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Googleを通して見える世界【確かに、政治的な問題についての検索結果には問題があるのだと思う。所詮は人間が作ったシステム。】
http://www.asyura2.com/0311/it04/msg/225.html
投稿者 クエスチョン 日時 2003 年 10 月 29 日 06:57:24:WmYnAkBebEg4M

Googleを通して見える世界【確かに、政治的な問題についての検索結果には問題があるのだと思う。所詮は人間が作ったシステム。】
http://www.diplo.jp/articles03/0310-5.html

ピエール・ラジュリ(Pierre Lazuly)
ウェブサイト Les Chroniques du menteur(嘘つき時評)制作、
L'autre portail(一味ちがったポータル)主宰
訳・岡林祐子

 30億ページにも達するインターネットは、最も充実した百科事典になぞ
らえられることが多い。実に膨大な資料が惜しげもなく公開されていて、
我々の問いに瞬時に答えてくれる道具立てもそろっている。検索エンジン
はものすごく強力で、こちらの記憶があやふやな時も、漫然と単語を並べ
てみるだけで情報を見つけ出してくれる。

 こんなふうになくてはならない検索エンジンだが、その数はだんだん減
っていて、現時点で世界に向けて良質のサービスを維持しているのは、た
った四つのアメリカ企業だけだ。増え続けるデータの海の中にネット利用
者を送り出すと豪語するには、まずは数千台のコンピュータにウェブを巡
回させ、どんな情報があるかを調べ上げなければならない。特に大事なの
は、その中から最も妥当なページを選び出す能力だ。この能力、つまり検
索エンジンの「知能」こそが成否の決め手となる。3年足らずのうちに世
界で最も利用される検索エンジンとなったGoogleは、まさにその能力を証
明した。革新的な手法を使って、目的の情報が大体において検索結果の最
初のページに出てくるようにしたのだ。

 口コミで広がるのはあっという間だった。この「すぐれもの」検索エン
ジンの愛用者は友達にも利用を勧め、Googleによる検索数は1999年初めの
1日あたり1万件から、2003年春には2億件を超えるまでになった。今で
は世界中の検索の実に53%がGoogleを使っていて、7000万人の利用者のか
なりがインターネットといえばこの類例のない検索エンジンのことだと思
い込んでいるほどだ。「Googleはいつの間にか、検索エンジンの常識を大
きく超える必需品になったのです」と、ジャーナリストのフランシス・ピ
ザーニは語る。「私はもはや、ほしい情報が掲載されたサイトに行くため
に検索エンジンを利用したりはしません。検索結果があれば十分で、そこ
で示されたサイトは確認先の意味しか持っていないのです(1)」

 しかしながら、Googleの圧倒的な優位は、次のような現実的な疑問を引
き起こさずにはおかない。Googleのアルゴリズムがいかに「すぐれもの」
であるにしても、例えば「イラク」という言葉を含んだ300万ものページ
の中からどのようにして「最も妥当な」10件を選び出しているのか。

 他の検索エンジン同様、Googleにも最初に大きな壁がある。それは、一
般公開されている情報しか提供できないという限界である。もし、ヒゲワ
シの生態に関する記事を公開しようと思った人が一人もいなければ、この
テーマについて検索しても何も出てこない。つまり「インターネットで引
いてみる」といっても、その対象は利用可能なあらゆる知識ではなく、大
学、機関、メディア、個人といった情報提供者が(少なくとも一定期間)
自由に公開することにした知識に限られる。つまり、妥当な検索結果を得
るためには、そうした情報提供の質が大きく物を言うことになる。

