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マイケル・ムーア監督の新作「華氏911」に、アメリカの「反米」感情の高まりを見る〔今日のぼやき〕
http://www.asyura2.com/0311/nametoroku1/msg/408.html
投稿者 ヒート 日時 2004 年 5 月 28 日 21:28:15:hSacBoe4G4CJA
 

管理人さん、空耳板へ転載しようと思っています。
よろしくお願い致します。


http://snsi-j.jp/boyaki/diary.cgi

副島隆彦事務所・アルルの男・ヒロシです。
今日は、2004(平成16)年5月28日です。
先日、23日にフランスのカンヌで行われた、カンヌ国際映画祭の授賞式を、ケーブルテレビで全部放送していたので、見ていました。私が気になったのは一つだけ。マイケル・ムーアの新作「華氏911」が果たして、グランプリの「パルム・ドール」賞を受賞するかというただ一点だけでした。その受賞スピーチがどうなるのかという事だけが気になっていました。

この作品は下馬評(げばひょう)では、全く相手にされないか、グランプリをとるかどちらかだろうと言う風に映画ファンの間では言われていましたが、ご存じのように、グランプリである「パルム・ドール」賞を受賞しました。

今回の審査員団の団長は、映画監督の「キル・ビル」の クエンティン・タランティーノで、カンヌ映画祭の審査員たちは、最終的には団長に従う様になっている。それがしきたりになっている、とケーブルテレビに出ていた、俳優の別所哲也が言っていた。

だから、この異例の決定はタランティーノの采配によるものだろう。タランティーノや審査員団たちは、「この決定には政治的な配慮は存在しない」と言っているが、審査委員団たちは、映画表現にとって、一体何が重要なのかということを実感していたから、この「華氏911」というタイトルを持つ映画に最高賞を与えなければならないという責任感を共有していたはずだ。

以下に、カンヌ映画祭関連のニュースをまとめて張り付けます。


(貼り付け開始)

http://www.michaelmoore.com/index.php


ムーア監督、カンヌ映画祭で米大統領批判を展開 [ 05月18日 19時44分 ]

[カンヌ(フランス) 17日 ロイター] 米国のマイケル・ムーア監督の新作映画「華氏911度(ファーレンハイト9/11)」は17日、南仏の保養地カンヌで開催中のカンヌ国際映画祭で上映され、批評家から温かい拍手で迎えられた。

 場面の展開が早い同作品は、全編を通してブッシュ米大統領のイラクへの取り組み、テロとのたたかいを強烈に批判したドキュメンタリー。監督は大統領を冷笑する目的で、ポップなサウンドトラックを使用している。

 映画は冒頭、同時多発テロの知らせを聞いた数分後、明らかに平然とした様子のブッシュ大統領の姿を映し出している。

 大統領を支援するポップスター、ブリトニー・スピアーズがガムをかむ姿をとらえる一方、ホワイトハウスの外でイラク戦争で息子を失った女性がこらえようもなく嘆く姿も映し出している。

 監督が、ワシントンで議員を呼び止め、「イラクに子どもを送り込んだ議員はほとんどどいない。実際は1人しかいない。議員の子どもが最初にいくべきではないか」と質問し、拒否される姿も見られた。

 映画は、軍需産業関係者によるイラクの利権へのコメント、テロ後のビンラディン一家逃亡、イラク駐留米兵によるイラク人虐待の最新映像なども収録している。

 自身に向かってののしりの言葉を吐く大統領の映像も見せるなど、大統領に対する皮肉なユーモアも盛り込んでいる。

 「華氏911度」は、11月の米大統領戦を控え、米娯楽・メディア大手ウォルト・ディズニーが傘下ミラマックスに配給を禁止したのを機に国際的なメディアの注目を浴びた。

http://www.excite.co.jp/News/entertainment/20040518194411/JAPAN-146480-1_story.html

・カンヌ授賞式の動画
http://festival-cannes.fr/video/video.php?langue=6002&mp=ASF&debit=h&lsttype=31033&uid=71399

(貼り付け終わり)

アルルです。
実は、この「華氏911」(原題:Fahrenheit 9/11)というタイトルに重要な意味が込められている。日本でも読書階級の人なら、このファーレンハイト 911と言うタイトルが、SF作家のレイ・ブラッドベリの小説「華氏451」に由来していることが分かるはずです。この作品が、どういう作品か知っている人には、このマイケルの新作「華氏911」に込められた意味がよーく分かるはずなのです。

レイ・ブラッドベリの「華氏451」というのは、それでは、一体、どういう作品なのか。この作品は、映画化もされている。私は小説は読んでいないが、この映画は見たことがある。カラーだがモノラル音声のずいぶん古い映画だった。映画としての出来はあまり良くない。

要するに、この華氏451というのは、「紙が燃える温度」ということなのだ。

ところが、華氏451度の華氏というのも日本人には実感でわかりにくい。学校の理科の時間では殆ど習わないと思うが、温度表示には、摂氏と華氏という二つの換算単位がある。

この摂氏というのはCelsiusのことで、華氏というのが、Farenheitのことである。いずれも、セルシウス、ファーレンハイトという考案した物理学者の名前にちなんでいるものである。欧米の天気予報では、日本と違って、摂氏を使うことがあまりないので、天気予報を見ていると「明日の気温は86度」と言っていたりして、驚いたりするが、これは摂氏で言えば30度のことである。

http://mmatsuura2.home.comcast.net/boston/fcexch.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%91%82%E6%B0%8F

だから、華氏451度というのは、摂氏で言えば233度である。これが「紙の燃える温度」だろうと言う風に、ブラッドベリは考えて小説を書いた。

それでは、なぜこの「紙の燃える温度」をタイトルにした小説が重要なのか。

この本は近未来小説というスタイルをとって、ブラッドベリがソビエト共産主義の全体主義体制を批判した小説であるからだ。「燃やされる紙」というのは実は「焚書される書籍」のことに他ならない。この小説が描く世界はいっさいの書物が禁じられた世界である。


