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ベンジャミン・フルフォードというカナダ人ジャーナリストの『ヤクザ・リセッション』という本は、副島隆彦やその他の国内ジャーナリストの本からの寄せ集め本である。
http://www.asyura2.com/0311/nihon10/msg/987.html
投稿者 エンセン 日時 2003 年 12 月 05 日 00:16:43:ieVyGVASbNhvI

(回答先: 普通の読書家です 投稿者 すみちゃん 日時 2003 年 12 月 03 日 10:37:52)

 
ベンジャミン・フルフォードの『日本がアルゼンチンタンゴを踊る日』と『ヤクザ・リセッション』は私も読みましたが、私もすみちゃんのご意見と同じで読むに値しないと思います。

【今日のぼやき】に、ベンジャミン・フルフォードのことが書いてありましたので転載しておきます。

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(再び12月1日記)
アルルです。

今日は、少し前の本になりますが、ベンジャミン・フルフォードというカナダ人ジャーナリストの『ヤクザ・リセッション−さらに失われる10年』(2003年 光文社ペーパーバックス)という本を書評文として取り上げます。実をいうと、この『ヤクザ・リセッション』は、フルフォード氏が、日本のジャーナリストの本をペロペロと読んだり、記者クラブを通じて得た日本の政界経済界の情報を編集して「まとめた」(『ヤクザ・リセッション』巻末資料一覧)本であるというほうが正しいのです。この本には巻末に参考文献一覧があります。浜田和幸、広瀬隆、リチャード・ヴェルナー、有森隆(裏社会評論家)、藤井厳喜、吉川元忠、魚住昭の名前に加えて、副島隆彦の名前もあります。


ベンジャミン・フルフォード氏は、去年くらいから突然、テレビや雑誌などに「日本の不良債権問題と裏社会との関係」を暴いたジャーナリストとして登場するようになったが、もともとこの分野の研究は、ベルサリオス・カトゥーラスという『ヘラルドトリビューン』紙元東京支局長や、学術的な研究書である『ヤクザ』(第三書館)を書いたディヴィッド・カプラン、元CIAエージェントのロバート・ホワイティングなどによってなされているものであり、別に目新しいものではない。この本がベストセラーになったのは、この本がサラリーマン向けの夕刊紙である「日刊ゲンダイ」のような、サラリーマンの感性に訴えるような筆致で書かれているからであり、ビジネス書といわれるジャンルで活躍している、評論家たちの文章を多数引用して議論を進めているからである。むろん、フルフォード氏はジャーナリストとして、英字紙『日経ウィークリー』や米誌『フォーブズ』の東京支局長として取材もおこなっており、その成果は、元イトマン常務・伊藤寿永光(イトマン事件の被告のひとり)にインタビューと言う形で本書にも現れている。あまりにも生々しい話は、フルフォード氏の名前で記事に出来ないのだろう。フルフォード氏のこの著作はこのように、取材よりも書籍からの情報が多いのではないかと思えるが、それでも「小泉首相が再選されたことにより、国内の改革が進むだろう」とただ書くだけの、あきれるばかりの表面的なFT紙やニューヨークタイムズ紙のニューズ報道よりは本質をとらえている。

フルフォード氏は、1961年生まれのカナダ人である。父親がカナダの外交官だったため、カナダ以外の国にも南米ブエノス・アイレス住んだ経験があると本人が書いている。20年前に上智大学比較文学科を卒業した後、カナダのブリティッシュコロンビア大学(http://www.ubc.ca/)を卒業後に、日本で『日経ウィークリー』という日経新聞の英字紙でジャーナリスト生活を始めて、現在は『フォーブズ』のアジア太平洋支局長を務める傍ら、『サウスチャイナ・モーニングポスト』(香港の英字紙)にも寄稿している。

私は、フルフォード氏が「朝まで生テレビ」に出演しているのを見たことがある。そこそこの日本語は話していた。日本のマスコミが、暴力団に関しての記事をほとんど自己検閲で乗せないことに憤ったという体験から、取材の源は外国人記者クラブでの週刊誌ジャーナリストとの会話が中心であるようだ。

(引用開始)

『日本がアルゼンチンタンゴを踊る日』(36ページ)

もともと私は、日本で記者としてのキャリアをスタートさせた。それは、この国がまだバブル経済の絶頂にある頃で、私はこの国がユートピア utopiaではないかと思っていたときもあった。日本の大学に通い、その単位を持ってカナダに帰り、UBC( University of British Columbia、ブリティッシュコロンビア大学)を卒業すると、日本での生活が忘れられなくて、再び日本にやってきた。そうして、アメリカの通信社ナイト・ライダー Knight Ridder のレポーターとなり、日本発の記事を送るようになった。
最初、私は大蔵省や束京証券取引所の会見などに出て、日本経済に関する記事を送った当時の日本の株式相場は絶好調であり、日本企業の世界での強さは特筆ものだった。アメリカの読者には、「なぜ日本企業は強いのか?」「日本的経営の秘密」というような記事がよく読まれていた。ただ、当時のアメリカの関心事は、日本との貿易摩擦 trade frictionにあって、私はグレープフルーツやオレンジなどの柑橘類の自由化交渉の記事なども書いた。

もちろん、このときも、日本には闇社会があることは知っていた。しかし、それは、日本の大学に通っていたとき、友人がヤクザに絡まれてケンカになったことがあった程度の認識にすぎなかった。しかし、この友人が警察に駆け込むと、警察官は彼に「ヤクザに手を出してはいかんよ」と言うだけで、なにもしてくれようとはしなかったので、不思議なことがあるものだと感じていた。

東京で記者活動をするうちに、私は大物政治家の秘書や金融機関の幹部などと知り合うようになった。そして、彼らから少しずつ、この国の本当のことを聞かされるようになった。例えば、日本が貿易摩擦交渉で毎回先送りをくり返している本当の理由を知りたいと言うと、その政治家の秘書は「それなら議員の後援会に来るといい」と言った。そこで、私が見たのは、政治献金という現金を持って陳情にやってきたたくさんの人々だった。(中略)

1991年、バブル経済の崩壊が明らかになったとき、私は不良債権がどれほど発生しているのかと関係者に聞いて回った。日本銀行や大蔵省の幹部などを取材して歩いた。政治家にも話を聞いた。そうして出てきた数字は、驚くなかれ約200兆円だった。「金融機関の貸出総額から実際の資産の総額を引くと、ほぼこうなる」と、ある関係者は言ったのだ。これは、いま言われている不良債権の額と変わらない。そこで私は、ではなぜ早急に対策を講じないのかと聞くと、返ってきた答えは誰もほぽ同じだった。
「景気はいずれ回復する。いまは我慢していればいい。そうすればやがて不良債権もなくなる。あのオイルショックのときだって、われわれは我慢した。国民に節約を呼びかけ、我慢した。そして乗りきった。だから、待てばいい」
しかし、景気は10年以上回復せず、その間、政府は問題が顕在化しそうになるとフタをするだけで、ただ待ち続けてきた。そして、その間に日本の腐敗はどんどん深くなっていったのだ。

(『日本がアルゼンチンタンゴを踊る日』フルフォード著 36ページ)

(引用終わり)

上記でフルフォード記者が書いているように、この『ヤクザ・リセッション』と前著『日本がアルゼンチンタンゴを踊る日』(2002年 光文社ペーパーバックス)の2冊は、「日本の政官業とヤクザの鉄の4角形によって日本の経済は失われた10年を経験したし、今後10年も今のままの政治情勢が続くとさらに失われるだろう」と言うことを書いた本である。これだけなら、ウォルフレンなどのリビジョニストたちも書いている事である。リビジョニストとは、「日本は、アメリカや西洋社会のような近代社会ではなく、完熟した民主主義が行われている国ではない」ということを80年代後半に指摘した、アメリカの日本研究学者たちの集団のことである。

この本がこの場で書評するべきだと判断されるのは、この本がどうやら、副島隆彦の著作のいくつかと、この「今日のぼやき」(会員専用ページ)をペロペロと読みながら、その上で取材されて書かれた本であるからである。そういう風に導かれて書かれている。副島隆彦の文章と、フルフォード記者の記述を交互に引用しながら、これを示しておこうというのが目的にある。


