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シャロンが合意を恐れる理由(ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版2003年12月号)
http://www.asyura2.com/0311/war45/msg/867.html
投稿者 はまち 日時 2004 年 1 月 02 日 21:40:00:rhFP/VPyFgrPk
 

シャロンが合意を恐れる理由

アムラム・ミツナ(Amram Mitzna)
1945年生まれ、軍で将官まで昇進した後に退役、1993年にハイファ市長、
2002年11月に労働党党首に選出されるが2003年5月に辞任

訳・渡部由紀子

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 もし、イスラエルの首相がジュネーヴ合意を実施に移す道を選ぶならば、合意に基
づいた民主的なユダヤ国家イスラエルの創始者として、その名を歴史に刻むことにな
るだろう。1948年の建国にもまして、重要な一歩が踏み出されることになるだろう。
イスラエルの建国はその当時、一方的な行為と見なされ、世界で数カ国にしか承認さ
れなかったからだ。

 ジュネーヴ合意は、我々にパートナーがいること、血を流す以外にも選択肢がある
ことを証明している。シャロン首相とその閣僚たちが労働党、野党勢力、合意文書の
関係者を攻撃するのは、何よりもある感情の表れと言える。それは恐怖である。しか
しながら、ジュネーヴ合意のイスラエル国内支持者を怖気づかせようとする政府と右
派の試みは、今のところすべて失敗に終わっている。

 シャロン氏はまず、我々のことを敵側に買収された政治屋のように見せようとし
た。極右の議員は我々を裏切り者と呼んだ。我々を起訴するよう検事総長に詰め寄っ
た者さえいたが、功は奏さなかった。

 11月13日、首相官邸から圧力をかけられた国営ラジオが、合意の条文を11月中旬よ
りイスラエルの各世帯に郵送で配布することを知らせる広告放送を打ち切った。この
政治的検閲に対し、我々は最高裁判所に訴えざるを得なかった。その判決は間もなく
下される(1)。

 しかし、我々がこうした検閲や脅しに屈することはない。パレスチナ人の間でジュ
ネーヴ合意への支持が広がっていることを知った今、我々の決意はさらに強まった。
イスラエルでも、この合意はシャロン政権の破滅的な政策に代わる有効な選択肢とし
て、人々の支持を集めつつある。この選択肢は、イスラエル人とパレスチナ人の日常
生活のあらゆる側面に多大な損害を与えている現状から、両民族が抜け出す突破口と
なり得るものなのだから。

 この11月初め、暗殺されたイツハク・ラビンの8周忌を機に組織されたさまざまな
活動が、多数の参加者を集め、政治色を強めたという事実は、シャロン氏の政策に失
望したイスラエル人のかなりが打開策を求めていることをあらためて露呈した。それ
を提供しようというのが、まさしくジュネーヴ合意なのだ。

 右派と極右が、扇動や威嚇、闘争に訴えて、合意を拒否する統一戦線を張っている
のは、実のところ和平を恐れているからだ。彼らが懸念しているのは、今やますます
多くのイスラエル人が、3年前から欺かれていたことに気付きかけているからだ。

 首相は3年間にわたり、対話の相手などいないと国民を言いくるめてきた。パレス
チナ人を叩きつぶす勝利は力によりもたらされ、イスラエル国防軍ツァハルには勝利
へと至る手立てがあるのだと言いくるめてきた。そして国民に強くあれと求め、そう
すれば恐怖は終結すると約束した。

 しかし、状況は悪化するばかりだった。テロ行為を一掃するとの触れ込みのパレス
チナ人指導者の掃討は(政府の唯一の政策となっていたが)、すり減った国の中身を
粉々にしてしまいかねない。テロ行為は増加し、経済は衰退し、社会は崩壊しつつあ
る。そして人口という現実は、ユダヤ国家としてのイスラエルの存続そのものさえ脅
かしている。それにもかかわらず、政府は別の道を探ってみようとはしなかった。

 何カ月にも及ぶ大変な仕事の末、我々はようやくジュネーヴ合意にたどり着いた。
たしかに、我々のだれ一人として、この合意が明日にでも具体化するなどとは考えて
いなかった。我々は、これが本物の合意であるかのように、微に入り細をうがち、1
センチメートルの違いに至るまで、攻防を繰り広げた。

 それは戦いだったが、犠牲者を出すことはなかった。我々はやり合ったが、軍服に
身を包んではいなかった。我々は、エルサレム、神殿の丘、グーシュ・エツィオン
(2)をめぐって戦った。イスラエルの最終的な国境のため、また国家の存続の根幹の
ために戦った。そして確たる成果を手にしたのだ。

