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TUP速報226号 マイアミ市街戦のタンク・ガール 03年12月3日
http://www.asyura2.com/0311/war43/msg/1257.html
投稿者 こうみょう 日時 2003 年 12 月 04 日 01:24:02:xqN7d69no.aTk

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「地球規模で考え、地域で行動する」…市民運動のモットーさながら、行動す
る作家レベッカ・ソルニットは、闘いの現地に立って、地球規模で本質を見据
える思索家であると言えるでしょう。

今回、ソルニットがレポートする現場は、米フロリダ州マイアミ市中心街、
「米州自由貿易圏」交渉会場ホテル周辺の抗議行動と弾圧の舞台です。会場内
外で展開した二つの戦争――警備フェンスの中では、南北間の経済戦争、外で
は、警官隊による直接行動への攻撃……マイアミの光景が、ソルニットの筆
(いや、キーボード)に乗って、過去から未来への時間軸を貫き、地球大に広
がる軍事・経済・政治・社会・環境状況を凝縮して展開します。
井上 利男 @TUP
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『マイアミ市街戦のタンク・ガール、レベッカ・ソルニット』
――トム・エンゲルハート
トム速報サイト 2003年11月24日
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チャルマーズ・ジョンソンが「基地の帝国」と命名したのと同じ意味だが、ア
メリカは新しい形の軍国主義を築き上げたと私は考えていた。街を歩いても、
軍服をまったく見かけない……そのような、過去に前例がない軍国主義である。
(訳注:チャルマーズ・ジョンソン――元カリフォルニア大学教授、保守系リ
ベラリスト。著書に『アメリカ帝国への報復』、『通産省と日本の奇蹟』)

9・11に遭遇して、もちろん、状況は変わり始めた。今では、デモ行進の時
は言うまでもなく、完全武装兵の姿を空港から地下鉄までごく普通に見かける
ようになった。レベッカ・ソルニットが、ここに掲載するFTAA(米州自由
貿易圏)デモ攻防戦の鮮やかな報告で描いているように、抗議行動を封じるた
めに、都市景観が忍び寄る軍国化路線にすっぽりと覆い尽くされようとしてい
る。

米国内の軍国化路線と足並みを揃えて、わが大統領の海外歴訪についてまわる
「バブル」(巨大な厳戒態勢の透明なマユ)が、各国の都市中枢を包み込んで、
米国の国家元首を守っている。

実際、われわれの時代に典型的な2つの現象は、隠喩および現実としての戦争
状態と、防衛のために人間活動全般を封じ込める閉鎖効果であるようだ。

つい先日、『シガー・アフィシオナド(葉巻愛好家)』誌の前中央軍司令官ト
ミー・フランクス将軍インタビュー記事が保守系らしきサイト『ニュースマッ
クス・コム』に掲載された。将軍は、アメリカが核・生物・化学兵器で攻撃さ
れるとすれば、アメリカ社会がどうなるかを考察している――

「いつか、西側世界のどこかが、大量破壊兵器なり、テロ攻撃なり、大量殺戮
に遭遇する可能性をこれは意味しています。そのどこかが、アメリカであって
もおかしくありません。そうなれば、米国民は憲法を疑い、さらなる攻撃を防
ぐために、軍国主義化に踏み切るでしょう。さらに、実際に、憲法の骨組みの
解体に進展するでしょう。とても、とても重要な2段階の対応策なのです」
(参照:TUP速報222号[帝国現地レポート26]★『アメリカは、憲法
を捨てて、軍政になる?』)

「彼は、統治形態の軍国主義化の都合によっては、憲法は廃棄されうると、臆
せずに推測を披露する初めての高官である」と、サイト編集者は解説する。こ
れほど過激なシナリオが、イラク戦争で米軍を指揮した将軍の頭の中に描かれ
ているとは、もちろん、興味深い。

もっと日常的なレベルでも、数多くの現場で、国防総省が姿を徐々に現わし、
軍・民の境界線を曖昧にするにつれて、もうひとつの形で、米国社会の軍国化
が進行している。もちろん、4000億ドルもの巨額の予算を手にするペンタ
ゴンは――戦争と和平、対外諜報活動と国内監視網など――文字どおり、すべ
てを支配する決定者の地位を狙っている。

