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その昔、僧侶は医者であり学者であり教育者でありマスコミ(情報発信
者)であった。大戦中、陸軍軍人より海軍軍人のほうが開明だったと聞く。
外の世界の情報に接する機会が多いからである。今、情報に多く接する者
と言えばインターネットをやる人々だろう。
阿修羅の場合他の板からIT板にたどり着く人の方が、IT板→他の板
のパターンよりも圧倒的に多いとは思う。しかし、技術馬鹿になりたくな
い人は、下記のような記事を読むことはとても有益だろう。今現在、自分
たちがどういう世界に生きているかを意識することは、セキュリティにつ
いて考える時などとても大事なことだと思うからである。どういう世界に
生き、さらに外の世界への問題意識を持つかどうかで、同じセキュリティ
情報に接するにしても、気づきも理解の深さも全然違ってくるはずである。
これは、小生自身の体験と実感である。
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貿易赤字4893億ドル、財政赤字5210億ドル
借金帝国アメリカ ドル依存で衰退する日本経済【BUND_WebSite記事】
http://www.bund.org/opinion/1136-3.htm
時代は東アジア版EUを求めてる 山根克也
2004-2-25
小泉首相はアメリカのイラク戦争を支持・支援する理由を、「アメリカは日本の唯一の同盟国。日米同盟によって今の日本の繁栄はある」と繰り返し語っている。だが現実の日米経済関係をみるとき、「日米同盟によって日本が繁栄している」などというのは全く事実に反している。むしろ低迷を続ける日本経済の最大の問題は、過度の米ドル依存によってアメリカ経済に完全に従属してしまっていることにこそある。
米・EU・日の三極構造
基軸通貨ドルの魔術
米経済との心中は御免だ
アジア共通通貨への道
米・EU・日の三極構造
アメリカというと世界の超大国というイメージがある。確かに軍事力という点では、間違いなくアメリカは世界のスーパーパワーだ。アメリカの年間軍事予算は約4000億ドル。この額は、世界全体の軍事費の40%を占め、世界の2位から14位までの各国の軍事費をすべて足し合わせたものよりも大きい。アメリカはこの圧倒的な軍事費にものをいわせて世界中が束になっても太刀打ちできない最新最強の軍事力を構築している。こうした圧倒的な軍事力を背景に、驕り高ぶるネオコンは「アメリカ帝国」などと豪語しているわけだ。
ところが経済力という点ではアメリカは、決して世界の超大国ではない。かつてアメリカは、本当に世界でダントツの経済大国だった時代があった。1929年の世界恐慌直後、世界の工業生産の40・5%はアメリカに存在した。それに対してドイツは11・6%、イギリスは9・3%、フランスは7%、ソ連は4・6%、日本は2・4%にすぎなかった。だがそれから70年後の現在、アメリカの工業生産はEUよりやや少なく、日本をかろうじて少し上回る程度にすぎない。
「アメリカ帝国」などと言っても、現在の世界経済の実体は、「アメリカの一極支配」ではない。明らかにアメリカとEUと日本の三極構造であり、それに中国をはじめ急速な経済成長を続けるアジア諸国が迫っているという構造になっている。現在の世界経済を特徴づけているのは、このアメリカ帝国が何を隠そう世界最大の貿易赤字大国・借金大国であるという事実だ。
2月13日、米商務省が発表した2003年の貿易収支赤字は、モノとサービスの取引を合計した国際収支ベースで4893億7800万ドル(約52兆円)と前年比17・1%増加し、過去最悪となった。内訳は、対中国赤字が同20・3%増の1239億6100万ドルと過去最大を更新し、4年連続1位。2位は対欧州連合(EU)赤字で14・8%増の942億6200万ドル。3位は対日赤字で5・7%減の659億6500万ドルだった。
