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ブラジルPT左派はどのように闘うか ルラ政権成立から九カ月間(上) [かけはし]         
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投稿者 なるほど 日時 2004 年 1 月 25 日 16:26:24:dfhdU2/i2Qkk2
 

かけはし2004.01.12号

 昨年一月、ブラジルの労働者民衆と全世界の人びとの期待と注目の中で、PT(労働者党)を中心とするルラ政権が誕生した。ルラ政権は、前政権の経済政策を踏襲した新自由主義路線を推進しており、労働者民衆との対立も深まっている。この中で十二月には第四インター派のPT左派上院議員が党指導部主流派によって除名された(本紙前号)。以下の論議は、PT社会主義的民主主義潮流の指導的同志によるルラ政権の歩みの分析である。


 ルイス・イナシオ・ダシルバ・ルラ(「ルラ」はニックネーム)政権は、政権の座についてからの九カ月間に、矛盾と、多くの面で驚くべき性格を明らかにしている。
 最大の驚きは、PTが反対していた前政権との大いなる継続性を明らかにした経済政策と、議会的政治的支持基盤としてこの国の右翼勢力のほとんどすべてが結集したことである(注1)。実際、右翼側ではフェルナンド・エンリケ・カルドゾ政権の基軸を形成していたブラジル社会民主党(PSDB)と自由戦線党(PFL)が公式には野党であり続けている。しかし、彼らもいくつかの重要な政策、たとえば年金改革では政権のパートナーになっている。
 これはPSDBやPFLの側に一貫性がないことを示しているのではない。ルラ政権が提案した年金改革案が、両党が提案し主としてPTの反対のために実施できなかった提案の一般路線に従っているからである。この問題では、ルラ政権は社会運動のセクターからの反対に直面し、議会的レベルでは主としてPT左派と他の左翼政党の一部の反対に直面した。
 他方では、ルラ政権は、国際関係、農業改革、その他の分野ではPTの歴史的綱領との一貫性を維持している。これらの分野では前政権の政策からの重要な変化があった。しかし、これまで政権がとってきた全般的な経済的政治的選択によって、彼らは困難に直面している。
 大きな矛盾が存在しているので、この過程のまともなバランスシートを描くのは難しいことである。しかし、いずれにせよ、それを試みることは重要である。政権の全体的な政策の可能性を評価する上でのそれらの重みから考えて、採用された一般的政治的オプションと経済政策の評価から始めるのが良いだろう。政権中枢部は、国内的にせよ国際的にせよ、支配階級との全面的な対決を避けることを選んでいる。このこと以上に、彼らは支配階級との一定の広範な合意を追求している。政権の政治的基軸はPTの歴史的政治的敵との同盟を拡大することに置かれ、一般に人民、特に社会的運動に対しては忍耐を説教している。
 これは、二〇〇一年十二月にPTの全国会議で承認された決議で、綱領の「民主主義的基軸」として定義されていることから離れることであった。二〇〇二年十二月の決議は「民主主義的基軸」として、支配階級の抵抗に対抗する処置を可能にするために社会的動員に依拠すること、そして参加型民主主義のメカニズムを実施する方向に進むこと、を規定したはずである。実際には確かに、この方向への最初のステップのとなりうる政府や社会的運動の側からのイニシアティブは存在したし、いくつかの分野では社会との対話のチャンネルを開く相談や討論の過程も存在したが、それは支配的な傾向ではなかった。実際、政府は中心的な選択、特に経済政策に関しては、社会運動や社会とのどんなタイプの討論にせよ討論のテーマとして提出したことはない。
 マクロ経済政策の特徴は継続性であり、別の政策への転換を模索した兆候はない。政府は緊縮財政に努力し(主として「一時財政黒字」(注2)を拡大するため)、保守的政策(高金利政策)によってインフレと闘い、金融市場の信頼維持に努めた。この方向性はブラジル通貨「レアル」の減価を押しとどめることに役立ち(レアルの価値は大幅に回復した)、インフレ率を急低下させた。
