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http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20040202/mng_____kakushin000.shtml
都教委『日の丸・君が代』手順まで規定
『拒否の現場』に積年の不信
「国旗は壇上の正面に」「国歌はピアノ伴奏で」。東京都教育委員会が昨年秋、学校の式典での「日の丸」掲揚や「君が代」斉唱の手順を厳しく規定したことに、教員らに反発の動きが広がっている。卒業式シーズンを控えて先月三十日には、都立学校の教員約二百人が、起立斉唱などの義務がないことの確認を求めて集団提訴をした。これに対し、都教委は「生徒に国旗国歌の意義を理解させるために必要」と一歩も引かない構えで、教育現場に混乱を招きかねない状況になっている。
（社会部・中山高志）
■教員ら異例の提訴で対抗
「まるで“首実検”のような雰囲気だった」と、ある都立高校の男性教諭（５４）は打ち明ける。都教委の通達が出た直後に同校で開かれた記念式典では、教頭と都教委の指導主事数人が、君が代斉唱時に教職員の周りを歩き回り、歌っているかどうかを一人ひとりチェックしたという。
ある都立養護学校では昨秋、記念式典を前に教職員全員が集められ、校長が「指定された場所で国歌を斉唱すること」などと命じる職務命令書を一人ひとりに手渡した。受け取りを拒んだ教員にも書類を押しつけたといい、男性教諭（５３）は「今までにない異様な雰囲気だった」と振り返る。
車いすの生徒たちに配慮し、卒業証書の授与を体育館の舞台の下で行っていた別の養護学校では今春から、舞台上で手渡すやり方に代えることを決めた。「卒業証書は舞台壇上で授与する」という都教委の指針を受けてのことだ。生徒は教師の介助を受けて舞台に上がることになり、一部の保護者からは「子どもが自分の力で証書を受け取る姿が見たいのに」と不満の声が上がっている。
都教委が昨年十月、都立学校長あてに出した通達と実施指針は、一九九九年のものをさらに厳しくしている。日の丸掲揚場所を壇上正面とし、君が代斉唱の際の教員の起立も明文化。従わない場合は「服務上の責任に問われる」と明確に定めた。
都教委は「学習指導要領に基づき、児童生徒に国旗や国歌を尊重する態度を育てるために行っている。先生が斉唱しなければ子どもに悪影響を与える」と強調する。
こうした都教委の強硬姿勢に、都立学校の一部教員は「学習指導要領はここまで厳しいきまりを求めていない」と反発。約二百人が都と都教委を相手に、起立斉唱の義務がないことの確認や、起立しなくても処分しないことなどを求める訴えを東京地裁に起こした。弁護団の一人は「処分を受けてから提訴しても、強制によって侵害された人権は回復されない。だから事前の提訴が必要だった」と異例の裁判の意味を説明する。
都教委によると、都立高校（全日制）の卒業式での君が代斉唱の実施率は、一九九五年春にはわずか４・３％で、全国平均の７７・６％を大きく下回っていた。ところが前回の通達や指針が出された直後の二〇〇〇年春から一気に上昇。〇一年春以降は実施率１００％が続いている。
それでも都教委は満足したわけではなかった。「君が代斉唱の際に起立しない教諭もまだ多い。実施率は上がっても、適正な式典とはいえない」と、新たな通達を出した理由を語る。
ある都立進学校の教頭は「起立しない教諭に校長が命令する大義名分ができた」と歓迎する。だが、「さまざまな考えの教員がいる中で、一方的な考えを強制するのは無理がある」と都教委の性急な動きを批判する都立校校長もいて、現場を預かる管理職の受け止め方も一様ではない。
「今回の動きは、日の丸や君が代を拒否する教員と、都教委の長年の対立を象徴している」と都内の元高校教諭は話す。「都教委の極度にかたくなな姿勢には、積み重なった過去のおん念のようなものを感じている」
■細かい縛り行き過ぎ
教育評論家の尾木直樹さんの話 国旗国歌を尊重する態度を育てることは当然なことだとしても、掲揚の方法や斉唱の仕方まで細かく縛る都教委の方針は行き過ぎではないか。かえって子どもたちに国旗や国歌への嫌悪感を与えることにもなりかねない。
■都教委の通達・実施指針
【都教委通達】（抜粋）
●教職員が本通達に基づく校長の職務命令に
従わない場合は、服務上の責任を問われる
ことを、教職員に周知すること。
【実施指針】（抜粋）
●国旗の掲揚について
▽国旗は、式典会場の舞台壇上正面に掲揚する。
▽屋外では児童・生徒、保護者らが十分認知できる場所に掲揚する。
▽国旗を掲揚する時間は、式典当日の児童
・生徒の始業時刻から終業時刻とする。
●国歌の斉唱について
▽式典の司会者が「国歌斉唱」と発声し起
立を促す。
▽教職員は、会場の指定された席で国旗に
向かって起立し、国歌を斉唱する。
▽国歌斉唱はピアノ伴奏などにより行う。
●会場設営などについて
▽卒業式を体育館で実施する場合は舞台壇
上に演台を置き、卒業証書を授与する。
▽入学式、卒業式などにおける式典会場は、
児童生徒が正面を向いて着席するように設営する。
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。