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アメリカは日本社会の質的変化に関心を向けよ(Foreign Affairs)
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投稿者 エンセン 日時 2003 年 12 月 02 日 01:03:08:ieVyGVASbNhvI

 
アメリカは日本社会の質的変化に関心を向けよ
 ―新しいナショナリズムと構造改革、再軍備の行方
Japan's New Nationalism

ユージン・A・マシューズ/前米外交問題評議会シニア・フェロー


ワシントンがイラクや対テロ戦争に気をとられている間に、日本ではナショナリズムの高揚という、ワシントンにとっての、もう一つの大きな課題が生じていた。経済の構造改革、世界の指導国としての復権、そして憲法九条の改正を求める日本の新しいナショナリストの主張は必然であり、むしろ健全で好ましい。だが、ワシントンは日本のナショナリズムが過激化し、核兵器保有へとこの国が向かわないよう十分に配慮しなければならない。


<目次>
・日本のナショナリズムは悪か 公開中
・自分が怖い……  部分公開中
・近隣諸国の批判に対する反発
・何がナショナリズムを高揚させているのか
・経済改革とナショナリズム
・石原慎太郎の革命
・健全なナショナリズムの過激化を避けるには


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日本のナショナリズムは悪か
 二〇〇一年十二月、日本の海上自衛隊は、奄美諸島近くの東シナ海の領海を航行する不審船を発見した。このイカ釣り漁船とおぼしき船の構造はいかにも奇妙で、漁具も見あたらない。通報を受けた海上保安庁は巡視船を派遣し、この船を止めて調査しようとした。だが、不審船は停船の呼びかけに応じなかった。追跡を始めた巡視船は、ついには中国の排他的経済水域にかなり入り込んだところでこの船に機関砲で砲撃を加え、交戦が起きる。後に北朝鮮の工作船だったことが判明するこの船は、追跡を逃れようとして、攻撃されて沈没し、乗組員は死亡した。

 一部で報道されたとはいえ、このエピソードは欧米ではたいした関心を集めなかった。だが、それまでの領海侵犯への対応に比べ、日本の海上保安庁がこの事件をめぐってはいつになく果敢な対応を見せたことは大いに注目に値する。事実、日本の専門家は、巡視船が第二次世界大戦以来初めて外国船を攻撃・撃沈・沈没したことに注目し、「このような事態は、わずか十年前には想像さえできなかっただろう」とコメントした。日本が突然、武力行使をいとわなくなったという事実は、国と防衛に対する日本人の態度が大きく変化していることを物語っていた。

 日本人の態度が変化していることは、二〇〇二年十月に北朝鮮の核開発計画が露見し、その一カ月後に、数個の核兵器を保有していることを平壌が認めると、ますます明確になった。二〇〇三年一月下旬、石破茂防衛庁長官は、(衆議院の予算委員会において)防衛のために必要なら、日本は先制攻撃も選択肢に入れると発言し、事実上北朝鮮に警告した。彼はロンドンを訪問していた九月十五日にも、「私の主張は憲法からみても問題はない。日本がミサイル攻撃された後に北朝鮮を攻撃するのでは手遅れだ」と発言し、警告を繰り返した。一部の日本政府の有力者やメディアも、日本は、核武装という選択肢も含めて、防衛体制をもっと強化すべきだと主張するようになった。

 少し前なら、極右勢力を別にすれば、このような議論はおよそ日本では考えられなかったが、いまやこの類の防衛論を耳にすることも多い。この数年来、ワシントンがアフガニスタン、イラク、対テロ戦争に気をとられている間に、アメリカの緊密な同盟国ではナショナリズムの高揚という、ワシントンにとっての、もう一つの大きな課題が生じていたのだ。ともすれば、これが厄介な帰結を招き入れることになるかもしれない。軍事化して、核武装し、対外的に果敢な姿勢をとる日本が出現するのは、この国の近隣諸国にとっては悪夢だろう。

 したがってワシントンは、東京での事態の推移に早急に関心を寄せる必要がある。北朝鮮がますます敵対色を強めるなか、日本の核武装の可能性は今後ますます高まっていくかもしれない。だが日本のナショナリズムが純然たる悪というわけではない。それどころか、ナショナリズムは、切実に必要とされている経済改革支持に向けて市民を動員する大きな手立てになるかもしれない。日本におけるナショナリズムの復活という現象がどうなるかも、その意味合いもまだ曖昧だが、一つだけ確かなことがある。それは、日本でのこうした現象の高まりに目を向けないことが、アメリカにとって最悪の間違いであるということだ。


自分が怖い……

 第二次世界大戦終結以降、日本のナショナリズムは、国内そしてアジア全域で広く議論され、批判されてきた。しかし、今日の日本でナショナリズムが果たす役割を理解するには、この言葉がどのような意味合いを持って受け止められているかを検証しなければならない。歴史家の多くは、一六〇三年に始まる江戸時代に日本のナショナリズムの発露が見られたが、全体主義的特徴を持つ近代思想として、そして、アジアと世界を不安定化させるような国家主義運動として定着したのは明治時代(一八六八〜一九一二年)になってからだと指摘している。

