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兵頭二十八 著 「ニッポン核武装再論」 --- 経済大国で軍事小国という許されざる矛盾(『株式日記と経済展望』より)
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投稿者 まさちゃん 日時 2004 年 2 月 26 日 19:20:17:Sn9PPGX/.xYlo
 

“軍学者”兵頭二十八,好きなのでよく読んでいます(まさちゃん).

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兵頭二十八 著 「ニッポン核武装再論」 --- 経済大国で軍事小国という許されざる矛盾

2004年2月26日 木曜日


◆アメリカと中国はどちらが信じられるのか

古代法を研究し、法律の進化について考えた19世紀の学者、ヘンリー・サムナー・メインは、「生存闘争を嫌悪する大衆の傾向」のために民主主義はダメになっていくのではないかと、晩年に懸念した。過去、幾多のヨーロッパの学者が「特定の共同体(それには特定教会も含まれた)にとらわれない「正義」の体系が記述し得るのではないかと思うたびに、古いローマ法の中にヒントを求めたのである。

その何百年にわたる考究から次第に浮かび上がってきた「あるべき個人の権利」は、向然権(個人が自己の生命を保存しようとする権利など)と呼ばれる。自然権が尊重される社会は、啓蒙的社会である。そこでは個人の基本的権利は対等である。しかし、人々は啓蒙的社会を欲しつつも、他方では、権カ競争から解脱することができない。なぜなら、人問のポピュレーションは常に増え続けようとするのに、食料は人間の数ほど簡単には増産が利かないと、歴史的経験が知らせるからである。

そこで、啓蒙的社会を目指すことで合意している共同体同士の間でも、権力競争があり得る。日米関係は、この関係である。西尾幹二氏は夙に、東アジアに「幼稚なナショナリズム」があることを警告しているが、筆者は、中国人や朝鮮人の「指導的5%」が特に幼稚なのだとは思わない。彼らが隣国として危険なのは、中国文化が染み付いているからである。

彼らがその意識を支配されているところの中国文化は、人と人の対等をアプリオリには認めない。個人間だけではない。中国文化圏には、国家間の法的権利の対等という理念も生じ得ない。西欧の国民国家が古代ローマ法の中に再発見した自然法の合意が、根っから無いのである。

この中国文化圏の中にいつまでも居ては面白くないと、日本人は「脱亜入欧」を標榜する文化革命を推進し、成功した。それが明治維新である。同時にそれがまた、日本の近代の始まりであった。脱亜入欧を成功させた要因の一つに、日本の「島国性」が数えられることは確かであろう。

共同体への外からの脅威がごく短時間でやってくるような地理条件では、外夷への対策をどうすべきかについて、議会で論議している暇がない。かつて、ミラノがフィレンツェのような民主制ではなく、君主制を維持する必要があったのも、それだけ外夷に近かったが故である。また、地理的に「近間の脅威」を国境の東西南北、二方向以上に持ってしまった民族は、民主的議会制度が国策を分裂させて国力の順調な発展を妨害し、ひいては自力での安全保障が考えられなくなるという悪循環に嵌ったためしが多い。 日本は、 英国や米国と同様、 この運命も免れた。

◆日米に道義的対立が生じる可能性

米国では誰でも大統領の悪口を言ってよい。米国の国策に反対を唱えても、夜中に逮捕状なしで拘引されてそのまま裁判なしに地下牢に無期収監されるような恐れもない。これは今の日本でも同じである。かつてのイラクや今の中国は、日本や米国の仲間ではない。しかし米国も権力競争の主体であり、日本政府にいろいろな要求をすることが「安全・安価・有利」な政治だと思ったなら、騙しに近いこともやる。

わきまえるべきなのは、これは、日本国民の自然権を奪ってしまおうというようなたくらみではない。これに騙されるか騙されないかは、まったく日本政府次第なのだ。そして、日本の政権は、日本の有権者が民主的選挙により選んだものである。

1970年代末から80年代前半のアメリカ政府は、北海道にソ連軍などくるわけがないから、日本は戦車など調達するのはやめ、海上自衡隊の対潜装備をもっと増やして、シーレーンを守りなさい、と要求していた。これは実は、米国がソ連とのSLBM潜水艦の展開競争で断然有利になるための手伝いをしなさい、という本音が隠されていたことは今では明らかである。

ところがレーガン政権になると、ヤルタ体制への批判が出始め、同時に「北海道侵攻はあり得る」と、発言が逆転してきた。この時点では「水面下の戦い」は米国潜水艦の圧倒完勝に形勢が定まっていて、次なる狙いとして、SDI(戦略防衛構想、別名「スターウォーズ」計画)への日本の資金協力が求められていたのであった。