<文春はアメリカの手先だ論は副島隆彦の言論そのものだ>
まず、フルフォード記者は自分の専門分野の「ヤクザ・リセッション」を扱った、『週刊文春』の記事についてこう書いている。この文春の記事は、その前の月(2002年4月)に発売された、日本の不良債権問題とヤクザとの関係についてアメリカの国務省などが大統領向けレポートとして作成したことを報じた、雑誌『選択』の記事に基づいているとフルフォード記者は書いている。要するに、文春に記事を寄せた、カトゥーラス氏(ヘラルドトリビューン元東京支局長)がCIAのエージェントではないか、とほのめかしているのである。『東京アンダーワールド』という戦後史ものを書いたスポーツジャーナリストのロバート・ホワイティングだって、ナベツネ(渡邉恒雄元読売社長)の英語の家庭教師をやっていた、CIAの情報要員だった。アメリカというのは、ジャーナリストが国家の謀略の片棒を担ぐという国でもある。フルフォード記者も何らかのつながりはあると私は疑っている。知日派の知識人、プレストウィッツだって、最近は日本の戦後が、戦後アメリカ・CIAと自民党・暴力団によって作られたということや、日本がアメリカの属国であるということをハッキリ書くようになった。このフルフォード記者の本も、単独で書かれたのではなく、そのような大きな判断(「日本を自立させる」という目的)によって書かれたのだろう、と疑って掛かることが重要である。

(引用開始)
(『日本がアルゼンチン・タンゴを踊る日』19−20ページ)

アメリカの意向をなぞった週刊誌

じつは「ヤクザ・リセッション」については、すでに日本のメディアでも報道しているところがある。2002年5月、週刊誌『週刊文春』(2002.5.16)は“元米国捜査官が書いた「日本はヤクザ不況だ!」レポートの戦慄部分”という記事を掲載している。
『週刊文春』と言えば日本の一流の週刊誌であり、どちらかといえば保守的なメディアとして知られている。すなわち、愛国的であり、左翼リベラリズムとは常に対立してきた。しかし、この記事には、どこにも保守的なところはなかった。そればかりか、日本の現在の保守層の利益には、大きく反するとしか思えないものだった。
では、なぜ『週刊文春』だけが、日本のほとんどのメディアでタブーとされていることを書いたのだろう?それはこの記事の出所 originを考えてみると、ハッキリする。というのは、この記事は ほとんどがアメリカ国務省に提出されたレポートの抄訳にすぎないからだ。いちおうアメリカ人ジャーナリストが書いた形式をとっているものの、内容は国務省レポートと寸分たがわないものなのだった。
国務省レポートとはなにかというと、それは、ブッシュ大統領の初来日にタイミングを合わせて提出されたもので、大統領が日本に不良債権処理を迫るときの予備知識を提供するものである。つまり、「日本の不況はヤクザがつくりだした」ものであり、「政界はヤクザによって汚染されている」と断定し、その背後関係 backgroundを詳述したものである。アメリカでは日本の不況を分析したレポート、いわゆるインテリジェンス・レポート intelligence reportというものが何度もつくられていて、こうしたレポートをもとにして日本対策は実施される。だから、『週刊文春』の記事は、アメリカの日本への意向をそのままなぞったものなのだ。

(『日本がアルゼンチン・タンゴを踊る日』19−20ページ)

(引用終わり)

そして、副島著 『テロ世界戦争と日本の行方』(弓立社)の227ページを引用します。 

(引用開始)
副島著 『テロ世界戦争と日本の行方』(弓立社)の227ページ

文藝春秋という出版社は悪らつな出版社である。自分たちが、事件にして火を付けておきながら、「反対意見の人にも書かせておけ。うまい具合に変人に見えるように工夫して」という出版社である。田中角栄自身からも反論の談話を取るぐらいのこともした。

私は、昔、佐高信(さたかまこと)叩きを、ここの『諸君』誌でやらされて、うまく、鉄砲弾として使われて、使い捨てにされる謀略にひっかかったので、身に沁みて分かっている。自民党の大物政治家たちでも、この文春には、手玉にとられるのだ。

一流出版社の看板を掲げて、日本の保守本流のような顔をしている。それもこれも田中を血祭りにあげた時からだ。それは、アメリカで言えば、ニクソンを、ウォーターゲート事件で、ワシントン・ポスト紙が、謀略で血祭りにあげたのとよく似ている。

文春は、この田中金脈の時から、一流雑誌になったのであって、それまでは、企業経営者が暇つぶしに読む、文芸誌のような、回顧趣味の同窓会雑誌のような雑誌だったのだ。文春内部も田中健五派と堤堯派の派閥抗争がある。

副島著 『テロ世界戦争と日本の行方』(弓立社)227七ページ『田中角栄の真実』を読んだ(2000.9.25) 

(引用終わり)

アルルです。
もともと、国内でこのインテリジェンス・レポートが知れ渡ったのは、『選択』の記事と、『正論』の「副島隆彦のワールドウォッチ」がきっかけである。副島隆彦は、この記事と、後に引用する鈴木宗男失脚の謀略説を提示したことから、『産経新聞/正論』から連載を打ち切られてしまったのである。フルフォード記者は、きちんと書いている。

(引用開始)

(『日本がアルゼンチンタンゴを踊る日』21ページ)

国務省レポートの真の狙いとは?

日本の一部メディアにも、こうしたアメリカ政府内の動きを鋭く分析したものがあった。それは月刊誌『選択』と『正論』だった。
『選択』4月号は、どこよりも早くこのレポートの存在をとりあげ、
<訪日したブッシュ大統領の脳裏には、不良債権−裏社会−北朝鮮−悪の枢軸−政治家というリンケージが刻みつけられていた。今後は与野党を問わず、北朝鮮との関係が疑われる政治家の排除を日本に求めてくるだろう。朝鮮総連を通じて北朝鮮への資金パイプ役も果たしてきた朝銀信組の救済に公的資金を投じるよう働きかけた政治家は、少なくとも表舞台から遼ざけられるに違いない>とまで書いていた。この分析 analysisは、まさにその通りであり、加藤絃一が失脚し、野中広務がかつての権力を失ったことを見れば明らかだろう。

また、『正論』6月号での副島隆彦(ワールドウォツチ欄)の分析も的を射ていた。レポートを作成したバック・グラウンドには対日金融ビジネスの存在があり、彼らが<日本で不良債権を買いまくり、担保物件の土地や建物の処分がうまくいかなくなって、焦りまくって>つくらせたと断じていた。さらに、<例えば「(株)大京」の不良債権を、総額1000億円のものを10分の1の100億円で買い取ったのに、多くの被抵当物件にヤクザのような変な「占有屋」が住み込んでいて動かない。これで債権を回収できなくなって利益を出せなくなった上記の外資サービサー(債権回収会社)たちが怒り出した。これが、この対日調査レポートが書かれた真の理由である>と書いていた。

(『日本がアルゼンチンタンゴを踊る日』21ページ)

(引用終わり)

アルルです。次ぎに、副島隆彦が当時(2002年4月)に発表した文章を載せます。
面白いのは、フルフォード氏は、『正論』の記述に依拠して、『日本がアルゼンチンタンゴを踊る日』の11ページでポール・ボルカー氏を現日米欧三極会議(この言葉遣いが副島隆彦のオリジナルだったりする)と書いているのですが、私がTCのウェブサイトで確認して、あの当時はすでに米国議長をトマス・フォーリーに引き継いでいることを確認して、ぼやきには「前議長」と訂正した記憶があります。以下の引用は『正論』に載ったものとは微妙に文章が違っています。

(引用開始)

285. 事務連絡と、「正論」誌用連載記事の作成原版を載せます  2002.4.19(内容は『正論』6月号(5/1発売) 掲載。「アメリカに『組織犯罪に汚染された市場』と断定された日本」)

一昨日は、自民党の政治家たちとの勉強会がありました。すでに副大臣=政務官クラスの中堅政治家たちの集りです。ここで、私は、途中から話に割ってはいって「先生方、そうは言いますがね。確かに、これで、真紀子と、小沢一郎と、加藤紘一と、それから、菅直人の、(自民党打倒の)の連携の動きは、(秘書給与詐取事件の政局化で)分断した。それで自民党は(策略で)勝利しました。……しかし、これで国民が納得する、とは思わない方がいいのでは無いですか」と言ってのけた。

みんな一瞬、白けたが、いつもの副島隆彦の言い方だということで受け容れた。そこに集っているのは、みんな近い将来の大物政治家になろうという人たちだから、私の発言をきちんと飲み込んでくれる。それぐらいの度量と知力がある。

「問題は、このあとであって、本当は、アメリカが全部仕組んでいたのではないですか。先生方の方が、よく、ご存知のはずだ。今、日本の政界を、アメリカ国務省が作成した日本の金融市場についての調査レポートが駆け巡っています。それは……」ということで以下のそのことを書いた。(中略)

おそらくその大物政治家たちは、外交筋と官僚のルートを通して、この英文の現物を既に手に入れているはずだ。自分の名前がそういう恥ずべき書かれ方をされているという事実を一体、どういう気持ちで受け入れるのだろうか。