 一九四五年以降ごく最近まで、日本でナショナリズムというテーマが議論の表舞台に登場することはなかった。ナショナリズムというテーマが見向きもされず、議論もされてこなかった理由の多くは、「日本人が自らを恐れていた」ためだ。米戦艦ミズーリ号の甲板で日本が謙虚に敗戦を受け入れたことの記憶、そして、ヒロシマとナガサキに落とされた原子爆弾が引き起こした惨劇の記憶も、こうした控えめな姿勢に拍車をかけた。「軍隊(自衛隊)があまりに大きな力を持つようになれば、日本は大きな痛みを再度経験する羽目になるのではないか、またも(誘惑に負けて)軍国主義を標榜し、支持するようになるのではないか」。こうした思いゆえに、日本人は「自らを恐れた」のだ。

 ごく最近まで、この自己疑念ゆえに、市民の大多数は、かつてアメリカ人が起草した憲法九条を強く擁護してきた。憲法九条によって、日本は平和主義にコミットし、非核主義を貫いてきた。第一次湾岸戦争への対応からも明らかなように、同盟諸国への軍事支援にさえ慎重な態度をとってきた。ワシントンからの働きかけを受けて、最近日本はイラクに自衛隊を送り込むための一連の法整備を行ったが、それでも、日本部隊の活動はイラクのインフラ再建(と人道支援)任務に限定されそうだ。日本の政治家がほぼこの五十年にわたって再軍備に反対してきたのは、市民がこうした自己疑念を抱いてきたからで、一部の評論家がいうような、「近代的な軍隊を維持するコストを回避しようとする利己的な判断から」ではない。

 だが、北朝鮮の工作船に対する武力行使からも明らかなように、日本人の自らへの恐れも薄れつつある。これまではタブー視されてきた、核兵器に関するコメントが公然となされるようになったのも、新しいナショナリズムが生まれつつあることの証拠だろう。小泉純一郎内閣の閣僚の多くが、より果敢な防衛策をとるべきだという石破の立場に同調したのも、その表れかもしれない。また、二〇〇二年半ば、福田康夫官房長官が「法理論上は核兵器を持てる」と発言すると、日本でもっとも有名なナショナリストである石原慎太郎東京都知事も福田の発言を支持する行動をみせた。旧自由党党首の小沢一郎も、中国の脅威を引き合いに出して「その気になれば、日本は三千個か四千個の核弾頭はつくれる。軍事力では負けない」と発言した。

 日本は明らかにこれまでとは違う方向へと向かいつつある。自衛隊はミサイル防衛を強化しようと、二〇〇四年度予算の概算要求に、一九九九〜二〇〇三年までの合計額の九倍にあたる十二億ドルのミサイル防衛導入コストを盛り込んだ。すでに憲法九条の制約は形骸化しつつある。このプロセスは、それまで長く防衛費の上限の基準とみなされてきた国民総生産(GNP)比一%の枠が戦後初めて破られた一九八七年に動き出し、以来、日本の国会は、第九条をうまく迂回するための一連の法案を成立させてきた。小泉は首相になるや、国会の憲法調査会に、武力行使のルールを見直すように求め、一方で世論も変化し始めた。いまや市民の多くも、自衛隊を軍隊に変えることに必ずしも否定的ではない。世論調査をみると、二〇〇〇年当時、自衛隊を軍隊に変えるために憲法九条を改正すべきだと答えたのは四一%だったが、その一年後には比率は四七%へと上昇している。北朝鮮危機、そしてインドネシアやフィリピンでのテロ事件が起きていることから考えれば、いまやその比率はもっと高くなっているだろう。

 世論が変化するなか、これまでは「急進的すぎる」とみなされてきたナショナリストたちの立場も異端視されなくなった。二〇〇二年末、自由党(当時)所属の衆議院議員で右派的発言で知られる西村真悟は「北朝鮮の指導者・金正日は(現代版)ヒトラーであるにもかかわらず、日本政府はまるで(ヒトラーへの宥和政策をとった)イギリスのチェンバレン内閣のように振る舞っている」と政府批判を行った。二〇〇三年二月二十二日のロンドン・タイムズ紙が指摘したように、「ほんの数カ月前なら、西村はたんなる孤立した奇人」とみなされていただろう。「間接的にでも日本の核武装に言及するのはこれまでタブーだったが、いまや政治家、学者、官僚たちの間で、核武装の可能性が注意深く、慎重に議論されている」と同紙は分析している。

 こうしたトレンドを示すもう一つの兆候としては、歯に衣着せぬ発言で知られるナショナリストの石原都知事の高い人気を前に、自民党が、無所属である彼を二〇〇三年四月の知事選で公認したことだろう。石原は、都知事選では例のない、ほぼ七〇%もの支持率で再選された。そして、九月十四日、ついには小泉も、憲法九条の改正に向けて国民的議論が必要だと発言した。

 日本の防衛姿勢の変化に次第に気づき始めた外国の組織もある。例えば、二〇〇二年夏に非政府組織のグリーンピースは日本が核軍備へと向かいつつあるとみなし、欧州連合(EU)に対して日本とのプルトニウム貿易合意のすべてをキャンセルするようにアピールした。グリーンピースは、日本がプルトニウムの備蓄を増やしていることを、核武装の意図が懸念される根拠として指摘した。「すでに日本は三万八千キロのプルトニウムを持っており、二〇二〇年までにはその備蓄は十四万五千キロに達すると考えられる。一つの核弾頭をつくるのに必要なのは五キロのプルトニウムであり、二〇二〇年までに日本はほぼ三万個の核弾頭を生産できることになる」と。さらにグリーンピースのリポートは、宇宙開発にも力を入れ始めている日本は、世界でもっとも先進的な核兵器システムを配備できる可能性があると指摘している。

http://www.foreignaffairsj.co.jp/intro/0311matthews.htm

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