アメリカの抱える赤字は貿易赤字だけではない。アメリカの財政赤字も本年度は史上最悪の5210億ドルに達する見込みだ。大赤字の原因は、財政的裏打ちがないにもかかわらずブッシュ政権が高所得者を対象とした大規模減税(向こう10年間で総額1兆3500億ドル)を行うとともに、先述したように年間4000億ドルもの軍事費の支出を計上しているからだ。
こうした財政赤字と貿易赤字の急激な拡大に伴ってアメリカの対外負債残高(=借金)も増大。すでに2001年には、2兆3091億ドル(対GDP比マイナス22・99%)もの巨額に達し、その後も増大し続けている。つまりアメリカは世界最大の借金国=借金帝国なのだ。「普通の国家」なら債務超過でいつ債務不履行(デフォルト)に陥ってもおかしくない。会社や個人なら、とっくに破産している。
ところがアメリカは、これだけ膨大な借金を抱えながら破産も倒産もしていない。むしろアメリカ経済は、大量生産―大量消費―大量廃棄というアメリカン・ウェイ・オブ・ライフを謳歌し続け、膨大な軍事力支出を続け軍事大国としての地位を維持し続けている。どうしてこんなことが可能なのだろうか。
基軸通貨ドルの魔術
借金大国アメリカが破産しないのは、毎年、アメリカの貿易赤字を上回る資金が世界中から流入してくるからだ。いくら借金が増えても、お金を貸してくれる人がいれば破産しない、という理屈だ。世界各国は、アメリカに輸出して儲けた資金で、せっせとアメリカの株式や債権(アメリカ国債など)を購入してきた。こうしたアメリカへの資金流入は、1990年の880億ドルから20001年の8650億ドルへと、10年間でなんと10倍にも増大した。アメリカは8650億ドルもの借金で4000数百億ドルの貿易赤字を穴埋めし、あまった分は国外に投資して儲けている。
ふつう人は「儲かる話」でなければ、他人に金を貸したりしない。それは国際経済でも同じだ。アメリカに世界中から資金が集まってくるのは、アメリカの金利や株価が他国よりもずっと高く設定されているからだ。投資家たちは利回りの高さをみこんでアメリカの株式や債権を購入する。つまり喜んでアメリカにカネを貸す。
日本やEU諸国は今、戦後復興―高度経済成長期が終焉し、構造的な需要不足(デフレ日本が典型)に陥っている。経済成長は完全に頭打ちで、株価も金利も低迷を続けている。それゆえアメリカに輸出してもうけた貿易黒字のいい投資先がない。それで資金がアメリカに環流してくることになるわけだ。例えば現在10年ものの日本国債の金利は1・2%程度だが、米国債は4%前後(レーガン時代の1981年には14%近くにまで上昇した)。金利だけで考えれば日本国債より米国債の方がはるかに有利な投資先だ。
かくして世界経済には、次のような資金循環が成立することになった。世界各国は自国製品をアメリカに輸出して貿易黒字を儲け、その儲けた黒字分をアメリカの株式や債権に投資する。外国からの資金の環流によってアメリカの経済活動が活発化し、アメリカの消費が増大。ちなみにアメリカの世帯の貯蓄率はほぼゼロ%、時にはマイナスを記録する。つまりアメリカの消費者はお金があればみんな使ってしまう。場合によっては借金をしてまで消費する。アメリカの過剰消費によって世界各国からの製品輸入はふくれあがり、アメリカの貿易赤字と各国の貿易黒字はさらに増大する。世界各国はもうけた黒字分を再びアメリカに投資する……。
2年連続で過去最悪の貿易赤字を更新しても、テーラー米財務次官は、アメリカの株高や日欧との圧倒的な景気格差を理由に「赤字を穴埋めする米国への資本流入が滞ることはない」と豪語した。だが、ちょっと考えてみれば分かることだが、借金を雪だるま式に増やしつつ経済成長を持続し続けるなんてことができるはずない。資金の借り入れと返済を繰り返しながら、かろうじて倒産を免れ操業を継続することを「自転車操業」――自転車は走るのをやめると倒れるから――という。まさにアメリカのやっていることは、極めて大規模な自転車操業そのものだ。
