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http://www.foreignaffairsj.co.jp/source/Iraq/IraqToday.htm
イラクはどのくらいの規模の債務を負っているか。
イラクの政府間債務の規模については、多くの専門家が一千三百億ドル程度とみている。これに、第一次湾岸戦争の戦争賠償金、補償請求、イラク政府との契約の未払い金などを加えると、債務額は三千億ドル程度に脹れあがる。また、イラクはこの十年以上にわたって債務を支払っていないために、金利もかさんできている。イラクが近代的な民主国家へ変貌していくのを助けるためには、こうした債務の一部、あるいはすべてを帳消しにする必要があると考える専門家もいる。
債務の詳細はわかるのか。
イラクの財政に関する正確な情報が入手できないために、数字にはかなりのバラツキがみられる。債務の多くが非公式のものであるか、記録されていないために、正確な数字を特定するのは難しい。
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債務帳消しを求める議論の根拠はなにか。
「債務帳消し（債権放棄）に応じれば、イラクの経済復興が成功する見込みを高められる」と多くの人が主張している。「人道的救済、戦後再建の切実な必要性があるというのに、サダムが自分の支配体制の強化に用いた資金によって生じた債務の支払いでイラク民衆を苦しめるべきではない」。債務帳消し支持派はこう主張している。ノーベル経済学賞を受賞したエコノミストのジョセフ・ステグリッツも、一九一九年のベルサイユ講和会議が定めたドイツに対する苛酷な戦争賠償金が、いかに第一次世界大戦後のドイツを苦しめたかを引き合いに出して、イラクへの債務帳消しを求めている。
ブルッキングス研究所のマイケル・オハンロンも債務の帳消しは「絶対的な必要性だ」と指摘し、次のように語っている。「債務の履行を求めれば、戦後のイラクは天文学的な規模の債務を支払わなければならないことを意味し、当然、それは懲罰的なものになる。そのような事態はアメリカの国益に反する。われわれはイラク民衆の人心を勝ち取らなければならないし、他のアラブ世界に対しても、われわれが米欧の石油企業のためにイラクにいるわけでないことを示す必要がある」
他にも債務帳消しを肯定する根拠はあるか。
悪名高い暴君がつくった債務を帳消しにすれば、今後、そのような独裁者への国際的融資の流れが小さくなっていくことを期待できると考える者もいる。シーガルは次のように語る。「債権者は、債務帳消しを求める議論の法的根拠を示すべきだと考えている。だが、彼らが独裁者と取引きしていたことを忘れてはならない。最初から危険な投資だったわけだし、すでに投資はふいになっている。政府、そして世界の納税者は、汚い投資を行った民間の投資家を救済する必要はない」。オックスファムなどの市民団体も「サダムの独裁体制の強化を助けるような融資をした国や企業に、債務を返済する必要はない」と主張している。
債務の帳消しに反対する意見は。
国際金融ビジネスのエグゼクティブたちは、イラクの債務不履行を認めれば、今後のイラクの信用格付けに悪影響が出て、外資がなかなか投入されなくなると警告している。債務の再構築や繰り延べをつうじて重荷を軽くしつつも、金融上の責任をとらせるべきだと彼らは主張している。 イラクの債務を帳消しにすれば、国際借款による開発の行方が危うくなると考える者もいる。債務を帳消しにすれば、開発途上国全般、特に、現在は権威主義政権でも、民主化する可能性のある中国のような途上国への借款の流れが鈍化するかもしれないと考える者もいる。他の貧しい国ならともかく、世界で二番目に大きな資源を持つ、潜在的に豊かなイラクに対する債務帳消しなど賢明ではないという声もある。
債務帳消しから利益を得るのは誰か。
石油からの歳入を、債務支払いではなく、国の再建にあてられるようになる。つまり、債務帳消しから利益を引き出せるのはイラク民衆である。さらに中東地域全体が、イラクの安定の高まり、外国資本の投資から恩恵を引き出せると考える専門家もいる。イラクへの投資が進み、石油貿易の拠点としての役目を果たすようになれば、本当の経済ブームが中東で起き、地域諸国のすべてにとっての恩恵になる、と。
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＊邦訳文の全文は、「論座」2004年1月号（2003年12月5日発売。朝日新聞社）及びフォーリン・アフェアーズ日本語版・日本語インターネット版2003年12月号に掲載されます。
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。