 パレスチナ人は史上初めて、イスラエルがユダヤ人の国家であることを公式に、か
つ未来永劫にわたって認めた。イスラエルへの帰還権を放棄し、これにより我々の国
でユダヤ人の安定多数が保たれることを保証した。嘆きの壁、ユダヤ人居住区、ダヴ
ィデの塔は、今後も我々の手の中に残される。エルサレムが周辺地区によって圧迫さ
れることはなくなる。エルサレムを取り囲む一群のユダヤ人の村(ギヴアット・ゼエ
ヴ、新旧ギヴォン、マアレ・アドゥミーム、グーシュ・エツィオン、ネヴェ・ヤアコ
ヴ、ピスガット・ゼエヴ、ハギヴァ・アツァルファティト、ラモット、ギロ、アルモ
ン・アナツィヴ)は、未来永劫にわたって拡大エルサレムに統合されるのだ。もは
や、これらの村の住民たちが家を捨てるよう迫られることはない。

 得られた成果を批判するのはたやすい。扇動することも同じくたやすいが、それは
パニックの表れにほかならない。しかし、話し合う相手はいるのだから、政府がその
つもりになりさえすれば、現実は明日にも変わり始める。

 問題は、アリエル・シャロン氏には取り決めを交わすつもりがないことである。未
来を見据えることのできる指導者の勇気、それが彼には欠けている。政治的な議論に
流されて決断を下し、過激派の言いなりになっているにすぎない。首相と政府が持つ
「勇気」というのは、嘘をついて、別の道などないと言い切ってみせることだけだ。
現実から完全に切り離された戦争による死に向けて、兵士を送り出す行為のどこが勇
気だというのか。

 ジュネーヴ合意は「王様は裸だ」と叫んだ少年に似ている。政府は我々を破滅に導
こうとしている。その暴力的な反応を見れば分かる。政府はパニックに陥っており、
それも当然のことなのだ。自分の心のおもむくままに、まったく無意味に血が流され
るおそれのある戦争へと国民を引きずり込むような指導者は、正統性に欠けた指導者
でしかない。それは今日、だれもが見て取っていることだ。

 シャロン氏は、この種の合意を起草するのは無理があるという理由を説明するどこ
ろか、お得意の扇動にのめり込んだ。ちょうど8年前、シオン広場でやったこととま
ったく同じだ(3)。彼は今、同じことを繰り返している。今度は首相の立場にある
が、使う言葉は変わっていない。

 ジュネーヴ合意はたたき台であり、政府間の公式文書ではない。双方の承認を得た
最終的な取り決めを目指すための提案である。この合意は、次の二つの点において注
目に値する。まず一つは、紛争の終結を告げている点である。もう一つは、グレーゾ
ーンを残していない点である。あらゆる詳細について余すところなく詰め切ってお
り、当事者が後日に異論を唱える余地はない。

 もう一つの長所は、パレスチナ側の代表団が幅広い分野の正真正銘の指導者を集め
ており、自治政府からも現場の活動家からも支持を得ているという点である。

 イスラエル政府は、この合意をそのまま明日の朝から適用することもできる。ある
いは検討を加え、交渉の場で改定することもできる。

 イスラエル市民がこの合意の存在とその詳しい内容を知り、逆上した政府の扇動に
も、左派を標榜しつつ政府の政策を支持する人々にも欺かれなくなることを、私は切
に願っている。

 ジュネーヴ合意は歴史の転換点である。なぜならば、政府は(もし望めばの話だ
が)この文書によって、どのような譲歩に双方が同意すれば紛争が終結するのかを正
確に把握できるからである。

 もし、政府がこの合意を実施に移すことなく、別の解決策も提示できないとすれ
ば、我々は頭上に剣を突きつけられたまま生き続けることになる。

 決断は我々の手の内にある。

(1) イスラエル最高裁は11月19日、ジュネーヴ合意に関する広告放送を認める命令を
下した。[訳註]
(2) エルサレム南方の「歴史的」入植地群。
(3) 8年前、オスロ和平合意を結んだラビン首相が暗殺される少し前、彼をナチス親
衛隊員に見立てるなどして激しく攻撃する大規模集会がエルサレムのシオン広場で開
かれ、シャロンもそこで演壇に立った。[訳註]

(ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版2003年12月号)

All rights reserved, 2003, Le Monde diplomatique + Watanabe Yukiko +
Jayalath Yoshiko + Saito Kagumi

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参考

* ジュネーヴ合意の詳細地図(
http://www.monde-diplomatique.fr/cartes/propositionsgeneve2003
仏語。地図右上の文字をクリックすれば拡大。
凡例は上から順に、「パレスチナ領」「パレスチナの主権下に入る地域」
「パレスチナの町と村」「パレスチナ難民キャンプ」
「グリーンライン(1949年の停戦ライン)」「幹線道路」
「イスラエル領」「イスラエルの主権下に入る地域」
「イスラエル入植地」「計画中または建設中の壁ないしフェンス」
「エルサレム市境」「東エルサレム:ユダヤ人入植地はイスラエルの
主権下に入り、他の市域はパレスチナの主権下に入る」
* ル・モンド・ディプロマティーク2001年9月号に掲載の記事「パレスチナ和平は
いかにして頓挫したか」(http://www.diplo.jp/articles01/0109.html

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