日曜日(11月23日)掲載、ロサンジェルス・タイムズの冷徹な軍事評論家
ウイリアム・W・アーキンの記事『国内で秘密任務』の冒頭部分を読んでみよ
う――

「イラク戦争に心奪われ、2001年9月11日の痛手がいまだに疼いている
うちに、対テロ戦争の名で米国内進行している状況に米国民はほとんど注目し
てこなかった。軍部と諜報部門が、『本土安全保障』の旗印のもと、広範な変
化を引き起こし、テロ攻撃とその他の危機の区別をぼかし、米国内での軍事行
動を禁じる長い伝統を打破しようとしている。

「本土防衛を担う米空軍北部管区の新任司令官ラルフ・E・エバハート将軍は
『われわれは考え方を切り替えなければならない』と言う。9・11以前には、
軍と諜報は『アウェイ戦』専門で、『ホームゲーム』には、いささか疎かった
と彼は言う。むろん、『ホーム』とはアメリカ国内のことだ」

ご帰国、歓迎! ジョン・ポインデクスター将軍閣下。 結局、軍が、内部の敵
に対する諜報活動、「データ探索」業務(すなわち、あなたの情報を探る仕
事)に乗り出すということだ。
(訳注:ジョン・ポインデクスター――2月14日新設の国防総省直轄IAO
[情報認知局]局長で、レーガン政権時代にイラン・コントラ事件に関与した
元海軍中将)

アーキン記者は続ける――

「さらに、『非合法諜報』部門を結集した機関が、周知のテロリストを網羅し
たデータベースと、どう見ても当たり障りのない慈善団体や運動組織の献金名
簿との連結作業に着手し、活動家組織の会員名簿も織り込まれ、反グローバル
化主張者たちの氏名と個人情報も『データ探索』されるだろうと想像しても、
的外れではない」

それでは、レベッカ・ソルニットのマイアミ体験談をよく吟味し、私たちすべ
ての者が直面している――必ずしも、一つだけとは限らないが――ひとつの未
来にレベッカが踏み入ったのかどうか、よく、よく考えてほしい。トム(署
名)

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『未来の断片』
米州自由貿易圏マイアミ会合レポート

――レベッカ・ソルニット
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先週の木曜日、マイアミ中心街のインターコンチネンタル・ホテルを取り囲ん
で設置された、重量感のある鋼鉄製フェンスの両側に、未来が形作られていま
した。

フェンスの内側では、南北アメリカの――キューバは別ですが――すべての国
の代表が、FTAA(米州自由貿易圏)合意の一部を骨抜きし、その他の決定
は先送りしていました。2ヶ月前にメキシコのカンクンで開催されたWTO
(世界貿易機構)閣僚会合は見事に失敗しましたが、今回の交渉が同じような
惨めな結果を再現するのを避けるためです。

フェンスの外側では、完全装備の総勢2500名の警官隊が、数千のデモ隊と
対峙し、憲法で保障された公民権に背いて、多種多様な武器を使用していまし
た。「催涙ガス、胡椒スプレー、顔面攻撃なんか浴びたくありませんが、まあ
毎日ってわけでもありませんし」と、地球規模の反資本主義運動の著名人物で
あり、3度の木曜日をすべて体験したスターホークが言いました。

1999年のシアトルの騒動を受けて、グローバル化を論議する首脳会議の周
辺では、ミニ警察国家の出現が定番になりました。こうした治外法権地帯が、
企業活動グローバル化全盛時代がもたらす社会の原型であると見ないわけには
いきません。

何と言っても、この形のグローバル化は、自由市場の怪しげな利得――いの一
番に資本の権益を守るために行動する、説明責任を持たない、多国籍の権力が
強制するであろう利得――の名のもとに、労働、環境、農業条件に適う地方
的・地域的・国民的権利を基本的に踏みにじるでしょう。集中行動の前日に開
かれた労組関連討論会で、レイオフ(一時解雇)された金属労組員ディブ・ビ
バードが、この新しい世界秩序を「企業の、企業による、企業のための政府」
と表現しました。

NAFTA(北米自由貿易協定)、その他のグローバル化関連協定に隠された
企業側の目標の実態を示す、もっとも顕著な実例として、健康と環境を深刻に
損なうガソリン添加物・MTBE(メチル・ターシャリー・ブチル・エーテ
ル)があります。カリフォルニア州がMTBEを段階的に禁止しましたが、カ
ナダ企業メタネックスが禁止令による営業妨害を申し立て、アメリカ政府を相
手取り、10億ドル近くの賠償請求を提訴しました。NAFTA規定では、企
業は利得権を完全に保障され、地域レベルの法はその権益を侵害できないので
す。井戸の汚染は、もはや犯罪ではありません。、毒の垂れ流しの阻止が、グ
ローバル化時代の犯罪なのです。

