★阿修羅♪ 現在地 HOME > 掲示板 > 政治・選挙2 > 436.html
 ★阿修羅♪
次へ 前へ
国民を誤り導いた責任 [高成田 享]【(小泉政権は)現時点でもすでに、辞職に値する/社説でお願いします】
http://www.asyura2.com/0401/senkyo2/msg/436.html
投稿者 なるほど 日時 2004 年 2 月 11 日 12:23:37:dfhdU2/i2Qkk2
 

米ワシントンで、いろいろな人たちと話をしていて、大統領選よりも議論に熱が入ったのは、WMD問題だった。イラクの大量破壊兵器を(WMD)をめぐる米政府現地調査団のデビッド・ケイ前団長が「イラク戦争開戦の段階で、WMDがあったという証拠はなく、おそらく我々は間違いをおかした」と議会で発言した問題だ。「ブッシュ大統領は、国民を誤り導いた(ミスリード)」という言葉を何度も聞いた。

「イラクでは、毎日のように、自国の兵隊が死んでいるのに、戦争の理由が間違っていたなんて信じられない」「こんな大統領が再選されたら、もうこの国を脱出するしかない」「最悪の大統領だ」。といった具合で、ブッシュ批判派の怒りと嘆きはとまらない。

クリントン前大統領の軟弱外交と不倫に怒り、ブッシュ大統領の当選を熱望していた共和党支持の友人も、「大統領に届いた情報が間違っていたのだと思う」と語りながらも、さすがに元気がなかった。

「昨年末までは、ブッシュ大統領の再選を疑う人はいなかったが、国民をミスリードして戦争を始めた責任は大きい。民主党の候補者がだれになるにせよ、きわどい選挙になると思う」と言う人もいた。

しかし、激しくブッシュ大統領を批判した人も、「ワシントンの内側(インサイド・ベルトウェイ)と外側(ビヨンド・ベルトウェイ)は違うから」といった補足を加えることが多かった。「戦争の大義」といった議論は、ワシントンを囲むように走る環状道路(ベルトウェイ)の内側では盛んだが、それが国民全体の議論になっているわけではないというのだろう。

「メディアは、いつもだれかを悪者に仕立てようとしている。いまは、ブッシュ大統領やチェイニー副大統領がその標的になっている。しかし、米国には2種類の人たちがいる。こうした問題を新聞やテレビのニュースで知って考える人と、硬いニュースにはまったく興味を示さない人だ。後者の人たちにとっては、ブッシュは依然として良い大統領だ」という解説をしてくれた友人もいた。

「イラクでは、フセインがいなくなって、女性たちの活動が活発になっている。民主主義になっていくことはすばらしいことだ。私たちの兵士が殺されているのは不幸なことだが、毎年数十万のイラクの国民が拷問のすえ、殺されていたことを考えれば、これは私たちが耐えなければならない犠牲だ」

ビジネスの仕事を引退して、まさにベルトウェイの外側になるメリーランド州で優雅に暮らしている友人は、WMD問題よりもイラク解放の意義を評価していた。ブッシュ大統領が最近使っている論理だが、共和党の支持者にとっては、イラク国民が「解放」されたと思うしかないのだろう。

しかし、『ならずもの国家アメリカ』(講談社)で、保守派の側からブッシュ政策を厳しく批判したクライド・プレストウィッツ氏(経済戦略研究所長)に、私が見聞した話を紹介しながら、「WMD誤認問題は、ワシントンの内側では、大きな問題になってきたということでしょうか」と尋ねたら、「そんな単純な問題ではないと思う。たとえば」と、同氏の母の話を持ち出した。

「母は86歳で、生涯を通じて1度も共和党以外の大統領候補に投票したことはなかったが、今回は初めてブッシュ大統領に投票しないという。国民をミスリードしたという理由だった。棄権するのか、民主党候補に入れるのかはまだ迷っているようだが、共和党に投票しないというのは、母にとっては大変な決断だと思う」