 アクセス可能なページの総数が増え続けているとしても、一部の公的機
関のサイトでは意図的に情報量を減らしている。2001年9月11日直後、多
くのアメリカの政府系サイトは「デリケート」なデータを削除した。例え
ば、米軍のサイトでは削除対象が、それまで誇らしげに掲載していた八つ
の化学兵器倉庫に関する情報だけでなく(2)、多くの非軍事情報にも及ん
だ。地理情報部は道路網地図へのアクセスを禁じ(3)、ペンシルヴァニア
州は通信インフラ、学校や病院などの施設地図を見られないようにした(4)。
企業の中にもテロ対策という名目で、環境保護団体が激しい闘いの末によ
うやく公開させた情報を消したところがある。例えば、カリフォルニアの
電力各社は、汚染物質排出に関するデータを外した(5)。
「ページ順位」という判断基準
 2001年の「ニュー・エコノミー」の崩壊も、公開情報の削除に拍車をか
けた。オンライン・メディアは記事の提供を会員に限定するようになって
いった。この戦略は収入アップを狙ったものだったが、両刃の剣だった。
存在そのものがウェブ上から消えてしまうことになったからだ。会員登録
をしなければ(たとえ無料でも)アクセスできないサイトは、検索エンジ
ンに素通りされてしまう。つまり、ニューヨーク・タイムズ紙がヒゲワシ
の生態に関する素晴らしい調査記事を1カ月前に発表したとしても、この
記事は検索結果には出てこない。こうして、新聞・雑誌記事の大半は、実
質的に存在しないものになってしまった。

 それに並行して、新しいタイプの利用者がネットに押し寄せるようにな
った。存在感を増したい企業はネットを重点的な広報メディアとして位置
付けた。さまざまな運動団体はネットに新しい活動手段を見出した。さら
に、ネット利用者たちが次々と個人サイトを開設した。かつては技術マニ
アだけに限られていた「自前の発表の場」が、操作の簡単なソフトの登場
によって誰にでも手の届くものとなったからだ。

 1990年代半ば、米スタンフォード大学で情報工学を専攻する2人の学生、
サーゲイ・ブリンとラリー・ペイジは、ネット上の新たな情報の奔流に直
面して一つのひらめきを得た。サイト間の関係を数学的に解析する検索エ
ンジンを作れば、初歩的な技術を用いた既存の検索エンジンよりも優れた
結果が得られるにちがいない。最も「妥当な」ページとは最も頻繁にリン
クされたページ、つまり他サイトからリンク先に選ばれたページだと確信
した2人は、これを研究の対象とし、より「数学的」な検索エンジンの基
礎を築いた。この検索エンジンは、1998年9月に2人が起業した際に
Google(グーグル)と名付けられることになる。

 ウェブページの「妥当性」を評価するにあたり、ブリンとペイジは「ペ
ージ順位」というGoogle特有の判断基準を考案した。あるウェブページの
価値は、そのページがリンクされた数によって絶え間なく再評価される。
まったく孤立したサイト、つまりどこからもリンクされていないサイトは、
存在しないも同然となり、なんの「お墨付き」も得られない。逆に、あち
こちからリンクされたサイトは、Googleの見地からして定番サイトという
ことになる。この独自のアルゴリズムは目覚ましい成果を上げた。

 しかしながら、このシステムにはすでに不都合な点がある。新設サイト
はハンディがあり、すでに地位を確立したサイトの関心を引かなければ存
在感を示せない。「ページ順位はウェブのまったく民主的な性質に基づい
たものだ」と語るGoogleの創設者たちも、「重要ページからの一票には重
みがあり、対象ページの重要度を上げることにつながる」と認めざるを得
なかった。驚くべき民主主義ではないか。すでに影響力のある者の投票権
には、新参者よりも重みがあるというのだ。

 アンドリュー・オーロウスキーが「レジスター」誌に載せたエピソード
は示唆に富んでいる(6)。2003年2月17日、ニューヨーク・タイムズの1面
に、反戦運動を第二のスーパーパワーの登場だとする記事が掲載された。
「この週末に世界中で起こった大規模な反戦デモは、おそらく地球上に今
もなお二つのスーパーパワーが存在することを我々に思い起こさせた。ア
メリカ合衆国と世論だ」と記事は書いた。アナン国連事務総長もすぐにこ
の言葉を引き取って使った。その後の数週間は、Googleで「第二のスーパ
ーパワー」という言葉を検索すれば、出てくるのはこの元の定義だった。