 通貨危機は当面回避された。しかし、これは本質的には、政府が主張しているようなブラジル経済に対する「信頼」によるものではない。それは投機的資本の大量の流入によるものであり、最近数カ月の全般的国際的趨勢とブラジルの高金利がもたらしたものである。
 したがって、これらの結果は非常に不安定なものであり、実際にはブラジル経済の外部依存性はまったく弱まってはいない。他方では、これらの政策の重大な否定的結果を指摘しておくことも重要である。すなわち、深刻な不況(二〇〇三年末の結果は、良くても経済的停滞となるだろう)、失業の増大(八月には新記録を記録した)、労働者と社会全体の実質所得の落ち込み(種々の公表されている統計がこれらの事実を証明している)である。さらに、一次財政黒字の拡大と高金利の組み合わせは、金融資産の所有者、言い換えると社会の裕福な部分への、富の移転を暗黙に意味する。人口全体の所得は落ち込み、悪いことにその所得はますます集中化しているのである。最後に、緊縮財政政策は政府のあらゆる政策に大きな制約を課している。
 このマクロ経済政策の否定的結果を克服することは困難である。一次財政黒字を維持することはルラ大統領の任期いっぱい続くと予想され、これによって公共投資の能力が損なわれる。社会の所得の落ち込みは民間投資を制約する。したがって、金利が低下したとしても(インフレ率が低下すると金利が低下することは、政権が従っているマネタリスト的政策の論理の一部であり、それ自体は経済政策の変更を意味しない)、経済の回復は限られたものになり、外部的脆弱性が続くために外部の脅威に常に脅かされ続けるだろう。
 基本的には採用された経済政策のために、特に市場の「信頼」を得ることを追求する政策の結果として、年金改革は特に否定的な影響を受けた。政府の計画は公務員とCUT(統一労組センター)の反対に遭遇した。つまり、ルラの勝利に決定的な役割を果たした社会的勢力の反対に遭遇した。PT内部と特にその活動的な社会的基盤の中に大きな不満を引き起こした。このことが計画の部分的変更をもたらし、ダメージをやわらげたが、その性格を変えるには不十分なものであった(注3)。

 これまでのルラ政権の最も積極的な側面は、外交政策である。米国のイラク攻撃に反対したことや独立した外交政策の確立の方向に踏み出したことにとどまらず、南米諸国の団結の構築の試みが行われ、カンクンにおける世界貿易機関(WTO)会議で見られたように、帝国主義的中心部の利益に反対するいわゆる「開発途上国」の統一戦線を構築する試みが行われた。また、ブラジルはアメリカ自由貿易地域に関する米国の立場に反対している。この問題に関する交渉は継続中であるが、ルラ政権はFTAAの範囲の縮小を追求してきた。すなわち、貿易規制の範囲を超えるテーマ(政府購入や投資の規制)を除外した「FTAAライト」なら最終的に受け入れることができると主張し、米国に対して重要な譲歩を要求してきた。しかし、外部的圧力に対するブラジルの脆弱性や政権内部の対立の存在を考えれば、この過程の結果がどうなるかは明らかではない。したがって、FTAA全体を拒否することを目的とした反FTAA南米大陸運動が提起した国民投票の提案は、緊急の重要性を持っている。
 外務省の政策とは反対の方向で、財務省が行っている国際関係の側面(IMFとの関係など)を指摘しておく必要がある。ここでは保守的立場が優勢である。このことが最近逆説的な状況をもたらした。アルゼンチン大統領がIMFの圧力に抵抗して協定の交渉を行った際には、他のラテンアメリカ諸国の支持を得たし、米国さえもこれを支持したが、ルラは支持しなかった。キルチネル(アルゼンチン大統領)はブラジル政府のこのレベルにおける極端な卑屈さに不満を抱いている、と新聞は暴露しているが、ありそうなことである。ルラは、IMFの過度の干渉を受け入れたという批判を認めず、一次財政黒字をGDPの四・二五%以上とするなどの異論の多いオプションは圧力とは無関係にブラジル政府が決定した、と疑わしい主張をしている。