自転車操業を続ける企業の場合、「この会社はもう危ない。これ以上お金を貸しても踏み倒されそうだ」となると、誰もお金をかしてくれなくなり倒産する。アメリカの場合も、資本流入が資本流出に転じれば、ドル暴落や金利急騰を引き起こし、アメリカ経済は破産する。ところがアメリカの場合、最後の手段がある。ドル安政策を行うことだ。世界各国は、アメリカの株式や債権に投資している。つまりアメリカの借金は「ドル建て」になっている。ドルの為替レートが下落すればドル建ての借金も減る。
ドルと円の為替相場でみた場合、かつては1ドル=360円だったのが今では1ドル=105円にまでドルは下落している(一時は1ドル=80円になったこともある)。いくらアメリカに輸出してドルを稼ぎ、そのドルをアメリカの株式や債権に投資して儲けても、ドルの価値が目減りしてしまえばその儲けはパーになってしまう(為替差損)。
1985年9月、先進5カ国のドル高是正合意(プラザ合意)をうけ、1ドル=240円前後だった為替レートは急速に下落、1987年のG7ルーブル合意を経て下げ止まったときには1ドル=150円になっていた。この間、ドルは対円レートで約4割もの大幅な切り下げとなり、日本の対外純資産の為替差損は約3・5兆円に達した。貸し手である日本のドル債購入者からみれば、ドルの下落はアメリカという債務者に元利払い軽減を許したに等しい。まさに天から降ってきた「徳政令」だ。
そもそも日本が貸し手でアメリカが借り手なのに、その債権が「ドル建て」というのがおかしいのだ。大規模な資本の流入が、流入国(アメリカ)の通貨建てで行われるなどという事態そのものが、国際経済の常識に反している。今年は日露戦争100周年だそうだが、当時日本政府は戦費調達のためロンドン市場で日本公債を売りに出した。当然、ポンド建てだ。いつ下落するかわからない弱小国日本の通貨・円建ての公債など買う投資家は一人もいなかったからだ。
現代の国際経済においても、例えばメキシコはアメリカで公債を売りに出す場合、自国通貨ペソ建てではなくドル建てを原則にしている。メキシコの対外収支が悪化し、ペソが切り下がると、ドル建て債務の元利払いはその分、当然、増加する。アメリカも、70年代末のドル不安に際してマルク建て「カーター・ポンド」を発行したことがある。日本に米国債購入をお願いしたいのなら、東京市場で円建ての米国債を発行するのが当然なのだ。
アメリカは、為替市場をドル安に誘導することによって、他国が保有するドル資産の価値=アメリカの借金を自動的に減らすことができる。こんなのは、「基軸通貨ドルの魔術」(『マネー敗戦』)というか、インチキ以外のなにものでもない。
米経済との心中は御免だ
こんなアメリカのペテンに引っかからないためには、ドル建てではなく、自国通貨で対外経済関係を結ぶことだ。ヨーロッパ諸国がEU結成―ユーロ発行に合意したのは、こうしたアメリカの為替操作によって自国経済が混乱させられ、大損しないためだ。ユーロ建てで貿易取引を行い、ユーロ建て債権を発行することでEU諸国は、アメリカ経済=ドル支配からの自由と域内経済の安定を実現しつつある。
昨年3月、国連安保理においてフランス・ドイツ・ベルギーは、アメリカの性急なイラク攻撃の主張に対して反対を貫いた。アメリカのネオコンは、「古いヨーロッパ」「ヨーロッパは事実上のアメリカの属国・保護領にすぎない」などと揶揄しているが、EUは政治外交路線においても経済政策においても、着実にアメリカからの自立の道を歩み始めている。ところがわが日本は、EUとは全く逆に、政治外交路線においても経済政策においても対米依存・対米追随をますます深めてしまっている。
