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アメリカのパートナーシップ戦略 コリン・L・パウエル Foreign Affairs【パウエルの言い訳?】
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投稿者 エンセン 日時 2004 年 1 月 04 日 02:52:01:ieVyGVASbNhvI
 

 
アメリカのパートナーシップ戦略
 コリン・L・パウエル
A Strategy of Partnerships/Colin L. Powell

目次

・対テロ戦争の特質 公開中
・先制攻撃論の真意  公開中
・ブッシュ政権が重視するパートナーシップ 公開中
・協調の時代
・主要国との友好関係を目指して
・利益と責任   

・著者紹介



コリン・L・パウエル
米国務長官


以下は論文の一部です。全文はフォーリン・アフェアーズ日本語版および日本語インターネット版2004年1月号に掲載いたします。
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インターネット版2004年1月号の目次はこちら

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対テロ戦争の特質

 昨今のアメリカ外交を考えるとき、多くの人はまず対テロ戦争という局面に思いを馳せるだろうし、この局面にしか目を向けない人もいるかもしれない。イラクとアフガニスタンの再建、中東地域での問題、そして、東南アジアやヨーロッパだけでなく、アメリカ国内にさえ潜伏するテロ分子がつくり出す問題だ。人々がテロ問題に気をとられるのも無理はない。二〇〇一年九月十一日、国際テロリストがアメリカを直接攻撃し、これに激高した米市民は、テロを引き起こした勢力を法の裁きの場に引きずり出したいと望んでいる。米市民は、なぜテロ攻撃が起きたかも理解したいと考えるようになり、対米テロが二度と起きないような外交政策をとるようワシントンに求めている。

 対テロ戦争がアメリカ外交の最優先課題とされたのも自然の流れだった。大量破壊兵器(WMD)拡散の流れと密接に関連している恐れのあるテロ集団が、いまやアメリカ人の生命を脅かす最大の脅威である以上、対テロ戦争は、――そうする必要がある限り――、アメリカ外交の最優先課題であり続けるだろう。テロを打倒するには、個々のテロリストを屈服させる軍事作戦やテロ支援国家に対する抑止策だけでなく、法執行や情報の共有に関する多国間協調を重視しなければならない。「政治手段としてのテロ」という認識を淘汰するとともに、テロリストの動機を強め、テロ分子を調達しやすい環境を育むような社会要因をなくすための包括的な取り組みも必要になる。

 アメリカの戦略の奥深さによって、すでに対テロ戦争は変化している。目の前にある脅威に対処していくだけではテロの脅威を取り除けない。これは、水をくみ出すだけでは、穴の開いたボートの問題を解決できないのと同じことだ。対テロ戦争の最前線での問題にばかり関心を寄せる人々(つまり、水をくみ出すことばかりを気にする人々)が、アメリカの戦略の本質をいつもより理解しがたく感じているのもこのためだろう。格言にあるとおり、馬を水飲み場まで連れて行くことはできても、無理やり水を飲ませることはできない。昨今では、ブッシュ政権が健全な外交戦略を考案しているのに、人々はこの事実を認識し、理解することもできないようだ。

先制攻撃論の真意

「大統領には世界ビジョンというものがない、戦略を持っていない」。これは、評論家にとっては、いかなる政権が対象であっても、都合のよい決まり文句だろう。これですべてを大統領の問題、大統領の責任にしてしまえる。そうでさえなければ、世界はアメリカの目的に完全にマッチするものになっていたと言わんばかりだ。こうした批判がぴったりと当てはまる政権もあったが、少なくとも現政権はそうではない。ジョージ・W・ブッシュ大統領は、よりよい世界についての明確なビジョンも、ビジョンを実現するための戦略も持っている。事実、私はよりよい世界の構築に向けた創造の瞬間に自分が立ち会っていることを当初から理解していた。

 大統領の戦略が最初に示されたのは、二〇〇二年九月に発表された米国家安全保障戦略(NSS)文書においてだった。四十ページ足らずの簡潔なこの文書で、八つの領域におけるアメリカの政策上の優先課題が定義された。個々の領域での政策を総合的にまとめると、そこから浮かび上がってくるのは、危機だけでなく、機会も存在することを適切に認識した、広くて奥行きがあり、広範囲を網羅した前向きの戦略である。

 もちろん、公的な戦略文書で、アメリカの指導者が下す決断が、何もかも正直に記述されているわけではない。アメリカも、アメリカの同盟国も、自国が考え計画していることのすべてを話して敵に有利になるようなことはしない。しかしながら、現政権のNSS文書は、一貫して、意図するところを率直に述べる現大統領のスタイルを反映して、驚くほど率直な内容になっている。

 とすれば、われわれの外交戦略が内外の専門家にしばしば誤解されるのは、いかにも奇妙である。「アメリカの戦略は単独行動主義だ」と批判されるが、現実にはそうではない。「テロ対策に気をとられるあまり、世界規模での先制攻撃戦略を重視しすぎている」とみなす批判も多いが、これも完全に的はずれだ。

