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「荷電粒子」さんへ、「フランコ、ETA、オプス・デイ」に関して、稿を改めまして、ご返答いたします
http://www.asyura2.com/0401/bd33/msg/494.html
投稿者 バルセロナより愛を込めて 日時 2004 年 2 月 02 日 08:04:36:SO0fHq1bYvRzo
 

「荷電粒子」さんへ、「フランコ、ETA、オプス・デイ」に関して、稿を改めまして、ご返答いたします

ご質問
http://www.asyura2.com/0401/bd33/msg/449.html
については、現在の私の感想レベルに過ぎないのですが、とりあえずご返答しておきます。ご参考になるかどうか分かりませんけど。

私が荷電粒子さんに「教える」など、とんでもないんで、実は本当に知らないことだらけなのです。私は8年前に浮き草が流れ着くようにバルセロナに住み着いた者で、最初の4,5年は何とか言葉が通じるようになるので精一杯、それからようやく新聞やテレビ報道がおよそ分かるようになり、昨年の夏にやっとコンピューターを買ってインターネットに接続して豊富な情報にありつけるようになった次第で、今ごろになってスペイン現代史を調べてみて「えっ、こんなことだったのか」と驚いているような状態です。

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@フランコ政権を、第二次大戦後も(本人が死亡するまで)長続きさせた最大の原因の功労者が「冷戦」と「オプス・デイ」だとして、フランコはフランコなりに「西欧近代」の本質を見抜いて「オプス・デイ」を拡大強化した?
変な例えながら、「毒をもって毒を制す」ように「オプス・デイ」を使って、ピレネー以北の欧州からの影響力を押さえた?

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フランコ政権が長続きした原因には、「フランコの個人的資質」というもう一つの原因があったと思っています。

彼はスペイン北西部のガリシアの生まれですが、ガリシアというと「灼熱の太陽」というスペインの一般的イメージとは正反対の、1年のうち半分が雨マーク、という陰気な場所です。もし南部のアンダルシアや中央部のカスティーリャ・イ・ラ・マンチャなどの出身であれば「極端から極端に突っ走ってどこに吹っ飛ぶか分からない」人間だったでしょうが、ガリシア人は「粘り強くバランス感覚に富みじっくりと物事を進める」、悪く言うと「はっきり態度を決めずネチネチといやらしい」タイプです。

フランコはその典型的なガリシア人で、彼の下には大きく4つの勢力、軍部、ファランヘ党(後の国民連合→国民党)、カトリック勢力、王党派があったのですが、彼はそれらの力のバランスを実にうまく取っていました。どこかの力が強くなりそうになると押さえにかかり弱くなりそうなら補助し、二つが勢力争いをすると「喧嘩両成敗」でどちらのトップも処分し誰の「勝ち」にもさせない、といった具合です。こうやってフランコは、一つの方向に固まってバランスを失って独裁政権が内部崩壊することを防いでいたわけです。

ただフランコが病弱となった晩年には明らかにオプス・デイに片寄り、彼の後継者として指名されたカレロ・ブランコはオプス・デイの重要なメンバーでした。ただこれは1973年に、カレロ・ブランコが道路の下に仕掛けられたETAの爆弾によって車ごと吹き飛ばされたことで、終わりました。(ETAに感謝!)

また、確かにフランコは、ブルジョア的自由主義から共産主義に至るまで、西欧近代を毛嫌いしていました。ただ彼がカトリックに帰依したのは熱心な信徒であった妻の影響で、軍人の時代には全く関心が無かったようです。政権掌握後、フランコが「スペインはカトリックの伝統に基づく王国」と規定したのが1947年、ローマ教皇ピウス12世と和解協定を結んだのが1953年ですから、オプス・デイが政権中央部で大きな勢力になったのもこの間でしょう。

オプス・デイは、超保守的カトリックとしての「反近代」的な性格と同時に、「手段」としての「近代」に精通している、という二つの面をあわせ持っています。いわば「水と油」の両方の性格をかね備えているわけで、1960年代以降に急激に「西欧」化していく中でスペインの「独自性」を維持していく上には欠かせない存在だったと思います。そしてそれはバランス感覚に富んだフランコにとって、最も信頼の置ける集団だった、と言えるでしょう。「毒をもって毒を制する」と言えるかどうか分かりませんが、確かに「西欧近代」を換骨奪胎した「スペイン的近代」を作り上げるには、うってつけだったと言えます。