 百歩譲って、日本の旧来の強固な伝統保守的体質の政治家たちは、そういう○○組とか、○○会といういうような恐ろしい巨大暴力団のトップたちと付き合いがあって、これで日本の現実政治の汚らしい部分を担っているのは事実だろう。百歩も譲らなくてもほんの十歩ぐらいでも、旧来の古い体質の政治家たちはそういうヤクザの大物の人たちとのある種の親交があるだろう。(中略)

私は私なりにこの2週間調べた。本当の事を書くと、実は、この国務省のレポートというのは、アメリカの商務省の対日政策官僚たちが作成したものだ。「インテリジェンス・レポート」となっているからと言って、必ずしも国務省(CIAを含む)のものではない。あくまでノーマン・ミネタ商務長官が率いるコマース(商務)の部門の、対日金融ビジネス担当のアナリストたちが作成した報告書である。ポール・オニール財務長官も監督しているだろう。

この調査レポートを、日本のことについて専門的な事は何も知らないコンドリーザ・ライス大統領補佐官(安全保証問題担当)が、ジョージ・ブッシュ大統領に「ご進講」したのだ。「いーい。ジュージ。これで分かったわね。日本のこいつ、とこいつは、日本のマフィアのファミリーのどこどこと繋(つな)がっているのよ。(私たちが、どこどこと、繋がっているのと同じように)」と講義をする。ライスは、キュアリアス・ジョージ Curious George「いたずら猿ジョージ」の の家庭教師(チューター)なのである。

 たとえば、現在(2002年4月中旬)、前FRB議長のポール・ボルカー(米欧日三極会議=トライラテラル・コミッション、Trilateral Commission 前議長)が今、来日しており、宮崎県で倒産してリップルウッド・ホールディングズ(新生銀行の持ち株会社)に買収された、複合観光施設の「シー・ガイア」で、日本発のカジノ(公認賭博場)を開設出来ないかを日本の官僚たちと折衝している。

 従ってこの対日調査レポートは、日本で不良債権を買いまくってそれに付いているうまみの大きな担保物件の土地や建物の処分がうまく行かなくなって、焦りまくっているモルガン・スタンレーやゴールドマン・サックスが圧力をかけて商務省に作らせたものだろう。

 たとえば「ライオンズマンション」の不良債権を、総額1000億円のものをたったの十分の一の100億円で買い取ったのに、多くの被抵当物件にヤクーザのような変な「占有屋」が住み込んでいて動かない。これで債権を回収できなくなって利益を出せなくなった上記の外資のサービサー(債権回収会社)たちが怒り出した。これが、この対日調査レポートが書かれた真の理由である。だから、『選択』誌も次のようにこのレポートの本質を的確に見抜いている。

285. 事務連絡と、「正論」誌用連載記事の作成原版を載せます  2002.4.19(内容は『正論』6月号(5/1発売) 掲載。「アメリカに『組織犯罪に汚染された市場』と断定された日本」)

(引用終わり)


<副島戦後日本王朝論を読まないと書けない記述の数々!?>

そして、フルフォード記者は、田中角栄の失脚劇(ロッキード事件)について、本当の黒幕は中曽根康弘であると言う風に書いている。

(引用開始)

(『ヤクザ・リセッション』145−147ページ)

以上のリストを見て誰もが思うのは、ロッキード事件以後、ほぼ同じ事件が毎年のようにくり返されていること。そして、そこには必ず、何人かの政治家の名前があり、事件の構造がほぼ同じということだろう。
が、それ以上に忘れてはならない重大なことがある。それは、リストの表面にはけっして表れないが、逮捕された者より、逮捕されなかった者のほうが、よほど汚染されているということである。このリストで登場する政治家で田申角栄を除いて、もっとも大物は、竹下登である。しかし、彼は1度も逮捕されなかった。リクルート事件をみてもわかるように、ほぼ同じ犯罪の容疑 suspicionがかけられながら、逮捕される者と逮捕されない者が、どの事件にもいる。

ロッキード事件で後藤田正晴の容疑が追及されなかったのは、なぜなのか?警察庁官房長、警察庁長官、国家公安委員長を歴任したからなのか?イトマン事件で亀井静香の容疑が追及されなかったのは、なぜなのか?後藤田と同じく、警察官僚の出身だったからなのか?そして、歴代の首相たちは、なぜいつも容疑を追及されることなく、逃げ切れたのであろうか?

本当の「黒幕」は中曾根康弘ではないのか?

中曾根康弘元首相は、高齢にもかかわらず、いまだに日本の政界に隠然たる力を持っているとされている。「大勲位」と呼ばれ、日本の戦後政治においては、超一流の大物と一般国民には信じられている。

しかし、田中角栄以後のすべての疑惑事件をたどり、「闇の紳士録」のぺ一ジをめくっていくなら、彼こそが、背後にいた「黒幕」 fixerであることがわかる。
これは、日本の政治史を研究している欧米の学者、私のような外国メディアの記者の常識といっていい。違う言い方をするなら、彼こそが、日本を堕落 downfallさせ、現代の惨惰たる状況 miserable situationを生み出した張本人なのである。

実際、中曾根ほど多くの疑惑を持たれた政治家はいない。九頭竜川ダム汚職(1964)、殖産住宅事件(1972)、ロッキード事件(1976)、リクルート事件(1988)と、少なくとも4件の事件において、彼は逮捕されても仕方のない状況にあった。

しかし、なぜかどの事件も側近たち scape goatsの逮捕によって決着がつき、けっして申曾根本人に捜査 investigationの手が及ぶことはなかったのだ。
ロッキード事件では側近の佐藤孝行元総務庁長官が、リクルート事件では藤波孝夫元官房長官が逮捕され、事件は沈静化してしまった。また、これまでの汚職事件で逮捕された政治家の多くが、中曾根側近なのである。(略)

CIAにさえにらまれなければ日本の検察など怖くない

日本が法治国家でない点をいちばんわかりやすく考えるなら、最近なら国会議員の秘書給与詐欺事件がある。2003年7月、事件発覚から1年以上もたって辻本清美が逮捕された。しかし、なぜ彼女が逮捕されて、同じことをした田申真紀子は逮捕されないのか?

辻本のやり方が稚拙で、田中真紀子のやり方が巧妙だというのが、その理由なら、やはり日本では法律は機能していないのだ。同じ容疑があるなら、同じように捜査 investigationすべきであり、同じょうに法を適用すべきではないか?

この国では、大物政治家が不正を行っても、たいていは逮捕されないことになっている。
第3章で詳述したように、亀井静香はイトマン事件の裁判の過程で、実名をあげられ、はっきりと賄賂 briberyを渡したという証言 testimonyが出たのに、警察当局は動きもしなかった。また、「泉井疑惑」では本人が、山崎拓、加藤紘一、小泉純一郎、森喜朗、額賀福志郎などの政治家の名前をあげたにもかかわらず、なにも起こらなかった。日本では、疑惑の張本人が逮捕されない。少なくとも1人ぐらいは逮捕されたとしても、疑惑の頂上には行き着かないことになっている。

これは、ロッキード事件以後、日本の検察 prosecutorが守り通してきた「鉄則」iron ruleである。そんなバカな、首相の田中角栄が逮捕されたではないかと反論されるだろうが、じつはあのとき、ほとんどすべての自民党の幹部たちが賄賂をもらっていたという話がある。

1972年8月、田中角栄とアメリカのニクソン大統領が会談して、ロッキード社のトライスター購入が決定した。が、その決定の裏には、ロッキード社が政商・児玉誉士夫を販売代理人とし、同時に、商杜の「丸紅」と航空会社「全日空」にも働きかけた政界工作があった。それが、5年後、なぜか突然、アメリカの外交委員会(多国籍企業小委員会)で発覚し、大騒ぎになったのだった。

なかでも問題となったのが、田中角栄に渡った5億円の成功報酬 contingency feeであったが、不思議なことに不問に付された政治家がいた。この事件では、先にP3C対潜哨戒機の導入疑惑が発覚し、中曾根康弘(当時、防衛庁長官)や後藤田正晴(当時、官房副長官)にも重大な疑いがもたれたのである。しかし、なぜかこの軍用機問題は消減して、民間航空機の疑惑だけがロッキード事件として社会問題となったのだ。

(『ヤクザ・リセッション』145−147ページ)

(引用終わり)

アルルです。そして、すでに引用した『テロ世界戦争と日本の行方』(211ページ)から再度引用する『自分の走り書き力作「日本の政治のこの15年」――2000.10.26』です。

(引用開始)
『テロ世界戦争と日本の行方』(211ページ)