(引用開始)


○華氏451
FAHRENHEIT 451
☆本を読んではいけない世界。本を読まない君には関係ない?
あらゆる情報はテレビによって伝えられ、市民はそれを受け入れれば良いのだとする未来社会。創造すること、思考することは反社会的で、それらを喚起させる読書など禁止されている<活字の存在しない未来社会>。消防士(ファイヤーマン)のモンターグは本を焼却することが仕事。ある日、彼は妻に似た女性クラリスと知り合う。無気力な妻と比べ、なんとも魅力的な彼女は<読書家>だった。彼女に惹かれたモンターグは、自らの任務に反し生まれて初めて本を読む...。レイ・ブラッドベリの同名SF小説を映画化。シンプルだが印象的な未来社会の描写、本を焼くシーンの妖しいまでの美しさ、雪降る中での詩的なラストシーンなど、ブラッドベリ作品の映画化として完璧。「本なんて読まない」という貴方にもお勧め。
1967/フランソワ・トリュフォー監督作品

http://www.urban.ne.jp/home/ubik/cinema/cinema366.html

(引用終わり)

アルルです。

この上の映画紹介サイトの「あらゆる情報はテレビによって伝えられ、市民はそれを受け入れれば良いのだとする未来社会。創造すること、思考することは反社会的で、それらを喚起させる読書など禁止されている<活字の存在しない未来社会>」という部分がきわめて重要である。

まさにこれは今のアメリカ社会が直面している(とリベラル派やリバータリアンたちが認識している)問題に他ならない。

別の言い方をすればこれは、アメリカの「ビッグ・ブラザー現象」とも言われる。「ビッグ・ブラザー」というのは、イギリスの作家ジョージ・オーウェルの小説「1984」に登場する、スターリンとレーニンを足して2で割ったような、共産主義・全体主義国家の指導者のことである。キム・ジョンイルの北朝鮮のような社会を連想すればいい。

権力の都合の良いように情報が国民に提供される社会の恐ろしさを描いた小説、そして、ソビエト共産主義の恐ろしさを喧伝するために書かれた小説であるはずの「1984」現象が今の、「テロとの戦い」の進行中のアメリカ合衆国で起きつつある。これが実に皮肉である。

そういう言論統制への危機感を、バイブル・ベルトのファンダンメンタリスト(キリスト教右派)以外のアメリカ人(左翼、リバータリアン、アイソレーショニスト)たちは抱いている。

権力の都合の良いように情報が国民に提供される社会の恐ろしさを描いた小説、そして、ソビエト共産主義の恐ろしさを喧伝するために書かれた小説であるはずの「1984」現象が今の、「テロとの戦い」の進行中のアメリカ合衆国で起きつつある。これが実に皮肉である。そういう言論統制への危機感を、バイブル・ベルトのファンダンメンタリスト(キリスト教右派)以外のアメリカ人(左翼、リバータリアン、アイソレーショニスト)たちは抱いている。

マイケル・ムーアほどの有名人だから身に危険が及ばないのであって、中途半端に有名な監督が同じような作品を作っても相手にされないか、いろいろな筋からの物理的な圧力がかかるだけだろう。

以前に、「ボウリング・フォー・コロンバイン」と言う映画でアカデミー賞を受賞したときの、ムーアのスピーチは以下に引用するとおりに、相当に過激なものだった。しかし、この時点では、まだマイケル・ムーアのような反戦のメッセージは異端扱いされていた。

しかし、今であれば、アメリカ国民は、烏合のの衆のネオコン派の批評家達も含めて、殆どが自身喪失あるいはカラ元気で虚勢を張っているような状態になっている。


(貼り付け開始)
http://www.cnn.com/2003/SHOWBIZ/Movies/03/23/sprj.aa03.oscars/

academy award for best documentary

マイケル・ムーアの受賞スピーチ(抜粋) 2003.3.24


"I've invited my fellow documentary nominees on stage with us here in solidarity with me,

because we like non-fiction and we live in fictitious times. We live in the time where we have fictitious election results that elect a fictitious president.

We live in a time where we have a man who's sending us to war for fictitious reasons, whether it's the fiction of duct tape or the fiction of orange alerts. ... We have a man sending us to war for fictitious reasons.

We are against this war, Mr. Bush. Shame on you, Mr. Bush, shame on you."

試訳

私と共に連帯してくださるドキュメンタリー部門の候補者のみなさんをステージの上にお招きしました。

私たちはノンフィクションが好きですが、私たちはフィクション(作り事)の時代に生きています。

作り物の大統領を選ぶ作り事の選挙結果がまかりとおる時代に私たちは生きています。

ダクトテープだか、オレンジ色の警報だかの理由をでっちあげて私たちを戦争に駆り立てる男のいる時代に私たちは生きています。

(アルル注:毒ガスが入らないように窓枠やダクト(排気口)を覆うための銀色のテープ。 アシュクロフト司法長官やトム・リッジ国土安全保障省長官がアメリカ国内で昨年、もう一度国内でテロが起きるぞ〜と定期的に国民をおどし続けたが、実はこのダクトテープの製造会社への献金へのお返しに利益供与をはかろうとして、過剰に脅威を煽っていた事が判明した。

2004年の今日の時点でも、今年の夏にアメリカにアルカイダのテロが起きると、アシュクロフトは発言しているが、こんなにタイミング良くテロなど起きるわけがない。今度はさすがにアメリカ国民も騙されなかったようだ。

今、ブッシュの支持率が下がっているから、ありもしないアルカイダの脅威をでっち上げて、支持率アップを図ろうとしているのはミエミエである。以上アルル注)

…作り事の理由をでっち上げて私たちを戦争に駆り立てる男が私たちの大統領なのです。

私たちはこの戦争に反対しています。ブッシュよ、恥を知りなさい、恥を。

「マイケル・ムーアのアカデミー賞受賞スピーチ」(2003年3月24日)

(貼り付け終わり)

