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小室直樹著 「経済学のエッセンス」 --- 『断固としてケインズ政策を強行せよ』(『株式日記と経済展望』より)
http://www.asyura2.com/0401/dispute16/msg/505.html
投稿者 まさちゃん 日時 2004 年 2 月 09 日 11:41:19:Sn9PPGX/.xYlo
 

(回答先: 財政支出(ケインズ政策と国債発行)について 投稿者 あっしら 日時 2004 年 1 月 31 日 02:04:40)

小室直樹 著 「経済学のエッセンス」 --- 『断固としてケインズ政策を強行せよ』

2004年2月8日 日曜日


◆ケインズは死んだのか?

では、どう模型を作る?

答えは?大胆にケインズ模型を作れ!なんて言うと、途端に激しい拒否反応が起きるに決まっている。

ナニ、今さらケインズだって? 気は確かか。「ケインズは死んだ」生言われて久しい。それに、平成大不況脱出のために、政府は財政政策(代表的なケインズ政策)を何度も発動して、一四〇兆円を投入しても、さっぱり効果がなかったではないか。利子をいくら下げて(代表的なケインズ的金融政策)もやはり少しも効果がないし。「ケインズは死んで」、ピクリとも動かないのではないか。今では、乗数効果(波及効果)も、すっかりなくなっているというではないか。

なんて反論されても、筆者の主張は、やはり同じ。やはり、ケインズ模型で行こう。

その理由。

ケインズは死んではいない。現在日本では依然として立派に生きている。

その理由の第一。

今の日本では、生産力は十分に高く、インフレも入超(輸入超過)も起きない。起きそうもない。

ケインズ理論の欠点は、インフレ理論がないことにある。

一九六〇年代に、ケインズ黄金時代がマネタリスト(古典派の一種)に突き崩されたきっかけとなったのも、インフレであった。ケインズ攻撃の矛先となるのは、有効需要が増えたときのインフレだ。それに入超が起きるかもしれない。言わば「インフレ」と「入超」こそ、ケインズ政策の鬼門なのである。

ケインズが「死んだ」と言われるのも、まさに、ここだ。

サッチャーもレーガンも、古典派的政策にしがみついていたのに、やはり、緊急にケインズ政策に依らざるをえなくなった。しかし、結局、インフレと入超ふたご(特にレーガンの場合は「双子の赤字」「三つ子の赤字」に苦しみ抜いて、彼の後継者ジョージ・ブッシュはクリントンに敗れることになった)。

◆ケインズ政策を強行せよ。

また、ケインズ財政政策(政府による設傭投資)をすれば、国債(借金)が増えると批判する人も多い。

今や、国および地方の長期債務残高(政府の借金)の総額は七二〇兆円もある(二〇〇四年度末見通し)。GDP(国内総生産)の一四〇パーセント以上だ。ベラボーに多額である。

その利子たるや、一分間で三〇〇〇円以上、一時間で二〇億円以上にもなる。この借金たるや、政府の無策のおかげで増えるばかり!

一体全体、どうするつもりなんだ。気が遠くなるような話ではないか。

政府も必死になって何とかしようとしているが、何をやっても、さっぱり効き目がない。

では、何をするべきか。

断乎としてケインズ政策を強行せよ。

今となっては、これしかない。

歴史が教える。

今の日本は、一九三〇年代のアメリカやドイツとそっくりなのだ。

一九三〇年代の初め、欧米に大不況が来襲した。

フーバー大統領は、黄金の一九二〇年代を受けて、あくまで均衡財政政策を維持しようとしたので、結局、どうしようもなかった。

一九三三年、大統領になったフランクリン・ルーズベルトは、積極財政「ニューディール政策」によって、米経済の立て直しを始めた。

しかも、ルーズベルトは経済を理解していなかった。せっかく始めたケインズ政策も、「専門家どもに反対される」と言って完遂はできなかった。だから結局、行きつ戻りつ。

景気は順調に回復しつつあったのに、膨らむ財政赤字に慄いた彼は、一九三七年に財政政策をやめてしまった。そこで景気は後戻り。結局、アメリカは、日米戦争によって大量の有効需要が発生するまで、不況のままであった。

ルーズベルトとは逆に、ヒットラーは、ケインズ政策を独覚していた。財政赤字なんか恐れずに、財政政策(巨大な政府投資)を強行し続けた(第三章参照)。景気はあっという間に恢復し、失業者は皆無となった。

◆個人を富ます貯蓄は全体を貧しくする

平成大不況の真の原因をめぐっては、ずいぶん多くの議論があるが、その真相は未だ究められていない。

不況とは、要するに、国民生産=国民所得=Yの数値が低い、とである。

Yは、なぜ低い。

Y=C+I

日本で貯蓄は高く、したがって、消費は不足がちである。

では、投資は?