もともとFTAAは、NAFTAを先例として、(キューバを除く)南北アメ
リカ大陸全域にまたがる、国境のない通商地帯を創設することを目指していま
した。

既存産業の多くにとって、グローバル化が経済的惨事であることは、あまりに
も明白です。クリントン大統領にしても、ブッシュ大統領にしても、国境のな
い経済にリップサービスを振る舞いながら、アメリカの鉄鋼業を安価な外国製
品の輸入から保護する政策を堅持してきました。

それにしても、両大統領とも、かつての労使協定雇用がメキシコの経済特別区
に流出しても、何の手も打っていません。(そして今では、メキシコに移った
雇用が、生き馬の眼を抜く「底辺を目指す競争」に従って、メキシコよりも低
賃金の労働市場を求めて、逃げ出しています。一方、プログラミングや情報処
理など、アメリカのホワイトカラー職雇用が輸出される事例もどんどん増えて
います)

世界でもっとも富裕な経済大国、アメリカとEU諸国でさえも、国境のない資
本主義という自らの言辞に従うつもりはなく、自らのグローバル化推進政策を
裏切っているのも事実です。

アメリカとEUは、揃って手厚い農業助成制度を堅持し、貧しい国ぐにが農産
物輸出で外貨を獲得する道を閉ざしています。トウモロコシなどの例では、メ
キシコ国内市場での競争力さえも奪っています。来年でNAFTAは創設10
周年を迎えますが、今までにメキシコの数十万もの零細農家を駆逐してしまい
ました。フロリダ州の柑橘類はブラジルからの無関税輸入によって駆逐される
でしょうし、ケンタッキー州の小規模タバコ農家は発展途上諸国からのタバコ
輸入のために廃業に追いやられようとしています。

今、問うべき問題は、グローバル化市場商品は儲かるか否かではなく、誰が儲
けるかなのです。答えを言えば、儲けるのは、すでに豊かな階層であり、残り
の貧しい階層はもっと貧しくなるのです。

「グローバル化」という言葉の真の意味である「企業活動の国際化」を、クリ
ントン政権は本気で信じ、FTAA交渉を9年前に立ち上げました。

ブッシュ軍事政権(ママ)にも取柄があるとすれば、狭い意味の国益にこだわって、
グローバル化推進政策が昔ながらの植民地主義とまったく区別できなくなって
しまったことです。たぶん少しばかり圧力を加えるだけで、相手国はアメリカ
の製品と方針に対して国境を開き、後はアメリカのやりたい放題なのです。

これは、ブッシュ一派が国連安全保障理事会と世界の声を無視して、少数の同
盟国を巻き込み、今回のイラク戦争を強行する原動力になった、国際社会軽視
政策とほぼ同じです。

カンクンWTO会合の決裂とマイアミFTAA会議の手詰まりへの解答は、似
たような分派的政策――たいていはアメリカの脅しが効く国との2国間通商協
定の形をとるでしょう。WTO体制が崩壊局面にいたった時点で、アメリカの
関心はすでにFTAAに移っていて、FTAAが失敗するとはっきり分かった
時点で、中南米、アフリカ、その他地域諸国との2国間通商協定推進政策を強
化したのです。

カンクンでは、ブラジルが率いる南側世界20ヶ国以上が、協議に参画してい
た活動家たちとNGO(非政府組織)の後押しもあって、アメリカとEUに対
抗し、天下分け目の勝利を達成しました。

マイアミでは、同じような対話も爽快な勝利もありませんでした。でも、企業
活動のグローバル化に反対する者たちには、抵抗を続ける余地が残りました。

FTAA会議は会期を1日残して解散し、「軽量級FTAA」と揶揄(やゆ)
される結果に終わりました。取り決めでは、加盟国はFTAA合意の特定分野
から撤退でき、撤退まではしなくても、影響力を弱めることができます。南側
の経済大国ブラジルは、外国投資の保護と知的所有権条項の2項目に反対しま
した。FTAAは軽量級に留まり、ブラジルはこれらの分野で勝利しました。