クリントン政権の末期からアメリカの株価下落が始まり、ブッシュ政権になってアメリカの財政収支が大赤字に転落したため、世界の投資家たちはアメリカへの資本投下を手控えるようになってきている。暴落が予想されるドルを買う人が減り、ドル暴落のリスクをシェア(分割)するため、ユーロ建ての国際取引が増加し、ドル安・ユーロ高が進行している。中東産油国などにはユーロ建てで石油取引を行う動きがある。ちなみに北朝鮮も外貨決算をドル建てからユーロ建てに切り替えている。
プラザ合意後のドル安で大損したというのに、日本政府は懲りずに米国債を買い続けている。「ニューズ・ウィーク」2004年2月11日号によると、日本政府の昨年の為替介入額は20兆円に達した。この額は日本の貿易黒字のほぼ2倍にあたる。今年は1月だけで、すでに6兆円を超える為替介入が行われている。昨年11月時点での日本の外貨準備高は6330億ドル=約67兆円 (1年前に比べ40・1%増)。来年度の日本政府の一般歳出約48兆円と比べるとそのあまりの巨額さがよく分かる。日本政府の為替介入は、米国債を買う形で行われており、昨年の介入額20兆円(外貨準備高総額だと67兆円)は、そのままブッシュ政権の予算となった。つまり日本政府が気前よく貸した金でブッシュ政権はイラク戦争の戦費を賄い、金持ち優遇の大減税=「ブッシュノミクス」を行っているわけだ。
「円高」は、私たち日本国民にとってそれほど嫌がるべきことだろうか。確かに急激な円高ドル安は、トヨタなどアメリカ市場で利益を上げている大手輸出企業やドル債権・ドル株式保有者にとっては打撃だろう。だが円高になれば外国製品は格安で買えるようになるし、海外旅行も安く行けるようになる。輸入している石油や原材料の値段も下がる。円高は日本経済にとって必ずしも悪いことばかりではない。
為替介入は政府の「外国為替資金特別会計」(外為会計)の資金を用いて行われる。財源は「政府短期証券(FB)」、要するに一種の国債(=国の借金)だ。日本は国が借金してアメリカのドル下落を必死に防いでいる。アメリカの貿易赤字・財政赤字が解消されないかぎりドル安圧力はなくならない。アメリカが借金大国であり続けるかぎり、ドル安は必然なのだ。
戦後日本の経済成長を支えてきたのは、対米輸出による貿易黒字の蓄積だった。だが借金大国へと転落したアメリカ経済そのものには、もう日本製品を輸入する資金は残されていない。アメリカの貿易赤字・財政赤字が拡大する80年代以降の局面においては、日本は自らの貿易黒字が生みだした余剰のジャパン・マネーをアメリカに投資し、アメリカはそのカネで好況を維持して日本の製品を買う。これがさらに日本の貿易黒字を膨らませる。
極端な言い方をすれば、日本は自分のカネで自分の製品を買い、それを貿易黒字と呼んできたようなものだ。だが貿易黒字で蓄積されたはずのドル資産は、ドル下落であっという間に価値が大幅に目減りしてしまった。ドルが下落すれば、日本の外貨準備高は何もしなくても評価損を生み出す。すでにこの間のドル安で7・8兆円もの評価損が生み出されている。
結局日本は、アメリカの過剰消費(資源の大量浪費と環境破壊に帰結する)と財政赤字(膨大な軍事支出と金持ち減税)を支え続けてきただけだと言っても過言ではない。これが小泉首相のいうところの、「日米同盟による日本の繁栄」の偽らざる真の姿なのだ。先に引用した『ニューズ・ウィーク』のコラムには、「financial double suicide――日米が突き進む『金融心中』への道」というショッキングなタイトルがつけられている。借金漬けのアメリカ経済との心中なんてまっぴら御免だ。
アジア共通通貨への道
では日本経済が生き延びるためにはどうすればいいのか。その答えは、いたって簡単だ。「対米輸出に依存した経済成長」と「ドル依存」という、経済政策における過度の対米追随・対米従属からテイクオフし、アメリカ経済から自立・独立していくことだ。それは決して不可能なことではない。お手本として学ぶべきはドイツだ。ドイツは日本と同じ第二次大戦の敗戦国であり、冷戦下では「西側の一員」としてドルを支え続けていた。1960年代の後半、ドイツは、米軍事力によるドイツ防衛肩代わりに対する見返りとして4点にわたる経済的な利益供与をアメリカに約束していた。
