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Winny を肯定的に議論する (ITmedia より)
http://www.asyura2.com/0401/it05/msg/546.html
投稿者 ome 日時 2004 年 5 月 19 日 18:41:25:BZjHeH0nnR.Bk
 

(回答先: サイバー犯罪条約の批准とWinny開発者の逮捕-ITビジネス&NEWS 投稿者 彼方 日時 2004 年 5 月 19 日 03:31:50)

ちょっとばっかし、古い記事ですが。。。
プログラムを、「思想を創作的に表現したもの」として捉えた場合、今回の Winny 作者摘発に通じる、 Winny というプログラム配布を問題視することは、言論の自由を侵していることになるのではないか、という意見は、非常に興味深いものがあります。

http://www.itmedia.co.jp/anchordesk/articles/0405/17/news001.html

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コラム
2004/05/17 07:57 更新
Winny事件を考える
Winnyを肯定的に議論する (1/2)

  「Winnyが挙げた成果は安易に否定してしまうことなく積極的に評価すべき」。
  単なる“ネット犯罪”として片付けるのではなく、情報社会に与えたインパクトを
  今こそ冷静に評価する必要があるだろう。
  Winnyをウォッチしてきた国際大学GLOCOM 助手・研究員、石橋啓一郎氏の寄稿。


 Winnyの開発者である金子勇(東京大学大学院助手)が5月10日に逮捕されて以来、Winnyに関する議論が進められている。Winnyは2ちゃんねる(以下2ch)から生まれたP2P型のファイル共有ソフトの一種で、非常に多くの人に利用されており、利用者は100万人を超えるとも言われている。そこでは著作権侵害にあたるファイルの交換が頻繁に行われていることが問題視されており、昨年11月27日にはWinny利用者が著作権侵害の疑いで逮捕されている。

 現在多くのところで現在進んでいる議論は、主にWinnyの開発の違法性という観点や著作権のあり方はどうあるべきかという観点からのものだ。しかしここではあえてもっと広い見方をして、Winnyの功罪、特に功績の部分に焦点を当ててみたい。Winnyとは何か、どうしてこんなに騒がれるのかを考えてみるためだ。


■ Winnyの出自と開発経緯

 Winnyは2chの「MXの次はなんなんだ?」というスレッドの中で初めて言及されている。2002年4月1日に、そのスレッドの47番目の記事で、「暇なんでfreenetみたいだけど2chネラー向きのファイル共有ソフトつーのを作ってみるわ。もちろんWindowsネイティブな。少しまちなー。」と書き込まれたのがそれだ。これはWinMXの利用者摘発後、4カ月ほど経った頃である。この発言番号にちなんで、Winnyの作者はこれまでずっと「47さん」あるいは「47氏」と呼ばれてきた。この記事では、金子氏を以後47氏と呼ぶ。

 Winnyの開発はその発言以降、利用者との密なコミュニケーションの中で続けられ、同年5月6日にリリースされた。以後全部で236回、平均して週に3度以上のバグフィックスやパラメータ調整のためのバージョンアップが行われている。広く無料で公開されているソフトウェアがこれだけの頻度でバージョンアップされることはまれで、非常に熱心に開発が続けられていたことを示している。また、利用者が即座にそれに対応していたことから、Winnyが絶大な人気を誇っていたことが見て取れる。

 47氏はWinnyを開発した理由について、2002年4月30日に以下のような書き込みをしている。

 「まぁ、そろそろ匿名性を実現できるファイル共有ソフトが出てきて現在の著作権に関する概念を変えざるを得なくなるはず、あとは純粋に技術力の問題であって何れ誰かがその流れをブレイクさせるだろうとは思ってたんで、だったら試しに自分でその流れを後押ししてみようってところでしょうか。

純粋に暇つぶしの腕試しです。

私なんてたいしたこと無くて、この程度作れる人は日本人でもかなりいるはずですが、実際に表にブツを出す人少ないんで、こういう方面でも日本人にがんばって欲しいというのもあります。」

 この時点では、Winnyがここまで流行すると予想した人は本人も含め誰もいなかったはずで、この発言は本音に近いと思われる。47氏はずっと匿名で行動しており、何らかの金銭的な報酬や、実生活での名誉の面での見返りがあったとは考えにくい。つまり、現行の著作権の概念への疑問と「腕試しをしたい」という気持ちが47氏を開発に駆り立てたのではないかと思われる。

 金銭などの報酬もなく自発的に開発をはじめ、支持してくれる利用者との密接なコミュニケーションの中で完成度の高いソフトウェアを作り出したプロセスは、情報社会の新しい知の生産のありかたの先駆けのようにも思える。


■ 現行の著作権制度への問いかけ

 47氏は著作権侵害をするためにこのツールを利用してよいと直接的に発言したことはないが、今の著作物のあり方に対する疑問をしばしば述べており、その問題に対する問いかけのためにWinnyを作ったという意味の書き込みがある。

 彼の発言を追っていくと、「いくら制度を守ろうとしても技術的な抜け穴があればその制度は意味を失っていき、新たな制度を作る必要が出てくる。これは必然的に起こることで、Winnyはそれを少し早めているに過ぎない」と考えていることがわかる。47氏は何度かソフトウェアやその他の創作物の作者が報酬を得られるような新しい枠組みについてアイデアを述べたりしており、情報はすべて無料であるべきだというような単純な考えを持っていたのでないことは確実だ。