 誤解や曲解がなぜ起きているのか。その理由の一端は現在の環境にあるのかもしれない。NSSが、9・11の衝撃の余波のなかで先制攻撃論を明確に示したのには、それなりの理由がある。一つは、アメリカ政府が常識的な認識を持っていることを米市民に知らせ、安心させるためだった。大統領が語ったように、行使し得る手段で抑止できない「いまそこにある脅威」が存在する場合、それに対処する方法を考えなくてはならない。これは良識のある人なら、誰でも理解できるはずだ。テロ集団が攻撃してくるのを座して待つわけにはいかない。われわれが行動を起こす前に敵が攻撃してくるのを許すわけにはいかないのだ。

 NSSで先制攻撃論を表明した第二の理由は、敵対勢力に対して、彼らが大きな問題に直面していることを認識させるためだった。テロ集団側が状況に不安を抱くようになれば、彼らが活動をやめたり、間違いを犯したりして拘束される可能性も高まる。また一部には、イデオロギー上の理由からではなく、単なる機会主義から、テロ集団との共謀関係を築いている国もある。こうした国の指導者に、機会主義のコストがひどく高くつくことを認識させるのも大いに価値がある。

 これらの思慮深い理由があるにもかかわらず、評論家のなかには、外交政策の一要素としての先制攻撃論の役割、そして、米戦略における先制攻撃戦略の中枢性を誇張する者がいる。先制攻撃の対象とされるのは、テロ集団のような抑止できない非国家アクターがつくり出す脅威だけである。また、先制攻撃を抑止と置き換えたわけもない。それは抑止を補完するための戦略である。戦略の中枢に先制攻撃を据えているわけでもない。実際、NSSが示した先制攻撃を批判する議論は、この文書で示された八領域のうちの一つ、それもわずか二行で説明されているポイントにばかり焦点を当てている。

 米国内にも、党派的な理由からNSSを曲解し、先制攻撃への懸念を、まるで冷戦期のミサイル論争なみの二十一世紀における政治論争に変えて、ブッシュ政権の立場を損なおうと試みる者がいる。一方、外国でも、アメリカの意図がゆがめてとらえられている。彼らは、自国の歴史を判断基準にして、自分たちがアメリカなみのパワーを持っていたら何をするかを考えている。つまり、彼らのホッブズ的な見方を、われわれのジョン・ロック的な見方に置き換えて状況判断をしている。

 アメリカ外交への誤解を解く必要がある。こうした誤解や曲解は、アメリカ外交を誠実に理解しようと試みる批評家の目を曇らせてしまうし、不合理な党派政治を煽り立てるだけだ。

ブッシュ政権が重視するパートナーシップ

 NSSによって、われわれは限られた特定の状況において、先制攻撃を行うことにコミットしている。この判断をわれわれはいまも支持している。今回の先制攻撃論に目新しい部分があるとすれば、内容よりも、むしろその明確さにある。しかも、われわれの戦略が先制攻撃論を基に定義されているわけではない。大統領の戦略は北大西洋条約機構(NATO)、アメリカの同盟諸国、国連とのパートナーシップを特に重視している。

 もしそう思えないのなら、評論家たちが広めている言説のせいだろう。「戦後イラクの再建をめぐって大統領が国連安保理決議を求めることを最近決定したのは、これまでの路線からの大きな逸脱だ」と彼らは考えている。だが、こうした認識は、二〇〇二年九月十二日にブッシュ大統領が国連に出向いて、国連がイラクに対し、過去の十六の決議の履行を求めるように呼びかけたことを無視している。イラク政府が国連決議の義務を果たすように求めた安保理決議一四四一号は二〇〇二年十一月に全会一致で成立した。ブッシュ政権は、イラクの自由作戦が始まる数カ月前にも、国際社会のさらなる団結を図ろうと、新決議を取りつけようと試みた。戦争後の二〇〇三年五月にも、イラク復興の障害となる経済制裁を解除する安保理決議一四八三号の採択を求め、八月にも、イラク統治評議会を承認する安保理決議一五〇〇号を取りつけている。

 こうした国連を中心とする試みをしていなかったのなら、二〇〇三年九月に安保理決議を求め、決議一五五一号が十月十六日に全会一致で支持されるまで米政府が辛抱強く採決を働きかけたことを、既定路線からの大幅な逸脱だったとみなしてもよいだろう。  だが、ブッシュ政権はこれらのすべてを国連の場で現実に試みている。われわれに言わせれば、イラクの戦後復興の第二局面が近づいた段階で、国連安保理での新決議を取りつけなかったとすれば、それこそ、既定路線からの逸脱であろう。何らかの逸脱があるとすれば、それは評論家たちが事実に基づく基本的な理屈というものを踏み外していることだろう。

