公明党はきのう、陸上自衛隊先遣隊のイラク派遣を了承した。これを受けて、石破茂防衛庁長官は先遣隊に派遣命令を出し、今月中旬には約３０人の陸上自衛隊員がイラク南部のサマワに入る。

　イラク復興支援特別措置法に基づく陸上自衛隊のイラク派遣について、公明党は慎重な姿勢を取り続け、神崎武法代表が昨年１２月に現地視察まで行った。だが、結局のところ、政府の方針を支持するスタンスは変えていない。

　神崎代表は新年賀詞交換会でも「大事なことは先遣隊よりも、本隊を出すか出さないかという問題」と述べて、慎重な姿勢には変わりないことを強調しているが、先遣隊の派遣了承は陸自本隊の派遣に道筋を開いた決定だと言ってよい。

　昨年末、慌ただしい日程でサマワを訪れ、「比較的安定しているとの印象を受けた」と感想をまとめた神崎代表の役割は、陸自の派遣に慎重な「歯止め役」というよりは、現地の平穏ぶりを保証して陸自派遣にお墨付きを与える「推進役」を演じたと評した方がふさわしい。

　神崎代表の訪問後、仕事を求める地元民のデモが暴徒化してオランダ兵が発砲、１人が死亡する事件も起きた。「地域住民とオランダ軍に良い関係ができているとの印象を受けた」との報告も今となっては疑わしい。

　先遣隊のイラク派遣を了承したことにより、公明党は陸自派遣について重大な責任を負ったことになる。「平和と福祉」を看板に掲げてきた立党精神から、新たな一歩を踏み出したと判断したい。

　このところ、「自公体制」の枠組みは一段と強まり、永田町における公明党の存在感が増している。
　総選挙でも明らかになった通り、自民党の現有勢力は公明党の支援なくしては成り立たない。衆院選出口調査によると、公明党支持者の６３．３％が自民党候補に投票しており、公明党の下支え効果が顕著に表れた。

　小渕恵三政権の下、１９９８年から９９年にかけて、周辺事態における米軍支援を強めたガイドライン関連法、日の丸・君が代法、改正住民基本台帳法などが次々と成立した。「強い日本」「普通の国」を目指す、これらの法案成立で公明党が果たした役割は大きかった。

　「自自公体制」はその後、「自公保」を経て、現在の「自公体制」に至り、自民党政権の延命、強化につながっている。
　公明党はかつて野党勢力の一員として「反自民」の姿勢を明らかにしていたが、肝心なところでは自民党を支えてきた。

　田中派を中心としてきた公明党と自民党とのパイプは、今では小泉純一郎首相との間で強い絆（きずな）が築かれている。近年の政治史を振り返る限りでは、公明党のパイプは権力を握る主流勢力との間で結ばれてきたと言っても過言ではない。

　創価学会を支持基盤とする公明党が小泉首相の靖国神社参拝に対して、不快感こそ表明するものの、それ以上の反発を示していないのも理解しにくい。連立与党を組む立場から、もっと強く、首相に異議申し立てを行ってもよいテーマだと思う。

　国民の半数の支持を得られなくなった自民党を支え、補完する政治勢力として、これからも歩み続けるのだろうか。

2004年01月08日木曜日
http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2004/01/20040109s01.htm

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