は融資対象から外しているところがある。そうした中で、ある程度の割合の人が足利銀行を利用していたのは事実」と話す。

■国交正常化後を期待したのでは

 そもそも足利銀行はどうして北朝鮮への送金業務を担うようになったのか。間部所長はこう説明する。

 「七〇年代に栃木県内のあるパチンコ店経営者で朝鮮総連の幹部でもあった人が、足銀をメーンバンクにしていた。足銀幹部との関係は深く、その後、北関東地域でパチンコ店を経営する在日朝鮮人たちに“貸してくれる地銀”として取引が広まった。総連の中でも足銀の認知度が高まっていった。その中で決定的だったのは九〇年、日朝国交正常化に向けて、自民党の金丸信元副総理らが訪朝する直前に、足銀の幹部の一人が訪朝していることだ」

 足銀では「過去のことで確認できない」としているが、日朝が国交正常化すれば、日韓国交正常化(一九六五年十二月)後と同様、両国間を動く、多額の為替を一手に扱えると同行幹部が期待したのではないかといわれている。

 李助教授も「金丸元副総理の訪朝がきっかけでは。円滑な送金を望んでいた北朝鮮へのお土産として足利銀行を送金窓口とすることにした。政府も、不透明だった送金について、一本化することで流れを把握できるメリットがある。一時、欧州系の銀行の日本支店も大蔵省(現財務省)に同様の業務を申請し断られたという経緯からみても、極めて政治的な流れの中で決定された」とし、「銀行側も外為を一手に引き受けることで、手数料など相当のメリットがあっただろう」と同様な見方だ。

 地元の在日社会との関係からパチンコ業者の不正送金との関係をとりざたされたり、ドル建て送金の仲介業務をやめた際には、米国の意向を受けた金融当局が送金実態の調査に入ったとみられたりした。

■「万景峰」から目をそらす?

 「北朝鮮『送金疑惑』−解明・日朝秘密資金ルート」の著書があるジャーナリストの野村旗守氏は「送金が問題化したのは『万景峰』号に大量に積み込まれる現金から目をそらせるため。米筋から出た送金情報も北朝鮮側の情報戦略の一環」とみる。昨年の送金業務中止で北朝鮮とのパイプは完全に切れた。

 送金業務から全面撤退したことの影響については李助教授は「口座からの送金ができない以上、北朝鮮と日本を結ぶ定期船『万景峰』号で乗客が運び込むしか手段はないのでは」と推測する。辺編集長は「億単位の金は船で運べない。第三国の銀行を通じて決済をしているのでは」と推測する。

 今回の国有化の決定で、ある在日の男性は「純粋な経済問題だけでなく、北朝鮮への制裁問題とも絡んだ日本政府の政策だと思う」と話す。

 野村氏は「関係を取り持った金丸氏も今はなく、拉致問題もあり、北朝鮮との関係は冷え切っている。政府判断に、そうした情勢が影響したことも大きな要因としてある」と強調し「これまで栃木県内で北朝鮮に関係があり融資を受けてきたパチンコ業界なども、国有化で査定が厳しくなり、簡単にはお金を借りられなくなるだろう」と見通す。

 辺編集長もその影響をこうおもんぱかる。

 「大韓航空機爆破や、テポドンに拉致事件と悪い影響が続き、北朝鮮絡みの貿易は年間三百億円程度と過去最低。在日朝鮮系の企業もどんどん倒産している。栃木県民も在日朝鮮人も苦境は一緒だ」

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