NGO『パブリック・シチズン』のロリ・ウォーラックは、「合意に達したの
は、FTAA適用分野を縮小し、マイアミをFTAAのワーテルロー(敗北の
地)にしないために、開催地未定の将来の会合へ、厳しい決断を先送りするこ
とだけでした」と論評しました。

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『国内戦争』

企業活動のグローバル化は殺傷兵器以外の手段による戦争である――これは、
よく言われていることです。

FTAA会期中のマイアミの警備体制は、「殺傷兵器以外の手段」という定義
を無視するものでした……警棒、散弾銃、ゴム弾、催涙ガス、胡椒スプレー、
その他の武器がすべて使われ、デモ参加者の身体への直接攻撃もありましたし、
憲法が定める、国民が平穏に集会する権利、その他権利への最初の攻撃でした。
対テロ戦争の名目で、アメリカ国民の神聖な権利が剥奪される状況の見事な実
例でした。

マイアミ警察署長ジョン・ティモネィ――彼は、2000年共和党全国大会の
おりに、フィラデルフィアの警官隊を率い、憲法で保障された権利の蹂躪を首
謀した人物ですが、この度のFTAAマイアミ会合に先立つ何ヶ月も前から、
抵抗運動をテロリスト集団呼ばわりし、マイアミ集会を市街包囲攻撃と決め付
けていました。

マイアミに警官隊を動員する経費の多くは、いかにもふさわしいことですが、
対イラク戦争経費8700万ドルに追加された予算850万ドルの一部が流用
されたものです。でも、市街地封鎖のマイナス効果、警察の暴行と公民権侵害
を訴える活動団体の損害請求訴訟の両面で、マイアミ市の損得勘定は赤字にな
るでしょう。

抗議団体の到着に備えた対応策で、最高に馬鹿げた、偏執的なものは、お偉方
がココナツを投げつけられては大変ですから、マイアミ市街地の椰子の木から
実を残らず撤去したことでしょう。でも、木を揺さぶって、落としたのか、あ
るいは棒で引っ掻き落としたのか、どちらとも公表されていません。街角から、
どうやらすべてのゴミ箱も撤去されました。テロリストの行動を読む仕事は、
果てしない創造力が必要です。

FTAA警備は外地での「対テロ戦争」をモデルにしていましたが、そのあけ
すけな一例が、警察がお膳立てした「埋め込み」取材でした。かなりの数の記
者が――借り物のヘルメットという野暮ったい姿で――マイアミ警察の行動に
従いましたが、抗議側も報道陣を招き入れました。(催涙ガスを浴びた記者た
ちもいて、報道のネタにしました)

このようなマイアミ警察の動員の狙いのひとつは、公共空間と市民生活を軍事
化したジョン・アシュクロフト司法長官流儀のアメリカに、アメリカ国民を順
応させることであると、街頭の活動家たちの多くが言っていました。警察を訓
練して、公僕が奉仕する相手であるはずの市民社会に対抗する軍隊組織として
機能するように整えることも企てていたのでしょう。

マイアミ市と周辺自治体のいくつかは、集会の自由など、公民権を縛る有事条
例を成立させました。そのような条例は、訴訟に耐えられるような代物ではあ
りません。でも、FTAAを乗り切るまでは、有効に適用できたのです。

来年の共和党全国大会の期間、どのような類の警察国家体制がマンハッタンに
敷かれるだろうかと、活動家たちは論じ合っていました。市民的自由の立場に
立つ人たちは、今、ありとあらゆる種類の異議申立てをテロリズムと決め付け
る手口に注目しています。

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『ありうる世界の戦争』

11月20日の木曜日は、私の成長の糧であるSF映画が現実になったような
一日でした。私たちが知っている世界は廃虚であり、瓦礫の中でゲリラ戦が猛
威を振るっている、そのような光景です。

マイアミ中心市街は完全に閉鎖されていました。店舗やオフィスは閉じられ、
何も売られず、何も買われず、行き交う車もありませんでした。メトロムー
バー高架鉄道は操業を停止し、出勤者もほとんどいませんでした。

西半球の34ヶ国から来たFTAA会合代表者たちは、インターコンチネンタ
ル・ホテルのタワービルに缶詰になっていました。超高層ビルの屋上に、時お
り、下界の混乱を見守っているホテル職員の姿が小さく見えました。私たちの
姿も、アリのようだったはずです。頭上にヘリコプターが騒々しく飛んでいま
した。ハイテク監視装置を備えていたと聞きますので、活動家をピンポイント
で特定して、地上部隊に逮捕なり攻撃なりの指示を伝えていたのでしょう。