結果論として日本の大蔵省が米国の赤字財政に異常な「奉仕」をしたおかげでソ連は崩壊させられた。だから、骨折り損のくたびれ儲けではなかったが、日本の経済はそれから相当おかしなことになった。日本が米国の政策に道義的に反対すべき局面があるとしたら、それは西洋啓蒙思想の根付く気配がほとんどないサウジアラビアやクウェートのような専制国体を、埋蔵石油のみを理由として米国が保護しようとする「反啓蒙主義」の外交に、わが国までが協カを求められたときであろう。

ベトナム戦争中、イギリスの中東撤退の真空を埋めがたいことに悩んだ米国のニクソン政権は、王制のサウジとイランを反ソの味方として「育てる」戦略を選んだのである。しかし両国に西洋文化は根付かなかった。ロシアがその国力を半滅したといえる現在、イランやペルシャ湾岸やアラビア半島にロシア軍人が出張ってきてインド洋にまで支配力を延伸するなどという事態は、もう考えられない。同じ非望をサダム・フセインが夢見たかもしれないが、彼も権力を剥奪された。

日本と米国が直接対決するイシューは、今後あるだろうか。産業の合理化が極度に進んだ結果、一握りの有能な労働者が、全国民の福祉予算をまかなえるほどの国庫歳入を可能にするという事態は、アメリカでは、もうすぐそこまで来ている。ところが問題は、そこでアメリカの金持ちの有権者が、増税に応じたがらぬ場合である。たぶん、そうなるに決まっている。やがて米国内で貧富の闘争が激化するだろう。そういうときには、えてして米国内をまとめるための「外の敵」が措定され、スケープゴートに仕立てられ易くなる。

米国の大衆の自我は、都市部の欧州人ほど近代的でない。誰か敵をつくって対決番組をプロデュースし、そのゲームに複雑な問題のすべてを集約させ置き換えないと、エリートはモチベーションを抱かず、大衆は団結できないというところがある。.日本は今から「立派な口上」で米国に負けないように、宣伝力を強化しなければ危ういだろう。しかし官僚にこのような対米宣伝能力がないことは、過去のFSX(次期支援戦闘機)騒ぎで嫌というほど証明されている。有能な宣伝政治家が、選挙で選ばれてくることを祈るしかない。

◆海外派兵はなぜ必要かー大国の意義について

日本は貿易を止めることのできない経済大国である。GNPに占める貿易の割合は低いという人もいるけれども、分母が世界第2のとんでもない規模であることを思い出さねばならない。また、量の多少にかかわらず住民の生存のために必須の栄養源やエネルギー源も、日本はほとんど交易を通じて安価に確保している。国内産品でのそれらの代替は、物理的または経済的に不可能だろうとも見積もられている。

そこでもし今日から、国境を超える価値の所有移動がゼロになったら、日本国民は間違いなく「自分は悲惨である」と歎ずる生活に直面する。おそらくは「安全の低下」と「自己実現の困難」も付随しよう。簡単にいうと、日本国民は不幸になってしまう。経済大国は、他国との貿易を妨げられないための武力手段を備えていなければ、自存も自衛もできない。また、自らが生かされている世界がこれ以上悪くならないように、手を貸すこともできない。

小国は自国と同等以上の武力を備える外国に、何かをさせることもできないし、何かをさせないこともできないが、大国はまったくその逆の立場にある。だから、最大の矛盾は、経済大国でありながら軍事大国にならぬ路線だといえる。その路線は、すなわち人権を軽んずる小国や、専制主義の大国をサポートして、地球上の不幸を増し、ひいては自国の繁栄も生存も危うくする道につながるので。

近代西洋の啓蒙主義的人文思想を否定する北朝鮮のような小国にとって、国際秩序や国際法とは、周囲の大国から強制されるものでしかない。大国が原爆を持ち、このような小国には持たせないように図っていく以外に、どうやって地球の安全があり得るのか?札付きの小国に原爆を持たせて・世界人民の幸福を大いに後退させる手助けを、日本の政府と国会は不作為によって進めようというのか。この西洋からの非難を、世界との貿易で生かされている近代日本人は免れない。

◆「攘夷」止まりの目本人が理解できない「近代」

英仏が毎年のわずかな国防費の中からやりくりして海外派兵の責任を分担しているのは、核兵器を独占しているだけでは誰も「P5(国連安保理常任理事国)」の資格があるとは思ってくれないからである。P5の資格とは、自前の核抑止能カに加えて、海外派兵ができる軍事大国であることなのだ。陸上自衛隊の現在の定員は16万人。すべて本土防衡用だ。その少ない陸兵から一部を割いて海外に送り出すといっても、ごくごく限られた作戦分担しか負うことはできるはずがない。1000人やそこらの後方支援部隊の派兵で「積極」も「消極」もないのだ。