恩義のある人の葬式にさえ顔を出さない人間は、卑怯者である。中曽根を政治家として育てて、金銭面で一番面倒を見たのは、児玉誉士夫である。なのに中曽根は児玉の葬式に出なかった。中曽根というのはそういう男である。旧内務官僚(本当は、その中でも特高警察)あがりの、根っからの官僚自己保身体質の男が中曽根である。やっぱり、党人派に対して、官僚派というのは政治家として質が良くない。私は、党人派の政治家が好きだ。

ロッキード事件の本当の賄賂先は、中曽根なのだ。ロッキード社のコーチャン社長が、裏金を払ったことははっきりしている。それが、丸紅・児玉ルートで、3億6千万円あった。これも事実だ。そしてこのうちの一番大きな金額は、中曽根に渡っているのである。このことは『田中角栄の真実』の中に書かれている。児玉は、河野一郎の後継者としての中曽根を買いつつけた。ところが、中曽根は、旧内務官僚仲間たちとともに、自分たちで直接、アメリカの極東地区(リージョン)のCIAの責任者たちとの連絡網をつくり、旧勢力としての児玉誉士夫らが、アメリカにお払い箱にされるのを見守ったのち、その後釜に座った。この中曽根の傍らに、ナベツネ(読売新聞社会長の渡辺恒雄)がいる。彼らが、日本におけるグローバリストの受け皿の本体(本隊)ということにもなる。

世界反共政治体制の極東におけるメンバーとして。ただし、先述したとおり、金はない。全国の政治献金は全て,竹下が抑えて続けた。

田中角栄が、文芸春秋というメディア(マスコミ)の飛び道具を使われて「田中金脈研究」で、追い落とされた(首相辞任)したのは、1974年12月26日である。この年の1月には、田中の訪問先のインドネシアやタイでCIAが仕組んだ反日(反田中)小暴動のようなものを起きている。(中略)

竹下は、田中角栄の側近を長く続け、五大老の一番下に居たような人だ。他の大老は、二階堂進、橋本登美三郎、金丸信、田村元らである。その下に、のちに「七奉行」と呼ばれる、小渕恵三、橋本龍太郎、渡辺恒三、奥田敬和、小沢一郎、羽田つとむ、梶山静六 がいた。だから竹下は、長く、佐藤栄作の家に住んだのだ。意地でも佐藤先生の家に住んで、憎き角栄の生霊や亡霊と闘ったのだ。
皇民党事件の事についてはここでは書かない。その他もろもろの資料と証言がたくさん出てきている。

私が、かつて書いた「小沢一郎論」を思い出しながら書けば、「自分の親父である田中角栄が、大番頭格の竹下登と、金丸信に殺されるのを、見ながら、この七奉行たちは、三日三晩,手を取り合って泣きはらした」のである。

竹下が短刀を握ったその震える手を横から握り締めながら、金丸信が、竹下に「刺せ。刺すんだ」と喚いたのである。

これが政治だ。一国の政治劇だ。私たちの生きているこの国の,一番上にいる人々の所業である。これは、そのまま、私たちが習った日本史の延長線であり、日本史そのものではないか。いつの時代も、政治は血生臭い権力闘争と共に在る。この大きな真実を抜きに、他のことを語るな。

(引用終わり)
『テロ世界戦争と日本の行方』(211−212ページ)
自分の走り書き力作「日本の政治のこの15年」――2000.10.26


<ロッキード事件はもともと米国内のニクソン叩きだった!という新刊書の書評もあわせてやります>
アルルです。ここで少し脱線します。引用した『テロ世界戦争』の中で、「(文春が)一流出版社の看板を掲げて、日本の保守本流のような顔をしている。それもこれも田中を血祭りにあげた時からだ。それは、アメリカで言えば、ニクソンを、ウォーター・ゲート事件で、ワシントン・ポスト紙が、謀略で血祭りにあげたのとよく似ている」という記述がありましたが、最新のロッキード事件研究によれば、本当にロッキード事件(角栄失脚)とニクソン失脚は一つの大きな事件の構図のなかにあったのだ。このことは、ジャーナリストの新野哲也氏の近著『角栄なら日本をどう変えるか』(光人社)にしっかりと書かれている。この本は、今後、ロッキード事件を語る上で欠かせない本である。ロッキードの検事を務めた堀田力(つとむ)の、『壁を破って進め』(講談社)がインチキ本であることを見事に論証している。あの本自体が、ウォーター・ゲート事件の、ウッドワードとバーンスタインという二人のワシントン・ポスト記者の真似をして書かれた本なのである。あの本では、堀田に情報を提供した米国人が少なからずいたが、その情報源をぼかすために堀田が「ゆふ」という架空の人物を登場させている。これは、ウォーター・ゲート事件の、ディープスロートそのものだ。見方を変えれば、このことを、堀田氏も同書のあとがきでポロッと書いていることから、はじめから「この本はフィクション」であると自白しているというのだと読者は分からなければならないのだ。
『角栄なら日本をどう変えるか』から重要な部分を引用する。

(引用開始)

『角栄なら日本をどう変えるか』(154ページ)
●ロックフェラーに睨まれたニクソンと角栄

布施健(ふせたけし)検事総長は、アメリカから送られてきた三千ぺージにもおよぶロッキード資料を一心に読みふけったという。マスコミはそれを美談としてあげつらった。正義への執念というのである。だが、アメリカからそれが到着した日、マスコミが空港や検察庁に殺到して大騒ぎになった"ロッキード資料"は、正義とは何の縁もない、アメリカ財界のただの内輸もめレポートだった。

それもそのはずである。ロッキード事件の原点であるチャーチ委員会は、ガルフ、テキサコ、ロッキードなどアメリカ西南部のメロン財閥を中心にした新興財閥を叩くためのロックフェラー財閥に代表される東部エスタブリッシュメントの謀略劇だったからである。西南部の新興勢力をバックに大統領になったニクソンを第一幕のウオーターゲート事件で辞任に追い込み、多国籍企業委員会が暴露する"ロッキード不正送金疑惑"で息の根を止めるというのが、東部財閥の雄たるロックフェラー財閥が書いたシナリオだった。

ところがどういう風の吹きまわしか、キッシンジャーから「反ユダヤ的」と指弾された角栄が第二のターゲットとなってゆく。ロックフェラーにとってチャーチ委員会は、ニクソンと自主資源外交を展開する反米的な角栄を"一石二鳥"で打ち落とせる絶好の舞台仕
立てとなったのである。アメリカの財閥は、石油帝国の異名をもつロックフェラー、旧財閥と呼ばれるモルガンと巨大化学工業のデュポンのほかにアルミニュームの独占で知られるメロン財閥の四つに分かれている。最大のロックフェラーは、石油メジャーを一手に牛耳るほか、政界やマスコミ、文化・社会事業の分野でとびぬけた力をもつ”政商”としても知られる。

『角栄なら日本をどう変えたか』(154ページ)
(引用終わり)

アルルです。この場合のロックフェラーは、現在の事実上の世界皇帝である、金融財界の大物デヴィッド(89歳)ではなく、共和党員だった兄のネルソン元副大統領のことである。この米国国内の謀略に、なぜ角栄が関わってくるのか。これはなぜケネディが暗殺されたのかという疑問への答にもなっている。つまり、米軍産複合体( militarily industry complex )全体にスキャンダル問題が波及してアメリカの重大な国益が揺らぐことを恐れたのであろうと、新野氏は分析している。再度引用を続ける。

(引用開始)
『角栄なら日本をどう変えるか』(162〜164ページ)

ロッキード事件は、ウオーターゲート事件から二年後の昭和五十一年の二月四日、米国上院外交委員会の多国籍企業小委員会(チャーチ委員会)の公聴会で、ロッキード社の会計担当者ウィリアム・フィレンドリーが、同社が新たに開発したエアバス「トライスター」1011型機」を売り込む際、裏帳簿を利用して日本、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、スウェーデン、トルコなどに合計四十八億円の賄賂を供与したと証言したことから発覚した。日本にかんしては、ロッキード社の工ージェントと名指しされた児玉誉士夫をつうじて複数の政府高官に多額の賄賂が渡ったとされた。

ウオーターゲート事件をはるかにしのぐ大疑獄事件ではないか。アメリカ政府は震えあがった。ロッキード社は同盟国に各種軍用機を輸出しているアメリカ最大の航空会社であり、軍産複合体の要である。軍用機の売り込みには、これまでホワイトハウスや政府高官が軍産複合体をとおして密接にかかわってきた。民問機の売り込みに四十八億円の裏金が使われたのなら、戦闘機や哨戒機の売り込みにどれほどの工作資金が支払われたか、はかり知れない。

