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※フセインが逮捕されたとなれば、今後はこういった光景は街から消えるか？
http://www.janjan.jp/special/0310/0310026996/1.php
(URL先に20秒程度の動画がある)
「サダム時代の方がましだった」米軍占領で混迷するイラク市民 2003/10/05
（１）イラクの戦争はつづいていた
７月１０日、約３ヶ月ぶりにバグダッドに入った。戦争は終わっていなかった。
むしろ５月のブッシュ米大統領による戦闘終結宣言以降、ゲリラ戦による死傷者数は増加している。市内のいたる所で戦車、装甲車、ハンヴィー（武装ジープ）、そして武装ヘリで警戒する米軍が目につく。
この時期の日没は午後８時半頃。市内中心部のサドンストリートの商店街は、まだ日の高い夕方５時頃にはすでに、軒並みシャッターを閉ざし、さながらゴーストタウンと化す。跋扈（ばっこ）する武装強盗団を恐れてのことだという。日に日に治安が悪化していくのを実感する。
毎日どこかで米兵が殺されており、そのせいか米兵たちの表情は険しく、メディアに対しても強圧的な態度をとる。「米兵の撮影は一切禁止だ！」行く先々で何度も兵士に念を押される。
下手にカメラを向けると自動小銃・Ｍ１６の銃口をこっちに向けて威嚇する。スンニ派三角地帯のバラドではテープを没収されかけた。ロイターのカメラマンにその話をすると「オレたちは２週間もカメラを取り上げられたんだぜ」と首を振る。
占領統治がうまくいっていないのは火を見るより明らかだ。戦後３ヶ月もたつのに、いっこうに回復しない電気や水道などのインフラ。物価の高騰。治安の悪化。続発する米兵殺し。そして強圧的な米兵たちの態度。
「サダム時代の方がまだましだった。少なくともものが買えたし夜も安心して出歩けた。アメリカはインフラ復旧などの約束を守っていない」と多くの市民が口にする。
市民たちの反米感情は日増しに高まりつつあった。
（福岡孝浩）
（５）米軍捕物帖２〜 Baghdad
モスルでウダイとクサイが射殺されて６日後の７月２８日夜、メシでも食おうと思ってたら、バグダッド中心部のサドンストリートが騒然とし始めた。ホテル従業員の若い男性は「サダムが捕まった！」などと物騒なことを言う。あわてて現場に走る。
たしかにサドンストリート北端の立体交差点付近で米軍が展開、交通を制限していた。戦車、装甲車等が多数配置され、兵士の数も多い。一様に道路の東側に陣取り、西側方向に戦車の砲塔や機銃の銃口を向けている。ただのパトロールじゃないのは一目瞭然だ。
待つこと十数分、兵士たちが動いた。いっせいに西側の路地に突入する。こっちも追いかけて走る。「危険な銃撃戦では・・・」との思いが頭をかすめる。
結局撃ち合いもなく米兵たちがひとりの男を引っ立ててきた。路上にうつぶせに押さえつけ、頭を足で踏みつける。後ろ手に縛り上げられた男は、通りに停めてあったイラク警察の車両に押し込まれ、連行されていった。
周辺の住民の話では、逮捕されたのは９人殺しの強殺犯とのこと。このあたりはクルド系マフィアの巣窟として知られている。だが強殺犯ひとりを逮捕するのには大げさすぎる。
普段はカメラをかまえるだけで銃口を向け、「撮影するな」と恫喝する米兵たちも、このときは撮影を止めなかった。
５月の戦闘終結宣言からほぼ３ヶ月。悪化の一途をたどる戦後イラクの治安を象徴する出来事だった。同時にバグダッド警察が犯罪取り締まりにおいて、米軍の管理監督下にあることもわかった。犯人を逮捕するのはあくまで米軍。警察はその補助にあたるだけだ。
こうした米軍主導の犯罪取り締まりでは、誤認逮捕や米兵の過剰な暴力も多い。CPA（連合軍暫定当局）はいちいちこうした事実を発表したりはしないし、問い合わせにもまともに応じない。