 実際、経済政策の疑わしい決定の多くはIMFの圧力の結果ではないと思われる。たとえば、現在IMFとの新しい協定が有益かどうかに関する議論が存在し、政府の多くの部門は、それは条件の交渉で大きな柔軟性が得られるかどうかにかかっていると言っている。彼らは一次財政黒字の計算方法を変更し、公共投資や社会的支出を増やせるようにすることを望んでいる(たとえば、土地改革の枠組の中で再分配される土地に対して農業債券で支払うこと。現在の計算方法では、農業債券は内部負債として計算され、一次財政黒字を減少させる)。この論争においては、財務大臣パロッシは、たとえIMFが受け入れるとしても大きな柔軟性に対してはすべて反対している。したがって、ブラジルの経済政策を決定している内部グループは、IMFよりも正統派的で保守的であることを示している。
 経済政策の保守主義は農業改革にとって大きな障害になっている。この問題に関して、農業開発省(注4)は政権の当初から農村社会運動との建設的関係を確立し、社会との広範な対話を追及してきた。
 農業改革の新しい概念、家族的および共同体的農業の概念が展開され、経済および社会の変革のプロジェクトと統合されつつある。このことは、前政権の下で行われた土地なき農民の定住地に援助し、市民権を保証し生産性の崩壊を克服することに直接関係する。小規模生産者の収穫に対して資金を供給し、定住地が経済的に生きていけるようにするオルタナティブを構築することは、この過程の最初の具体的結果である。さらに政府は、占拠中の約六万家族をすぐに定住させることを約束した。最後に、農業開発省は、大土地所有者の私兵による犯罪的武装抵抗を威圧して屈服させる決意を示した。武装抵抗の責任者を処罰し、彼らがブラジルの農村地帯にラティフンディア国家を形成することを防止するためにただちに断固たる処置をとることに賛成している。
 しかし、これらの政策はすべて、政権が選択した経済政策による財政的制約にぶつかっている。たとえば、大土地所有者に支払う資金がなければ(注5)、六万家族を定住させるという約束を果たすことはできない(注6)。他の場合と同様、この例もやはり、社会的変革と前政権から受け継いだ経済モデルの基本的側面を維持する路線との間の矛盾を示すものである。
 もうひとつの論争の的になっている問題が、経済部門で支配的な考え方と政府の他の部門との間で対立を引き起こしている。すなわち、遺伝子組み換え作物(GMO)の問題である。農業省を始めとする政権の保守的部門は、大農業生産者と結びついており、遺伝子組み換え作物の使用を防衛している(これはこれまでPT全体が防衛してきた政策に反する)。環境省、農業開発省、環境保護運動、農村地帯の社会的運動(特にMST[土地なき農民の運動])、カトリックおよびプロテスタント教会の進歩的部分、CUT労働組合連合およびPTの圧倒的多数が、すべて反対している。政府は最終的に、二〇〇四年まで遺伝子組み換え大豆の耕作を認める地方的処置を実施した(政権当初に、不法に作付けされた遺伝子組み換え大豆の収穫物の販売を認めた際に採用された手続きが繰り返された)。この処置は、進歩的社会運動の目から見て、政権への不信を増大させるものであった。大会でのこの問題に関する投票は、政権の立場とPTの諸部分の立場の間の重要な対決点となるだろう。
 政権のこの最初の時期は、政権内部、および政権と選挙で政権を成立させた社会的諸勢力の間の、対立の力学を明らかにした。矛盾はますますはっきりしている。ルラ政権は、カンクンでのWTO会議の場合のように、進歩的運動のパートナーである場合もあり得るが、年金改革や遺伝子組み換え作物の問題の場合のように、進歩的運動に明確に反対する場合もあり得る。あるいは、農業改革の場合のように、財政的制約と経済政策の保守主義のために自らの約束の実行に困難を抱え、農村の社会的運動が要求を行うのに実力に訴えなければならないような場合もある。