アルルです

ここでアメリカの国内情勢に目を転じると、イラク戦争開戦に至るまでの、ブッシュ政権のネオコン(ハードライナー・シオニスト・ウィルソニアン。これは私の造語である。流行らないかなあ)たちが行った情報操作がアメリカ国内でもようやく問題になってきている。

最近、ようやくイラク戦争の開戦の理由となった、事実が実は間違いだった、という報道が申し訳程度に少しずつ明らかになってきている。「ニューヨークタイムズ」の花形記者の、ジュディス・ミラーの書いた、イラクの化学兵器に関する記事も間違いであったと言うことを『ニューヨーク・タイムズ』自身が認めたらしい。これで、ミラー記者もおしまいだろう。
しかし、これまで発覚しているのはほんの氷山の一角だろう。

このように、アメリカ国内が、今回のイラク戦争は、「どうもネオコンのユダヤ人と石油財閥と軍産複合体の企業が、アメリカ財界の総意と言う形で、ブッシュにやらせた戦争であったらしい」ということに気付き始めている。

そういうわけで、今はすこし状況は違うが、2003年のころは、イラク戦争に異議を唱えるマイケル・ムーアのような存在は、「非国民」扱いされたのである。

マスコミや大新聞というのは、権力を批判しているように見えて、権力とべったりくっついているようなものだから、言論統制がしかれる前に、体制側に都合の悪い情報は自主規制してしまうものらしい。

こういう張りつめた状況の中で、マイケル・ムーアのように反論の声(dissident voice)を大声で挙げるというというのは実は本当に勇気の要るということを、マスコミ関係者も映画関係者も、びくびくおびえながら実感のところで分かっている。

「911事件をきっかけに、ブッシュ政権の情報統制国家が始まったのである」という意味の題名の、この「華氏911」に、グランプリを与えるという決定を下した、クウェンティン・タランティーノは、偉い。

根本のところに置いて権力に懐疑的にあろうとする、言論人・表現者としてのプライドのようなものがあったに違いない。

確かにそれは、「ブッシュを負かして、ケリーを勝たせよう」という次元の政治的配慮ではなく、<表現の自由>という命がけで守らなければならないという、根っこのところの価値を守らねばならないということだろう。

====

マイケル・ムーアの作品がこれだけヒットしたのは、政治的なテーマを扱っているにも関わらず、観客に対して教訓を垂れようと言う意図をあまり出さないからだろう。

彼はもともと、ラルフ・ネーダーという、消費者運動のカリスマ指導者のもとに弟子入りしていた、リベラル派の左翼運動家で、2000年の選挙でも途中までネーダーを応援していたほどである。だから、徹底的に庶民の味方であろうとする立場でスタートした人物である。映画でのデビュー作は、自分の地元の自動車会社のGM(ゼネラル・モーターズ)の工場閉鎖問題について取り上げた、「ロジャー&ミー」だった。

前作の「ボウリング・フォー・コロンバイン」は、銃規制を訴えるという「個別争点」の映画だったが、この作品では、ムーア自身が、全米ライフル協会(NRA)の前会長の俳優、チャールトン・ヘストンの自宅に押し掛け取材を行っている。ムーアは、雑誌「ニューヨーカー」の編集部のような、いわゆる「リムジン・リベラル」(編集会議をニューヨークの高級ホテルで行うような、インテリのリベラル派。庶民の気持ちは分からない人たち)とは違って、自分でどこまでもズケズケと野球帽にTシャツ姿で取材対象をアポ無しで追いかける。この取材スタイルを取っているのがウケるのだ。

日本でも、日本テレビで「進め!電波少年」と言う番組があって、その中でデブでマイケル・ムーアそっくりの松村邦洋(まつむらくにひろ)というお笑い芸人が、政治家や有名人を相手に突撃取材をして話題になったが、なぜか突然打ち切りになって、バカな若者二人組が世界でヒッチハイクで旅行をすると言う、変なヤラセ番組になってしまった。

マイケル・ムーアのドキュメンタリーを観てしまうと、松村の電波少年などは全然「政治的」ではなかったのだが、それでもどこからか政治家筋から圧力が掛かったのだろう。松村をスケープゴートにして電波少年から降板させて、番組自体を猿岩石のヤラセ旅行のようなバカ番組に作り替えてしまったのかもしれない。ただし確証はない。

 これらすべてがアメリカの差し金だと言うつもりもないが、日本人から徹底的に政治的に考える力を奪ったのが戦後のアメリカの日本管理政策であり、これの一端に、読売=日テレグループやフジサンケイグループが荷担していたというのは間違いない。日本人が政治的判断を持つようになったら、絶対アメリカに刃向かってくると考えたのだろう。もし、今松村が今「電波少年」をやっていたら、来日した、ブッシュ大統領に、「アブグレイブ」と発音してくださいとかいうような、突撃レポートをやってしまっていただろう。


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マイケル・ムーアの「華氏911」については、サイト内の映画掲示板に会員の小坂タカシさんが情報をまとめて貼り付けて下さっている。

以下のサイト「暗いニュースリンク」では、この映画の見所を次のように紹介している。非常に参考になるのでぜひご覧下さい。どうもこの映画には、例の「アブグレイブ刑務所の虐待写真」や「イラクの日本人人質3人」の映像が、編集の段階で加わったらしい。この映画では、アメリカ兵が目の前の戦場の風景に幻滅する姿や家族のインタビューが含まれているようだ。この映画がアメリカで公開されたら、FOXニュースやラッシュ・リンボウなど共和党右派の「プロパガンダ・マシーン」を使ってコントロールしてきた、アメリカ国内の参戦ムードが一気にしぼむだろう。それをブッシュ政権は恐れている。


(貼り付け開始)
05/23/2004
マイケル・ムーア「華氏911」の見どころは・・・
英ミラー紙2004/05/20の記事より。

カンヌ映画祭でパルムドール賞を獲得してしまったマイケル・ムーアの最新作「華氏911(Fahrenheit 911)」の見どころを、一般公開に先駆けて早速英ミラー紙が紹介している。「ブッシュがムーア作品を禁止したい10の理由」と紹介されている、同作品が提示するポイントを以下に引用してみよう。


1. 911同時多発テロの直後、なぜオサマ・ビン・ラディンの近親者24人が搭乗した航空機は唯一飛ぶことを許され、米国を脱出できた のか?