またフランコは厳しいカトリック的倫理観の持ち主で、特に売春やポルノ、同性愛などの性的堕落や麻薬などを、「西欧的悪習」として極端に嫌ったことは事実で、そのために同様に独裁国であった隣国のポルトガルとは異なり、スペインにはマフィア組織がついに育たなかった、といえます。(ただし利権あさりで私服を肥やす上流階級のマフィアはごろごろいましたが。)もちろんこれにもオプス・デイの影響があるはずです。

オプス・デイはオプス・デイで、フランコ政権末期からは、スペイン本国よりもバチカンや中南米に力を注ぎ、CIAと手を結んで左翼勢力への弾圧に関与すると同時にバチカン内での敵対勢力を駆逐し、レーガンやブッシュ(父)に取り付きアメリカ社会自体にも食らいこんでいくことになります。アメリカ内の反オプス・デイ運動については次のサイトが詳しいでしょう。(英語です。)

http://www.odan.org/


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A上記@で、フランコがアンチ「西欧近代」主義者だとすれば、かつてバスク分離運動を背後で支援していたのは、「西欧近代」主義者であるイギリスやフランスの可能性も有り?

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アメリカの援助が露骨になってくる前の1950年台までは、フランスに関してはそのようなこともありえたと思います。もちろんETA(その前身のEKIN)に支援したという明らかな証拠は表に出ていませんが、フランスにはスペイン共和国だけでなくバスクやカタルーニャの「亡命政権」、スペインの社会党や共産党組織が有りましたし、ETAに関しても国家機関は「見てみぬふりをする」、そして指名手配された幹部のアルジェリアへの亡命を助ける民間組織があったことも明らかです。また国民の(特に左翼勢力の)心情的支援も強かったようです。ただバスク民族はフランスにも住んでおりフランスからの独立をも叫んでいますから、当局としては、泳がせながらその牙をスペインにだけ向けさせていた、ということは言えます。

ただイギリスに関しては、私には全くわかりません。IRAに悩むイギリス当局が、情報は仕入れていたにしても、ETAに手を貸した、とも思えませんが。

なお、ETAに関しての日本語の情報では、次のサイトをご参照ください。

http://www.diplo.jp/articles03/0305-4.html
http://www.w-digest.com/mm/mm0002/bk/000020.html


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B1996年に社会労働者党政権時代の幕を引いた、バスク分離主義者27名の暗殺事件への、ゴンザレス首相の関与の真相は?このスキャンダルを調査した裁判官はファランヘ系?

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「真相」と言われると・・・、ムムッ・・・。「闇の中」といったほうが早いのでしょうが、私の個人的な感想としては、ゴンサレスの関与は間違いない、と思っていますし、多くのスペインのジャーナリストや政治関係者たちも同様でしょう。ETAの27名の暗殺はGALという民間極右組織が行った、とされていますが、その中に警察官が加わっていたのは事実ですし、国家中央情報局(CNI)が裏で操っていたことも確実で、ゴンサレス政権の閣僚の中では、結局は当時の内務大臣(国内治安担当)のバリオヌエボだけが詰め腹を切らされて10年の懲役刑に処せられました。この件に関しての日本語の情報では、次のサイトをご参照ください。(すでにご覧かも知れませんが。)

http://www2.odn.ne.jp/~cae02800/spain/intell.htm

また1996年の総選挙で社会党(正式には社会労働者党)が敗北した原因としては、もちろんこのスキャンダルが「とどめの一発」になったのですが、それ以前に社会党の金権・腐敗体質、数々の汚職事件、ヨーロッパの不景気に足を引っ張られての経済政策の失敗により、すでにヨレヨレの「死に体」になっていたことが言えます。

このスキャンダルを調査したのはバルタサル・ガルソンという最高裁判事です。彼はファランヘ系統ではなくオプス・デイとも無関係のようで、筋としては実は社会党系なのです。このオッサン、とんでもない「食わせモノ」で、1993年の第3次ゴンサレス内閣発足時に、自分が法務大臣(果ては首相?)になりたくて裏工作をしたのに、ゴンサレスに冷たくあしらわれ、その後すぐに法曹界に戻ってGALとETAの「汚い戦争」の調査を始め、社会党政権に引導を渡したのです。