非合法的な手段をもちいて外国や同盟国へ旅客機や軍用機を売りつけてきたロッキード社の不正を追及するチャーチ委員会が、トライスター疑惑のつぎにP3C対潜哨戒機などの軍用機に言及すれば、アメリカ政府は、窮地に陥ったはずである。軍部と癒着しているアメリカ政界から、多くの逮捕者がでることも予想された。(中略)

とくに慌てたのはフォード大統領だった。フォードは軍やCIA、FBIにつながりのつよい軍産複合体の大ボスである。チャーチの告発を封じなければ共和党と民主党東部エスタブリッシュメントと西部新興財閥の対立どころか、冷戦をたたかっているアメリカとその同盟国の"ソ連囲い込み"戦略に致命的なヒビ割れがはいる。軍用機の売り込みにかかる秘密工作やその工作にかかわる人脈、仕組みが暴露されると、NATOや日米安保条約体制にまで影響がでかねなかった。

しかも、ロッキード事件を摘発しようとしている多国籍企業委員会のチャーチ上院議員は「チリ政変・アジェンデ暗殺計画」にからむCIAの「外国指導者暗殺計画の調査報告書」を公表した上院の情報活動調査特別委員会で委員長だった危険人物である。反CIAの急先鋒とも目されていた。将来の大統領候補ともいわれるチャーチの狙いが、フォード大統領にあるのは明らかだった。フォードはCIAとの癒着を指摘されてきた謀略好きの男である。チャーチにとってこれほど格好の標的はなかったろう。(略)

『角栄なら日本をどう変えるか』(162〜164ページ)

(引用終わり)

アルルです。このように、反共世界戦線を崩しては成らないという、大戦略(グランド・ストラテジー)の観点から、ニクソンと角栄はアメリカに潰されたのである。ニクソンが失脚した後、大統領に就任したのが、このジェラルド・フォードである。西部新興財閥の利害を代弁するニクソンの代わりにネルソン・ロックフェラーを副大統領にしたフォードは、最近、ケネディ暗殺について、「オリバー・ストーンのいうような謀略説はありえない」と『産経新聞』の樫山幸夫記者に語っている。(『産経新聞』平成15年11月21日)このフォード氏は、ケネディ暗殺を調査し、オズワルド単独犯行説を結論づけた、ウォーレン委員会の委員長をしていた人物である。ここまで状況証拠がそろっているのに、なぜケネディは狂った共産主義者のオズワルドに単独で暗殺されたと主張できるのだろうか。
それはともかく、ロッキード事件が、当初はニクソンに最後のだめ押しをしようとしてロックフェラー系によって考案された謀略だったというのはきわめて大胆な推理であるが、言われてみればつじつまの合う真相であるのではないか。このように、米国内でも財閥どうしの暗闘があるのだろう。

 新野氏は、なぜロッキード事件が、米国国内問題ではなく、角栄という東アジアの国家指導者の追放に結びつくのかについて、筋書きを書いたのはロックフェラー家の代理人でニクソンを背後から刺し殺したヘンリー・キッシンジャー元大統領補佐官である、と書いている。田中角栄はすべての謀略に気付いていた。角栄はロッキード事件が発覚したときに、「ロックフェラーにやられた!」と叫んだのである。この辺の話は、副島著『アメリカの秘密』(メディアワークス刊)に詳しく書かれている。新野氏は間違いなく、副島隆彦の一連の著作は読んでいるだろうが、そのことは書かない。

(引用開始)

『角栄なら日本をどう変えるか』(166〜168ページ)

●チャーチの矛先を日本へ転じたキッシンジャー

ところが、チャーチがつけた火は意外な方向へむかう。P3C対潜哨戒機の不正工作を視野にいれたロッキード疑惑は、日本の元首相の関与が疑われるトライスターの裏金工作へと巧妙にすりかえられてゆくのだ。それがコーチャン証言である。アメリカでロッキード事件がいっこうに問題にならず、日本で大騒動になったからくりがこれである。民間機輸出の裏金工作などにアメリカ人は関心をもたない。

暗躍したのはキッシンジャーだった。チャーチの糾弾がロッキードのP3C哨戒機などの軍用機に飛び火すると、日米の安保体制をゆるがしかねないと懸念したキッシンジャーは、国内問題を国外問題へすりかえたのである。
一九七六年の六月二十七、二十八日の両日、プェルトリコで開かれた先進国首脳会議に出席した三木首相は、三十日、フォード大統領に呼びつけられてワシントンヘはいった。ロッキード事件の対処について話し合うためである。会談内容は明らかにされていないが、テーマは@同事件を防衛問題(P3C対戦哨戒機)へ発展させないことAトライスター疑惑解明のため、アメリカ側はコーチャン、クラッターらの嘱託尋問の延言を日本の裁判所に提供する用意があるの二点だった。トライスター疑惑には、児玉誉士夫や小佐野賢治の名がでている。政府高官のなかに角栄がふくまれていた。このとき、すでに角栄に謀略の罠が投げかけられていたのである。

それ以前にフォードは、児玉逮捕をサジェストしている。脱税で摘発した児玉の線から、角栄のロッキード事件への関与を洗いだすためである。三木は快諾した。P3C対潜哨戒機に委員会の手がのびれば、米の軍産複合体の構造にメスがはいる。アメリカはそれを是が非でも避けなければならない。その前に児玉の身柄をおさえ、日本でトライスター疑惑を過熱させる。目眩ましである。そのあいだに児玉が死亡してくれれば願ったり叶ったりだが--事実は小説より奇なり−児玉は一口も真相を語らぬうち死亡するのである。

●筋書きは「児玉摘発」から"角栄逮捕"だった

フォード・キッシンジャーはさらに謀略を巡らす。P3C対潜哨戒機にかかるロッキード社の裏工作が明るみにでる前にトライスター捜査で角栄を逮捕し、国民の関心を"首相の犯罪"へむけさせるのと一石二鳥に反米主義の角栄を葬ろうというのである。三木はこれに同意する。フォードと手を握れば"三木下ろし"をはねつけることができるばかりか、角栄を完全に叩き潰せる。これまで自民が深くかかわってきた防衛整備にかかる疑惑をすべて角栄におしつけ、福田や中曾根に恩を売ることができるそれがワシントンでの「三木フォード会談」の合意だったのである。

『角栄なら日本をどう変えるか』(166〜168ページ)
(引用終わり)

要するに、当時の三木首相が角栄を政治的に抹殺するために、米国側の謀略に荷担したのだ。
ここまで鮮やかに暴かれると、もう文藝春秋も立花隆も堀田力も塩田潮も何も言えないだろう。しかし、国民世論の間では、−フルフォード氏も残念ながらそうなのだが−戦後の自民党の腐敗というレベルの追求にとどまっている。「角栄も中曽根も竹下も同じように腐敗していた」というふうに斬って捨てるレベルで終わってしまっているのである。悪質なミスリーディングである。新野氏が書くように、ロッキード事件で角栄がアメリカに指され、最後のひと突きが竹下登の「創世会」旗揚げによって刺されたあと、日本の政治は政官業の癒着が深まったというのが事実に近い。新野氏は「角栄失脚」を、「アメリカと、日本の官僚派政治家と、新潟出身の政治家である稲葉修法務大臣の共同のクーデターである」と喝破している。角栄はなんども小室直樹が書いているように、「官僚主導から政治家主導の政治」を目指そうとした本当の国民指導者であった。丸紅からの5億円は、ただの政治献金だったのである。これは、丸紅側の檜山広氏も証言していることだ。新野氏の文章には、悔しさがにじみ出ている。


<まだまだある、副島隆彦からの「引用」>
フルフォード記者の、二つの著作の話に戻る。フルフォード氏は鈴木宗男の失脚はアメリカの謀略であると書いている。このようなことを書いているのは、副島隆彦以外にはいなかったはずである。

(引用開始)
(『日本がアルゼンチンタンゴを踊る日』152〜153ページ)

サハリン・プロジェクトと鈴木宗男

ブッシュの来日後、日本の安全保障問題で懸念すべき重大な問題が起こった。それは、北方領土問題で日本の政治家としては唯一ロシアに食い込んでいた鈴木宗男の失脚 lost his positionである。彼の逮捕arrestとともに、外務省きってのロシア通と言われていた佐藤優という有能な外交官も失脚、逮捕された。