 これに逆キャンペーンを張ったのが、ハーヴァード大学のジェイムズ・
F・ムーアだった。3月31日、ムーアは個人サイトを開いて「台頭する第
二のスーパーパワーの美しい表情」というタイトルの記事を載せた(7)。
ニューヨーク・タイムズの記事よりも無難な内容で、「第二のスーパーパ
ワー」という言葉が共和党員さえ魅了するほど薄められた形で頻出する。
一部の「テクノ夢想家」たちがムーアの考えに我が意を得たりとばかり、
ネット上で強い影響力を持った論評を通じて、彼のあやしげな論文を「第
二のスーパーパワー」についての「出所」に仕立てあげていった。事実、
1カ月後にこれをGoogleで検索すると、上位30件のうち27件がムーアの毒
抜きバージョンとなる結果が出たという。経済戦略とハイテクとリーダー
シップの専門家であるムーアには、自分のしていることの意味がよく分か
っていた。
イデオロギーの陣取り合戦
 「反戦運動を『第二のスーパーパワー』だとニューヨーク・タイムズに
書かせるまでには、世界中の数百万人の力が必要だった。彼のトゲのない
定義が、Googleのアルゴリズム『ページ順位』のおかげで他を蹴散らすよ
うなお墨付きを得るには、一握りの『ウェブロガー』(8)が彼の記事にリ
ンクを張るだけで十分だった」とオーロウスキーは指摘する。「主に検索
エンジンを通じて世界を見ているかぎり、『第二のスーパーパワー』とい
う言葉に他の意味もあり得るのだとはなかなか信じられないだろう。この
言葉の本来の意味はほとんど消滅してしまったのだから」

 オーロウスキーによれば、このエピソードは「Googleが『本物』ではな
く『合成物』である」ことを明らかにしている。検索の結果は、あるテー
マについての主要な出所ではなく、最も広く受け入れられリンクされたも
のを示す。著作権法で保護される著作物のオンライン公開が禁じられてい
ることも、この現象をさらに広げている。ラウル・ヴァネージェム(9)に
ついて検索をかけると本人の書いたテキスト(著書の一部はオンラインで
閲覧可能)も見つからないでもないが、大半の著述家に関しては、著作の
購入の推奨か、よくてネット利用者による書評が見つかる程度だ。喩えて
いえば、図書館が本を無料で貸し出すのを断念して、登録利用者が書いた
読書カードしか閲覧に回せないような状況だ。

 出所となる文章が見当たらないことで、こうしたイデオロギーの陣取り
合戦に拍車がかかっている。そして奇妙なことに、この象徴権力、つまり
特定のテーマについて自分の見方を優位に置く能力は、今なお通常の権力
分配構造に収まりきらない数少ない存在の一つとなっている。支配的なイ
デオロギーの目立ち具合はここでは過剰であるどころか、むしろその逆な
のだ。例えば、チャーター機を愛好する内務大臣の名前で検索をかけてみ
れば、非正規滞在者の権利を擁護する団体のサイトに導かれる。ある実業
家について検索すれば、Googleは公式発表を無視して、代わりに彼が関与
した金融スキャンダルの記憶をよみがえらせるかもしれない。現実として、
さまざまな関係者の影響力は、主にネットをどれほどモノにしているかの
度合いによる。サイトを作り上げるだけでは不十分であり、他のサイトと
のリンクを張り巡らし、ネットの「実力者」から認知してもらう能力も必
要なのだ。

