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「サハラに舞う羽根」 シェカール・カプール監督 --- 帝国から独立するには敗北しても戦う価値がある。(『株式日記と経済展望』より)
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投稿者 まさちゃん 日時 2004 年 2 月 02 日 20:17:01:Sn9PPGX/.xYlo
 

「サハラに舞う羽根」 シェカール・カプール監督 --- 帝国から独立するには敗北しても戦う価値がある。

2004年2月1日 日曜日


アフガニスタン、イラクと続く自衛隊の海外派遣が議論を呼ぶ中、その流れに警告を発するかのような作品「サハラに舞う羽根」(02年、米英合作)の公開が20日、大阪・梅田のOS劇場など全国東宝洋画系で始まった。

英国が世界の4分の1を支配していた1884年、将軍である父に期待されるまま軍人の道を歩んだハリー(ヒース・レジャー)は、婚約者エスネ(ケイト・ハドソン)や厚い信頼を寄せる仲間に囲まれ、ロンドンで順風満帆の日々を送っていた。

 ある日、北アフリカのスーダンで反乱が起き、連隊に出動命令が下る。仲間が血気にはやる中、ハリーの脳裏を戦場の恐怖とエスネとの別れがよぎる。そして戦いの意味を見失った彼は除隊届を出す。しばらくして、仲間から3枚の白い羽根が届けられた。それは臆病(おくびょう)者のシンボルだった。ハリーは苦悩の末、灼熱(しゃくねつ)の砂漠に向かう。

 反乱軍との戦闘、「アラビアのロレンス」をほうふつさせるラクダのキャラバン。モロッコで撮影されたというサハラ砂漠に浮かび上がる壮大なシーンと映像美は見る者を120年前に誘い込む。だが、わくわくとする高揚はどこからも感じられず、戦うことの空(むな)しさばかりが心に残る。そんな戦争を縦軸に、ハリーとエスネ、仲間たちの人間模様を横軸につづり、奥行きの深い作品にした。

監督は98年にアカデミー賞7部門にノミネートされた「エリザベス」のシェカール・カプール。英国植民地時代のインド(現パキスタン)で生まれ育ち、英国で暮らした体験も持つ。歴史を見る目は冷静かつ公正だ。戦争を強者の側から見たエキサイティングなドラマとして描かなかったことも納得できる

「高慢さを持ち、自分たちだけが『神の民』であると信じている白人がいる。それはなぜなのか」。この疑問が出発点にあったと監督は言う。スーダンの民を「恩を感じない蛮族」と吐いて捨てる英国人のせりふからも、そんな思いが感じ取れる。

 自衛隊をはじめ、米国の要請でイラクに各国の軍隊が派遣されることについては、「反対だ。今イラクで起きていることは帝国主義的な侵略と言っても差し支えないと感じている。それは結局、国家がスポンサーになるテロと変わらない」。

 「戦うのは友達のため」――。この作品で監督が最も訴えたかったのが終盤で語られるこのせりふだという。

 「第二次世界大戦、ベトナム、イラクで戦った人と話をすると必ず言うのがこの言葉だった」。国家の大義や偉大な理想を抱いて戦地に赴いてもそんなものはすぐに飛ぶ。残るのはすぐそばにいる戦友を守るためということだけだという。

 世界情勢がきな臭さを増している。監督は「歴史の一番重要な部分は『学ぶこと』だと思う。残念ながら、我々の社会は、せっかく歴史上起きた事実を学んでも、また忘れ、同じ過ちを繰り返してしまう」と熱く語った。 【北林靖彦】

(2003年9月20日毎日新聞大阪夕刊から)


この映画がアメリカで公開になったのは2002年の秋。ちょうどブッシュとブレアがイラク侵略の必要性を英米国民に主張し始めた時期でした。英米両国政府は「イラクはアルカイダの温床で、核兵器を保有している」という理由を挙げてイラク攻撃を正当化しようとしていましたが、世界のほとんどの国々はこの理由をまともに取り合わず、「ブッシュとブレアは石油がほしいだけ」と言っていました。

 そのため、アメリカの評論家たち(アンチ・ブッシュのリベラルなインテリが圧倒的に多い)はこの作品を見てこう言っていました。

 「『サハラに舞う羽根』は十字軍の時代も19世紀も、そして今もキリスト教徒のアングロ・サクソンの優越感と帝国主義/植民地主義的な思想が変わっていないことを物語るものなので、反面教師として鑑賞するといい」

 実は『サハラに舞う羽根』は1915年に最初に映画化されて以来、39年までになんと5回も映画化され、77年にはテレビ映画にもなっているので、この作品は7回目の映画化です。

 他の作品はイングランドの帝国主義をかなり美化しているんですが、この作品は監督がインド人(インドは長年イングランドの植民地としてイングランドの圧政に苦しんでいました)なので、帝国主義に根ざすイングランド人のプライドというエレメントにはそれほどこだわらず、メイン・キャラクターたちの人間性に焦点を当てています。

 それに、主人公を助けるムスリムの黒人が非常にポジティヴなキャラクターとして描かれていることも、「白人キリスト教徒=善、有色人種の非キリスト教徒=悪」というステレオタイプが好きなハリウッド映画とは違う点で、評価すべきでしょう。