なぜ、この事件が日本の安全保障に関係があるかというと、ロシア、とくにサハリンには油田 oil field、天然ガス natural gasがある。
エネルギー資源 energy resourcesのない日本にとっては、これはなんとしてでも確保しておきたい資源であることは間違いないだろう。しかし、この日本にとってノドから手が出るほど欲しいエネルギーの確保は、鈴木宗男の失脚によって限りなく後退したのである。
じつは私は、2001年の秋、サハリンに取材に行っている。このとき、私はサハリンの自然の雄大さに驚いた。大きな川が悠然と流れ、美しい山々が迫り、まるで私の故郷のカナダのような大自然 Wild natureがあったからだ。街中には、レストランやバーがあり、ガイド役には、日本語を一生懸命勉強している地元のロシア人女性がついてくれた。北海道からたった50キロ。日本からもっとも近い大自然の観光地である。

ところが、この地を訪れる日本人は年間2000人しかいないという。北海道には年問100万人の観光客が訪れるのに、足を延ばそうとしないのである。あまりにももったいない話だと思った。
そして、もっともったいないと思ったのが、ビジネスの面で日本がビッグチャンスを逃していることだった。サハリン沖の油田開発は着々と進んでいて、すでに400億ドルの資源が発見され、まだまだ1000億ドルの埋蔵量があるという。もし、開発が順調に進むと、アジア最大の資源基地になると、地元のロシア人は胸を張った。ヘリで現場を見に行くと、「シェル」 Shellがここ30年間で最大の規模という油田開発を進めていた。

次のプロジェクトはアメリカの「エクソン」 Exxonがやるという。こうしたビッグプロジェクトに、なぜか日本企業の影は薄い。聞けば、下請け subcontractでしか参加していないのだった。ロシア人のコンサルタントは、「日本人のビジネスは子供みたいだ」と言い放った。進出してくるときは、日本の政治家の紹介状を携え、ロシアの高官への表敬訪問から始める。しかし、実際に商売が始まると、契約書のあいまいさなどからトラブルに巻き込まれ、結局は失敗してしまうケースばかりだというのだ。日本はこうした国際社会における大きなパワーゲーム power gamesに、完全に負けていると痛切に思った後の鈴木宗男の失脚である。私がその裏に、世界のエネルギーを支配するメジャーとアメリカ政府の策略を感じないと言ったらウソになるだろう。

(『日本がアルゼンチンタンゴを踊る日』152〜153ページ)

(引用終わり)

アルルです。これは『副島隆彦のワールドウォッチ』の記述そのものでしょう。元をただせば、田原総一郎氏の『中央公論』への寄稿文である、『アメリカの虎の尾を踏んだ田中角栄』からのアナロジーである。世界レベルでは、そういう風に認識されているということなのでしょう。副島隆彦のワールドウオッチ(2002年5月17日記)「外務省の失敗と、世界各地域の最近の動きを概観する」から引用します。全文は、ここです。

(引用開始)
副島隆彦のワールドウオッチ(2002年5月17日記)「外務省の失敗と、世界各地域の最近の動きを概観する」から引用

鈴木宗男の強引な政治家人生は今や国民監視下にあるが、彼が本当にやっていたのは、ロシアとの天然ガスの開発プロジェクトと、それをパイプラインや液化して、周辺各国を通過させて、海外に輸出するという大きな話であった。アメリカのアフガニスタン爆撃が始まる直前の昨年の10月に、鈴木議員は、実質、日本政府特使(代表)としてアフガニスタンの北のタジキスタン国で、天然ガスのパイプラインの建設を巡る各国協議の場に臨んでいた。

それは、アフガニスタン国内を通過してパキスタンのカラチ港までやがて引かれるはずのパイプラインである。日本の商社各社もこの話に加わっている。 同じく、今年の1月に、北朝鮮の日本海側の経済開発特区に指定されている羅津(ラシン)と密接につながるロシアのウラジオストックで、鈴木議員は、外務省代表として、今はロシア領となっている沿海州の埋蔵天然ガスをパイプラインで朝鮮半島を通過させて、北朝鮮の金正日政権が崩壊した後の経済再建のための大きな収入源としての各国協調のプロジェクトを話し合う場に出席している。

この天然ガス施設の収益を元にして朝鮮半島の復興の話は進んで行く。「政治と経済」は、ものごとの両輪であって、政治が政治だけで完結することはなく、必ず、経済・金融との連携や裏付けが無ければならない。

天然ガスの開発と輸送網の建設こそは、石油に代わるエネルギー政策の現在の世界的な中心課題である。鈴木宗男と佐藤優は、この天然ガス開発計画で、日本の国益を懸けてロシアとの交渉に当たり、それがアメリカの石油メジャー系からは目障りとなったので、それで日本国内で政治スキャンダルを起こされて失脚して行くのだろう。

日本とロシアが経済問題で直接に密接に繋がる事をアメリカに阻止されてしまった、ということだ。宗男問題では、この視点が一番重要だと思う。

副島隆彦のワールドウオッチ(2002年5月17日記)「外務省の失敗と、世界各地域の最近の動きを概観する」
(引用終わり)

アルルです。田中真紀子の失脚も、野中広務の失脚も、加藤紘一の失脚(最近復活した。自衛隊派遣について果敢に反対している)も、フルフォード氏は全部アメリカの策略だという風に理解しています。詳しい引用はこれ以上しません。フルフォード氏が有料会員だったという話は聞きませんから、たぶん日本の知人のジャーナリストや担当編集者から、「ぼやき」のコピーを見せてもらったのでしょう。


<外資=ハゲタカ論に異論を示すフルフォード氏>
このように、フルフォード氏の著作は、副島隆彦の「今日のぼやき」のリプライズのような場所が3分の1くらいある。だから、このサイトをしょっちゅうチェックしているひとには、「なんだあの話か」というような話がほとんどなのです。アメリカに押しつけられた構造改革の部分については、おそらく森永卓郎氏の『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社)を焼き直したものでしょう。

フルフォード氏の論調でただ一つ違っているのは、外資系ファンドに対する認識です。この点でフルフォード氏は、グローバリストの論理そのものです。本人は、自分はカナダ人だから、「アメリカ人ジャーナリストのように自国のグローバリスト globalist(世界支配主義者)たちの利益のためだけに、日本を批判する記事を書いてきたわけではない」(『日本がアルゼンチンタンゴを踊る日』8ページ)と書いています。しかし、おおむね外資のファンドの日本参入については歓迎であると書いています。該当箇所をまとめて引用します。これは副島隆彦が考案した、「7(世界基準の重視)・3(民族固有価値の重視)の構え」と言う態度でしょう。

(引用開始)

なぜ、外資にそんなにおびえるのか?

いったい、日本には不良債権がいくらあるのだろうか?
ゴールドマン・サックスのアナリスト、デビッド・アトキンソン David Atkinsonは、「日本の不良債権総額は約235兆円」とはじいているが、私はこの額がほぼ当たっていると思っている。というのは、この数字が銀行や金融庁側の発表ではなく、上場企業2800社の財務データを積み上げたものだからだ。その結果は、金融機関で、破綻先73兆円、破綻懸念先96兆円、要注意先66兆円の合計235兆円である。
さらに、私は、アメリカ側の捜査関係者に、「では、そのうちヤクザがらみのものは、どれくらいあるのか?」と聞いたら、「3分の1ではないか」という答えが返ってきた。おそらく、これも当たっているだろう。というのも、最近、私の知り合いの有名な組の親分にズバリ聞いたところ、「まあ、半分まではいかないだろう」と笑っていたからだ。
もちろん、不良債権のうち、ヤクザがらみのものだけを処理すればいいという問題ではない。しかし、少なくともここに手をつけなければ、問題は解決しない。とすれぱ、日本政府は今後少なくとも100兆円を超える公的資金が必要となる。これは、途方もない金額である。果たして、そんなことが本当にできるのか?国民は抵抗しないのか?