木曜日の朝、市街はゴーストタウンになり、2500名の警官隊と、それにほ
ぼ匹敵する活動家たちがいるだけでした。あの日のマイアミは、『ターミネー
ター』、『タンク・ガール』、テリー・ギリアム監督の『未来世紀ブラジル』
系の映画の世界に入りこんでいました。
(訳注: 『タンク・ガール』― MGM映画。ミュータント・カンガルーが跋
扈する、未来のオーストラリアの砂漠を戦車に乗って駆け巡る、賞金稼ぎスキ
ンヘッド娘の物語)

たぶん、SF史上最初の重々しいイメージは、H・G・ウェルズの『タイムマ
シーン』の世界に見つかるでしょう。はるかな未来、人類は2種類――獣じみ
た地下種族モーロック、麗しく柔和な地上住民エロイ――に枝別れし、モーロ
ックはエロイを餌食にしているのです。

私たちは、ある時はタンク・ガールになり、ある時は屠殺者の餌食になりまし
た。エディ・ユンは、シアトル会合以来、反グローバル化運動について書いて
きた人ですが、反グローバル化集会では、「異議申立て側もいろいろ実験して
いますし、弾圧の方もやってますが、今のところは、弾圧側が上手ですね」と
私に言いました。

膝を出した自転車部隊は別にして、警官隊は完全装備の騒乱出動防具――面覆
い付きの黒ヘルメット、手足、股、胴を保護する黒防護服、戦闘ブーツ――を
着用していました。全員が長尺の警棒を携行していたようですし、多くはライ
フルで武装していました。装填されるのは、「亜致死(ほとんど致死の)性
能」ゴム弾、豆袋(お手玉)弾などの発射物であり、いずれも烈しい致傷能力
があり、場合によっては、死さえも招きます。

4年前、シアトルで私は未来のディストピア(暗黒郷)を目撃しました……
ダースベーダー装束の警官がひとり、シャッターを閉ざしたスターバックスを
警備していました。今回は、2500人のダースベーダーがいました。彼らは
警備についてはいませんでした。行軍していたのです。

スターホークが、「イスラエルとパレスチナに比べれば、それに(2001年
夏、G8サミット抗議に結集した30万の活動家たちを、イタリア警察が攻撃
し、暴行した)ジェノヴァに比べれば、あれは私が目撃した最悪の例だったと
は言えないわね。でも、とにかく野蛮で計算づくのファシズムが露呈したと考
えれば、今までで最低だわ」と論評しました。

何人かの活動家たちは、早朝のデモ集合地点のはるか手前で、検束され、ある
いは暴行されました。

集会場では、もっと多勢の警官隊が、階級も上から下まで揃って、二重三重に
配列し、街路を封鎖し、警棒を手に、今や遅しと私たちの到着を待っていまし
た。警官隊は繰り返し突っこんできて、私たちをあらぬ方向へ押しやり、前日
の午後、FTAA反対を叫ぶ鉄鋼労働者たちがそばを行進していたフェンスの
方へは、どうしても寄せつけませんでした。時おり、警官隊は突撃し、警棒で
殴りかかり、発砲しました。

地元テレビは、デモ隊が警官隊に向かって発煙筒を投げていたと断言していま
したが、ビデオ放映を見れば、活動家たちは、私たちに向けて発射された催涙
弾を投げ返していたのです。

午前も半ばになって、警官隊が私たちを包囲し、一斉検挙にかかる様相になる
と、私はひとりの非米国籍者に付き添って、危険地帯からの最後の脱出口を抜
けて逃がしました。

私たちのグループのもうひとりの仲間――背後から警棒で殴られ、大量出血し
た頭部に包帯を巻いた教授――も加わって、離れた場所に留まっていると、真
昼ごろ、たぶん1万人規模の労働組合員の公認デモが登場し、無人の市街を行
進した後、レンタルした競技場の安全地帯へ引き返しました。