攻撃直後、米国は国内での航空機の飛行を全面禁止にした。ムーアは問いかける:「なぜブッシュは、FBIの調査もさせずに、テロ 発生直後にサウジアラビアの個人ジェットが米国内を飛び回ってビン・ラディン近親者を搭乗させ、米国を脱出させることを許可し  たのか?24人の近親者のうち、1人ぐらいは事件について何か知っていることもあるだろうに」

2. メディアはイラク人囚人虐待事件とアメリカ兵の幻滅を隠蔽したのか?

作品中では、イラク人囚人に袋をかぶせて、虐待を加えるシーンから、酔っ払った兵士が交代で性的虐待を行うシーンも登場する。 ムーアは言う:「これはアブグレイブ刑務所の壁の外で起こったことだ。メディアは毎日そこに待機していた。彼等がこうした事実 を目にすることはなかったのか?作品中では、戦場の米兵士が、目の前で起きていることに関して幻滅と失望を感じていることを話 しているが、アメリカ国民はそうした(幻滅する兵士達のことを)全く知らされていない」

3. ブッシュは意図的に恐怖の文化を作り出し、アメリカの貧困層の若者を戦争に駆り出しているのか?

ムーアは、ブッシュ政権が意図的に恐怖の風土を作りだし、特に国土安全省の創設によって恐怖を扇動し、軍部へ入隊する若者を増 やしていることを、「嘘に基づいて子供達を戦場に送り出す不道徳な行為」と批判している。

4. ブッシュファミリーとビン・ラディン・ファミリーはどこまで深く関係しているのか?

ムーアはビン・ラディン家とブッシュ家の25年に及ぶビジネス関係について暴露している。ブッシュ父は高給取りのコンサルタント として、国内最大の軍事企業のひとつであるカーライルグループに雇われていた。カーライルグループの出資者の1人(少なくとも2 00万ドルを出している)のは、ビン・ラディン家である。

5. ブッシュの軍歴を改ざんするホワイトハウスはどこまで腹黒くなるのか?

テキサス航空隊に在籍していた事実を証明することを困難にしてしまっただけでなく、ホワイトハウスはブッシュとその仲間がサウ ジアラビアの石油企業と関係していた事実まで隠蔽している。またムーアによれば、ブッシュの軍隊仲間のジェームズ・R・ベイス はビン・ラディン・ファミリーに航空機を販売していたという。

6. タリバンとの話し合いの最中、ブッシュはビン・ラディン逮捕の機会を逃したのか?

ムーアによれば、ブッシュはテキサス州知事時代に、タリバンの指導者と親しくなっていたという。彼等はテキサスで会見し、トル クメニスタンからタリバン支配下のアフガニスタンを経由してパキスタンへ到達する天然ガスパイプライン建造について議論してい た。ブッシュ政権の代理人は2001年夏にタリバンと会見している。ムーアによれば、彼等はビン・ラディン問題を無視し、石油問題 に夢中だったとのこと。「ブッシュはビン・ラディン引渡しを要求したのだろうか?武力でタリバンを脅しただろうか?あるいは新 しいパイプラインについて話し合っていたのか?」

7. なぜブッシュ家はサウジ王家と特別な関係を持っているのか?

米国では毎日150万バレル以上の石油をサウジアラビアに依存しているが、サウジ王家の気まぐれですぐ消滅してしまうことも考え られる。ブッシュだけでなく、アメリカ人全てが、いかにサウジ政府に依存しているか知っておくべきだ。これは国土防衛上も由々 しき事態なんだ」さらにムーアはブッシュとの深い関係からバンダル・ブッシュというニックネームを持ち、サウジ外交を務めるバ ンダル王子についても言及。911テロの残虐行為とサウジ過激派との関係を示す証拠が続々と明らかになっているにも関わらず、ブッシュはバンダル王子とテロの二日後にディナーを楽しんでいる。

8. ブッシュは休暇が多すぎてテロに集中できなかった?

ブッシュは大統領就任から911同時多発テロまでの8ヶ月間の内、42%の時間を休暇として過ごしているので、防衛戦略に遅れをとる ことになったと、ムーアは批判する。911テロ調査委員会の公聴会で、CIA長官のジョージ・テネットは、2001年8月の時点で、ザカリアス・ムザウイ(911テロとの関係を告発された唯一のテロリスト)がアメリカン航空747機の操縦レッスンを受けていることを知っていたことを認めている。テネットがブッシュにその事実を伝えられなかったのは「大統領が休暇中だったから」と説明している。

9. ブッシュは貿易センタービルが攻撃を受けていることを知らされたとき、パニックに陥った?

9月11日の朝、ブッシュ大統領はフロリダで子供の読書イベントに出席していた際にカメラ前でポーズをとっていた。ムーアは、二 つ目の旅客機がビルに突入した事実を告げられ、ブッシュが奇妙な表情をした場面を公開している。画面の下にはストップウォッチ を表示して、ブッシュ大統領が絵本を読み続けて、補佐官がどうすべきかアドバイスするまで何をすべきか分からなかった様子が映 し出されている。ムーアは言う:「ブッシュは、前の月にCIAから報告を受けていた事実についてもっと真剣に取り組むべきだった と考えていたのだろうか?その報告では、アルカイダが米国攻撃を計画中で、航空機を使う可能性があることが書かれていたんだ。 それとも、ブッシュは怖くて気が動転していたのか?」

10.ブッシュは大手メディアを操作して2000年大統領選挙での勝利をでっちあげたのか?