不艮憤権を次々に処理していけば、問題企業は次々に潰れ、さらに、銀行も持ちこたえられなくなって、外資の手に落ちる企業、銀行が出てくる。長銀が新生銀行として、リップルウッドの手に落ちたように、日本はよ外資に次々に占領 occupationされていくこととなる。これを、「アメリカの金融占領」と言い、そんなことは許してはならないとする愛国主義者 nationalistの抵抗もますます高まってくるだろう。実際、竹中・財政金融担当相は「アメリカの手先 Japan hands」だと言う声が筒まり、彼の「処理案」は、葬られることになってしまった。

しかし、この考え方は、大筋において間違っている。
なぜなら、まず外資はアメリカ企業ばかりとはかきらない。次に、彼らはどこかの国のためにだけ存在するわけではなく、中立的な立場で自身の利益を追求するだけだからだ。

もちろん、一部のハゲタカ・ファンドは、日本政府が見放した企業や銀行を狙って、投資の対象とするだろう。しかし、それでも、そうした外部からの資金で再生可能なら、それで日本国民自身が損をするとは思えない。むしろ、日本国民にとっては得することが多いのだ。日本人がつくづく被害妄想だと思うのは、世界がいまにも力が哀えた日本を狙って、カモにしにくると思っていることだ。そんなことはありえない。カモにしてしまえば、そこからはなにも生まれない。それは、17-18世紀の植民地時代 the colonial periodの話で、現代資本主義は弱肉強食であっても共存共栄 coexistenceをはかるからだ。アメリカですら、
日本を世界経済の重要な一部と考えており、日本がこれ以上衰えることを望んではいない。

150年前、英断を持って国を開き、いち早く世界からあらゆるものを吸収した日本人が、なぜ、こんなに後ろ向きの考え方をするのか、私にはよくわからない。そんなに、日本人は自信confidenceをなくしてしまったのだろうか?
(『日本がアルゼンチンタンゴを踊る日』94〜96ページ)

ハゲタカ・ファンドが日本を救う

ハゲタカ・ファンドについてもう少し考えてみよう。ハゲタカ・ファンドは、英語では vulture fundと言う。vultureとは、ずばりハゲタカ。死体に群がり、肉を食う檸猛な鳥である。
そこで、ハゲタカ・ファンドとは、倒産した企業を安値で買い取り、解体あるいは再生させて高く売ることを目的とした投資ビジネスを指す。アメリカでは1990年代から主流になり、やはり、最初は悪いイメージがつきまとった。

このハゲタカ・ファンドの日本上陸の代表格がリップルウッドで、あまりに派手に活動しすぎたために、日本の保守言論から毛嫌いされるようになったのだ。リップルウッドは、日本企業買収のために総額12億ドルのファンドを設立、まず新生銀行を買い、その後日産白動車系部品会社ナイルス部品を100億円前後で買収し、さらに日本コロムビア、宮崎県のシーガイアと次々に触手を仲ばしていった。

そのせいか、日本のメディアは「次に狙われるのはどこか?」と戦々恐々とし、ハゲタカ・ファンド=悪と決めつけるようになってしまったのだ。しかし、アメリカでもハゲタカ・ファンドのイメージは相当変わってきている。

例えば日本にも古い家具を修埋して、見事に変身させて売る商売があるが、外資がやろうとしているのも、それと一緒のようなことだ。つまり、旧態企業の体質を改善し、いまの時代に合わせて再生させることなのだ。

スーパーの大手・西友とウォルマートが捉携したことを悲観する向きがあるが、あの提携で、日本の流通産業は世界最先端のノウハウを取り入れて、新たに飛躍することが可能になった。また、ローンスターに買収されたことで、東京相和銀行は東京スター銀行として再生したし、長銀(新生銀行)を買ったリップルウッドは、1年足らずで最高利益をあげさせることに成功した。シーガイア再生では世界的なホテルチェーン、マリオットと組み、アジアからの顧客誘致で成功のソロバンをはじいている。

日本人は外資によるドライな経営と、大量のレイオフなどを警戒しているがこれは一種の甘えの構造ではないだろうか?明治維新の改革では、日本人はもっと毅然として西洋の帝国主義 Western imperialismに対抗したではないか。ならば、旧時代の経営者は会社をつぶした以上総退陣させ、日本人に適任者がいなければ、世界から最高のエキスパートを招き、合理的な再生に取り組むのがベストではないだろうか。もちろん、その経営者は日本人であってもいい。要は、再生できるかどうかである。その意昧で、ハゲタカ・ファンドは、少なくともこの部分においてはプロフェッショナルなのである。
彼らに問題があるとすれば、ただひとつだろう。それは、新生銀行の例を出すまでもなく、安く買いたたくことにかけてもしたたかなプロということだ。そこで、売り手もプロに徹すれば、ハゲタカ・ファンドは再生の大きなパートナーとなりうるのだ。

(『日本がアルゼンチンタンゴを踊る日』110−111ページ)
(引用終わり)

アルルです。さらに、次ぎにフルフォード氏は「アメリカ悪玉論で得をするのは、抵抗勢力の政治家たち」であると言います。

(引用開始)

(『ヤクザ・リセッション』158-160ページ)

アメリカ悪玉論でトクをするのは誰か?

私は、いま、日本の言論人とメディアがわけのわからない「ねじれ現象」を起こしているのを心配している。この大不況の原因を、単に「アメリカのせい」で片づけ、いたずらに「嫌米」感情をあおっているナショナリスト nationalistたちがいる。まず、この人たちは物事の本質がわかっていない。また、単なる「自民族中心主義者」(エスノセントリズム、ethnocentrism)、つまり国粋右翼 ultra nationalistなのに、反戦平和からアメリカの横暴を訴えるテレビと大新聞がある。こちらのほうは、そうした報道とは別に、アメリカの対日政策にはなんの批判もしないから、もっと始末が悪いかもしれない。それなのに、多くの日本人が、アメリカに「第二の敗戦」を喫したという意識がないのは、なぜなのだろうか?

ともかく、「戦争をするアメリカは嫌い」という現実無視の感情論と、不健全なナショナリズムが、日本人の目を曇らせ、「アメリカ悪玉」論が横行しているのは確かだろう。
この「アメリカ悪玉」論は、ハゲタカ外資脅威論となって、ここ2,3年で急に強まってきた。.
ゴールドマン・サックスにサポートされたリップルウッドが長銀をわずか10億円で買い取り、おまけに瑕疵担保条項(譲り受けた債権が2割以上毀損したら、簿価 book valueで日本政府が買い取ってくれるとし)う権利)までプレゼントされた。長銀を引き継いだ新生銀行は、この暇疵担保条項をフルに使い、また、貸しはがしを積極的に進めたので、「ハゲタカファンド」vulture fundsと言われて、日本のメディアの批判を浴びた。「外資は非情だ。あこぎだ」というわけだ。これが、いまの日本人の「嫌米」感情の根底にある。

しかし、こうした感情論で、トクをするのはいったい誰なのか、よく考えるべきだろう。一方的にアメリカを悪者にすることで、「政・官・業・ヤクザ」の日本国民に対してしてきたことが、いつのまにか帳消し offsetにされてしまうではないか。さらに、日本政府はこれまでずっとアメリカに対抗して、日本国民を守ってきたのだという「大ウソ」 big lieがまかり通ってしまう可能性すらある。

確かに、アメリカは経済活動を戦争 Warと位置づけてきた。だから、クリントン時代のルービン財務長官などは、経済戦争の司令官 commanderとして、一貫して日本をどうやって打ち負かすかという視点で対日政策を立案、遂行した。

クリントン政権というのは、歴代政権のなかでももっとも強くウォール街の金融財閥 Wall Street moneyと結びついた政権で、ルービンはゴールドマン・サックスの元会長だった。ルービンの後をひきついだサマーズは、アメリカ気鋭の経済学者でハーバード大学教授(現・学長)。さらに、現ブッシュ政権のフリードマン大統領補佐官(経済担当)も、ゴールドマン・サックスの元会長である。

しかし、日本政府はこうしたアメリカの戦略になんの対抗手段ももたず、いくら「政・官・業・ヤクザ」連合といっても、それは単なる利益共同体にすぎなかったから、アメリカの言いなりになってしまった。
これでは、太平洋戦争で国民を敗戦へと導いた戦前の政府となんら変わるところはない。国民に勝手に戦争をさせ、自分たちはのうのうと背後で宴会をしていた。しかも、負けているのに「勝った、勝った」と大ウソをついて、国民を編してきたのだ。
『「円」の消える日日本がアメリカの51番目の州になる日』(藤井厳喜著、廣済堂出版、2002)という本に、次のような記述がある。

「しかし、このルービンとサマーズの時代は、日銀、旧大蔵省は彼らの指導で動いていたといわれる。アメリカの金融産業の連中の言うとおりに、日銀、大蔵・財務省は動いていたというから驚くが、旧大蔵省にはヘッジファンドなどとつるんで、市場を動かしたり情報をリークするような人もたくさんいたのである。そうした情報のリーク先のひとつがゴールドマン・サックスだったのだろう。だからゴールドマン・サックスを日本政府が長銀のフィナンシャル・アドバイザーに指定したという時点で、すでに『長銀の叩き売り』が決まっていたといえる」
このように、ハゲタカファンドを引き入れたのは、日本政府自身であり、それはまた彼らが、「ヤクザ・リセッション」の責任逃れをしたいからだったのだ。

(『ヤクザ・リセッション』158-160ページ)

(貼り付け終わり)

