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木材取引の暗黒経済 [ル・モンド・ディプロマティーク]
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投稿者 なるほど 日時 2003 年 12 月 27 日 23:38:40:dfhdU2/i2Qkk2
 

木材取引の暗黒経済
アリス・ブロンデル(Alice Blondel)
市民団体「グローバル・ウィットネス」キャンペーン・リーダー、ロンドン
訳・清水眞理子
 木材産業は世界中の多くの紛争とかかわっている。木材を売りさばいた金は、犯罪集団の資金源となり、またアフリカやアジアの権威主義体制の経済的基盤ともなる。不法な森林開発は、汚職を蔓延させるとともに、貧困撲滅に必要な国家の財源を侵食する。しかしながら責任の一端は、こうした木材を輸入する先進諸国の側にもある。[フランス語版編集部]

 林業は、アフリカを中心とした多くの国ぐにで、現代の最も血なまぐさい戦争を支えている。貴重な一次産品で、開発が容易、そのまま直ぐに売れる木材は、紛争当事者、犯罪集団、武器商人にとって格好の資金源になっている。彼らは森林開発によって、戦争をするのに必要な資金と物資の調達ルートを確保する。政府あるいは反政府勢力は、自分の味方についた集団に対し、見返りとして森林伐採の許可を与える。このような木材の犯罪的利用が、コートジヴォワールからリベリア、カンボジアからビルマ(ミャンマー)に至るまで、数々の紛争を継続させている。

 多くの人命を奪ったシエラレオネの内戦(1990-2001年)は、リベリアの木材産業から得た資金によって維持された側面がある(1)。2003年には、リベリアのテイラー前大統領自身が、国連で決定された禁輸措置に反して木材を輸出し、その代金で武器を購入したことを公の場で認めている(2)。2002年末、リベリア政府と同国内で事業を行なう木材会社数社は、コートジヴォワール西部地域の反政府勢力に資金と武器を直接供与した(3)。戦争状態にはないカメルーンのような国でさえ、森林の不法伐採が進められ、汚職の増加につながっている(4)。

 他の大陸でも同じようなことがある。カンボジアのクメール・ルージュは、1990年代に木材の輸出で豊富な資金を得た(乾季には月に1000万から2000万ドル)。この商売はそれ自体が紛争の種となった。ポル・ポトは1991年に次のように言い放った。「わが国には勢力拡大や軍備増強のための十分な資金がない(・・・)。(解放・半解放地域に)存在する天然資源は必ずや開発されなければならない(5)」。ロシアでは、マフィアがシベリアの森林産業で利益をあげているという(6)。

 「紛争の木材」と言ってよい。この表現は、コンゴ民主共和国における天然資源の不法開発に関する調査を国連から委託された専門家グループが、2001年に初めて使用した(7)。反政府勢力や企業、近隣諸国の政府軍によって大量の木材が伐採された結果、ウガンダでは木材価格が1998年から2003年の間に半値にまで下落した。国連の専門家グループは、紛争の当事者がいつまでも争いを続けるのは経済的利益が絡んでいるせいだと分析し、ウガンダ、ルワンダ、ジンバブエ各国によって張りめぐらされたネットワークの存在を暴露した。

 コンゴの天然資源の犯罪的な利用は、国境を越えた広がりをみせる。そこでは100以上の個人と企業の関与が指摘されている(8)。NGO団体グローバル・ウイットネスは、「紛争の木材」を「開発のいずれかの段階において反政府軍、政府軍、または武力紛争に関与する文民機関といった武装集団によって商取引の対象とされ、かつ紛争を長引かせ、もしくは個人的利益のために利用される木材」と定義している。

 木材の犯罪的利用には、もう一つ別の形がある。種の保全や森林の保護にかかわる国内法や国際協定に違反した開発だ。この場合もやはり国家の財源が、たいていは国際社会の目の届かないところで消えていくことになる。木材収入のかなりの部分が、国庫にいくかわりに一部エリートの懐に入る。このような不透明な取引をなくすためには、「紛争の木材」と武器密売と海運産業の間のつながりを断ち、豊かな国が不法に伐採された木材の輸入をやめる規則の採択が必要だ。

 アフリカでは、ごく少数の人間が、木材やダイヤモンドのような天然資源を売りさばき、かわりに武器を密輸入するという連携事業を手がけている。その多くは大規模な犯罪ネットワークの一部をなしている。たとえば「死の商人」という異名をもち、悪名をはせるヴィクトール・ブットは国際指名手配中である。彼は戦争に引き裂かれた多くの国ぐに(ルワンダ、シエラレオネ、アンゴラ、リベリア、コンゴ民主共和国)で、天然資源の開発と武器売買にかかわったとされる(9)。リベリアには、国連から違法事業で訴えられたマレーシア企業オリエンタル木材会社(OTC)のフス・カウヴェンホーフェンや(10)、ダイヤモンド密売の嫌疑のあるサンジヴァン・ルプラがいる。この3人は、国連によって国外渡航を禁止されている。なぜなら彼らは、シエラレオネの反政府勢力、革命統一戦線(RUF)に資金・軍事援助をしたものと考えられるからである。

