★阿修羅♪ 現在地 HOME > 掲示板 > 議論16 > 357.html
 ★阿修羅♪
次へ 前へ
ちはやふる感想(2)
http://www.asyura2.com/0401/dispute16/msg/357.html
投稿者 愚民党 日時 2004 年 1 月 19 日 00:30:52:ogcGl0q1DMbpk
 

(回答先: ちはやふる感想(1) 投稿者 愚民党 日時 2004 年 1 月 19 日 00:26:44)

「ちはやふる」感想ノート・演劇の時間 2
塚原勝美
                
 ここでは天文館企画として上演された小松杏里/作/演出による「ちはやふる」の
劇的方法と劇場の外と内部としての演劇の時間を、廃人ならびに、狂気者である、
私の妄想のノートを送信していきたい。あらかじめ、ノートと言う方法をとったの
は、引用による構成をとっていきたいからである。「ちはやふる」においては、多
様な装置と方法が出現していた。まず古代言語としての上代語での上演。そして、
コンピューター・グラフィックの活用。「ちはやふる」は古事記・日本書紀神話を
めぐる時間であったと同時に、現在の先端的な時間であったのである。
 そのとき私は胃袋がぐうぐう鳴っていた。私にとって実験劇は目の欲望を喚起し
てくれるのではない。胃袋の欲望を喚起してくれるのである。

-------------------------------------------------------------------------
   ここまでの考察は、次のことを示している。電子メディアは、通常単なる
  事物であると考えられているが、実は、一種の他者として、少なくても萌芽
  的な他者として、われわれに対じしているのだ、と。われわれは電子メディア
  の使用に没入しているとき、メディアに対して、端的な事物に向かうように
  接することはむずかしく、それが、さながら「魂」の原始的な形態であるかの
  ように接してしまうのである。こうして生じてしまうのが、電子メディアの
  メッセージ性である。
       「メディア的変容・メッセージとマッサージ」 大沢真幸
        InteCommunication No2 NTT出版 1992,10,1
------------------------------------------------------------------------

 ここで大沢真幸氏が言う他者と「魂」とは同義ではないかと思える。それは、内
面で対話せざるを得ない、もうひとりの自己存在であろう。「ちはやふる」に電子
メディア形態を取り込んだことは、神話世界の舞台装置として、もっとも、ふさわ
しかったのである。電子メディアも原初的な他者へと帰還しているからだろう。

 小松杏里はイザナギがイザナミを追う黄泉の国のイメージや、火のイメージ、お
よびタヨタマビメが産屋でサメに変身するイメージを、CGと何台ものモニターを
つかい現出させた。その形態こそ原初としての時間を異質にさせたのである。いや
あるいは、テレビ・モニターこそが、すでに映像の始まりであったのだろう。

 わたしが始めてテレビ・モニターを見たのは、小学生1年の入学式、4月10日
であった。1959年である。その日は現天皇と皇后の結婚式パレードであった。
母は町の女土方として働いていたので、叔母が入学式のつきそいとなってくれた。
帰り道、叔母は村でテレビを買った豪農の家に、私を連れて立ち寄った。めずらし
いテレビというものをお前に見せてやるから、いい子にしているんだよ、と叔母は
私に言い聞かせ、その大きな豪農の家に入った。

 暗い座敷にはんてんを着た女たちが3人ほどいて、叔母の着物はよそゆきだった。
私は口をおおきく開けてテレビを眺めていた。群衆の歓声、日の丸が全体に揺れて
いる。祝賀パレードの馬車は進んでいく。にこやかな笑顔で手をふる、幸福に満ち
溢れた顔が流れていく。私にとってテレビの遭遇が大王神話へのアリとなった記念
すべき日だったのである。それから、私は口を大きく開けるのが癖になってしまっ
た。小学校の旅行の記念写真では、いつも何故か私一人が、アホ面のごとく、大き
く口を開けているのである。おそらく私はあのテレビ初体験によって、映像という
ものに対して畏怖をもったのであろう。だから写真機の前では無防備になってしま
うのである。