 ブッシュ政権の戦略スローガンは「パートナーシップ」である。パートナーシップとは他に対応を委ねることではない。他国とともに行動することを意味する。歴史あるパートナーシップに加えて、大統領は、新たな課題に対応しようと新パートナーシップの形成も試みている。HIV・AIDSのためのグローバル基金のような、世界規模のパートナーシップもあれば、アラブ世界の教育・経済・政治改革を支援する中東パートナーシップ構想のような地域的パートナーシップもある。

 パートナーシップの前提となるのが価値や原則だ。大統領の戦略は、自由と人間の尊厳が保障される環境を世界規模で促進していくことにある。「人間の尊厳を保障することについて妥協は許されないことを、アメリカ人は認識しなければならない」と大統領は指摘し、それを支えるための枠組みとして「法の支配、国の絶対権力の制限、言論・宗教の自由、公正な法手続き、女性の権利の尊重、宗教・民族的な寛容、私有財産の保障」を挙げている。われわれはこうした価値をいまも、これからも擁護していく。そして、われわれが構築し、育んでいくパートナーシップによって、この価値が支えられていくことになる。

 大統領の戦略では、自由貿易と経済開発をめぐる新構想も重視されている。米州自由貿易地域(FTAA)、アフリカの成長と機会法の拡大、そして特に(大規模な開発援助構想である)ミレニアム・チャレンジ・アカウントは、この領域でのわれわれの主要な政策である。WMD拡散の防止も大統領の戦略の重要な一部だ。二〇〇三年五月には、WMD関連物質が拡散危険国(CPC)に出入りするのを阻止するための拡散防止構想(PSI)も発表され、九月には協定に参加する十一カ国間で取り締まりをめぐる具体的措置についても合意が形成された。大統領は、九月二十四日の国連演説でさらに多くの国がPSIに参加するように呼びかけており、この要請に応じる国が増えることを期待する。

 また、地域紛争においてアメリカが役割を果たすことも重視されている。地域紛争は人々を苦しめるだけでなく、近隣の平和な社会に飛び火し、テロリズムを煽り立てる危険を伴う。特に、イスラエルとパレスチナを安定した和平へと向かわせることが重要だ。われわれは現地に割って入ることはまだしていないが、すでにブッシュ政権の政策によって、この地域は平和に近づいている。 「就任から二年間、ブッシュ政権はイスラエル・パレスチナ紛争の解決に本腰を入れなかった」と広く批判された。多くの人にとって、本腰を入れるとは、大統領や閣僚が両地域を公式訪問し、皆で写真に納まることを意味するのかもしれない。そうしたことはブッシュ政権以前に長く行われてきたが、それが紛争の解決には結びつかなかったことが忘れ去られている。別の形での、より適切な外交路線をとることもできる。実際、われわれは平和を実現しようと大いに努力してきたし、水面下で状況分析を行い、適切な戦術を見極めようと試みてきた。

 その結果誕生したのが、アメリカ、欧州連合(EU)、ロシア、国連から成る「カルテット」という中東和平に向けたパートナーシップだった。われわれは、このパートナーシップを基盤に中東「ロードマップ」を書き上げ、大統領は関係勢力がこの構想にコミットするように、二〇〇三年六月にヨルダンのアカバにも出向いている。

 パレスチナ内部の和平勢力が力を得るには、自治政府の大幅な改革が必要なこともわれわれは理解していた。イスラエルがパレスチナのテロ路線に対する自衛策をとらざるを得ないことについてアメリカが反対しないことを決めると、パレスチナ内部で改革を求める圧力が生じた。双方の改革への思惑が近づいたことを背景に、アッバス首相がパレスチナに誕生した。

 残念なことに、アッバスの試みは、アラファト議長によって行く手を阻まれ、後任のクレイ首相も同じような障害に遭遇した。アラファトは和平のための対話の担い手というよりも、平和を阻む障害だった。いまは一時的に和平への進展を望めない状況にあるが、関係勢力は、いまや本当の問題が何であるかを明確に理解している。どうにかして、この問題を断ち切らなければならない。イスラエルでは、栄誉ある、安定した平和を求めるパレスチナの指導者を支援する人々が増えている。この紛争の行方は暗澹としているとしばしば考えられがちだが、状況は進展している。

 その他の地域の紛争においても、われわれは大きな関心と熱意を持って状況に対処している。例えばリベリア民衆の苦しみに配慮する一方で、スーダンやコンゴでの内戦を終わらせようと積極的に関与している。バルカン、北アイルランド、東ティモールの状況をさらに改善していく必要があることも忘れてはいない。こうした地域の多くでわれわれは状況を進展させて、各地域での対策を主導している国を助けることで、安定の実現に向けた貢献をしている。別の言い方をすれば、われわれはパートナーとして活動している。・・・

Colin L. Powell  米統合参謀本部議長(1989〜93)を経て、ジョージ・W・ブッシュ政権の国務長官。

Copyright 2004 by the Council on Foreign Relations, Inc. and Foreign Affairs, Japan

http://www.foreignaffairsj.co.jp/PR_Powell.htm

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