 このように、対立の中心にあるのは、外部的脆弱性を永続させ新自由主義的論理に支配された調整政策を強制している経済政策である。これまでのところ、政権の基調を定めているのはこの政策である。
 この状況の中で、社会的運動は重大な変化を強いられている。大統領選挙で新自由主義派が敗北し、ルラが勝利したことは、労働組合と民衆運動の勝利であり、組織化と動員の可能性を活性化させた。他方では、ルラ政権は、運動にとって、とりわけ失業者にとって、社会的経済的条件を悪化させつづけ、深刻化させた。政治的条件は変化したが、ルラ政権が社会的運動の希望と衝突するような重要な方針を防衛し実施しているという事実が、状況を一段と複雑にしている。政権に期待を抱いていた段階から、種々の政策を批判し、政府に圧力をかけ政府の選択に反対する目的で団結し動員する段階へと移り変わろうとしている。
 社会運動(CUT、MST、世界女性行進、UNE学生組合、その他)の調整組織が最近設立されたことは、この方向への重要な一歩である。この調整組織は、広範な団結した民衆動員だけが労働階級の勝利を保証することができるという考え方を基礎にして設立された。参加諸運動の大部分は、FTAA反対キャンペーンですでにともに活動した経験を持っている。このことは、彼らがルラ政権の経済政策に対して批判的観点を持っていることを意味している。最初の共同行動のメインテーマを仕事を要求する運動とすることが決定された。理由は、この闘いが現在動員の大きな可能性を持っており、大きな団結が可能になるからである。この調整組織は、農業改革、国の主権、国家の社会的役割の回復の問題を含む広範な綱領を持っている。
 したがって、政府との関係で自分たちの役割を再定義することを軸として、社会的運動の重要な政治化が進行中なのである。社会の方向と政府の対立の中での基本的主体として社会的運動を強化する方向でこの過程の発展を助力することは、今日、ブラジル左翼の主要任務のひとつである。実際、政権内部の不利な力関係は、オルタナティブの政策のセットを防衛する強力な社会的動員によってのみ変えることができる。
(つづく)
(「インターナショナルビューポイント」03年11月号)

(原注)
(1)「ルラ政権のふたつのたましい」(ジョアオ・マチャド)、本紙03年4月21日〜5月19日号「ルラ政権―変革への大衆的熱望と右からの重圧」を参照。
(2)公的債務の利払い前の財政黒字。
(3)上院での審議に基づいて原案が修正される可能性はあるが、大きな変更は予想されない。
(4)農業開発省は、農業改革省とも呼ばれており、その長のミゲル・ロセットはリオグランデ・ド・スル州の元副知事で、PT社会主義的民主主義派の支持者である。この省は農業省とは独立しており、農業省は大農園主寄りの人々が支配している。ブラジル政府は議会に対して責任を持たず、閣議は開催せず、大臣は大統領に対して直接責任を持つ。
(5)前政権から受け継いだ法律は、地主に対する現金または農業債券による補償を伴う「非生産的」土地収容の可能性を想定している。IMFとの協定には、財政一次黒字がGDPの四・二五%以上であることとその計算方法が規定されている。この計算方法によれは、これらの債券は計算に含まれ、農業開発省の能力を制限し、大土地所有者を保護する傾向を持つ。
(6)ここには管理も問題も存在する。二〇〇三年九月始めのINCRA(全国入植および農業改革機関、農業改革を直接担当する農業開発省の機関)総裁の交代後、農業改革の受益者たちの定住地の設定が加速された。六万家族という数字は二〇〇四年始めには達成される可能性がある。これは農業改革の過程が容易であることを意味しているわけではない。農業開発省が二〇〇四年財政年度に新たに六万家族を定住させる手だてを配分するかどうかは確かでないし、この数字自体が必要性との関係から見れば控えめなものである。数十万家族が土地を占拠し、定住できる日を待っている。

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