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中東に勢力を伸ばしたいヨーロッパ [田中宇ウェブログ]
http://www.asyura2.com/0401/war47/msg/525.html
投稿者 なるほど 日時 2004 年 2 月 02 日 02:01:10:dfhdU2/i2Qkk2
 

http://tanakanews.com/blog/0401311438.htm
2004年01月31日14時38分
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 1月30日のヘラルドトリビューンに「ペルシャ湾岸諸国はなぜアメリカの方を向くのか」という主張記事が出た。ボルート・グルジチ(Borut Grgic)というタカ派系の論者が「EUが、武力ではなく外交で国際紛争を解決していこうとするのは、理想的だが現実的ではない。中東は、いまだに軍事力で物事が決まる地域である。ペルシャ湾岸諸国は、自分たちのために軍事力を長期間駐留してくれるアメリカの方を好む」と書いている。

Why the Gulf looks to America
http://www.iht.com/articles/127211.htm

 私はこの記事を読んだとき、サウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連邦、カタールなどいったペルシャ湾岸諸国が、EUよりアメリカの方を向いているのは当たり前ではないか、と思った。アメリカは大軍をイラクに駐留させ、カタールに巨大な基地を築き、クウェートにも軍隊を駐留させている。サウジアラビアとの軍事的な関係も長い。湾岸諸国にとってのアメリカとEUの重要度の差は、日本にとってのアメリカとEUの重要度の差と同様に大きいのではないか、と感じられる。だから、この記事が何をいいたいのか、最初はよく分からなかった。

 ところが少し考えると、これはもしかして自分が最近感じている「いずれアメリカは中東から手を引き、代わりにEUが中東や北アフリカまでを影響圏に入れる"大地中海圏"を作る」という動きの一つなのではないかと思うに至った。EUが中東に覇権を伸ばしていくことに、アメリカのタカ派が反発して「湾岸諸国はEUよりアメリカが好きなのだ」という記事を出しているのではないか、ということだ。

 ボルートの主張記事が興味深いのは、EUが中東で影響力を伸ばしていこうとする際に問題になりそうなポイントを列挙している点だ。上に紹介した「中東は軍事力がものをいう地域なのに、EUは軍事力を軽視している」ということ関連して「中東からアメリカの軍事力が抜けたら、湾岸諸国間の核兵器開発が煽られてしまう。だから湾岸諸国は米軍に出ていってもらいたくない」という指摘がある。ペルシャ湾岸地域では、北側にあるイランが核兵器開発を進めているが、イランは湾岸南側のアラブ諸国に非常に警戒されており、イランのの核兵器に対抗するため、サウジアラビアなど湾岸諸国の中で核兵器開発が進められそうだと指摘されている。

「拡大EU」について触れた記事 2003/08/27
http://tanakanews.com/blog/0401261335.htm

 このこととの関係で、先週の記事に書いた、パキスタンがイランの核兵器開発を支援してきたことが暴露されたという件を見ていくと、なるほどと思えることがある。パキスタンはイランだけでなくサウジアラビアに対しても核兵器開発で協力していたと指摘されるが、アメリカはこれらの核開発疑惑の中心に存在するパキスタンの核兵器技能を除去することで、アメリカの撤退前に必要な不安定要因の除去を進めようとしているのかもしれない。また逆に、これまで米軍を「傭兵」のように使ってきたサウジが独自の核武装を考えているのは、アメリカの撤退後を見据えた動きだとも読める。

パキスタンの核兵器開発についての記事
http://tanakanews.com/e0127nuke.htm

Pakistan, Saudi Arabia in secret nuke pact
http://www.washtimes.com/world/20031021-112804-8451r.htm

 また、イスラエルがアメリカのいうことしか聞かず、EUをほとんど相手にしていない以上、EUが中東で発言力を持つことは難しいとボルートは書いている。

 ボルートの記事によると、EUが中東に覇権を拡大することは、2003年6月に構想として打ち出され、2003年12月にEU閣僚会議で採択された「欧州安全保障戦略」(European Security Strategy)の中で示唆されている。そこで、私なりにこの欧州安保戦略について調べてみることにし、この戦略を策定した中心人物であるEU全体の外務大臣に当たるハビエル・ソラナが書いた主張論文などを読んだ。すると、非常に興味深いことが分かってきた。

Joining forces against common threats
http://www.iht.com/articles/121163.html

A SECURE EUROPE IN A BETTER WORLD
http://ue.eu.int/pressdata/EN/reports/76255.pdf

 別名「ソラナ・ペーパー」「ソラナ・ドクトリン」(単独覇権主義を打ち出したアメリカの「ブッシュ・ドクトリン」に対抗させる意味の命名)とも呼ばれるこの戦略は、従来は東欧やバルカン半島までだったEUの影響圏を一気にアラブ世界からアフガニスタンまで拡大しようとする非常に野心的なものだ。そして戦略の中心を「予防的関与政策」(Preventive engagement)に置いている。これは、危機が発生しそうな最初の兆候が見えたときから即応することで、危機が拡大する前に防ごうとするもので、軍事的な戦略よりも、外交的もしくは援助的な戦略を重視するということだと読める。

 ソラナによると、EUの予防的関与政策には、たとえば、イスラム世界で暴力的な原理主義が勃興する背景には「近代化の圧力」がイスラム世界の人々を抑圧し、疎外された若者たちが原理主義に走るという現実があることを見据えなければならないという。「現代化の圧力」とは、西欧が植民地にしたイスラム世界に対して性急な「近代化」を押しつけてきたことを指している。つまり、この西欧の新しい戦略には、西欧自身がこれまでにやってきたことの悪い部分を改める必要があるという視点が感じられる。

 これは画期的な感じがする。これまで100年以上にわたり、アジア・アフリカ・中南米の人々は、西欧がもたらした「近代化」を便利に感じるとともに、西欧が近代化を押しつけてくることに対して嫌悪感を持ち、西欧の「傲慢さ」「自己中心主義」に辟易していた。それに対して今回の西欧の戦略では、もっと内省的な西欧文明を目指すということが示唆されているように思われる。

 西欧の傲慢と自己中心主義の極致は、ブッシュ・ドクトリンで打ち出されたアメリカの先制攻撃戦略と単独覇権主義であろう。EUの「ソラナ・ドクトリン」の戦略は、それに対抗するかたちで出てきたのだが、EUの人々は頭がよいらしく、ソラナ・ドクトリンでは、アメリカと対抗するという要素が感じられないような工夫が凝らしてある。

 それはたとえば、この構想では「先制攻撃も、ときには必要だ」という方針を打ち出している点にある。EUはアメリカのような軍事的な「先制攻撃」を容認しているわけではない。そうではなくて逆に、外交的な交渉、圧力、経済援助など、危機の拡大を防ぐための予防的な行動が必要だという「予防的関与政策」のことを「先制」と呼んでみせることで、アメリカと同じですよ、と書いているのである。言葉は「先制」でも、その意味するところはブッシュとソラナでは正反対になっている。これは、アメリカを敵視してしまうと、分裂する米政権中枢のなかで単独覇権主義を標榜するタカ派を強めてしまうことになるので、中道派と連携するEUとしては、それを避けようとする戦略だと読める。

The Solana Security Paper
http://www.aicgs.org/c/solana.shtml

 このEUの新戦略がどこまで実現するのか、注目すべき国際情勢のポイントがまた一つ増えた感じがする。

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