戦争を始めるという決断、戦場に兵士を送るという決断は、一国の責任者にとって、もっとも重要な決断であり、その根拠が誤っていたとしたら、それは国民や兵士を戦争や戦場に誤り導いたことになる。米国民が自国の兵士の死という戦争の結果を考える機会が多くなれば、あらためて、戦争と指導者の責任について考えるもふえてくるだろう。秋の大統領選挙に向けて、WMD問題は、まだまだワシントンの内側の議論かもしれないが、イラク戦争の「泥沼化」とともに、次第に国民全体の問題となり、大統領選を左右する要素になる可能性がある。

米国を旅した私の印象をまとめれば、そんなことになるが、それでは、日本の小泉首相の責任はどうなるのだろうか。

「フセイン大統領が見つからないからといって、フセイン大統領が存在しなかったことにはならない」という珍答弁を繰り返してきた首相はいま、「WMDがないことを立証しなかった責任はイラク側にある」という理由で、首相がイラク戦争を支持した責任を逃れようとしている。自衛権の行使を除いて、他国への侵略を禁止する国際法の原則に違反した国(米国)に同調した国(日本)が「先制攻撃をするしかないような状況ではないことを証明しなかったほうに責任がある」というのは、「盗まれるようなものをおいておくほうが悪い」と盗人が居直っているようなものだ。

現在のイラク占領は、イラク戦争の結果であり、「イラク復興人道支援」も、米英のイラク戦争・占領の枠組みに組み込まれたもので、地震などの災害や内戦などの混乱のあとの復興とはわけが違う。戦争の根拠となるWMDが誤りだったとすれば、日本が支持した根拠も崩れるわけで、それをもとに自衛隊を派遣することも正当性を失っている。

米国には、圧制に苦しむ人々を救うためには、武力行使も辞さないという「世界の警察官」の論理があり、勝手な理屈だと思うが、「自衛のための戦争」を超える論理も国民に説明してきている。日本の首相が国民に説明してきたイラク戦争を支持する論理は、英国のブレア首相が用いたのを同じ論理であり、WMDという現実の脅威が世界の人々に及んでいるのを取り除くために米国はイラク攻撃に踏み切った、というものだ。「自衛のための戦争」以外の戦争を認めない日本は、「民主化の戦争」を認めることはできない。

そういう意味では、誤った根拠に基づいた米国の戦争を支持し、その戦争の後始末である占領政策への協力である「復興人道支援」に自衛隊を派遣するという、国民を誤り導いた首相の責任は、米大統領よりも深刻なはずだ。

ところが、米国から帰国して、新聞やらテレビのニュースを見ていると、永田町の雰囲気はこのWMD問題に対して、それほど深刻なものと受け止めている様子はない。首相の責任が問われるとすれば、自衛隊員が攻撃されるなどの事件が起きたあとで出てくる、という見方が永田町の論理かもしれない。しかし、現時点で、首相が国民を誤り導いた責任ははっきりしていると私は思う。イラク派遣を決断した時点では、WMD誤認は明確ではなかったと弁解するかもしれないが、自衛隊の派遣というような国家の安全保障にかかわる重大な問題では、「結果責任」が重大だ。

日本はいま民主主義の岐路にあると思う。自衛隊の海外派遣というまさに国家的な大問題で、指導者が説明してきたその正当性の根拠が崩れているのだ。この事態の深刻さに気づくのに、自衛隊員の犠牲を待つというのでは、自衛隊員があまりにも気の毒だ。

自衛隊の派遣を積極的に勧めてきたメディアもたくさんある。そういうところが根拠としてきたのも、「フセインがWMDを保有しているのは明らか」という点だった。もちろん、いまは「復興支援」「国際協力」という論理のすり替えをしているのだろうが、国民を誤り導いた責任は、小泉首相ひとりではない。

「WMDで国民をミスリードした」というワシントンの常識に触れたせいか、帰国して、この問題に鈍感な日本のインサイド・ベルトウィである永田町の対応に驚いている。「時差ぼけ」かもしれないが、ぼけが消えないうちに言っておきたい。小泉首相がWMDについての米国の説明を鵜呑みにして、戦争支持と自衛隊派遣に国民を誤り導いた責任は、日本が戦後築いてきた平和を尊ぶという歴史の重さにかんがみて、非常に大きく、現時点でもすでに、辞職に値する。

http://www.asahi.com/column/aic/Mon/d_drag/20040209.html

 次へ  前へ

政治・選挙2掲示板へ



フォローアップ:


 

 

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。