 多くの者は自分の書いた文章への認知を他意もなく享受しているが、検
索エンジンの弱点を巧みに活用してのける者もいる。例えば、各種ロビー
団体のために、一見するとニュース速報のような体裁の情報サイトを構築
する専門の代理店が存在する。客観的な見かけを装っておけば、それだけ
でネット利用者が真に受けて、自分のサイトからリンクしようと考える可
能性は高い。つまり、こうした情報サイトは象徴権力を付与され、以後そ
れを享受できるようになるわけだ。

 遺伝子組み換え作物やイスラエル・パレスチナ紛争のようにデリケート
なテーマをめぐっては、それぞれが自分のイデオロギーにGoogleの「お墨
付き」をもらおうとして、熾烈な闘いを繰り広げている。ある定番サイト
(少なくともこの検索エンジンから見た定番サイト)の責任者が、風変わ
りな代理業者から次のような意表を突く申し出を受けたほどだ。「我々の
クライアントのサイトを売り込むために、貴殿のサイトのリンクを買いた
いと考えています。このリンクは、貴殿のサイト上で特に目立つものにす
る必要はありません。というのは、我々はあなたのサイトを経由した訪問
を期待しているわけではないからです。貴殿のサイトは検索エンジンに高
く評価されているので、リンクを通じて検索エンジンに対する我々のサイ
トの存在感が高まることを期待しているのです」。エキスパートとして有
名なこのサイト責任者は、クライアントとして金融業者、旅行代理店、製
薬会社などが挙げられていたという。

 Googleの本当の限界が明らかになるのは、根本的に異なる視点がウェブ
上で並び立つような、政治性を帯びた問題をぶつけられた場合だろう。数
学的な基準のもとでは、ある種の意見に事実上の優位を与え、若干名の意
見を反映したにすぎない文章に不当にも妥当という評価を与えてしまうか
もしれない。ネット上で地歩を確立した「古株」が過剰に目立ち、彼らの
サイトが(アメリカを中心とするウェブログ現象などを通じて)緊密なリ
ンクを築き上げているという事実は、Googleの現在の「思想的指導者」が
誰であるかを(数学的に)指し示している。たしかに、検索エンジンは技
術的、実用的な問題に対しては目覚ましい成果を上げた。しかしある種の
分野では、妥当性はアルゴリズムの管轄外なのだ。

(1) フランシス・ピザーニ「我が人生Google」(Netsurf, http://www.netsurf.ch/archives/2001/01_10/011024nt.html
(2) << Security Concerns Prompt Army to Review Web Sites Access >>, Defense Information and Electronics Report, 26 October 2001, http://www.fas.org/sgp/news/2001/10/dier102601.html
(3) San Francisco Chronicle, 5 October 2001.
(4) 「報道の自由をめざす記者委員会」の雑誌 The News Media and the Law, Fall 2002, http://www.rcfp.org/news/mag/v.cgi?26-4/foi-stateage
(5) ジャン=ピエール・クルティエ「危機:検閲、変更、訂正を受けるウェブサイト」(レ・クロニーク・デ・シベリー、2001年10月30日、 http://cyberie.qc.ca/chronik/20011030.html)。
(6) Andrew Orlowski, << Anti-war slogan coined, repurposed and Googlewashed... in 42 days >>, The Register, 4 March 2003, http://www.theregister.co.uk/content/6/30087.html
(7) James F. Moore, << The Second Superpower Rears its Beautiful Head >>, http://cyber.law.harvard.edu/people/jmoore/secondsuperpower.html
(8) フランシス・ピザーニ「ウェブログの流行」(ル・モンド・ディプロマティーク2003年8月号)参照。
(9) ベルギーの思想家。1950年代から70年代初めにかけヨーロッパ各国で芸術・文化・社会・政治の統一的実践を志向する運動を組織的に行なったシチュアシオニスト(状況主義者)の一人。[訳註]

(2003年10月号)

All rights reserved, 2003, Le Monde diplomatique + Okabayashi Yuko + Saito Kagumi

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