労働組合がいなくなると、暴力がぶり返しました。遠くの群集の上に催涙ガス
の煙霧が舞い上がりました。

時々、警察のワゴン車とバスが、増援部隊を運び、あるいは逮捕者を護送して
はいましたが、中心街では、すべての車両が締め出されていました。唯一の機
械音、ヘリコプターの轟音が頭上に鳴り響いていました。水陸両用戦車らしい
車両がフェンスの前を動き回っていました。

拿捕分隊が群集に分け入って、一人また一人と逮捕しました。

朝、何羽かのハゲワシが超高層ビルの周りを旋回していましたが、昼下がりに
は、50羽にもなっていたに違いありません。黒い姿の腐肉食猛禽の一群が、
ある時はヘリコプターよりも高く、ある時は低く、舞っていました。

ふたたび警察が群集に突撃し、猛然と襲いかかったので、活動家たちはバラバ
ラに分かれ、北へ逃げるしかなく、オーバータウン――草ボウボウの空き地、
板を打ちつけた建物、優しい顔の失業者たち、隠せない貧困の巷(ちまた)―
―アフリカ系アメリカ人居住地域へ入りこみました。

けたたましいサイレン音が私たちのそばを通りすぎ、なおも小グループが捕ら
えられ、あるいは中心街から連行されました。私のグループは、朝の行進で使
っていた人形をたくさん持ち歩いていたので、疲れ果て、ゆっくり低空飛行を
しているヘリコプターの監視の眼から見えないように、街路樹の下に逃れまし
た。

狩られ、逃げ隠れしていると、今、起こっている事態は、ある種の戦争である
と、はっきり分かりました。当日の負傷者100名以上、重傷入院者12名、
逮捕者200名以上を数えました。

夜になっても、人びとが――若い人たちだけではなく、聖職者、NGOの中年
スタッフ、誰も彼もが――銃口を突きつけられ、車から引きずりおろされ、あ
るいは、明確な理由もなく、路上で制止されていました。

翌日になって、前からの留置者たちが疲れ果てているはずの拘置所の外で、平
穏に祈祷集会をしていた活動家たちが、またもや50人以上も逮捕されました。

世話人たちが、「彼らは機動隊に包囲され、解散を命じられました。解散する
と、警官隊は火ぶたを開き、街路を封鎖して、多くの者の退散を封じました。
すでに釈放された人たちによれば、それに拘置所内からの叫び声によれば、中
では、法外な蛮行、性的暴行、拷問がまかり通っています。囚人の中でも有色
人種、同性愛者、トランスジェンダー(性同一性不一致者)が特に狙われてい
ます」と報告しました。
(訳注:性同一性障害[症]が話題になっているが、トランスジェンダーは特
に病気を意味しない)

日曜日になって、逮捕者の大半は釈放されました。

反グローバル化運動の予言的なスローガンは、「もうひとつの世界は可能だ」
というものです。ようやく今回、鉄鋼労働者の一部が組合の紺青(こんじょ
う)色のTシャツの背をスローガンで飾りました。私たちがあまり語らないこ
と、それは……世界は数多く可能であり、そしてありうる世界のいくつかは地
獄である……ということです。

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『未来の断片』

1999年のシアトルは、革命がエデンの園として始まった創世物語になりま
した。

数十万もの群集がWTO交渉会場を封鎖していました。私たちは一体感に包ま
れていました。「海亀とトラック運転手」、これが決まり文句でした。
(訳注:シアトル反WTO集会で撒かれた一枚のビラ『海亀とトラック運転
手:ついに手を組む』から。海亀保護グループと全米トラック運転手組合を指
し、反グローバル化運動が環境保護活動から労働組合運動まで多様に広がって
いることを示す)参照日本語サイト:
http://www.jca.apc.org/stopUSwar/Iraq/global_jusice.htm

実際には、1999年11月30日、組合動員の大規模なデモ行進に約50万
人参加し、それに――組合員はほとんど含まない――多くとも1万人ほどの人
たちがWTO交渉会場の周辺の街路を閉鎖しました。

確かにさまざまなグループが立派に共存していました。だが、(グローバル化
問題は、労働組合からシエラクラブまで、多様な立場の活動家たちを束ねて、
幅広く包括的な分析と、広範な連携を迫りましたが)私たち皆が共有する奥深
い基盤にはっきり言及した者は、ごくわずかでした。

若いアナーキスト活動家たちの黒色同盟が、ナイキタウン、スターバックスな
ど、シアトル中心街の何ヵ所かの事業所の窓を叩き割って、その存在を初めて
世に誇示すると、封鎖を支持していた人びとの何人かが、器物損壊行為を批判
して、内部論争の火蓋を切りました。