 戦前のラジオが大王神話のメディア装置でり、敗戦の8月15日にその完成をな
しとげたように、1959年からはテレビがその位置に座ったのである。上座へと。
 ゆえに古事記・日本書紀の神話世界の舞台装置にテレビ・モニターは必要として
の武器となったのであろう。それは大王部族の結婚フィーバーに全体として突入す
る、現在の時間なのである。われわれの内面はテレビ・モニターなのである。

--------------------------------------------------------------------------
ところで、今回の不況は、石油危機や円高などの外的ショックによるものでなく
長期の好況やバブルによって行き過ぎた経済が調整されることによって生じたもの
で、いわば経済の内発的要因によってもたらされたものだ。外的ショックへの対応
は1970年代以後しばしば経験してきた日本経済も、内生的な変動に対してはと
まどいがみられた。
   大予測(1993年版)日本経済  長銀総合研究所 KKベストセラーズ
--------------------------------------------------------------------------

 自己省察ができぬ現象として、今日の精神なきある全体の映像のフィーバーは、
乗り移り現象として「けだるい午後のテレビ・モニター」を、つけだるにする。
 日本の権威とは、いかに大王部族の近いところの場所に席をしめているかに、あ
るのだが、そこにはもはや死んだ内容と実体しかないことを、かれらシステム成員
たちは、いまだ自覚できぬ破裂した見せかけのユニットとしてある。
 かくしてテレビ・モニターは、主体なき現象乗り移りを全体化する、われわれ、
ロブスターを喰わされ、日々国家生活の家畜として生成している部屋から、劇場へ
と奪還されるべきなのである。もはや今日、生活の王様として場所を支配している
電器具・家具は、再度、演劇によってしか、対象化はできないのであろう。

 こうしたモノたちを小松杏里と「ちはやふる」スタッフは、奪還したのであろう。
 たしかに美術はこれまでも、これら生活器具を解体し異化してきた。ところが、
演劇は舞台に再度それらを再編することによって、物語の時間に組織するのである。
こうしてモノは人間との交換関係によって、いきいきと空間で飛躍する。舞台装置
とは演劇の内発的欲望によって、生成する。演劇は美術を空間で生成させるのであ
る。こうして1993年の演劇は、外的要因によって生成してきた劇場の外部に、
ただよう内発的な戦略なき日本経済の気分を挑発するのであろう。

 今年の年賀状に登場した鶏は、国家生活の家畜のシンボルであったことを、よう
やく、私は、「ちはやふる」舞台のテレビ・モノターによって、教えられた。それ
は一方的通行としてこの生活空間に飛ばされている、テレビ電波とはなんであろう
と、考えた。それはおそらく共同体に基礎をおく、公共性とはほど遠い、言語占有
として、われわれの内面と深層に、生コンクリートをぶちこむポンプ装置なのだ。

 一度として独立した個人としての内面も精神も内在化した歴史をもたぬ、1億2
千万の家畜のひとりである私とは、この世界にとって何者なのか?こうして古事記
日本書紀の神話は、内発的要因によってバブル経済が破裂し、すべての矛盾が庶民
である個人と単位家庭に、吐き出される現在、その肉体感情をめぐって、とらえ返
される必要がある。そうでなければ、内的対話からつくりだされる固有の精神活動
は、テレビ・モニターの占有電波による現象の占領によって、孤立化され分断され
壊滅させられてしまうであろう。あの日本神話の肉体感情によって。

  その肉体感情が家庭において爆発し、テレビ・ワイドショーの餌食となり商品
として一方通行電波にされるとき、そのギリシア悲劇は、あの幸福に満ちた笑顔が
こぼれる祝賀パレードをいっそう輝かせる、補完装置になるのであろう。こうして、
単位家庭の悲劇は、権威ある聖家族の幸福に奉仕していくのである。

 天上の言語は地上の言語を支配する、そのために天孫降臨の神話は反復してきた
のである。貴族も武士も資本家も国家官僚も、この権威に変わるべき人間または社
会の原理・原則を樹立することはできなかった。そこに上部機構の主体的弱さがあ
った。つまり日本の上部機構は天孫降臨の神話におのれの権威をこすりつけ、世界
精神としてのイデオロギーを、今日まで樹立できなかったのだろう。 

1993,3,13


http://kayaman55-hp.hp.infoseek.co.jp/tihaya02.html

 次へ  前へ

議論16掲示板へ



フォローアップ:


 

 

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。