もちろんアスナールとしては「大感謝」のはずなのですが、しかしあまり中央情報局(CNI)と首相府の密接な関係を明らかにされても、今度は彼自身が困ることになり、ゴンサレスの罪があいまいにされてしまったのは、社会党筋のもみ消し工作だけではなくアスナール筋からの力もあるのではないか、と思っています。その証拠に、それ以降国民党はこの件を積極的につつこうとはしていません。また首相府とCNIとの関係については私の戦争番への1月30日の投稿「スペイン総選挙情報:選挙戦第1ラウンド『ETA & ロリコン町長』」もご参考になれます。

http://www.asyura2.com/0401/war47/msg/371.html


このガルソンという最高裁判事(スペインでは事件の調査だけでなく逮捕を決定する権力を持つ)は、スペイン人にはありがちなのですが、極端に異なった2面性を実に派手派手しく発揮してくれます。

例えば、1998年にロンドンに病気治療のために訪れた「チリのフランコ」ピノチェットに逮捕状を発行したのも彼です。この時には、アスナールはテレビで毎日苦虫をつぶしたような顔でブツブツとわけのわからぬ文句を小声でつぶやいていました。さらにガルソンはこの間に、キッシンジャーがロンドンを訪れた際に、イギリスの最高法院に「ピノチェットの悪事に関してキッシンジャーを証人として喚問する」ように要請した、といわれていますが、これは残念ながら実現しませんでした。またこの件でオプス・デイからは相当に憎まれているようです。

その一方で、バスク民族主義の急進派への弾圧を猛烈な勢いで進め、ETAをほぼ壊滅状態に追い込んだのはまさに彼の力で、その意味ではアスナールも頭が上がらないわけです。そして昨年はアル・ジャジーラのタイシル・アロニ記者をアル・カイダの関係者として逮捕しました。そのくせ今年に入っては「イラクで占領軍を攻撃している者たちは『抵抗勢力』と呼ぶべきで『テロリスト』はイラク国民を襲う者たちを指して言うべきだ」と、聞き方によってはアメリカに対する面当てともとれる発言をしています。

なんともスタンドプレーの好きな御仁で、スペインでのテロをほぼ解決したことでノーベル平和賞候補にもなったりした(!)のですが、ここまで派手に存在感を見せつける判事は世界でも珍しいと思います。これでは疎ましく思う勢力があったとしても、うかつには手を出せないでしょう。


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Cピレネー以北の欧州勢力を押さえようとする点で、現在のアスナール国民党政権が米国ブッシュと利害一致しているとすれば、上記@と同様の理由で、「オプス・デイ」が威力を発揮する?

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この点に関しては、私にはもう一つ読めません。というのは、オプス・デイ=バチカンと、アメリカ資本(ロックフェラーなど)や欧州ユダヤ系資本(ロスチャイルド)との関係が全く明らかではないからです。もちろん陰謀論的に言うならば、これらの財閥もバチカンもフリーメーソンの上部構造の一角を形作っており、イルミナティに直結している、ということになり、確かに簡単に筋が通るのですが、私はこのような見方は、当たっているかどうかは別にしても、あまり好きではありません。

いくつか言えることといえば、まず、ル・モンド・ディプロマティークの記事にあるように、欧州で急激に(潜在的に進行していたことが表面化してきただけでしょうが)保守派カトリック勢力が台頭してきており、同時に反イスラエル(潜在的には反ユダヤ)機運や反イスラム(フランスの公立学校での被り物の禁止など)機運も不気味に広がってきていることです。またオプス・デイのいつものやり口、最初はそっと寄生し宿主が気づかないうちに本体を乗っ取っていく、という方向が欧州全体に広がってきているのではないか、という感想を持っています。

ですから「ピレネー以北の欧州勢力を抑える」というよりは、アスナールの後継者ラホイはむしろヨーロッパに打って出る方向に進むのではないか、と思います。さらにNATOの欧州代表は同じスペインのソラナで、NATO軍とドイツ・フランスが画策する「EU軍」の関係がどうなるのか、注目されます。また私が『イベリア半島「百鬼昼行図」:その6』でも申し上げましたように、今後スペインがアメリカと欧州の「橋渡し役」を務めようとしているようですし、その間に中南米(恐らくベネズエラとキューバ)でオプス・デイ=バチカンが再びアメリカと組んで一騒ぎ起こすのではないか、とにらんでいます。そしてその前にアメリカのカトリック票をまとめてブッシュにプレゼントするわけです。(前の選挙でもフロリダのカトリック票はブッシュにとっては重かったと思います。)カトリックは基本的にリベラルの思想を憎んでいますから。

以上、何かの参考にしてください。私も多くの人々に教えてもらいながら、もっともっと勉強しなければなりません。では、また。


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