それでも、国政選挙などをきっかけとして、我が国の主だった政党の中から、かつての「ハリネズミ防衛論」、別名「ミサイル国防論」に類した路線提示が、「海外派兵反対論」のバージョンのひとつとして、リバイバルしてくる懸念が常にある。これは要するに、各種の戦術誘導武器で日本は守れると机上論で空約束し、そのためには今でも16万人しかいない陸自の兵力をさらに削減してその人件予算を回しましょうと説く書生論の訴えかけがくっついたもので、現在は民主党(菅&小沢氏が主導)が標榜している。

これが日本では大衆を誤導しやすいのは、日本人民はその特殊な水稲農業ゆえに近代兵役を厭う理由が確かにあった反面、「攘夷」のための建艦費捻出や、航空増産のための勤労奉仕は、これに理性的に納得し、尽力も惜しまなかったという伝統精神が消えていないからである。

いうまでもなく自民党の「MD」(ミサイル防衛=中国大陸から発射される核ミサイルを日本海上のイージス艦から発射する非核の対空ミサイルで撃墜できるというアメリカの説明を呑んだ奇妙きわまる国防構想)も、この下地をうまく利用して進められているもので、これに反対する政治家が育たないのは、日本人が未だに「近代」に立ち向かおうとする自我を持つに至っていない証左に他ならぬ。(P33−P39)


兵頭二十八著 ニッポン核武装再論 日本が国家としてサバイバルする唯一の道

(私のコメント)
2月18日の日記でオランダを例にあげて、いかに軍事力のない経済大国が脆いものであるかを論じましたが、日本の国防論はこのレベルに留まっており、核武装論にはまだ早すぎるようだ。私は改憲論者であり核武装論者でありますが、日本政府はなし崩し的に既成事実を作り上げて、後から追認させるという改憲手段は危険だ。

このような方法が許されるのならば、日本には国会が必要ないのではないかということになる。国会が単なる事後承認機関でしかないのなら選挙も大した意味はなく、形式的な行政委任手続きでしかなくなる。自民公明の連立政権は絶対多数をいいことに次々と法案を通していますが、選挙でそうなったのだから仕方がありませんが、憲法違反の法案を押し切ってしまうのは空恐ろしい。

憲法を単なるスローガンに骨抜きし空文化することで日本は立憲国家ではなくなった。だから国会も形だけのものであり、国会審議は単なる議員たちにとっては国民を騙す行事でしかない。戦前にしても議会は相次ぐテロで機能しなくなり、軍人達のやりたい放題が出来るようになり、国会は単なる追認機関となっていた。自衛隊のイラク派遣は関東軍の満州進出と同じであり、誰もその事を指摘しないのは、戦前の事を知る人がほとんどいないからだ。

私は反戦平和主義者ではなく自主防衛核武装論者ですが、国会が決めた憲法を政府が蹂躙していいものではない。戦前にしても統帥権を軍部が持ち出して明治憲法を蹂躙しましたが、小泉首相は憲法の前文を持ち出して九条を空文化してしまった。

2月20日の日記でも宮台真司氏の憲法論を紹介しましたが、そもそも日本がアメリカの植民地なら憲法がないのも当然であり、植民地だからこそ軍隊も存在してはいけない法律(九条)があるのも当然だ。だからこそ小泉首相は日本の国益のためではなくアメリカのために自衛隊をイラクへ派遣したのだ。

私が主張したいのは独立国家としての憲法を持ち、その憲法に基づく軍隊を持つべきだということであり、アメリカの植民地であることをあからさまに肯定するような、自衛隊のイラク派遣に反対している。おそらくアメリカはイラクの泥沼に嵌り込み、アメリカ軍は中東に釘付けとなり極東は軍事的空白となるかもしれない。

アメリカ軍は沖縄の海兵隊も韓国の陸上部隊もイラクへ回るだろう。そうなった時にその軍事的空白をどこが埋めるのか。日本しかない。朝鮮半島はもとより台湾海峡も緊張が高まっている。将来にわたって中国やロシアの圧迫をアメリカだけで食い止めることは難しいだろう。日本の政治家も国民もいい加減に目を覚ますべきだ。

現在の極東は明治維新の頃の情勢とよく似ている。アメリカもそれに気付いて当時のイギリスと同じように日本を東洋の番犬にしようとしている。朝鮮半島も台湾も結局は日本の力に頼らざるを得なくなるだろう。このままでは韓国も中国のものとなり台湾も飲み込まれる。それが日本国民にも分かり始めたからこそ日本でも改憲論議が高まっている。

兵頭二十八氏の「ニッポン核武装再論」も、日本の再軍備の一つのアイデアであり、中国やロシアに対抗するためには日本も核武装することは常識的考えだ。中国もロシアも絶えず日本に外交的圧力を掛けてくるだろう。今までならアメリカに泣き付けばよかったが、これからは日本単独で対応せざるを得ない時が来るだろう。そのためには日本の核武装が不可欠だ。


「日本核武装論」 アメリカは9・11で、日本は9・17で生まれ変わった。

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