ブッシュのいとこ、ジョン・エリスはフォックスニュースチャンネルの役員で、投票日の夜に早々とブッシュ/チェイニー勝利宣言を流し、他のメディアにも追随させるように脅した。この混乱により、アル・ゴアが得票数で勝っていたにも関わらず、ゴア敗北の論調を作り出した。

この作品が米国で公開されるようなことになれば、ブッシュ政権は文字どおりひっくり返ることになるだろう。しかし、ムーアがこれから気をつけなければならないのは、ブッシュチームによる公開禁止圧力よりも、サウジ王家による圧力である。ディズニーが配給を拒んだ本当の理由は、主要株主であるサウジ王家関係者による圧力を恐れたためという見方もあるのだ。しかも今後は、単なる「公開禁止の圧力」で済むのかどうかすら定かではない。

暗いニュースリンク
http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/
(貼り付け終わり)

アルルです。

以下にまとめて、「華氏911」関連の記事を貼り付けます。この映画は今年の夏に全国で公開されるそうだ。
前作の「ボウリング・フォー・コロンバイン」は、政治色が強いということで、モルガンスタンレーなどの外国の金融商社マンが沢山集まっている、恵比寿ガーデンプレイス1館のみで公開された。イエス・キリストの受難を描いてアメリカ本国では大ヒットした「パッション・オブ・ザ・クライスト」という映画も最初は恵比寿での単館上映というふれこみだったのだが、アメリカ本国で話題になったということがインターネットでじわじわと話題になったので、現在は全国の大都市でなら大体どこでも見ることができるようになっている。日本にもいよいよ「政治映画」(ポリティカル・ムービー)というジャンルが根付いてきたと言うことなのだろう。


(転載開始)
ミラマックス、ディズニーから「華氏911」を買い取りへ

2004年05月25日(火) ロイター・ジャパン

 [ロサンゼルス 24日 ロイター] 米映画会社ミラマックス・フィルムズは、親会社のメディア大手ウォルト・ディズニーとの間で、今年のカンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞した「華氏911」(マイケル・ムーア監督)の買い取り交渉を進めており、数日内には正式合意に達する見通し。

 関係者が24日、電子メールで明らかにした。

 「華氏911」は米同時多発テロの背景を検証したドキュメンタリーで、ブッシュ米大統領に批判的な内容。ディズニーのマイケル・アイズナー最高経営責任者(CEO)は先日、政治色が強すぎるとの理由で同作品の配給を禁じた。

 広報担当者によると、アイズナーCEOは、ミラマックスの首脳であるハーベイ・ウェインスタインおよびボブ・ウェインスタインの兄弟に、同作品を売却することで基本合意した。

 売却価格は約600万ドルとされているが、ミラマックスは合意内容について何もコメントしていない。

 ミラマックスは同作品を買い取って、新たな配給元を模索する方針とみられている。

http://movie.goo.ne.jp/contents/news/NFRJAPAN-147094/index.html

ムーア監督の「華氏911」、米でヒットする見通し=業界関係者

2004年05月24日(月) ロイター・ジャパン

[ロサンゼルス 23日 ロイター] 米映画業界関係者によると、マイケル・ムーア監督のドキュメンタリー映画、「華氏911」が米国でヒットする見通しだ。

 この作品は、ブッシュ大統領のイラクとテロへの取り組みを痛烈に批判。

 大統領一家とアルカイダのウサマ・ビンラディン氏の生家を含む、有力なサウジアラビア人一族との関係をたどった作品で、今年のカンヌ映画祭では最高賞のパルムドールを獲得した。

 業界オブザーバーらは、初期には厳しい批判もあったものの、この作品は興行収入でヒット作になると見ており、あるベテランのドキュメンタリー映画監督も、「大きな成功を収めるだろう」と予想している。

 一方で、ホワイトハウス関係者や業界紙バラエティは、この作品に批判的。

 ホワイトハウスのコミュニケーション・ディレクター、ダン・バーレットは先週、ニューヨーク・タイムス紙上でこの作品について、「全くの作り話。コメントするに値しない」と述べている。

http://movie.goo.ne.jp/contents/news/NFRJAPAN-146975/index.html

カンヌ映画祭、最高賞にムーア監督の「華氏911」

2004年05月23日(日) ロイター・ジャパン

[カンヌ(フランス) 22日 ロイター] 第57回カンヌ映画祭は22日、南仏カンヌで授賞式が開かれ、米国のマイケル・ムーア監督のドキュメンタリー「華氏911」が最高賞のパルムドールを受賞した。

 同作品は、ブッシュ米大統領のイラク戦争とテロへの取り組みを痛烈に批判した内容で、米娯楽・メディア大手ウォルト・ディズニーが傘下の映画会社に配給を禁止したことで注目を集めた。

 ムーア監督は「事態は変化しつつある」と述べ、「米国民もこの映画を見るだろう」とクエンティン・タランティーノ監督ら審査委員に謝意を表明。会場のスタンディングオベーションに感激を隠せない面持ちだった。

http://movie.goo.ne.jp/contents/news/NFRJAPAN-146867/index.html

(転載終了)

アルルです。

小坂さんが投稿した記事によると、マイケル・ムーアは当初、この映画を「パッション」の監督である、メル・ギブソンと製作しようとしていたようです。

以下は映画掲示板に投稿された記事の再転載です。、『町山智浩アメリカ日記』の転載です

(転載開始)

『町山智浩アメリカ日記』

2004-05-05 マイケル・ムーア メル・ギブソン ディズニー

マイケル・ムーアの新作『華氏911』が完成した。
現在、5月下旬のカンヌ映画祭への正式出品を目指してフランス語版製作中とのこと。
この題名は、SF小説レイ・ブラッドベリが書いた小説『華氏451』のパロディ。

華氏451とは紙が燃え上がる温度で、書物が「人間の自由な想像力を刺激する危険なもの」として禁じられた全体主義社会で、それを燃やす焚書官が本の面白さに目覚めて逃亡する物語。フランソワ・トリュフォーによって映画化もされている。