シアトル警察は粗暴であり、活動家たち、通行人、近隣住民を攻撃し、化学療
法診療所に通う年配女性さえも襲いました。

シアトルはエデンではありませんでしたが、それでも奇蹟であり――直接行動
が目覚しい効果を上げたこと、グローバル化が支障なく進展するものではない
こと――この2点を知って、世界は驚きました。

4年たって、企業資本主義のブルドーザーは世界を股に粛々と前進するはずで
したが、アイドリングしているだけ、あるいは堂々巡りしているだけであり、
すでに溝に落込んでいてもおかしくないのです。

カンクンはもうひとつの奇蹟であり、アメリカと欧州連合に対抗した発展途上
諸国と、閣僚会議の会場内と外の街路にいたNGOの活動家たち、そしてメキ
シコ・ユカタン州農民と韓国農民、それにカナダからアフリカまで、その他世
界各地から万遍なく来た街頭活動家たちとの間に生き生きと循環した、熱い思
いと政治戦略の交流は注目に値しました。

シアトルでもそうでしたが、活動家たちは貧しい国々の決意を後押しし、貧困
諸国は自らのために富裕諸国の政策目標に対抗しました。

マイアミでは、街頭活動家たちは圧倒的多数がアメリカ白人だったし、会場に
潜りこむ穴もない有様でした――インターコンチネンタル・ホテルはどこもか
しこもアリが入りこむ隙がないほど厳密に封印されていたのです。NGOはF
TAA交渉の場に席を与えられるどころか、ホテルへ近づくことさえも許され
ませんでした。

米労働総同盟産業別組合会議のジョン・J・スウィーニー議長が、直接行動の
連絡所に使われていた市街地北の倉庫・物流集中センターに顔を出し、(組合
の人たちを標的にするようなことはなかった)警察の暴力を非難してみせまし
た。だが、その口振りはどこかチグハグだったのです。

事前協議では、直接行動派が同じ日にデモ行進をしてもかまわないと、組合側
の同意を得るまで、代表たちは長く消耗する交渉を余儀なくされました……ま
るで、当日は労組が支配権を握っているかのようでした。私たちの方は労働組
合デモに参加しましたが、組合員たちは私たちのには参加しませんでした。ダ
ブルツリー・ホテルを始め、市内各所で開かれたティーチインの討論が、慎重
派を街頭行動から遠ざけたようです。

民衆蜂起、抗議活動、市民的不服従――街頭行動は、そういつも世界を変える
わけではないとしても、やはり大事です。直接行動は、デモクラシーとデモン
ストレーションを教わる学校そのものであり、イザという時に、介入する力と
技を維持する術を磨く訓練場なのです。

1ヶ月前、ボリビア全土の街路と道路に溢れ出たボリビア国民が、貧困にあえ
ぐ国の資源の輸出を企てていた富豪大統領を辞任に追い込みました。反政府の
風潮と直接行動が、ボリビア、アルゼンチン、ブラジル、エクアドル、ベネズ
エラを根本的に変革しようとしています。

予期せぬ驚きになるのは、マイアミでの合意内容があまりにも貧弱だったこと
ではなく、ネオリベラリズム(新自由主義)に対する反乱が、南アメリカでさ
かんに勃興している今、何か、少しでも合意があったという事実のほうです。

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レベッカ・ソルニットの最近刊に『影なす河――イードワード・ムイブリッジ
と技術フロンティア時代の西部』。だが、市民的不服従にもっと触れたいなら、
1994年刊『未開の夢――アメリカ西部、景観戦争の旅』がお勧め。(未邦
訳)原書名:
River of Shadows: Eadweard Muybridge and the Technological Wild West
Savage Dreams: A Journey into the Landscape Wars of the American West
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[原文]
Tomgram: Rebecca Solnit, Tank Girl in Miami
by Tom Engelhardt
Fragments of the Future: The FTAA in Miami
by Rebecca Solnit
Copyright (C)2003 Rebecca Solnit
posted November 24, 2003 at TomDispatch site:
http://www.nationinstitute.org/tomdispatch/index.mhtml?emx=x&pid=1090
トム・エンゲルハート、レベッカ・ソルニット両氏よりTUP配信許諾済み
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翻訳 井上 利男 / TUP

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