 映画の最後で、ジャックが「戦場で勇気を与えてくれるのは(戦争を正当化する)イデオロギーでも自国の国旗でもなく、自分の左右で一緒に戦っている友達だ」と演説します。

 ブッシュやブレアにこの名言を聞かせて、イラク侵略のための大義名分をでっちあげてエセ愛国心を煽ったことを反省していただきたいものですね。

 イングランドでは「ヒース・レジャー(オーストラリア人)とケイト・ハドソン(アメリカ人)の姿勢が悪くて、どう見てもイングランドの上流階級の人間とは思えない」と批判されていましたが、その部分を無視すれば壮大な時代劇として楽しめます。

西本マリーのUSA通信 「サハラに舞う羽根」


(私のコメント)
「サハラに舞う羽根」と言う映画は今回以前に5回も映画化されているそうです。原作小説を映画化したものですが、今回はインド人の映画監督を起用しているので、以前の映画とはかなり観点が異なった作品となった。2002年の作品だからイラク戦争の始まる前であり、9,11テロ以前に構想されて作られたもので、イラク戦争を意識した映画ではない。しかしながらこの映画の舞台とイラク戦争とはどうしてもダブってしまう。

この映画は19世紀末の大英帝国華やかなりし頃の時代であり、地球の四分の一が英国の植民地であった。その大帝国を支えていたのが映画の主人公の英国軍士官であり、英国においてもエリートとして認められていた。その中での落ちこぼれの主人公はスーダン遠征を前に除隊してしまう。理由としては反戦思想の持ち主と言うわけではなく、士官としての自覚に欠けていたらしい。

臆病者のレッテルを張られた主人公は汚名挽回のためにスーダンに旅立ち、窮地に立った仲間達を助けに行って汚名を晴らすと言うストーリーで、一種の戦意高揚小説だったのだろう。当時は白人が有色人種を支配するのは当然と言う時代であり、人種差別と植民地支配は現代からは想像も出来ない世相だった。だから原作の小説と今回の映画とはそれらの意識のズレをどうしても生じてしまう。

当時のスーダンは英国とエジプトの共同支配でしたが、歴史では次のように解説している。

一方、スーダンでも重税に対する不満が高まり81年からマフディ(正しい道の指導者)を名乗るイスラム教指導者らが反乱を起こして国家を作り、ゴートンを戦死させるなど激しい抵抗を続けていた。英国は「エジプト副王」の名で精鋭部隊を送り込み、98年にようやくマフディ国家を壊滅させた。そして内陸からスーダン南部に進出していたフランス軍を撤退させて、スーダンへの支配を固めた。こうしてスーダンは1899年に英国・エジプトの共同統治領として、実質的にはイギリス植民地に組み込まれたのだ。
(スーダン イギリスとエジプトの旧共同統治領)

つまり当時も英国は着々と植民地を広げており、帝国主義華やかな時代であり、当時も日本だけが植民地を広げていたわけではない。しかしながらスーダンの砂漠地帯は暑さと寒さと砂嵐と疫病で過酷な所でもあり、映画の主人公が怖気づいても不思議ではなく、大英帝国を維持する英国軍人の士気を高める必要があったのだろう。さらに華麗な真紅の詰襟の軍服も本国では華麗でも、現地のスーダンでは着ているのもきびしかった。

現代のイラクにおけるアメリカ軍も同じような自然の厳しさと、住民達との抗争に苦しめられているが、当時の英国軍士官たちへの栄光と誇りは、イラクのアメリカ兵に求めるわけには行かないだろう。またアメリカ本国へ帰還しても賞賛されることはない。映画でもスーダンの子供たちが英国兵に石を投げつけるシーンがありますが、パレスチナではイスラエル兵に子供たちが石を投げつけている。

つまりアメリカのブッシュ大統領は19世紀の帝国的使命からイラクへ侵攻しましたが、たとえ勝利を得たとしても、国力を消耗し撤退を余儀なくされるだろう。植民地解放闘争はたとえ負けたとしても帝国軍が最終的に撤退すれば勝利したことになるから、たとえ何度負けても戦い続ける限り敗北はありえない。

大東亜戦争においても何で日本は無謀とも思える戦争に突入したかと言うと、植民地解放闘争だったのだろう。カミカゼ特攻隊などの発想は植民地闘争や人種差別闘争などに見られる特殊な闘争方法であり、パレスチナやイラクで見られる自爆テロも、究極まで追いこめられた有色人種の絶望的闘争方法なのだ。

アメリカは結局何のためにイラクへ攻め込んだのか良く分からない。フセインが独裁国家だからとか、大量破壊兵器を持っているとか、いろいろ言っているが、ブッシュは十字軍的理由で攻め込んだらしい。つまり中東へ民主主義という正義を広めるためと称して軍隊を出動させた。このようにイラク戦争の大義がクルクルと変わり、アメリカ軍の士官たちは何を思っているだろうか。19世紀の英国士官とはかなり違った思いで戦争をしなければならない。


◆イラクで米兵19人自殺 昨年中、ストレスなど原因

【ニューヨーク1日共同】2日発売の米誌ニューズウィーク最新号によると、イラク戦争に従軍した米軍兵士のうち、昨年中に19人が自殺していたことが、米陸軍の派遣した調査団の報告書で分かった。報告書は近く政府に提出される。
 報告書は、戦闘によるストレスと心的外傷後ストレス障害(PTSD)が兵士の間に広がっていると指摘。抑うつ状態や銃器が身近にあることなどの要素が結び付き、自殺に走る原因になっているとしている。
 同誌はまた、戦闘以外で死亡したが死因のはっきりしない兵士が「10人から15人おり、原因を調査中」とする専門家の指摘も伝えている。調査団は精神科医など12人で構成、昨年9月に派遣された。

(共同通信)[2月2日9時34分更新]

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