不況だから、民間投資は低い。

それもあるが。ゼロ金利になっても、金を借りようとする企業が、あまり見あたらず、みんな借金返済にのみ熱中している。

年間一〇兆円もの借金返済をやっている(リチャード・クー『デフレとバランスシート不況の経済学』七二ぺージ)から、設備投資をしようとはしない。

だから必然的に、民間設備投資は低くなる。

やっぱり、ケインズの大発見は重大であった。

ケインズの最大発見の一つには、「合成の誤謬」もある。

東洋では、「修身斉家、治国平天下」というように、「部分」で正しいことは「全体」でも正しいと思いがちである。ところが、実は、そうとも限らないということを発見したのがケインズである。

「個人を富ます貯蓄は全体を貧しくする」が、ケインズの「合成の誤謬」です。

今、各個人がみんな貯金をうんと殖やせばどうでしょうか。

各個人はみんな富みます。しかし、経済全体はどうなります。

消費は激減して、有効需要も激減して、その結果、国民生産=国民所得も激減することになり、経済全体は貧しくなります。

同様な例をケネス・アローも挙げています。

「ある企業が借金返しに熱中」……正しい。

↓「国の経済全体ですべての企業が借金返しに熱中」
↓「資金需要なし」
↓「ゼロ金利でも資金需要なし」
↓「設備投資ゼロ」
↓「不況は去らず」

ここにも、合成の誤謬は現れてきている!
(経済学のエッセンスP278−P284)


経済学のエッセンス 日本経済破局の論理 小室直樹


◆公的年金の給付、4月から0.3%減 消費者物価下落で

公的年金の給付額が今年4月から0.3%減額されることが30日、固まった。総務省が同日公表した03年の消費者物価指数が対前年比で0.3%下落したことに連動して引き下げる。年金受給者約3000万人全員が対象。年金額の減額は2年連続だ。2月6日に閣議決定のうえ、関連法案を通常国会に提出する。(asahi,com 01/30)

(私のコメント)
アサヒコムのニュースによると現在の日本の年金受給者は約3000万人です。つまり1億2千万人の内の3000万人ですから四人の内の一人は年金受給者であり、ほとんどの人が働かずに年金で生活しているわけですから、日本経済が不振になるのは当然ではないだろうか。また働いている人も、身体の元気な若い人よりも中高年のほうが多くなっている。

年金で生活している人にとってはデフレ経済はまことに快適であり、年々物価が下がってゆくのだから笑いが止まらないだろう。年金生活者にとっては貯蓄が命の次に大切なものだから、貯蓄を崩して使えと言うのは無理な注文だ。小泉・竹中内閣のデフレ経済政策の支持率が高いのも年金生活者たちの支持率が高いためだろう。

年金受給者3000万人とは有権者の三人に一人の割合になります。若くても専業主婦とかパートを除くと、税金を払って働いている人たちは有権者の四人の内の一人と言うことになり、総人口の五人に一人が公務員ですから、民間で働いて税金を納めている人は五人に一人ぐらいになるのだろう。

だから経済の痛みを実際に感じているのは有権者の内の十人に一人ぐらいに成ってしまうのだろう。だからいくら世論調査をしても小泉内閣の支持率が下がらないのも、これらの人口構成が反映しているためだ。しかし日本がこのままデフレ経済を続けていけばどうなるか。若い人たちの雇用がなくなり、若い人たちも民間企業で働いて税金を納める気にならないだろう。

政治的に見ると日本経済を支えているのは十人の内の一人にすぎなにもかかわらず、残りの九人がそれに寄りかかっている構造だ。これでは日本の財政がパンクするのは当たり前でありいつまでも景気は回復しない。このような状況で増税したらどうなるか。一部の人の負担が増すだけで税収は伸びずかえって落ち込むだけだ。

財務省の役人に言いたいのは、税収を伸ばしたければ税金を納める人口を増やすことであり、それは景気を回復させなければ不可能である。このままデフレ経済を続けていけば、税金を納める法人も個人も減る一方になり、財政赤字はいつまでも解決しない。だから真っ先にやらなければならないのは景気回復政策なのだ。

小室直樹氏は断固としてケインズ政策を断行せよと主張している。私もそれに賛成だ。小泉内閣は財政緊縮政策をとった結果景気はますます落ち込み、財政赤字を拡大している。橋本内閣が犯した失敗を再び繰り返している。財務省の役人も小泉・竹中内閣もバカは死ななきゃ治らないのだろうか。

日本政府にはもう財政支出を増やす資金はないのだろうか? そんなことはない日本政府・日銀はアメリカの国債とドルを70兆円も買い込み、去年一年だけで20兆円も買った。さらには今年1月だけで6兆円もドルを買っている。この金は短期債で調達している。この金を内需拡大のために使うべきだ。この点を経済コラムマガジンは次のように書いている。

『政府短期証券(FB)は国債となんら変わらない。ただ期間が短いだけである。しかし三ヶ月毎にそっくり借り換えを行なっているのだから、実質的に長期債を発行しているのと変わらない。日本のマスコミや財政学者は、国債の新規発行が30兆円とか40兆円とかいって騒いでいるが、昨年一年間で20兆円以上の新規の外為政府短期証券(FB)が発行されていることをまるで問題にしていない。

財政学者(御用学者)は「新規発行の国債がどんどん増えており、財政は危機状態であり、経済の底上げのための財政支出なんてとんでもない」と言っている。そして彼等は財政破綻が明日にでも起ると国民を脅かしている。政治家のほとんどもこの言葉を信じている。しかし財政当局は一年間で20兆円以上もの政府短期証券の発行を増加させ、また補正予算で20兆円、さらに来年度はこれに加え40兆円も予算枠を大きくすることを決定している。実際、今年一月だけで既に7兆円以上もの米ドルを買っている。つまり財政当局は財政危機や破綻が来ることなんてみじんも感じていないのである。この点は来週号でもっと詳しく述べる予定である。』


経済コラムマガジン
日本政府にはこのように財政資金余力があるにもかかわらず、ケインズ政策に懐疑的である。財務省のバカ役人達は財政を引き締めれば引き締めるほど財政赤字は増える事が信じられないのだ。そして増税すればするほど消費が落ち込み税収は減る事がわからない。ケインズ政策が分からないバカは死んでもわからない。

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