市民たちはこの逮捕劇を喝采で見送ったが、彼がほんとうに強殺犯なのか、それとも誤認逮捕なのか、確認はできなかった。
（福岡孝浩）
（６）ティクリート１〜サダムパレス
７月３１日、今もサダム支持者が多い元大統領の出身地ティクリートに行く。
サダムはティクリート郊外のアージャ村で生まれた。生地を訪ねると、村を見下ろす高台に建つ宮殿に行き着く。広大な敷地だ。イラク全土に約９０ヶ所もある、いわゆるサダムパレスである。
羊飼いと数十頭の羊たちがたむろしている。彼らに促されて宮殿正面にまわると、その惨状が見えてくる。空爆されたのが一目でわかる。内部に入ると、バンカーバスターと思われる爆弾が貫通した跡を２ヶ所見つけた。なるほど貫通弾だ。三層にわたってきれいに丸い穴が開いている。
爆撃の惨状も生々しいが、それを上回る略奪で宮殿内は往時の華やかさのかけらもなかった。
２階には浴室がふたつあったが、どちらもめぼしいものは略奪されてがらんどう状態。
サダム支持者が多いわりには、きちんと略奪されているのが何だか不思議だった。
表に出て宮殿正面に立つと、広大な農場を見下ろすことができる。絶景だ。どこまでも緑豊かな大地が広がっている。かつてサダムはここから自らが君臨する土地＝イラクを眺めていたのだろう。いまサダムはどこでど何をしているのだろうと思った。
（福岡孝浩）
（７）ティクリート２〜サダムを支持する人々
サダムの出身地ティクリートには、今もサダムを支持する人々が多い。
米軍のサダム狩りの実態を取材するため、いくつかの村をまわった。そのうちの一軒には、いまもサダムの肖像が掲げられていた。いろんな所に行ったが、戦後自宅に公然とサダムの肖像を飾っているのを見たのは初めてだった。主人が米軍の家宅捜索の傷跡を見せてくれる。手荒な捜索で家具は壊れ、家人は怒りをあらわにしていた。
突然、表に集まってきた子供たちがサダムシュプレヒコールを始めた。
「私の血と心を捧げます、サダムよ！」で始まる、戦前戦中によく耳にしたアレだ。戦前と同じく、延々と終わらない。婦人のひとりがサダムの御真影を持ち出してくると、さらに騒ぎが大きくなった。今ここが、サダム捜索に血道を上げる米軍が集中的に展開しているエリアであることを思うと、ひやひやする。他人ごとながら心配になる。
その家を引きあげるときにも、住民たちはサダムコールで我々を見送ってくれた。
（福岡孝浩）
（８）ティクリート３サダムを支えた密告社会
つい１週間ほど前に米軍の集中捜索を受け、主人が逮捕された家に行った。地元ではホーリーマン（宗教指導者ではないが、カリフの子孫にあたる名士）として知られている、カリッド・サルー氏宅だ。
昨日釈放されたばかりだというカリッド氏は、米軍はサダム捜索をしているとは言わなかったという。手荒な捜索で家具やドアが壊され、タンスからは現金も奪われてしまった。さらに容疑もあいまいなまま身柄を拘束された。奪われた現金はいまだに返されないままだ。
ただサダムのことは今も信奉しているらしく、「サダムがどこにいるのか自分は知らない。だが彼はイラクのどこにでも身を潜められる。なぜならここはイラクだからだ」と語った。
実はカリッド氏が逮捕されたのは、周辺住民の密告のせいだ。戦前カリッド氏は、名士として村の重鎮だった。政府とも関係が深く、さまざまな面で地元住民の反感を買うことが多かったらしい。
ある住民は「彼は政府の手先だった。何の罪もない人をスパイだと告げ口していた」と話す。
「米軍が来てからも、以前と同じように自分の気に入らない人を、サダムの居所を知っていると告げ口していた。だからオレが米軍に本当のことを言ってやったんだ」サダム時代も、そして米軍占領下になっても、旧政権を支えた「密告社会」はつづいていた。それはサダムを支えた恐怖の仕組みそのものだった。
（福岡孝浩）
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。