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防衛計画の危険な見直し [ビル・トッテン]
http://www.asyura2.com/0401/bd33/msg/438.html
投稿者 なるほど 日時 2004 年 1 月 29 日 11:40:45:dfhdU2/i2Qkk2
 

H16/01/29

 日本に自衛隊が発足して今年で五十年になる。この国家の防衛力を見直す「防衛計画の大綱」見直し案の基本構想の概要が明らかにされた。それによると、これまでの憲法第九条に基づく「専守防衛」から大きく転換し、陸上自衛隊に海外派遣を指揮する司令部を新設する、海上自衛隊は日本近海での対潜水艦作戦中心の活動であったものを、長期間、広範囲に世界各地の海洋まで展開する能力を追求する、またミサイル防衛運用のため、陸海空各自衛隊を統合した独立部隊を常設するという案も出されているという。

 これはまさに米軍とともに世界のどこでも戦争にいけるようにするための構想ではないか。これを読んだとき私は、あまりにも冷笑的かもしれないが、アメリカが他の国で行っている戦争に出て行ってアメリカ兵の代わりとなるよう、危険な場所により多くの自衛隊員を派遣するための見直しだと解釈した。


米の支援を充実
 ブッシュ大統領のアメリカはすでに世界を力で支配する帝国のようにふるまっている。日本が防衛計画を見直すのも、かつてローマ帝国が、自分たちが征服し属国にした国の軍隊を自分たちの戦いに参戦させることが得策だと早くから考えていたのにならって、アメリカが日本に要求したのであろう。アメリカは常に力こそ正義なり(マイト・イズ・ライト)の国なのである。

 日本政府は二〇〇四年、北朝鮮の弾道ミサイルに備えるという理由からミサイル防衛システムの実践配備費千六十八億円を計上した。自衛隊のイラク派兵に百三十五億円、米英軍のイラク軍事占領の支援に千百八十八億円を加えても防衛関係費は昨年より減少しているが、その内容は日本国の防衛というよりもアメリカ支援を充実させるための施策が並ぶ。小泉首相は、戦争で経済を維持させようとするアメリカにできる限りの協力をしているのである。アメリカのオニール前財務長官が、ブッシュ政権が二〇〇一年一月の発足直後からイラク・フセイン政権の打倒を検討していたと暴露したことも軍事社会主義アメリカを裏付ける一つの証拠である。


軍需産業だけ利益
 ブッシュ政権は富裕層に減税を行って財政赤字を悪化させながら軍事費を増大させている。景気回復にむけて軍事費ではなく公共投資や教育、健康保険の拡充に投資をすれば経済も回復し雇用も増えるであろう。しかしブッシュの政策で利益を得るのはごく一部の企業、具体的にはブッシュ政権に選挙資金を提供している軍需産業だけである。

 米政府はテロとの戦い、サダムフセインとの戦いを強調して愛国心をあおり、有事体制をとった。二〇〇三年第2四半期のGDP成長率3・3%に貢献したのは軍事支出だが、その中でも大きな割合を占めたのはベクテルやハリバートンといった民間企業が受注したイラク復興の大規模事業であった。またカリフォルニアのノースロップ・グラマン社は米国防総省からミサイル防衛プログラムに四十億ドルの契約を受注した。

 日本政府も北朝鮮の脅威を煽ってミサイル防衛に一千億円の予算をとったが、配備するまでには数兆円がかかるといわれている。また石破防衛庁長官の最近の発言をみれば、アメリカとミサイル防衛の共同研究をするだけでなく欧州やロシアとも共同で兵器開発をしたい、古い自衛艦を東南アジアに輸出したい、そのために武器輸出三原則を見直したい、というもので、これが米政府と米軍需産業、さらには日本国内の防衛産業に利益を生み出す政策以外のなにものでもないことは明らかだ。


長期的利益はなし
 短期的に軍事費で経済を刺激しても長くは続かない。レーガンは「悪の帝国」と中米の共産主義の脅威を理由に、軍事支出を増やし社会保障費を削減した。一九八四年、米政府の財政赤字はGDPの6・2%であったにもかかわらず、同年の経済成長率は7%になりレーガンは再選された。再選を狙うブッシュはレーガンを真似ているのであろうが、軍事費は社会インフラやその他の公共投資と違い長期的利益はもたらさない短期的な支出にすぎない。

H16/01/29

 この軍事ケインズ政策を理論付けたのは、一九四三年、ポーランドの経済学者カレツキーである。資本家や政治家は公共投資によって完全雇用を達成することは長期的に労働者や労働組合に過度の力を与えることになるとして恐れ、それゆえに古典的なケインズ政策には反対する傾向がある。軍事ケインズ政策はそれに代わる政策である。

 今、アメリカがこのカレツキーの理論を採用し、日本の政府与党は景気回復が見込めない日本にもそれを取り入れようしている。そのためにこれからますます北朝鮮の脅威は宣伝され、憲法改正が必須となるだろう。当時、カレツキーの軍事ケインズ政策をとった政権がナチスドイツであったことはここで言うまでもないだろう。しかしナチスも日本も、平和を望まない指導者を選んだのは国民だということは忘れてはならない。(アシスト代表取締役)

http://www.nnn.co.jp/essay/tisin/tisin0401.html#23

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