 利用者の多くはWinnyによって著作権が緩やかな世界を疑似体験することができた(念のため、著作物のダウンロード自体は合法だということを確認しておきたい。ただし、商用ソフトウェアの多くを初め、それを実際に利用するのはルール違反という場合も多い)。Winnyの場を利用して、二次創作物を作る人たちも出現した。例えば、Winnyで流れている字幕のない洋画に、勝手に字幕をつけて流す人たちなども現れた。

 技術の変化と情報社会の進展とを考えたとき、今の著作権の枠組みは窮屈すぎるという考えには、私も賛成だ。ひとつには、技術の進歩により、情報の再利用性が高まっているにもかかわらず、現行の著作権法の権利処理は非常に煩雑で、再利用が困難だということがある。また、著作権者が自分に大きなデメリットがなければ著作物の再流通や再利用も構わないと考えている場合も多いのだが、現在の日本の著作権法では特別な措置を取らない限り、原則として再利用には許可が必要となるという問題もある。

 これからの情報社会で著作権がどうあるべきか考えなければならないとき、Winnyで体験したことを基礎にして議論できるというのは有意義なことではないだろうか。


■ Winnyの見せる新しい情報空間

 Winnyはひとつの新しい世界を見せてくれた。広帯域常時接続で互いに接続されたコンピュータが、好きなときになんでも取り出せる一つの情報空間を提供する世界だ。

 ほんの5年ほど前には、ネットワークの帯域が狭く、通信料金も高かったため、欲しくもないファイルをダウンロードすることなどあり得なかった。しかし、ネットワークの利用モデルはネットワークの環境によって変わる。例えばWinny利用者は、関係があるかもしれないファイルを大量にダウンロードしておいて、後で関係ないものを消すといった使い方もするようになった。Winnyはキーワードを設定しておくと、それがファイル名に含まれるものを順番にダウンロードする機能を持ち、一日に5Gバイト、10Gバイトとファイルのやりとりをしたことのある利用者も少なくないだろう。

 Winnyは、広帯域・定額のネットワークと大容量の記憶領域があるとき、それをどのように生かせるか、そこにはどんな情報空間ができあがるのかという壮大な社会実験だと見ることもできる。

私の知人の間では、FTTHを使い切ることのできるアプリケーションは今のところWinnyしかない、と話している。Winnyは、現在のブロードバンドネットワークを初めて「生かし切る」分散アプリケーションなのである。


■ 思想の表現としてのWinny

 47氏の著作物に関する考え方を振り返ってみると、Winnyは彼の考える著作権のあり方や情報共有の仕方を、機能するプログラムとして表現したものであり、Winnyそのものが著作権法の著作物についての定義である「思想を創作的に表現したもの」であると思えてくる。私はプログラムを著作物として扱うことには違和感を感じていたのだが、Winnyのようなものこそ、著作物としてのプログラムと言えるのではないか。

 そう考えると、Winnyの配布を問題視することは言論の自由を侵しているように思えてくる。「知的財産」として金銭的な権利を守る文脈では「プログラムは著作物だ」と言っておきながら、このように思想性のあるプログラムがその表現としての価値を認められず否定されるとすれば、どこかおかしい。


■ Winnyを肯定的に議論する

 ここまで、いくつかのWinnyの功績を挙げてきた。証明こそできないが、私はWinnyがこれだけ多くの人に支持されているのは、単に映画やソフトがただで手に入るからではないと思う。Winnyが作られ改良されていく過程、そこに込められた思想、Winnyが見せてくれる新しいネットワークの使い方など、様々な点でWinnyは優れているし、何より口や文章だけではなく、それが動くものとして手にはいるということは素晴らしいことだ。ここでは技術的なことはあまり議論しなかったが、仕組みとしても新規性があり、これだけ多くの利用者によってテストされながら微調整を繰り返した非常に希なP2P ソフトとしても、Winnyには大きな価値がある。そのような価値を、多くの人が多かれ少なかれ認めているからこそ、Winnyが話題になるのではないか。

 よほどのことがない限り、新しいルールが決まるまでは古いルールを守るのが筋であり、Winnyで積極的に著作権侵害をする行為や、それを直接的に助ける行為を許していいわけではない。47氏がした行為が違法であるという結論が出れば有罪とされるべきだし、その上で今の法律が不適切だとわかれば、変える議論をすればよい。しかしそのこととは別に、Winnyが挙げた成果は安易に否定してしまうことなく積極的に評価すべきだし、その中でよいものは受け継いで行くべきだ。Winnyがきっかけで起こったことには、来るべき情報社会のあり方を考えるヒントが多く含まれている。


 <記事について>本稿は、Winny開発者が逮捕された5月10日付けで石橋啓一郎氏が自身のブログで発表した文章を改稿したものです。

 石橋啓一郎氏は国際大学GLOCOM 助手・研究員。1995年慶應義塾大学環境情報学部卒。1997年慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。2001年同研究科博士課程単位取得退学。2001年インターネット戦略研究所客員研究員。2002年6月よりGLOCOM助手・研究員。日本のインターネット創成期に大学でインターネットに出合い、以後インターネット技術を学びながら、ネットワークと社会の関係について取り組んできた。現在では、主として地域通信インフラ整備・地域情報化の研究に取り組んでいる。訳書に「ネットワークセキュリティ」「暗号とネットワークセキュリティ」(共にピアソンエデュケーション)など。


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