ムーアは9月11日の同時多発テロ以降、右傾化し、全体主義化するアメリカを見て、「911こそ自由の燃える温度だ」と、SFファンとトリュフォー・ファンにしかわからないことを叫び、ブッシュ一家とオサマ・ビン・ラディン一家の家族ぐるみの癒着を暴く突撃ドキュメンタリーを作り上げた。

ムーアはこれを9月11日に全米公開するつもりだった。もちろん11月の大統領選挙でブッシュの再選を阻止するためのプロパガンダとしてである。
この映画は最初、メル・ギブソンが経営する会社アイコン・フィルム製作でスタートしたが、去年の春にムーアとギブソンが決裂した。
二人とも熱心なカソリックということで仲良くなったというが、そもそもギブソンは共和党支持で反バチカンなので決裂は当然だった。
ちなみにメル・ギブソンは『華氏451』も自分の主演で製作中である。ブラッドベリはメルギブはとても本を読むような人間に見えないと拒否していたが。

暗礁に乗り上げたかに見えた『華氏911』だが、メルギブの後を引き受けて、ミラマックスが資金を出して製作が続けられた。
しかし昨日、つまり5月4日にミラマックスの親会社であるディズニーが正式に、この映画を公開しないと決定したのだ。
ディズニーは、既に去年の五月、つまりミラマックスが製作を引き継いだ時点で「公開できないかもしれない」と伝えたはずだと言っている。
ムーアはディズニーはブッシュの弟が知事を務めるフロリダ州にディズニーワールドはじめ巨大な事業を持っているので、ブッシュ知事とディズニーは親密だからしょうがない、と言っている。

ミラマックスはディズニーの支援無しでなんとか公開しようと思案中とのこと。
ムーアはこの事態に「わかってんのかな。この映画はコメディなんだよ、コメディ!」と言っている。
ちなみに日本ではGAGAが配給するので心配はいりません。

町山智浩アメリカ日記
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/?of
(転載終了)

アルルです。

余談になりますが、映画「パッション」のメル・ギブソン(共和党支持)とブッシュ政権の関係も微妙のようです。今年の3月のラジオ・インタビューでは、メル・ギブソン自身が、アメリカのイラク戦争の大義であったところの「大量破壊兵器の存在」について疑問を抱き始めているという風に語ったことが報道されました。これはつまるところ、ネオコン=シオニスト・ユダヤ人のイラク戦争への関わりに対する疑問でしょう。「パッション」と言う映画は見方によっては、反ユダヤ主義の映画にも見える。

メル・ギブソン自身が意図していたかはわからないが、この映画は、「ネオコン・ユダヤとプロテスタントの結合を再度引き離す」という政治的意図が感じられる映画である。

それから、小坂さんの報告によると、このマイケル・ムーアの新作について、あの「と学会」の唐沢俊一と言う人がケチを付けているらしい。

「と学会」というのはこれを見ると判るように、どうも親米ポチ派の団体のようである。ははあ、なるほど。だから小林よしのりの『戦争論』と『週刊金曜日』発行の『買ってはいけない』をあれだけ忌み嫌ったのか。なるほど、なるほど。


(転載開始)
8日(土) ウナサレテ東京

(前略)

 新聞にはマイケル・ムーア監督の新作がディズニーの配給拒否にあった、という記 事。あやしいねえ。そもそも第二次大戦時にあれだけ国策アニメ作りまくった、社是 としてアメリカ万歳のディズニー社が、マイケル・ムーアの作品を配給しようと本当 に思うだろうか? 申し込んで断られることを箔付けに利用したんではないのか(な どと思ってサイトを検索したら、やっぱりムーアのヤラセであったことがバレており ました↓)

http://abcdane.net/archives/001058.html

 ムーアらしいと言えば言えるのだろうが、やはりこの人のブッシュ叩き権力叩きは 商売でやっていたことなのだな、と確認。日本の知識人はムーアを持ち上げすぎ、と 思っていた私にはちょっといい気分のニュースであった。この件でディズニーを
「アメリカの単独帝国主義思考の権化であることを私はことあるたびに触れてきた。 その本性がいよいよむき出しになってきた」
 とか日記で喚いている勝谷誠彦さんの立場は如何に。

(以下略)

裏モノ日記(2004年5月8日)
http://www.tobunken.com/diary/diary.html
(転載終了)

アルルです。

ムーア監督としては、興業上成功して貰わないと困るというのはあまりに当たり前の事で、成功しなければ新しい映画も作ることは出来ない。それでも、この映画を公開することによって、いくらかの警鐘を発することが出来れば良い。ただそれだけのことである。

この唐沢某氏の批判は、<商売ベースの野心>と、<表現者としての自負>の割合(わりあい)の問題に還元される。それぞれが半々ぐらいあったらそれで十分なくらいに誠実である。まあ「と学会」も商売でやっているんでしょう。どの程度が、<自負>でどの程度が<商売>なのか割合をぜひ伺ってみたいものです。

さらに、マイケル・ムーア日本版公式ウェブサイトより、今回の事態に関するムーアのコメントを転載致します。これでこの映画の配給のトラブルにまつわる事態が理解できるでしょう。この経緯をしっかり読んでから、この夏には劇場にぜひ足を運んで下さい。


(転載開始)
〈ディズニー〉社がぼくの新作映画の配給を妨害
2004年5月5日(水曜日)

友人のみなさん

 ぼくはこれまで何度も検閲に妨害されてきたけれど、いまはもうそんな目に遭わずに作品を発表できるだろうと思っていた。

 ところが昨日、〈ディズニー〉社から通告があった。あそこはぼくの新作映画『華氏9・11』を製作している〈ミラマックス〉社の親会社だが、その〈ミラマックス〉に映画の配給を禁止することを正式に決めたというのだ。理由は何か? 今日(5月5日)の《ニューヨーク・タイムズ》紙によれば、映画がフロリダ州知事ジェブ・ブッシュを「怒らせ」て、あの州から<ディズニー>が受けている大幅な税優遇措置を「危うくする」かもしれないからだという。《ニューヨーク・タイムズ》紙の一面に載ったこの記事(『〈ディズニー〉社、ブッシュ批判映画の配給を禁止』)は、ここで読める。