国連の対応
 小型武器の世界流通の40-50%は違法であると推定される。仲介業者に的をしぼった適切な規制メカニズムが確立されないかぎり、武器の密売は利幅の大きい魅力的な産業として、国際貿易の規制のすきまで繁栄を続けるだろう。小売業者を明確に対象とした規制法を設けているのは、2002年現在で6カ国しかない(11)。輸送に最も利用されているのは空路だが、便宜置籍船が横行し、規制に乏しい不透明な国際環境を考えれば、今後は海路も増えていくだろう。商品は通常はコンテナで運ばれ、積荷目録の大部分は荷主自身が作成する。その上、コンテナの中身が検査されることはめったになく、運送業者も請け負った荷物の正確な中身は知らない。大部分の貨物船には5000から7000個のコンテナが積まれるから、紛争地への武器密売はおそろしいほど容易である。
 あらゆる政府は自国の天然資源を自由に処分する主権をもつが、その際には国際法を尊重しなければならない。国内法については言うまでもない。木材でもダイヤモンドでも、資源の開発は持続的で国民の利益となるようなものでなければならない。リベリア政府はOTC社が払うべき通関手数料200万ドルを免除したと考えられている。これはそのまま大統領に渡って彼のポケットマネーとなり、その一方で伐採労働者への賃金は支払われていないという。OTC社は、独自の刑務所、独自の兵舎、2500人以上の私兵部隊をつくっている(12)。

 「紛争の木材」を輸入している国ぐには、輸出国の側に責任があるとする。輸入国は、明らかに武器の密売や流血の紛争に関与している企業からも、木材を買い続けている。これらの企業のあるものは大規模な広報キャンペーンに乗り出して、人権や環境には最大限の配慮を払っていると主張する。そのために、細かいことは気に留めない買い手は、売られた木材が不法な自然破壊や戦争産業には無関係だと思ってしまう。デンマークの企業DLH社も、表向きの約束にもかかわらず、実際にはリベリアから「紛争の木材」を買い続けている。

 このような無軌道な木材売買により、住民は大きな悪影響を被っている。通常、森林伐採権が設定された地域に住む人びとは、森林に立ち入ることができなくなる。伐採の進む森林から追い立てられた住民は、生活様式が根底から変わってしまう。薬のような生活必需品や野菜の入手は困難になる。リベリアでは、住民がOTC社を告訴したが敗訴に終わった。その上、現地のエコシステムの変化により、しばしば洪水や旱魃が引き起こされる。紛争のさなかでも森林産業のおかげで人びとの生活が改善されるなどと主張するのは、この商売の続行から直接利益を得ている者だけだ。

 こうした木材売買に終止符を打つ道は、国連が「紛争の木材」の世界的な取引禁止を決議する以外にない。とはいえ、何らかの前進がないわけではない。2003年5月、国連安全保障理事会は、リベリアからの木材輸入を全面的に禁止した。コンゴ民主共和国に関する専門家グループによる報告が出された結果、取引に関与した企業の資産が差し押さえられ、何人もの公務員が停職処分となった。グローバル・ウイットネスには、独立監視機関の地位が与えられた。しかし、多くの勧告は現実には死文化している。カンボジアの独立監視機関は職務に忠実であったばかりに解任された。

 前進だったと言えるリベリア木材の禁輸措置も、国連安全保障理事会が検討中の「木材と食糧の交換」計画によって脅かされている。この計画が決定されれば、5月からの禁輸措置が解除され、人道援助物資の輸入費用にあてるべく森林開発が再開されることになる。そのような決定は、リベリア林業と武器密売の関係も、伐採企業の私兵による人権侵害も、政府や反政府勢力による伐採許可の復活という事実も考慮しないものでしかない。

 リベリアの森林地帯は、反政府勢力のリベリア和解民主連合(LURD)とリベリア民主運動(MODEL)に支配されている。2003年8月にテイラー大統領が失脚した後は(13)、MODELが暫定政府で森林開発を担当している。それでなくても、戦争に引き裂かれた国で商取引を管理するなどということは、実際不可能な話だろう。上記の計画には、紛争勢力を富ませ、国家の貴重な資源をごく少数のエリートに独占させる危険性がある。11月6日、安全保障理事会は、リベリアに対する経済制裁を当面のところ継続すると決定した。

(1) 『人間開発報告書』(国連、ニューヨーク、2000年)。
(2) << Liberia denies Ivorian rebel links >>, BBC News, London, 3 April 2003.
(3) Global Witness, << The Usual Suspects : Liberia's Weapons and Mercenaries in Cote d'Ivoire and Sierra Leone >>, March 2003, http://www.globalwitness.org
(4) Global Witness, << The Logs of War : the Timber trade and Armed conflict >>, November 2002.
(5) << The Logs of War : the Timber trade and Armed conflict ", op. cit.
(6) << The Wild East >>, Forests Monitor, Cambridge, UK, 2001 ; << Loogers wreak havoc in Siberia >>, BBC news online, London, 4 November 2000.
(7) 『天然資源の不法開発に関する国連専門家グループ最終報告』(国連、ニューヨーク、2002年)。
(8) コレット・ブラークマン「勝者なきコンゴ戦争」(ル・モンド・ディプロマティーク2001年4月号)参照。
(9) << Gunrunners >>, PBS Frontline series, 2002, http://www.pbs.org
(10) The Perspective magazine, 20 March 2000, http://www.theperspective.org および『シエラレオネに関する国連専門家グループ報告』(S/2000/1195、2000年)。
(11) Brian Wood and Johan Peleman, The Arms Fixers : Controlling the Brokers and Shipping Agents, Prio publications, Oslo, 2002.
(12) << The Usual Suspects >>, op. cit., 2003.
(13) 2003年10月14日にジュード・ブライアント氏がリベリア大統領に任命された。

(2003年12月号)
All rights reserved, 2003, Le Monde diplomatique + Shimizu Mariko + Kamo Shozo + Saito Kagumi

http://www.diplo.jp/articles03/0312-7.html

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