第1に、ドイツ連銀は保有ドルの金への交換を停止する(当時はアメリカ政府はドルと金との兌換を保証していた。金ドル本位制)。第2に、アメリカ国債を大量に購入する。第3に米国製兵器の購入費率を上げること。第4に、ドイツ国内の米軍の装備向上のための財政負担を高めること(ドイツ版思いやり予算)。1点目の「保有ドルの金への兌換停止」を「外貨準備金の積み上げ」に読み替えれば、当時のドイツとアメリカとの関係は、今の日本とアメリカとの関係と全く同じだ。当時のドイツは、今の日本と同じようなアメリカの「属国」だったわけだ。
10年後の1979年1月、ヨーロッパにEMS(欧州通貨制度)が発足する。EMSは欧州内の為替安定を目指す通貨制度で、その機構内の経理・計算をECU(欧州通貨単位。EC加盟国の通貨を加重平均した人工合成通貨=通貨バスケット)で行うこととし、ドルをしめだした。ドイツはフランスとともにこのEMS―ECU設立の中心的役割を担うことでドル依存=アメリカ依存からの決別に成功していく。ちなみにこのECUが20年後の1999年1月「ユーロ」と改称、1ECU=1ユーロとなる。
かつては日本と同じようなアメリカの属国だったドイツは、ヨーロッパ諸国とともにEUを結成することでアメリカからの経済的政治的独立を実現した。ドイツにできたことが日本にできないはずがない。日本もまたアメリカからの独立を果たすために、アジア諸国とともにアジア版EUの結成に乗り出すべき時が来ている。
今から10年前、故廣松渉は、『朝日新聞』に掲載された政治的遺言とも言うべき論稿「東北アジアが歴史の主役に――日中を軸に『東亜』の新体制を」で、「アメリカが、ドルのタレ流しと裏腹に世界のアブソーバー(需要吸収者)としての役を演じる時代は去りつつある。日本経済は軸足をアジアにかけざるをえない」と論じた。当時は「大東亜共栄圏の再来」とかと揶揄されもした。だが10年の歳月がめぐり、ようやく時代が廣松渉に追いついた。今や廣松が提起した「東亜の新体制」は、「東北アジア共同の家」とかアジア版EUといった言い方で、対米追随からの離脱を求める人々の共通認識となりつつある。
2月14日の『朝日新聞』朝刊によると、日本の財務省は今年5月に開かれる日中韓ASEAN財務相会合(ASEAN+3)で、現在それぞれ2か国で締結しあっている通貨交換協定を多国間協定に発展させる構想を提案するという。97年7月のアジア通貨危機後、日本は国際通貨基金(IMF)のアジア版であるアジア通貨基金(AMF)構想を提唱したが、アジアでの影響力低下を懸念するアメリカの反対でとん挫。かわりにASEAN+3諸国は、2国間の通貨交換協定を締結していった。この2国間協定を多国間協定に発展させようというわけだ。
アメリカはまたぞろ反対するだろうが、EU型の地域統合に向けた第一歩として、東アジアの通貨協力ネットワーク形成は是非とも成功させていくべきだ。大蔵省官僚出身の近藤健彦は『アジア共通通貨戦略』(彩流社)で、EU発足のプロセスを詳しく分析している。まず不安定なドルの乱高下に振り回されないための制度としてEMS(欧州通貨制度)が発足。将来の通貨統合を目標にECU(欧州通貨単位、共通通貨バスケット)を導入する。近藤氏は、このECUこそがヨーロッパの通貨統合―地域統合に大きな役割を果たしたと指摘している。
アジア通貨危機、アメリカの「双子の赤字」増大、ドル暴落の危機、EU発足―ユーロ発行、アメリカ帝国の暴走、中国経済の台頭、東アジア域内経済活動の活発化……、いまや東アジアにおいてもEU型地域統合に向けた気運が高まりつつある。むしろ一番煮え切らないのが東アジア最大の経済大国・日本だ。対米追随から東アジア重視へ、時代は日本の経済政策および外交政策の大きな転換を求めている。