 ぼくたちの映画を潰そうとするこの企て(そして同じようなほかの企て)については、今後詳細が明らかになるだろう。1年近く続いているこの種の妨害との戦いが教えてくれるのは、この国では政府を動揺させるかもしれない芸術作品の創造がいかに難しいかということだ(ま、たしかに、申し訳ないけど、今度の映画はきっと政府を動揺させるだろうね……それも、うんと。ところで、この映画がコメディだってことは、もう話したかな?)。とにかくぼくとしては、映画の製作中、〈ミラマックス〉のハーヴィ・ワインスタインがずっと支援しつづけてくれたことに感謝したいと思う。

 まだまだ話したいことはあるけれど、ぼくはいま来週開幕するカンヌ映画祭への出品に向けて、現像所で作業中だ(『華氏9・11』は本選参加作品18作の1つに選ばれたんだ)。だから、とりあえずはこういっておこう。一部の人たちはこの映画を、その内容ゆえに恐れているのだろう。でも、いまはもう、彼らにできることは何もない。なぜなら映画は完成していて、すばらしい出来で、あとはこの夏、みなさんに見ていただくだけだからだ――なんといっても、ここは自由な国なのだから。

あなたの友

マイケル・ムーア
mmflint@aol.com
http://www.michaelmoore.com

マイケル・ムーア日本版公式ウェブサイト
http://www.michaelmoorejapan.com/

星に願いを
2004年5月7日(金曜日)

友人のみなさん

 すばらしい応援のお手紙、どうもありがとう。わが映画製作チームはまたもやメディア企業の暴挙と戦うはめになった。やれやれ、この手のことはなくならないのだろうか? もう「表現の自由」は取り戻せないのだろうか? いっそ星に願いをかけようか?
(訳注1)
(訳注1)『星に願いを』は〈ディズニー〉のアニメ『ピノキオ』の有名な挿入歌。

〈ディズニー〉の広報部隊は今回の検閲騒動を都合よく収めようと躍起になっている。どうも彼らはこれが公になるとは思っていなかったようだ。誰もがハリウッドの不文律に従うはずだと思っているのだ。その不文律とは、ハリウッドでのビジネスの実態を世間に知らせてはならない、カーテンの奥にいる人物の姿を見せてはならない、というものだ。

〈ディズニー〉は1年近くのあいだ、これが騒ぎになることはないと思っていた。でも水曜日に約束したとおり、ぼくはここで、「おとぎの王国」(訳注2)とぼくとの情けない冒険の背景について詳しくお話ししようと思う。
(訳注2)「おとぎの国/マジック・キングダム」はディズニーランドの別名。

 2003年4月に、ぼくは〈ウォルト・ディズニー〉社の子会社〈ミラマックス〉と契約を結んだ。〈ミラマックス〉はぼくの次の映画『華氏9・11』の出資と配給を引き受けた(これは最初の出資者が撤退したからだが、それについてはまた別の機会に)。契約によれば、〈ミラマックス〉は〈ディズニー〉の配給専門の子会社〈ブエナビスタ・ディストリビューション〉を通じて映画を全米に配給することになっていた。〈ミラマックス〉はアメリカでの配給権と、配給権を世界に売る権利を取得したわけだ。

 その1ヵ月後、撮影が始まったあとで、〈ディズニー〉の最高経営責任者マイケル・アイズナーが、ぼくのエージェント、アリ・エマニュエルに面会を求めてきた。アイズナーは、〈ミラマックス〉がぼくと契約したことに激怒していた。エマニュエルの話では、アイズナーは撮影済みのフィルムを見るどころか、シノプシスすら読んでいないのに、ぼくの映画を〈ディズニー〉系列の会社で配給することは絶対に許さないといった。そのときアイズナーは、エマニュエルに、自分はフロリダ州知事ジェブ・ブッシュを怒らせたくないのだといった。ぼくの映画を配給すれば、フロリダ州での現在および未来のプロジェクトが抱えている問題がよけいにややこしくなるし、税金面などの優遇措置が危うくなると信じていた。

 でもアイズナーは、〈ミラマックス〉に映画製作の中止を命じなかった。それだけじゃなく、その後の1年間に〈ディズニー〉の資金を600万ドル投入した。〈ミラマックス〉はぼくに、配給のことで問題は生じないと保証した。

 ところが先月、『華氏9・11』がカンヌ映画祭の本選参加作品に選ばれると、〈ディズニー〉はあまり地位の高くない製作担当幹部をニューヨークに派遣して、映画を見させた(アイズナー自身は、今日まで一度も映画を見ていない)。その幹部は熱心に映画を見ていた。笑ったり、声をあげたりして、終わったあとはぼくたちに礼をいった。そして「この映画は爆発的だ」といった。ぼくたちはそれをいい意味に受けとった。でも彼らが「爆発的」という言葉をいい意味で使うのは、映画の中で爆薬がはでに破裂するときだけのようだった。ぼくたちが考える「爆発的」な映画は、彼らがピューッと逃げだしたくなるような作品だったのだ。

〈ミラマックス〉は、計画どおり映画を公開するよう〈ディズニー〉を説得しようと最善を尽くしてくれた。2社間の契約では、〈ディズニー〉が配給を禁止できるのは、映画がNC-17指定を受けたときだけなのだ(『華氏9・11』はPG-13かRの指定になるはずだ)(訳注3)。
(訳注3)NC-17:17歳未満入場禁止。PG-13:13歳未満は保護者の指導が望ましい。R:17歳未満は保護者同伴が義務づけられる。