アルルです。この見方はまったく正しい見方である。私は、日本の基幹産業は「物作り産業」だと思っているので、その秘密が外国に奪われない限り、外資の導入もやむを得ない、という風に私は考えを変えた。基本的な生活インフラ産業は国が抑えていけば、それ以外はどんどん直接投資を受け入れて良いのではないか。むしろ、不良債権をハゲタカに食わせて下痢をさえた方が良いという考え方さえもできる。要するに、ロックフェラーに買収された、長銀型の買収が4大銀行に仕掛けられるのでなければ、それ以外は市場経済の論理に従わせればいいのである。つまるところ、アメリカの属国政治家になりはてた竹下登以降の政治家たちが、悪い。それは事実だ。

しかし、本当の(アメリカに対抗できる)愛国派というのは、ものすごく薄汚い政治家でなければ、世界的にバランスしていかないことを忘れている。アメリカの景気を守ることが出来うるのは、言いがかりに過ぎないイラク戦争を仕掛けて、アメリカの景気を回復させる事が出来る薄汚いロックフェラー家やチェイニー副大統領たちのような悪党たちだという現実がある。私たちは愛国派という言葉について何か誤解していないか。何も「日の丸が大事で、天皇陛下をあがめ奉って、日本の戦争は聖戦だった」ということを主張する政治家が愛国派であると言うわけではない。命がけで日本の国益を外国から守ると言うことが出来る人たちを、愛国派というのだ。むろん、わたしは今の森派の政治家や旧・竹下派の政治家が本当の愛国派であるとは思わない。しかし、ベンジャミン記者の記述を読んでいると、日本の政治だけが薄汚れているという風にしか読めない。しかし、副島隆彦が書いている次の「ぼやき」文を引くまでもなく、政官業の癒着というのは、世界のどこにでもある普遍的現象である。

(引用開始)
「今日のぼやき」「285」 事務連絡と、「正論」誌用連載記事の作成原版を載せます  2002.4.19

政治とは、どこの国でも汚いものであるはずだ。きれいな政治、というのが在ると考えるのは学校に通っている子供たちか、泥臭い現実世界を知らずに生きて行こうとする左翼リベラル人間たちだけだ。もし自らを保守派と自任するほどの人生経験の豊かな人々だったら、他所(よそ)の国に向かって、「組織犯罪に汚染された国」などと失礼極まりないことは言わないものだ。

 犯罪シンジケートに汚染された日本の金融市場を、私たちアメリカの情報部員たちが、きれいに洗浄してあげて健全にしてあげます、というような傲慢なことを、どうしてアメリカは言えるのか。自分たちは、そんなにきれいなのか。自分たちの国には、「組織犯罪に汚染された政治家たち」はいないのか。ハリウッド映画に出てくるマフィアやテキサスの石油財閥や、「世界脱税同盟」をやっているニューヨークのおかしな金融財閥と深いつながりをもっている政治家たちはいないのか。

 自分たち自身がそういう背景を持って現に政権を作っていたりするではないか。どうして自分たちだけは無前提に「クリーンで健全な政治家」なのか。ここまで世界の現実政治を子供じみたものにしないでほしい。

 10年の昔、カレル・ヴァン・ウォルフレンというオランダ人の新聞記者あがりが、『日本 /権力構造の謎』という大著を書いた。この本の中で、日本の「政官財の鉄のトライアングル」が詳細に証言証拠付きで満天下に描かれた。この本は今でもヨーロッパ諸国の元首クラスが皆、読む本であるという。

日本の言論界はうろたえて、やや、自嘲気味に「そんな外国人の書いた本ごときで、日本社会の真実が明らかにされるはずがない」という強がりの態度に出た。私はあの時こう書いた。「どうして、ウォルフレンに言ってやらないのだ。分かった。確かに日本は、『政官財の鉄のトライアングル』が支配する国だ。だがしかし、あなたの母国のオランダにだって『政官財の鉄のトライアングル』はあるでしょう。なければ現実の政治が成り立たない。自分のことは棚に上げて奇麗ごとだけを言うのは止めてもらう。ヨーロッパ諸国も全て同様に政官財の支配構造があるはずだ。否定できるものならしてもらおうではないか」と書いた。

 ついでに、「あなたの国には日本に対して時々、失礼なことを放言する女王がいるだろう。インドネシアを自分たちが植民地にしていたからこそ日本軍に捕虜になったオランダ兵がいたのであって、それを捕虜虐待の観点からだけ言わないでくれ」と私は書いた。

 この視点をアメリカに対しても私たちは取るべきなのだ。自分たちだけ立派な人のように思い込んで、同盟国(本当は、属国扱いしているくせに)を見下げるように扱うのはやめてもらいたいものだ。

「今日のぼやき」「285」 事務連絡と、「正論」誌用連載記事の作成原版を載せます  2002.4.19

(引用終わり)

アルルです。フルフォード氏はカナダについても書いている。しかし、フルフォード氏はカナダ人だが、父親が転勤族のカナダ外交官だったので、カナダについての「タブー」を書けない。それだけの知識がないのだろう。日本のジャーナリストの著作を何冊か読んで、日本の裏社会を暴いたと言う前に、自分の出身であるカナダのタブーについて同じ手法で暴ききってみるべきだ。カナダの読者に「あーあ、俺たちのカナダの裏の裏まで暴かれちゃったよ」と実感させるような本を書くべきである。カナダがアメリカから見れば、二級白人だとしか思われていないと言う現実についても、しっかり書くべきである。

日本の自民党政治家に、もはや日本の国内の改革はできないという、フルフォード氏の判定について、私はなんら異論を唱えるものではない。30歳前の私にとって「若い世代に本当の民主主義をやらせよ」という氏の提言にも大賛成である。古い世代の政治家にこだわっていても日本に将来はない。

(引用開始)

(『ヤクザ・リセッション』262−264頁)

若い世代に本当の民主主義をやらせろ!

結局、こうしてたどりついた「ヤクザ・リセッション」の結論は、ひと言で言えば、腐敗した日本の政権とアメリカがこの大不況をつくり出したということである。そして、この構造が続くかぎり日本再生はありえず、日本国民はどんどん貧しくなっていくだろう。
いまのままの日本政府なら、インフレ・ターゲティングに走り、何度も公的資金注入というカンフル剤をうち続け、ダメとなれば預金封鎖だろうと、新円切り替えだろうと、なんだってやるだろう。そのすべてを「改革」と称して、国民を騙すのだろう。
腐敗した支配階級 ruling classesというのは、歴史上、国民を食い物にして生きのびてきたのである。だから、いまのところ日本人は、イラクも北朝鮮もけっして笑えない。
私たちは、20世紀の歴史で、何度もこれを見てきた。そういう国では、為政者たちは自分たちの責任逃れのため、常に自分たちより強大な他国(ほとんどはアメリカ)を悪者にし、国民の目を自分たちからそらそうとする。あるいは、「改革」と称して、ウソやゴマカシを続けるのだ。いま日本人の前で、小泉と官僚たちがやっているパフォーマンスは、まさにこれではないか。

では、こうした状況を本当に打破 breakdownしたいなら、どうすればいいのか?
それは、日本が本当の民主主義 democracyをやることだ。他人まかせにしないで、自分の足で立っことだ。そうして、公正な社会を実現させ、本当の資本主義 capitalismをやることだ。そうでなければ、アメリカにつけこまれ、それを私利私欲 selfish desireに利用する支配層に、国民は永遠にカモられ続ける。民主主義とは、いつでも国民の側になければならない。幸い、日本では選挙というシステムはなんとか機能しているのだから、まだまだ日本の復活 rebornのチャンスは残されているのだ。

ただし、この選挙で、いままでの腐敗した政治家たちを選んではならない。それは、自民党だろうと民主党だろうと同じだ。現在60歳以上の人間たちは、ここ20年でみな汚染しているとみていいだろう。だから、徹底して若い世代 young generationを選挙で選び、彼らに賭けるしかない。明治の改革 Meiji Restorationがなったのは、大久保利通、木戸孝允、伊藤博文ほか、みな新世代の若い世代が時代を引っぱったからだ。坂本龍馬にいたっては、20代である。彼らはみな、江戸幕府外の外様の藩の出身であり、封建制度 feudalismのシステムに汚染されていなかった。

(『ヤクザ・リセッション』262−264頁)
(引用終わり)

私、アルルは、民主党が政権をとってしまえばいいのだ、という考えに傾きつつある。その先のことはそのときに考えればいい。どうせ日本は文明の周辺属国なのだから、大きな世界的な流れには逆らえない。アメリカの世界戦略を見抜き適切に対処できる政治家は、アメリカと日本の両方の視点からものごとを見ることの出来る人たちだ。その平成維新の立役者たち(たぶん、松下政経塾系の人)も、次第に伊藤博文のように覇権国の影響から逃れなくなっていく。ただ、それだけのことだ。(了)


2003/12/04(Thu) No.01

http://www.soejima.to/boyaki/diary.cgi

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