 昨日の《ニューヨーク・タイムズ》紙によれば、『華氏9・11』の配給問題が〈ディズニー〉の取締役会で議論されたのは先週のことだった。下された決定は、配給せず、だ。
 そして今週の初めに、ぼくたちのもとに正式な最終通告がきた。〈ディズニー〉は『華氏9・11』を公開しないという通告だ。これが《ニューヨーク・タイムズ》紙で報じられると、〈ディズニー〉は真実を述べるかわりにピノキオになった(訳注4)。
(訳注4)ピノキオはよく嘘をつき、そのたびに鼻が伸びた。

 広報部隊の発言の中から、ぼくのお気に入りを以下に紹介しよう(発言は要約してある)。

「マイケル・ムーアはわが社がこの映画を配給しないことを1年前から知っていた。だからこれはニュースではない」

 そう、ぼくもニュースじゃないと思う。だけど、〈ディズニー〉は映画の製作資金を注ぎこみつづけたし、〈ミラマックス〉は問題はないといったのだ。だからぼくは大丈夫だと思っていた。

「政治的に偏った映画を配給すると一部の顧客に不快感を与えるので、わが社にとって利益にならない」

 ふーん、〈ディズニー〉は政治的に偏ったコンテンツを提供しないんだ。ショーン・ハニティのラジオ番組を配信しているのは〈ディズニー〉だけどね。ぼくが毎日聞いているラッシュ・リンボー(訳注5)のラジオ番組も〈ディズニー〉傘下のWABCでやってるし。それに〈ディズニー〉は、中間選挙があった1998年に、ものすごく偏向した映画を配給したような気がするなあ。タイトルは『The Big One』で、監督は……えっと、ぼくだ!

(訳注5)ショーン・ハニティも、ラッシュ・リンボーも、超保守派の論客。

「『華氏9・11』は〈ディズニー〉のブランド・イメージに合わない。わが社が提供するのは家族向けの映画だ」

 そうだよねえ。いま公開されている〈ディズニー〉配給映画の一番人気は『キル・ビル vol.2』だもんね。この傑作映画も、古典的名作『パルプ・フィクション』も、〈ミラマックス〉が製作して〈ディズニー〉が配給した。これこそが〈ミラマックス〉の存在理由なのだ――〈ディズニー〉のブランド・イメージとは違う作品を提供するというのが。いま挙げた作品はどちらもNC-17指定じゃなかったから、〈ディズニー〉はちゃんと配給したわけだ。

「ムーア氏はこの問題を宣伝に利用している」

 マイケル・アイズナーは、〈ディズニー〉のカリフォルニア・アドベンチャー・パークで新アトラクション「タワー・オブ・テラー」のテープカットをしたとき、こう発言したそうだ(それにしても、「タワー・オブ・テラー」というのは、最近この国が経験したことを考えると、すごいネーミングだよな(訳注6))。でも、はっきりいって、この種の騒ぎを望む映画監督はいないのだ。チケットを売るのにプラスにならないからだ(土壇場で配給会社をかえたせいで映画がコケた例はたくさんある)。ぼくは観客にできるだけ早く見てもらいたいと思ってこの映画を作った。だから今回の騒動はとんでもなく迷惑なのだ。議論が盛りあがってほしいのは映画で提示する問題についてであって、誰がフィルムを劇場に配るかなんていう業界内部のもめ事についてじゃない。『華氏9・11』はかなりいい興行成績が見込めるといっていいだろうと思う。この前の映画は当たったし、今回とりあげる問題(ブッシュ、対テロ戦争、イラク戦争)は、いま一番人々の関心を集めている問題なのだから。
(訳注6)「タワー・オブ・テラー」は「恐怖の塔」の意味だが、「テロの超高層ビル」の意味にもなる。世界貿易センタービルは「ツイン・タワー」と呼ばれた。

 さて、映画の公開はどうなるのか? ぼくにはまだわからない。わかっているのは、何が何でもみなさんに見ていただく、ということだけだ。ぼくたちはアメリカ人だ。いまのぼくたちはいろんなヘマをしでかしているけれど、ほとんどのアメリカ人に共通しているのは、誰かにこれは見るなと指図されたくないということだ。ぼくたちは検閲を忌み嫌う。最悪の検閲は、思想信条の表明を制限し、反対意見を封殺することだ。それは非アメリカ的だ。もし映画を上映するために国じゅうをまわって公園を借りる必要があるのなら(あるいは、昨日ある人が申し出てくれたように、個人の家の壁に映して近所の人に見てもらう手もある)、ぼくはそうするつもりだ。

 引きつづき情報を提供していく予定なので、ご注目いただきたい。

あなたの友

マイケル・ムーア
mmflint@aol.com
http://www.michaelmoore.com

P.S. 昨日の《ニューヨーク・タイムズ》紙の記事(『〈ディズニー〉の臆病な行動』) をぜひ読んでほしい。

(転載終了)

アルルです。

私もはやくこのムーア監督の映画を劇場で見て、ブッシュのバカッぷりを楽しみたいと思っています。注目の政治映画の一つになるでしょう。

ただここで、ついでに言うと、6月5日に公開される、ハリウッド映画の「デイ・アフター・トゥモロー」も実は重要な政治映画のようです。

この映画は、世界中で気象変動が起こり、全世界が凍結するというたわいもないパニック映画のように見えるが、ここにはこの春に発覚した、ペンタゴンの秘密レポートが大きく関わっていることがわかりました。

これについては、実際に映画を見た上で、ここのコーナーか掲示板に、「デイ・アフター・トゥモローとペンタゴンの戦略家 アンドリュー・マーシャル」というようなタイトルで文章をまとめたいと思っています。アンドリュー・マーシャルについては、副島隆彦が2001年に、確か「アジア2025」というペンタゴンの戦略レポートを紹介したときに言及していたと思います。(『正論』の連載記事だったのですが、いつの記事だったのかすぐにはわかりません。誰か調べて下さい)

デイ・アフター・トゥモロー
http://www.foxjapan.com/movies/dayaftertomorrow/
http://www.thedayaftertomorrow.com/

アルルの男・ヒロシ 拝

2004/05/28(Fri) No.01

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